太平洋経済展望(PEO)構造問題プロジェクト(太平洋経済協力会議(PECC)のInternational Project。コーディネータは日本の高阪章・大阪大学大学院教授)は、2009年~2010年の研究テーマを「Macrofinancial Linkages and Financial Deepening(マクロ金融リンケージと東アジアの金融市場発展)」とする研究活動を進めており、2010年3月に第1回目の国際専門家会合を開催した。概要は以下のとおり。
◆本テーマ設定の背景と狙い
グローバル資本市場の統合化により、各国経済はマクロ金融リンケージを深め、景気循環の増幅効果を強めている。本プロジェクトでは、近年におけるマクロ金融リンケージが東アジアの金融発展プロセスにどのような影響を及ぼしているのかについて考える。
97-98年のアジア金融危機は、太平洋地域の貿易・投資活動を支えるより強固なアジア域内金融システムの必要性を示した。実際、アジア新興国は、域内金融協力を模索するとともに、国内金融市場の再構築に努め(世界銀行2007)、先進国もまた、金融市場統合化というトレンドの中で、新興市場への金融リンケージを再構築した(IMF2009)。
今回のグローバル金融危機において、新興国の金融・資本市場においては、市場開放度の違いに由来する各国特有のショックに加え、地域共通の大きなショックが起きていることを確認したが、アジア太平洋地域の金融構造がどれほどショックに強いのかということに対して答えを見出したい。
◆プロジェクト参加国・地域(2010年3月現在):
オーストラリア、中国、コロンビア、香港、インドネシア、日本、チャイニーズ・タイペイ、タイ、フィリピン、米国
◆第1回国際専門家会合の概要
日時:2010年3月6日(土)-7日(日)
場所:関西経済連合会会議室(大阪)
参加者:
上記プロジェクト参加国・地域のうち、オーストラリア、フィリピンを除く国・地域から13名の専門家、PECC各国委員会、オブザーバー等 計42名。
会合の概要:
1日目は、野上義二PEO日本委員会委員長(PECC日本委員会委員長)より挨拶、高阪章コーディネータより本プロジェクトの趣旨説明の後、専門家から提出された各国論文に基づき活発な議論を展開した。日本からは白塚重典・日本銀行金融研究所参事役が論文発表を行った、夕食会では、田邊隆一特命全権大使(関西担当)から歓迎の挨拶をいただいた。
2日目は、アジア太平洋地域において存在感を高める中国について、リーマン・ショック後の経済動向や金融・資本市場の深化などを議論、その後、総括討議を行い、2010年9月の第2回目の国際専門家会合開催を決め、2日間の日程を終えた。
(問い合わせ先 PEO日本委員会事務局 e-mail:peo@kiser.or.jp)