“Infrastructure Development in the Pacific Region”
日本では、道路公団問題をはじめ、公共投資の有効性が疑問視され、経済援助でもインフラ投資の効果が再検討されるに至っている。本研究では、物的および人的/知的社会共通資本(伝統的産業基盤、通信革命、教育、再訓練など)への投資が、外部効果や学習効果を通じてどれ程経済成長に貢献するか(投資ファイナンスも含め、社会的損益も視野に入れる)を、各国の経験に照らして考察した。
分析の切り口として、
(1)マクロ的見地からの経済効果の検証
(2)ミクロ的見地からの制度組織面の分析
(3)新しい概念でのインフラ(ハードに限らずソフトも対象)
の3点をポイントとした。
通信、観光、人材育成などセクター別のアプローチはあるが、インフラ投資をひとまとめにしてマクロ的な成長に結びつけた議論を展開するには至っていない。世界銀行では、国際比較可能なインフラデータベースを用いた成長回帰(growth regression)の方法によって、国横断的にインフラ投資の成長効果を図り、民営化・民活導入による効率化を唱道した。アジア通貨危機による債務問題で民活路線が頓挫しかかり、誰が投資リスクを背負うのかといった現実的な議論も展開される中、世界銀行が発したメッセージの含意を、個別国の文脈で再検討してみる意義は大きい。
どのようなインフラがどのような状況で必要とされるのか、そのためのリソースをどう工面するか、財政再建の努力の中で、各国の発展段階に応じた有効な資源配分と資源利用の効率化をどのように図るか。こうした問題意識に立って、インフラ開発の現代的意義を再構築することに努めた。
研究成果は、第15回PECC総会(ブルネイ)ワークショップにおいて、成果報告と討論のセッションを開催して発表した。
なお、2006年12月に、国際的に著名な英国の出版社=Routledge社から、商業出版された。