ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、12月の訪日外客総数(推計値)は348万9,800人。クリスマスや年末年始に合わせた旅行需要の高まりも影響し、過去最高値を更新した。
・2024年通年の訪日外客数は3,686万9,885人となり、過去最高値であった19年の水準(3,118万2,049人)を5年ぶりに上回った。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば10月は331万2,193人。うち、観光客は302万1,710人となり、3カ月ぶりに300万人を超えた。
【トピックス1】
・関西12月の輸出額は前年同月比+3.1%と3カ月連続で増加。また、輸入額は同+3.1%と2カ月ぶりに増加した。結果、関西の貿易収支は+2,269億円と11カ月連続の黒字となり、黒字幅は拡大した。
・12月の関空への訪日外客数は88万5,400人となり、過去最高値を更新。2024年1月以降、2桁の伸びが続いており、外国人入国者数は好調に推移している。
・11月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く。第3次産業活動指数は2カ月ぶりに前月比低下。一方、対面型サービス業指数は「飲食店、飲食サービス業」や「娯楽業」が上昇した影響もあり小幅ながら2カ月ぶりに上昇した。観光関連指数は「旅行業」や「鉄道旅客運送業」等が低下に寄与し、2カ月ぶりに低下した。
【トピックス2】
・10月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,589.2千人泊となった。
・日本人延べ宿泊者数は3カ月ぶりに前年比増加。府県別にみると、大阪府、鳥取県や兵庫県が増加に寄与した。なお、京都府は17カ月連続で減少しており、日本人宿泊者数は低迷している。
・外国人延べ宿泊者数は10カ月連続で2桁の伸びが続いており、好調を維持している。府県別にみると、京都府、大阪府や和歌山県等が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
【トピックス3】
・2024年10-12月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆3,108億円となり、24年に入り、4四半期連続で前年比2桁の伸びとなっている。結果、24年通年の消費額は8兆1,395億円と、過去最高値であった23年通年(5兆3,065億円)を上回った。
・一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万7,372円となった。国・地域別では、香港が最も高く、次いで、台湾、シンガポール、英国、中国と続いている。
・10-12月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別にみれば、宿泊費が最も多く、また、娯楽サービス費が大幅増加した。
DETAIL
ポイント
1月の発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、12月の訪日外客総数(推計値)は348万9,800人となった。クリスマスや年末年始に合わせた旅行需要の高まりも影響し、過去最高値を更新(前年同月比+27.6%)。また、出国日本人数は118万7,200人と、6カ月連続で100万人超の水準となった(同+25.2%)。ただし、2019年同月比では-30.7%となり、減少幅は前月(同-28.4%)から拡大した。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、12月は韓国が86万7,400人(前年同月比+10.8%)で最多となり、過去最高値を更新した。次いで中国が60万4,200人(同+93.4%)、台湾が49万1,200人(同+23.0%)、香港が28万5,600人(同+13.7%)、米国が23万8,500人(同+30.2%)と続く。
▶2024年通年の訪日外客数は3,686万9,885人となり、過去最高値であった19年の水準(3,118万2,049人)を5年ぶりに上回った(前年:2,506万6,067人)。一方、日本人出国者数は1,300万7,238人と、前年(962万4,464人)から増加したものの、コロナ禍前の6割程度(-35.2%)の回復にとどまった。円安の影響(平均為替レート:19年:109.01円→24年:151.48円)もあり、インバウンド需要に比してアウトバウンド需要の回復は依然遅れている。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、10月は331万2,193人であった(前年同月比+31.6%)。うち、観光客は302万1,710人となり、3カ月ぶりに300万人を超えた(同+34.5%)。また、商用客は12万1,490人(同+1.8%)、その他客は16万8,993人(同+11.6%)であった。
▶訪日外客が着実に増加している一方で、観光地においてオーバーツーリズムの問題が再び深刻化しつつある。この問題に対応するため、観光庁は2月17日から「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」の公募を開始した。本事業では(1)地方公共団体または観光地域づくり法人(DMO)が申請主体となる「地域一体型」と(2)前者の申請主体に民間事業者を加えた「実証・個別型」の2つのタイプに分けられ、伴走支援が行われる予定である。今後、DMO、自治体や民間事業者が相互に連携することで、実効性の高いオーバーツーリズム対策が期待される。
トピックス1
12月関西の財貨・サービス貿易及び11月のサービス産業動向
▶関西12月の輸出額は前年同月比+3.1%と3カ月連続で増加した(前月:同+2.4%)。また、輸入額は同+3.1%と2カ月ぶりの増加(前月:同-4.9%)。結果、関西の貿易収支は+3,662 億円と 11 カ月連続の黒字となり(図4)、黒字幅は同+3.2%拡大した(前月:同+117.4%)。2024 年通年では、輸出は前年比+2.8%(前年:同-3.2%)、輸入は同+1.1%(前年:同-9.5%)といずれも 2 年ぶりのプラス。貿易収支は10年連続の黒字(+2兆4,724億円)となり、黒字幅は同+18.3%と2年連続で拡大した(前年:同+161.0%)。
▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 12 月の対中輸出は前年同月比6.7%と3カ月ぶりに減少した(前月:同+0.8%)。輸出減に寄与したのは半導体等製造装置や鉄鋼等であった。一方、対中輸入は同+5.1%と2カ月ぶりの増加(前月:同-0.0%)。輸入増に寄与したのは衣類及び同付属品やがん具及び遊戯用具等であった。2024年通年では、輸出は前年比+2.6%(23 年:同-4.9%)、輸入は同+1.2%(前年:同6.1%)といずれも2年ぶりに増加した。
▶12 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は88万5,400人となり(前月:83万8,503人)、過去最高値を更新した(図6)。前年同月比+22.7%と2024年1月(同+84.7%)以降、2桁の伸びが続いており、関空への訪日外客数は好調に推移している。また、日本人出国者数は22万8,687人であった(同+29.1%)。なお、19年同月比では-33.6%と前月(同-30.3%)から減少幅は拡大しており回復ペースは緩慢である。24年通年の関空への訪日外客数は945万7,874 人となり、コロナ禍前の 19 年の水準(837 万 8,039 人)を+12.9%と 5 年ぶりに上回った。一方、日本人出国者数は 224 万7,088 人でコロナ禍前の6割程度(同-38.4%)の回復にとどまった。
▶11 月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く(図7)。サービス
業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば、11月は101.8で前月比-0.3%低下し、2カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.1%)。また、対面型サービス業指数*は97.8で同+0.0%と2か月ぶりの小幅上昇にとどまった(前月:同-0.7%)。うち、飲食店、飲食サービス業(同+1.2%、3カ月ぶり)や娯楽業(同+1.5%、2カ月ぶり)が上昇に寄与した。
▶観光関連指数**(2015 年平均=100)は、94.1 と前月比-0.2%低下し、2 カ月ぶりのマイナス(前月:同+0.3%)。うち、旅行業(同28.6%、5 カ月ぶり)、鉄道旅客運送業(同-1.1%、3 カ月ぶり)等が低下に寄与した。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
10月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、10月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,589.2千人泊であった(表1)。前年同月比+7.4%と36カ月連続で増加しており、増加幅は前月(同+2.3%)から拡大した。
▶日本人延べ宿泊者数は8,048.0千人泊となった(表1及び図8)。前年同月比+1.1%と3カ月ぶりに増加した(前月:同3.3%)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,878.7千人泊、京都府1,414.8千人泊、兵庫県1,282.9千人泊、三重県688.1千人泊、滋賀県390.1千人泊、和歌山県336.8千人泊、福井県320.7千人泊、鳥取県273.0千人泊、奈良県238.6千人泊、徳島県224.4千人泊であった。前年同月比でみると、大阪府(同+3.6%、4カ月ぶり)、鳥取県(同+43.9%、10カ月連続)や兵庫県(同+5.4%、5カ月連続)等が、日本人延べ宿泊者の増加に寄与した。なお、京都府は同-18.5%と17カ月連続で減少しており、日本人宿泊者数は低迷している。
▶外国人延べ宿泊者数は4,545.1千人泊となり、過去最高値を更新した(表1及び図9)。前年同月比+20.8%と10カ月連続で2桁の伸びが続いており、好調を維持している(前月:同+16.5%)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,380.7千人泊、京都府1,760.3千人泊、兵庫県158.9千人泊、和歌山県107.7千人泊、奈良県44.3千人泊、滋賀県26.3千人泊、三重県21.5千人泊、徳島県19.5千人泊、鳥取県13.2千人泊、福井県8.9千人泊であった。なお、京都府、兵庫県や和歌山県の延べ宿泊者数が過去最高値を更新した。前年同月比をみれば、京都府が同+26.5%(31カ月連続)、大阪府が同+15.0%(33カ月連続)や和歌山県が同+107.8%(29カ月連続)等、8府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
▶宿泊料金を巡る状況(現金給与総額/宿泊料金)を見れば、宿泊料金高騰の影響もあり、2024年は19年比-18.2ポイント低下した。円安の影響を受けない、日本人宿泊者数にとっては厳しい状況が続いている(図10)。
トピックス3
2024年10-12月期訪日外国人消費の動向
▶観光庁によれば、2024年10-12月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆3,108億円となった(図11)(7-9月期:1兆9,186億円)。前年同期比+37.6%と24年に入って、4四半期連続で2桁の伸びとなっている。結果、24年通年の消費額は8兆1,395億円と、過去最高値であった23年通年(5兆3,065億円)を上回った。
▶10-12月期の訪日外国人消費のトップ5を国・地域別(その他除く)にみれば(図12)、中国が4,373億円(前年同期比+90.1%)と最多であった。次いで、台湾が2,970億円(同+25.3%)、米国が2,683億円(同+42.2%)、韓国が2,639億円(同+26.3%)、香港が1,613億円(同+11.2%)と続く。
▶一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万7,372円となり、前年同期比+5.8%増加した(7-9月期:同+18.0%)。国・地域別にみれば(表2)、香港が3万8,117円(同+7.5%)と最も高い。次いで、台湾が3万4,668円(同+7.6%)、シンガポールが3万4,488円(同-0.9%)、英国が3万3,066円(同+28.3%)、中国が3万2,222円(同+18.7%)となっている。
▶10-12月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別でみれば(表3)、宿泊費が9,610円(同+5.3%)と最も多く、次いで買物代が7,847円(同+7.5%)、飲食費が5,702円(同+3.3%)、交通費2,938円(同+0.2%)、娯楽等サービス費が1,272円(同+30.3%)と続いている。なお、平均泊数は8.7泊と、前年同期差+0.2泊小幅増加した。
*トピックス3は四半期ごとの掲載である。
**「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。