都道府県別訪日外客数と訪問率:11月レポート No.66

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ABSTRACT

【ポイント】

・JNTO訪日外客統計によれば、11月の訪日外客総数(推計値)は318万7,000人。紅葉シーズンによる訪日旅行需要の高まりに加え、航空便数の回復もあり、2カ月連続で300万人超の水準となった。なお、1-11月累計の訪日客数は3,337万9,900人となり、過去最高であった2019年の水準(3,188万人)を上回った。

・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば9月は287万2,487人。うち、観光客は254万4,751人と、9月として過去最高値を更新した。

 

【トピックス1】

・関西11月の輸出額は前年同月比+2.4%と2カ月連続で増加。一方、輸入額は同-4.9%と8カ月ぶりに減少した。結果、関西の貿易収支は+2,269億円と10カ月連続の黒字となった。

・11月の関空への訪日外客数は83万8,503人となり、11月として過去最高値を更新。コロナ禍の影響が完全に払拭された2024年1月以降、着実に2桁の伸びが続いており、外国人入国者数は堅調に推移しているといえよう。

・10月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く。第3次産業活動指数は3カ月ぶりに前月比上昇した一方、対面型サービス業指数は「飲食店、飲食サービス業」や「娯楽業」が低下した影響もあり2カ月ぶりに低下した。また、観光関連指数は「道路旅客運送業」や「宿泊業」等が上昇に寄与し、小幅ながら2カ月ぶりに上昇した。

 

【トピックス2】

・9月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,896.8千人泊となった。

・日本人延べ宿泊者数は2カ月連続で前年比減少。府県別にみると、京都府、大阪府、滋賀県や和歌山県がそれぞれ前年比減少しており、日本人延べ宿泊者の減少に寄与した。中でも、京都府は日本人の宿泊が1年以上減少しており、また2桁の減少が13カ月連続となっている。

・外国人延べ宿泊者数は9カ月連続で2桁の伸びが続いており、堅調に推移している。府県別では、大阪府。京都府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県や奈良県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

 

【トピックス3】

・2024年7-9月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府40.6%が最も高く、次いで京都府29.5%、奈良県9.7%、兵庫県5.1%、和歌山県1.3%、三重県0.7%、滋賀県0.6%、徳島県0.3%、鳥取県0.3%、福井県0.2%と続く。

・2024年7-9月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は前年同期比+16.3%増加。費目別では、交通費、宿泊費や飲食費が大幅増加した一方、娯楽等サービス費や買物代は減少した。

・2024年7-9月期の関西における訪日外客消費額は4,746億円となり、前年同期比+30.6%大幅増加。7-9月期は自然災害の影響もあり、訪日外客消費額は前期から減速した。

 

 

DETAIL

ポイント

12月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、11月の訪日外客総数(推計値)は318万7,000人となった(前年同月比+30.6%)。紅葉シーズンによる訪日旅行需要の高まりに加え、航空便数の回復もあり、2カ月連続で300万人超の水準となった。なお、1-11月累計の訪日客数は3,337万9,900人となり、過去最高であった2019年の水準(3,188万人)を上回った。また、出国日本人数は117万5,100人(同+14.4%)となり、5カ月連続で100万人超の水準となった。19年同月比では-28.4%と24年1月(同-42.3%)の減少幅から14%ポイント程度縮小したものの、依然コロナ禍前の水準を回復できていない。なお、19年平均為替レートは109.01円、24年平均は151.48円となっており、この間円安が39.0%進行した。

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、11月は韓国が74万9,500人(前年同月比+15.3%)で最多であった。次いで中国が54万6,300人(同+111.5%)、台湾が48万8,400人(同+21.0%)、米国が24万7,500人(同+34.0%)、香港が22万7,100人(同+13.3%)と続く。

 

 

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、9月は287万2,487人(前年同月比+31.5%)。うち、観光客は254万4,751人と、9月として過去最高値を更新した(同+33.6%)。また、商用客は10万3,703人(同+6.0%)、その他客は22万4,033人(同+23.5%)であった。

 

 

 

 

▶2024年12月27日に政府は2025年度の予算を公表。観光庁の関係予算は(1)「持続可能な観光地域づくり」、(2)「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」、(3)「国内交流拡大」、(4)「その他(経常事務費等)」の項目からなる。総額530億3,300万円のうち、(2)が464億円1,800万円(87.5%)と最も大きいシェアを占める。(2)のうち、「戦略的な訪日プロモーションの実施」では130億円計上されており、大阪・関西万博を契機に、日本各地へ誘客を促進するプロモーションが行われる予定である。今後、プロモーションを効果的に進めていく上で、SNSやインフルエンサー等の活用も重要となる。すなわち、国・地域別にターゲット層を設定し、外国人目線に基づいた旅行コンテンツなどをタイムリーに訴求することが必要となろう。

 

トピックス1

11月関西の財貨・サービス貿易及び10月のサービス産業動向

▶関西11月の輸出額は前年同月比+2.4%と2カ月連続で増加した(前月:同+4.0%)。一方、輸入額は同-4.9%と 8 カ月ぶりの減少(前月:同+4.6%)。結果、関西の貿易収支は+2,269億円と10カ月連続の黒字となった(図4)。輸出が前年比増加し、輸入が同減少したため、黒字幅は同+117.9%と 3 カ月ぶりに拡大した(前月:同-1.4%)。

 

 

▶対中貿易動向をみると(図5)、関西11月の対中輸出は前年同月比+0.8%と小幅ながら2カ月連続で増加した(前月:同+3.1%)。輸出増に寄与したのは非鉄金属や科学光学機器等であった。また、対中輸入は同-0.0%と2カ月ぶりの減少(前月:同+13.1%)。輸入減に寄与したのは音響・映像機器(含部品)や衣類及び同附属品等であった。

 

 

▶11月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は83万8,503人となり(前月:82万9,341人)、過去最高値を更新した(図6)。前年同月比+26.3%とコロナ禍の影響が完全に払拭された24年1月(同+84.7%)以降、着実に2桁の伸びが続いている。外国人入国者数は堅調に推移しているといえよう。一方、11月の日本人出国者数は 22 万 3,427 人、前年同月比+20.7%となった(前月:同+32.1%)。なお、19年同月比では-30.3%と、前月(同-33.3%)から減少幅は幾分縮小したものの、依然回復ペースは遅い。

 

 

▶サービス業の活動は一進一退の動きが続く(図7)。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2015 年平均=100)をみれば、10月は102.3で前月比+0.3%小幅上昇し、3カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-0.1%)。10 月を 7-9月平均と比較すると、-0.2%小幅低下した(7-9月期:前期比+0.5%)。一方、対面型サービス業指数*は 97.7 で同-0.8%低下し、2 カ月ぶりのマイナス(前月:同+2.6%)。うち、飲食店、飲食サービス業(同2.3%、2 カ月連続)や娯楽業(同-2.4%、3カ月ぶり)が低下に寄与した。結果、10月の対面型サービス業指数は7-9月平均比+0.5%上昇した(7-9月期:前期比+0.4%)。

 

 

▶観光関連指数**(2015 年平均=100)は(図 7)、94.0 と前月比+0.1%小幅上昇し、2カ月ぶりのプラス(前月:同-1.1%)。うち、宿泊業(同+4.6%、3カ月連続)、道路旅客運送業(同+5.2%、2カ月ぶり)等が上昇に寄与した。10月の観光関連指数を7-9月平均と比較すると、-0.0%小幅低下した(7-9月期:前期比+1.3%)。

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

 

トピックス2

9月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、9月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は10,896.8千人泊であった(表1)。前年同月比では+2.3%と前月と同じ伸びであった。

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は7,385.6千人泊となった(表1及び図8)。前年同月比-3.3%と2カ月連続で減少した(前月:同4.6%)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,550.3千人泊、京都府1,341.7千人泊、兵庫県1,244.4千人泊、三重県670.6千人泊、滋賀県355.5千人泊、和歌山県306.4千人泊、福井県280.3千人泊、鳥取県241.5千人泊、徳島県202.2千人泊、奈良県192.7千人泊であった。前年同月比でみると、京都府が同-17.0%(16カ月連続)、大阪府が同-5.8%(3カ月連続)、滋賀県が同-9.7%(2カ月ぶり)や和歌山県が同-2.5%(2カ月連続)とそれぞれ減少しており、日本人延べ宿泊者の減少に寄与した。中でも、京都府は日本人の宿泊が1年以上減少しており、また2桁の減少が13カ月連続となっている。

 

▶外国人延べ宿泊者数は3,511.2千人泊となった(表1及び図9)。前年同月比+16.5%と前月(同+24.0%)から増加幅は縮小したものの、9カ月連続で2桁の伸びが続いており、外国人延べ宿泊者は堅調に推移している。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,924.7千人泊、京都府1,307.9千人泊、兵庫県116.0千人泊、和歌山県70.0千人泊、奈良県29.3千人泊、滋賀県19.5千人泊、三重県15.9千人泊、徳島県12.5千人泊、鳥取県10.6千人泊、福井県4.9千人泊であった。前年同月比をみれば、大阪府が同+16.1%(32カ月連続)や京都府が同+16.7%(30カ月連続)、兵庫県が同+35.7%(26カ月連続)、和歌山県が同+24.7%(28カ月連続)、鳥取県が同+48.4%(25カ月連続)、徳島県が同+16.4%(26カ月連続)、奈良県が同+0.5%(3カ月ぶり)と、7府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。前月のレポートで指摘したように、京都府では外国人宿泊者数の伸びは依然高いが、宿泊料金高騰の影響もあり、日本人宿泊者数は依然減少が続いている(図10)。

 

 

 

トピックス3

2024年7-9月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西

▶2024年7-9月期における関西各府県の訪問率をみると(図11)、大阪府40.6%が最も高く、次いで京都府29.5%、奈良県9.7%、兵庫県5.1%、和歌山県1.3%、三重県0.7%、滋賀県0.6%、徳島県0.3%、鳥取県0.3%、福井県0.2%と続く。前年同期と比較すると(表2)、大阪府(+1.1%ポイント)、奈良県(+1.1%ポイント)、福井県(+0.1%ポイント)、鳥取県(+0.1%ポイント)、徳島県(+0.1%ポイント)はいずれも上昇。一方、京都府(-0.7%ポイント)、兵庫県(-0.6%ポイント)、滋賀県(-0.3%ポイント)、三重県(-0.1%ポイント)、はそれぞれ低下した。なお、和歌山県(0.0%ポイント)は横ばいであった。

 

 

▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数を要約しておこう。推計された2024年7-9月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府が369万4,306人(前年同期比+40.4%)と最も多く、次いで京都府が268万1,492人(同+33.4%)、奈良県が88万6,546人(同+53.3%)、兵庫県が46万7,461人(同+22.0%)、和歌山県が12万1,656人(同+40.1%)、三重県が6万3,871人(同+14.9%)、滋賀県が5万324人(同13.6%)、徳島県が2万8,060人(同+88.3%)、鳥取県が2万4,966人(同+126.4%)、福井県が1万8,570人(同+103.3%)と続く。訪問者数の前年同期比をみると、滋賀県が唯一減少した。

 

 

▶表3は2024年7-9月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)を示している。関西2府4県では前年同期比+16.3%増加した。費目別にみれば、交通費(同+79.8%)、宿泊費(同+61.3%)や飲食費(同+45.7%)が大幅増加した一方、娯楽等サービス費(同5.9%)や買物代(同-1.2%)は減少した。

 

▶観光庁によれば、2024年7-9月期の関西における訪日外客消費額は4,746億円となり(表3)、前年同期比+30.6%大幅増加した(4-6月期:同+63.0%)。同期の全国の消費額*は1兆9,186億円、同+39.0%となり(4-6月期:同+73.7%)、関西は全国の伸びを幾分下回った。7-9月期は自然災害の影響もあり、訪日外客消費額は全国、関西ともに前期から減速した。なお、関西の訪日外客消費額の全国シェアは24.7%となった(24年4-6月期:25.3%)。

 

*全国の消費額については本レポートNo.64を参照。

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