ABSTRACT
- 12月9日発表の7-9月期GDP2次速報によれば、実質GDP成長率は前期比年率+1.2%となり、1次速報(同+0.9%)から小幅上方修正。4-6月期(同+2.2%)から減速したが2四半期連続のプラスとなった。同時に発表された年次推計値によれば、23年度実質GDP成長率は+0.8%から+0.7%、22年度は+1.6%から+1.4%に、いずれも下方修正された。結果、23年7-9月期以降、実質GDPは5四半期連続でコロナ禍前のピークを下回っている。日本経済の回復の基調は弱いといえよう。
- 2次速報のGDP項目をみれば、国内需要では民間住宅、民間企業設備、民間在庫変動が1次速報から小幅上方修正されたが、民間最終消費支出、公的需要が下方修正された。結果、国内需要は下方修正、純輸出は上方修正された。今回、非居住者家計の国内での直接購入(サービス輸出)が季節調整の変更から大幅上方修正された。同項目は民間最終消費支出からの控除項目であるが、サービス輸出の構成項目でもある。このため、2次速報では民間最終消費支出の引き下げ、サービス輸出の引き上げとなった。結果、小幅のGDP上方修正となった。
- 7-9月期の実質雇用者報酬は前期比+0.2%と4四半期連続のプラス(4-6月期:同+0.7%)となった。これに加えて、6月から実施されている一時的な定額税減税の影響で家計の可処分所得が大幅増加し、民間最終消費支出の押し上げに寄与した。2次速報における民間最終消費支出の下方修正はテクニカルな要因である。
- 7-9月期GDP2次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2024-26年度日本経済の見通しを改定した。実質GDP成長率を、24年度+0.3%、25年度+1.2%、26年度+1.3%と予測。前回(150回予測)から、24年度、26年度を+0.1%ポイントそれぞれ上方修正、25年度を据え置いた。25年の賃上げは前年に匹敵する伸びが実現でき、消費者物価インフレが減速する年度後半には、実質賃金の増加幅は緩やかな拡大が期待できよう。ただ純輸出については景気下押しのリスクが高まっている。このため、25-26年度は内需を中心とした緩やかな回復となろう。
- 消費者物価コア指数のインフレ率を、2024年度+2.6%、25年度+2.0%、26年度+1.6%と予測する。消費者物価インフレ率は、政策に左右される部分が大きい。足下の高止まりから24-25年度を前回予測より+0.1から+0.2%ポイント上方修正。GDPデフレータは24年度+2.4%、25年度+1.8%、26年度+1.5%となる。
- 次期米国大統領ドナルド・トランプの政策は海外経済に以下のような副次的効果をもたらす。(1)関税引き上げ(universal tariffs)は世界の輸出を削減し、グローバルサプライチェーンに再編成を迫る。(2)高率の関税は米国にインフレの加速をもたらし金融緩和サイクルを遅らせる。これは(3)各国の対ドル通貨安につながる。これらは世界経済の回復にとっては深刻なリスクとなろう。このため、2025-26年度の日本経済にとって、先行き純輸出には期待が持てない。
予測結果の概要
注:前年度比伸び率。民間需要、公的需要、民間在庫変動、公的在庫変動、外需は寄与度ベース。
原油価格はWTI、ドバイ、北海ブレント原油価格の平均値。その他は注記。シャドーは実績値。
なお、前回は2024年7-9月期GDP1次速報ベースの予測である。