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- 2024年4-6月期の関西経済は、一部に弱い動きも見られるが、内需の下支えにより緩やかに持ち直している。家計部門では、消費者センチメント、所得、雇用など力強い回復には至らないものの、持ち直しつつある。企業部門では、生産は一進一退であるが、景況感や設備投資計画は堅調である。対外部門では、財輸出は持ち直しており、インバウンド需要は顕著な回復傾向が続いている。
- 家計部門は緩やかに持ち直しているが、一部に弱い動きが見られる。大型小売店販売、センチメントなどで緩やかな持ち直しの動きとなっている。雇用環境は求人を控える動きから、弱い動きとなっている。実質賃金は依然として前年比マイナスが続いているが、底打ちの兆しが見られる。住宅市場は持ち直しつつある。
- 企業部門は、足踏みの状況が続いている。生産は自動車の認証不正問題に伴う生産停止・再開が影響し、一進一退の動きとなっている。設備投資は、製造業・非製造業ともに24年度は大幅増が計画されている。景況感は、非製造業は堅調であるが、製造業はやや弱い動きとなっている。
- 対外部門のうち、財貿易は輸出・輸入ともに持ち直している。輸出は欧米向けが低調であるが、中国向けの持ち直しを背景に2四半期連続の前年比プラス。インバウンド需要は順調に回復している。
- 公的部門は持ち直している。公共工事は請負金額、出来高とも前年比増に転じた。
- 関西の実質GRP成長率を2024年度+1.2%、25年度+1.3%と予測。1%台前半の緩やかな伸びが続く。24年度、25年度と日本経済を上回る伸びとなる見通し。前回予測に比べて、24年度は修正なし、25年度-0.1%ポイントの下方修正とした。
- 成長に対する寄与を見ると、民間需要は24年度+0.8%ポイント、25年度+1.1%ポイントと成長を牽引する。公的需要は万博関連の投資により24年度+0.3%ポイントと成長を下支えるが、25年度にはその効果が剥落する。域外需要は24年度+0.2%ポイント、25年度+2%ポイントと小幅ではあるが成長を下支える。
- 関西経済の予測結果を日本経済予測と比較すると、24年度は関西が全国を上回り、25年度はほぼ同程度となる。24年度は設備投資や公共投資など万博関連需要のほか、外需の押し上げにより全国を上回る伸びとなる。25年度は関西、全国とも民間需要が成長の牽引役となる。
- 足下でリスクが多様化しており、景気の先行きに対する不透明感が増している。海外要因としては、欧米経済・中国経済の先行き不透明感の強まりがある。国内要因としては、賃金と物価の動向のほか、株価・為替の乱高下、自然災害リスクの増大、政局の不確実性などが挙げられる。
- 今号のトピックスでは「ポスト万博を見据えた観光戦略―ブランド力と周遊化に関する分析」を取り上げる。
予測結果表
※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。
- 00’00”~01’52”: Executive summary
- 01’52”~26’54”: 第149回「景気分析と予測」<実質賃金のプラス反転により、緩やかな回復を予測>
- 26’54”~39’29”: Kansai Economic Insight Quarterly No.70<内需の下支えにより緩やかに持ち直している:リスクの多様化に伴う先行き不透明感の強まりに注意>
- 39’29”~50’05”: トピックス<ポスト万博を見据えた観光戦略>