ABSTRUCT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、6月の訪日外客総数(推計値)は313万5,600人。東南アジアなどにおいて学校休暇や祝日を含む連休があった影響もあり、過去最高値を更新した。
・目的別訪日外客総数(暫定値)では、4月は304万3,003人。うち、観光客は276万3,384人と7か月連続で200万人を超える水準となった。
・7月からアジアや欧米地域では夏季休暇が始まることもあり、訪日旅行需要の増加が期待されている。一方で、宿泊業等における人手不足や観光地へのオーバーツーリズム問題が深刻化している。急増する訪日外客の受入れ体制の整備に加え、観光地の広域・周遊化を促進するプログラムの造成が重要となろう。
【トピックス1】
・関西6月の輸出額は2カ月ぶりに前年比増加し、輸入額は3カ月連続で同増加となった。結果、関西の貿易収支は5カ月連続の黒字となり、黒字幅は小幅拡大した。
・6月の関空への訪日外客数は81万2,689人となり、開港以来、初めて80万人超の水準となった。
・5月のサービス業の活動は一進一退で推移している。第3次産業活動指数、対面型サービス業指数いずれも2カ月ぶりの前月比低下。また、観光関連指数は鉄道旅客業や旅客運送業が低下に寄与し、2カ月ぶりの同低下となった。
【トピックス2】
・4月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,562.1千人泊となった。2019年同月比+3.5%と8カ月連続の増加だが、増加幅は前月から縮小した。
・うち、日本人延べ宿泊者数は7,264.9千人泊で、2019年同月比-4.9%と8カ月ぶりの減少に転じた。一方、外国人延べ宿泊者数は4,2972千人泊で、同+21.6%と9カ月連続で増加した。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は堅調に推移している。
【トピックス3】
・2024年4-6月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆1,370億円となり、四半期調査としては過去最高額を更新。桜の開花シーズンによる訪日旅行需要の増加に加え、円安の影響もあり1人当たりの旅行支出が増加した。
・一般客1人当たり旅行支出(全目的)は23万8,722円となった。前年同期比+14.4%と3四半期連続のプラス。国・地域別では、フランスが最も高く、次いで英国、オーストラリア、イタリア、スペインと続いており、欧米豪を中心に消費単価が高い。
・4-6月期の1人1泊当たり旅行支出をみれば、2万8,085円となり、前年同期比+30.8%増加。費目別では、買物代が大幅増加したことに加え、娯楽等サービス費や宿泊費が着実に増加しているのが特徴的である。
DETAIL
ポイント
7 月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO 訪日外客統計によれば(図 1 及び表 4)、6 月の訪日外客総数(推計値)は 313 万 5,600 人であった(前年同月比+51.2%)。東南アジアなどにおいて学校休暇や祝日を含む連休があった影響もあり、単月として過去最高値を更新した。また、同月の出国日本人数は 93 万 200 人となり(同+32.3%)、前月(94 万 1,700人)から幾分減少した。結果、4-6 月期の訪日外客数は 921 万8,703 人となった(前年同期比+55.7%)。また、同期の出国日本人数は 276 万 667 人であった(同+42.4%)。
▶訪日外客数のトップ 5 を国・地域別にみると(図 2 及び表 4)、6月は韓国が 70 万 3,300 人(前年同月比+29.0%)と最多であった。次いで中国が 66 万 900 人(同+216.9%)、台湾が 57 万4,500 人(同+47.7%)、米国が 29 万 6,400 人(同+30.7%)、香港が 25 万 600 人(同+34.5%)と続く。なお、米国と台湾が過去最高値を更新した。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図 3 及び表 5)、4 月は304 万 3,003 人となった(2019 年同月比+4.0%*)。うち、観光客は 276 万 3,384 人と 7 か月連続で 200 万人を超える水準となった(同+4.7%)。商用客は 9 万 8,685 人(同-28.2%)、その他客は 18 万 934 人(同+21.6%)であった。観光客は 7 カ月連続で、その他客は 4 カ月連続でそれぞれプラスとなった。
▶観光客の TOP5 を国・地域別にみれば(表 4)、4 月は韓国が 63万 2,616 人(2019 年同月比+21.2%)と最多であった。次いで中国が 45 万 6,835 人(同-29.5%)、台湾が 44 万 6,403 人(同+15.5%)、米国が 21 万 4,378 人(同+44.8%)、香港が 18 万805 人(同-5.1%)と続く。なお、フランス、イタリアと中東地域が過去最高値を更新した。
▶先行きの訪日外客数は引き続き増加が見込まれる。7 月からアジアや欧米地域では夏季休暇が始まることもあり、訪日旅行需要の増加が期待されている。なお、1-6 月累計の訪日外客数は1,777 万 7,200 人と、コロナ禍前の水準(1,663 万 3,614 人)を上回った。これは年率に換算すると、3,555 万人となり、2025年までに 19 年超の水準(3,188 万人)とする政府目標を 24 年に達成する可能性が高い。一方で、宿泊業等における人手不足や観光地へのオーバーツーリズム問題が深刻化している。急増する訪日外客の受入れ体制の整備に加え、観光地の広域・周遊化を促進するプログラムの造成が重要となろう。
トピックス1
6 月関西の財貨・サービス貿易及び 5 月のサービス産業動向
▶関西 6 月の輸出額は前年同月比+2.0%と 2 カ月連続で増加した(前月:同+10.4%)。また、輸入額は同+1.5%と 3 カ月連続の増加(前月:同+8.1%)。関西の貿易収支は+2,904 億円と 5 カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+4.4%拡大した(前月:同+62.1%)(図 4)。結果、4-6 月期の貿易収支は+5,869 億円と 7 四半期連続の黒字だが、黒字幅は前年同期比-0.5%小幅縮小した(1-3 月期:同+191.6%)。
▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 6 月の対中輸出は前年同月比+0.2%と 4 カ月連続の増加だが、増加幅は前月(同+13.3%)から縮小した。輸出増に寄与したのは半導体等製造装置や非鉄金属等であった。また、対中輸入は同+1.3%と 3 カ月連続の増加だが、前月(同+11.7%)から小幅拡大にとどまった。輸入増に寄与したのは通信機やがん具及び遊戯用具等であった。4-6 月期の対中輸出は前年同期比+6.1%と 2 四半期連続で増加(1-3 月期:同+4.1%)。また、対中輸入は同+6.2%と 5 四半期ぶりの増加に転じた(1-3 月期:同8.8%)。
▶6 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 81 万 2,689 人となり、開港以来、初めて 80 万人超の水準となった(前月:79 万 8,812 人)(図 6)。前年同月比では+47.1%大幅増加(前月:同+59.4%)。また、日本人出国者数は 17 万 1,878 人であった(前月:17 万 5,678 人)。前年同月比では+43.9%と大幅増加(前月:同+54.7%)。結果、4-6 月期の訪日外客数は 238 万 4,361 人となり、3 四半期連続の 200 万人超となった(前年同期比+56.3%)。一方、日本人出国者数は 50 万 5,681 人と(同+58.7%)、1-3 月期(57 万6,321 人)から幾分減少した。
▶5 月のサービス業の活動は一進一退で推移している(図 7)。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2015 年平均=100)をみれば、5 月は 101.6 で前月比-0.4%低下し、2 カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+2.2%)。また、対面型サービス業指数*は 94.2 で同-2.2%低下し、2 カ月ぶりのマイナス(前月:同+7.6%)。うち、運輸業(同-4.5%、2 カ月ぶり)や宿泊業(同-5.3%、2 カ月ぶり)が低下に寄与した。
▶観光関連指数**(2015 年平均=100)は、91.4 と前月比-0.1%小幅低下し、2 カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.7%)。うち、鉄道旅客運送業(同-3.2%、2 カ月ぶり)や旅客運送業(同-2.0%、2 カ月ぶり)が低下に寄与した。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
4 月延べ宿泊者数の動向:関西 2 府 8 県
▶観光庁によれば、4 月の関西 2 府 8 県の延べ宿泊者数(全体)は11,562.1 千人泊であった(表 1)。2019 年同月比+3.5%と 8カ月連続の増加だが、増加幅は前月(同+7.9%)から縮小した。
▶日本人延べ宿泊者数は 7,264.9 千人泊となった。2019 年同月比-4.9%と 8 カ月ぶりの減少に転じた(前月:同+0.1%)(表 1 及び図 8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,504.3 千人泊、京都府 1,369.9 千人泊、兵庫県 1,142.3 千人泊、三重県 681.6 千人泊、滋賀県 371.1 千人泊、和歌山県 300.2千人泊、福井県 282.7 千人泊、鳥取県 220.6 千人泊、徳島県198.2 千人泊、奈良県 194.0 千人泊であった。2019 年同月比でみると、京都府(同-16.0%)、和歌山県(同-21.9%)や滋賀県(同-11.7%)等がマイナスとなり、日本人延べ宿泊者の減少に寄与した。
▶外国人延べ宿泊者数は 4,2972 千人泊となり、過去最高値を更新した。2019 年同月比+21.6%と 9 カ月連続のプラス。増加幅は前月(同+30.3%)から縮小したものの、8 カ月連続で 2 桁の伸びが続いている(表 1 及び図 9)。日本人延べ宿泊者が減少した一方、外国人延べ宿泊者は堅調に推移している。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 2,187.8 千人泊、京都府1,733.1 千人泊、兵庫県 142.9 千人泊、和歌山県 78.8 千人泊、奈良県 46.0 千人泊、滋賀県 41.7 千人泊、三重県 32.0 千人泊、徳島県 16.9 千人泊、福井県 9.2 千人泊、鳥取県 8.7 千人泊であった。なお、京都府と兵庫県は過去最高値を更新した。2019年同月比でみると、大阪府(同+30.1%)、京都府(同+20.3%)、兵庫県(同+10.1%)や徳島県(同+27.7%)がそれぞれプラスとなり、外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
▶関西 2 府 8 県延べ宿泊者を居住地別でみると(図 10)、県内の延べ宿泊者数は 1,372.8 千人泊(2019 年同月比-1.2%)、県外は9,855.4 千人泊(同+7.6%)であった。県内は 31 カ月ぶりのマイナスに転じた一方、県外(含む外国人)は 8 カ月連続のプラスとなった。
トピックス3
2024 年 4-6 月期訪日外国人消費の動向
▶観光庁によれば、2024 年 4-6 月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は 2 兆 1,370 億円となり(図 11)、四半期調査としては過去最高額を更新した(1-3 月期:1 兆 7,505 億円)。前年同期と比較すると+73.5%と大幅増加。なお、コロナ禍前の 19年同期比では+68.6%と 4 四半期連続の増加となった(1-3 月期:同+53.7%)。桜の開花シーズンによる訪日旅行需要の増加に加え、円安の影響もあり 1 人当たりの旅行支出が増加した。
▶訪日外国人消費のトップ 5 を国・地域別にみれば(図 12)、中国が 4,420 億円(前年同期比+187.0%)と最多であった。次いで、米国が 2,781 億円(同+57.8%)、台湾が 2,639 億円(同+51.1%)、韓国が 2,232 億円(同+53.0%)、香港が 1,743 億円(同+85.8%)と続く。
▶一般客 1 人当たり旅行支出(全目的)は 23 万 8,722 円となった。前年同期比+14.4%と 3 四半期連続のプラス(1-3 月期:同+0.0%)。国・地域別にみれば(表 2)、フランスが 41 万 7,536円(同+43.8%)と最も高い。次いで、英国が 41 万 6,647 円(同+97.5%)、オーストラリアが 39 万 9,862 円(同+20.3%)、イタリアが 38 万 2,448 円(同+23.8%)、スペインが 36 万 1,187円(同+20.4%)となっている。
▶4-6 月期の 1 人 1 泊当たり旅行支出をみれば(表 3)、2 万 8,085円となり、前年同期比+30.8%増加した。費目別では、宿泊費が9,322 円(同+24.3%)と最も多く、次いで買物代 8,591 円(同+56.5%)、飲食費 6,148 円(同+20.8%)、交通費 2,940 円(同+15.2%)、娯楽等サービス費 1,045 円(同+27.3%)と続いている。4-6 月期は、買物代が大幅増加したことに加え、娯楽等サービス費や宿泊費が着実に増加しているのが特徴的である。なお、平均泊数は前年同期差-1.2 泊減少した。
*トピックス 3 は四半期ごとの掲載である。
**「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。