都道府県別訪日外客数と訪問率:5月レポート No.60

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【ポイント】

  • JNTO訪日外客統計によれば、5月の訪日外客総数(推計値)は304万100人。シンガポールやインド等における学校休暇や中国の大型連休があったことが影響し、3カ月連続で300万人超の水準となった。
  • 目的別訪日外客総数(暫定値)では、3月は308万1,781人。うち、観光客は277万1,105人と6カ月連続で200万人を超えており、単月として過去最高を更新した。
  • 先行きの訪日外客については引き続き堅調に推移すると見込まれる。一方で、訪日外客が一部の地域に集中する結果、オーバーツーリズムが深刻化しつつある。今後、地域の観光資源を一層磨き上げ、訪日外客へ訴求することで、広域観光を促進していくかが重要となろう。

 

【トピックス1】

  • 関西5月の輸出額は前年同月比+10.4%と2カ月ぶりの増加。また、輸入額は同+8.1%と2カ月連続の増加となった。輸出の伸びが輸入のそれを上回った結果、関西の貿易収支は4カ月連続の黒字となり、黒字幅は拡大した。
  • 5月の関空への訪日外客数は79万8,812人となり、過去最高値を更新。全国と同様に好調を維持している。
  • 4月のサービス業の活動は一進一退で推移している。第3次産業活動指数、対面型サービス業指数いずれも2カ月ぶりの前月比上昇。また、観光関連指数は旅行業や旅客運送業が上昇に寄与し、2カ月ぶりの同上昇となった。

 

【トピックス2】

  • 3月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,659.5千人泊で、2019年同月比+7.9%と7カ月連続の増加となった。
  • うち、日本人延べ宿泊者数は8,039.3千人泊で、2019年同月比+0.1%と7カ月連続の増加だが、増加は小幅にとどまった。一方、外国人延べ宿泊者数は3,602.2千人泊で、同+30.3%と8カ月連続で増加し、増加幅は拡大。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は堅調に推移している。

 

【トピックス3】

  • 2024年1-3月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府36.2%が最も高く、次いで京都府27.3%、奈良県7.7%、兵庫県4.9%、三重県0.8%、和歌山県0.8%、滋賀県0.4%、鳥取県0.2%、福井県0.1%、徳島県0.1%と続く。
  • 2024年1-3月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は19年同期比+13.2%増加。費目別では、飲宿泊費や娯楽等サービス費が大幅増加した一方、買物代は減少した。訪日外客の消費行動はモノ消費からコト消費へ着実に移りつつある。
  • 関西2府4県の訪日外客数と消費単価を用いて、2024年10-12月期の関西における消費額を推計した。結果、訪日外客消費額は3,827億9,198万円となり、19年同期比では+32.2%とコロナ禍前を大きく回復した。

DETAIL

ポイント

6 月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO 訪日外客統計によれば(図 1 及び表 4)、5 月の訪日外客総数(推計値)は 304 万 100 人であった。シンガポールやインド等における学校休暇や中国の大型連休があったことが影響し、3カ月連続で 300万人超の水準となった(前月:304 万 2,900人)。
水際対策が撤廃された前年同月と比べると+60.1%大幅増加した(前月:同+56.1%)。なお、19 年同月比では+9.6%と 4 カ月連続のプラスとなっている。また、同月の出国日本人数は 94 万1,700 人であった(前年同月比+39.4%)。なお、19 年同月比では-34.5%と前月(同-46.7%)からマイナス幅は縮小。5 月はゴールデンウィーク期間があったため、海外旅行需要が増加した影響が表れたようである。

▶訪日外客数のトップ 5 を国・地域別にみると(図 2 及び表 4)、5月は韓国が 73 万 8,800 人(前年同月比+43.3%)と最多であった。次いで中国が 54 万 5,400 人(同+305.5%)、台湾が 46 万 6,600 人(同+53.6%)、米国が 24 万 7,000 人(同+34.7%)、香港が 21 万 7,500 人(同+40.9%)と続く。なお、5 月はインドが単月として過去最高値を更新した。

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図 3 及び表 5)、3 月は 308 万 1,781 人となった(2019 年同月比+11.7%)。うち、観光客は 277 万 1,105 人と 6 カ月連続で 200 万人を超えており、単月として過去最高を更新した(同+14.9%)。商用客は 10万 4,919 人(同-35.7%)、その他客は 20 万 5,757 人(同+11.1%)であった。19 年同月比でみると、観光客は 6 カ月連続、その他客は 3 カ月連続でそれぞれプラス。一方、商用客は依然低調である。

 

▶観光客の TOP5 を国・地域別にみれば(表 5)、3 月は韓国が 62万 8,059 人(2019 年同月比+18.2%)と最多であった。次いで台湾が 46 万 8,420 人(同+22.8%)、中国が 35 万 9,995 人(同-38.7%)、米国が 27 万 2,462 人(同+84.7%)、香港が 22 万6,880 人(同+88.0%)と続く。

▶先行きの訪日外客については引き続き堅調に推移すると見込まれる。6 月以降、欧米を中心に長期の夏季休暇シーズンとなることに加え、足下で円安が続いていることもあり、訪日需要が一層高まると考えられる。一方で、訪日外客が一部の地域に集中する結果、オーバーツーリズムが深刻化しつつある。今後、地域の観光資源を一層磨き上げ、訪日外客へ訴求することで、広域観光を促進していくかが重要となろう。

トピックス1

5 月関西の財貨・サービス貿易及び 4 月のサービス産業動向

▶関西 5 月の輸出額は前年同月比+10.4%となった(図 4)。好調な対中国輸出に加え、対欧米輸出が増加に転じたことで、輸出は 2 カ月ぶりに増加(前月:同-1.9%)。また、輸入額は同+8.1%と 2 カ月連続の増加となった(前月:同+1.5%)。輸出の伸びが輸入のそれを上回った結果、関西の貿易収支は+1,093 億円と 4カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+62.3%拡大した(前月:同-23.0%)。

▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 5 月の対中輸出は前年同月比+13.3%と 3 カ月連続で増加し、前月(同+5.5%)から増加幅は拡大した。輸出増に寄与したのは半導体等製造装置や非鉄金属等であった。また、対中輸入は同+11.7%と 2 カ月連続の増加(前月:同+5.8%)。輸入増に寄与したのは通信機や衣類及び同附属品等であった。

▶5 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 79 万 8,812人となり、過去最高値を更新した(前月:77 万 2,860 人)(図 6)。前年同月比では+59.4%と大幅増加した(前月:同+63.8%)。全国と同様に外国人入国者数は好調に推移している。また、同月の日本人出国者数は 17 万 5,678 人であった(同+54.7%)。なお、2019 年同月比では-38.0%と、前月(同-53.2%)から減少幅は縮小。外国人入国者数に比して日本人出国者数は依然低調である。

▶4 月のサービス業の活動は一進一退で推移している(図 7)。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2015 年平均=100)をみれば、4 月は 101.9 で前月比+1.9%上昇し、2 カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-2.3%)。4 月を 1-3 月平均と比較すれば、+1.0%上昇した(1-3 月期:前期比0.1%)。また、対面型サービス業指数*は 95.8 で同+5.9%上昇し、2 カ月ぶりのプラス(前月:同-8.3%)。うち、運輸業(同+11.0%、2 カ月ぶり)とその他の生活関連サービス業(同+12.4%、2 カ月ぶり)が上昇に寄与した。結果、4月の対面型サービス業指数の 1-3 月平均比は+1.0%上昇した(1-3 月期:同-1.6%)。

▶観光関連指数**(2015 年平均=100)は、90.4 と前月比+0.4%小幅上昇し、2 カ月ぶりのプラス(前月:同-6.9%)。うち、旅行業(同+50.5%、2 カ月ぶり)、旅客運送業(同+1.6%、2 カ月ぶり)等が上昇に寄与した。4 月の観光関連指数を 1-3 月平均と比較すると、-3.0%低下した(1-3 月期:同+1.4%)。

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

 

トピックス 2

3 月延べ宿泊者数の動向:関西 2 府 8 県

▶観光庁によれば、3 月の関西 2 府 8 県の延べ宿泊者数(全体)は 11,659.5 千人泊であった(表 1)。2019 年同月比では+7.9%と 7 カ月連続で増加した(前月:同+7.9%)。

▶日本人延べ宿泊者数は 8,039.3 千人泊となった。2019 年同月比+0.1%と 7 カ月連続の増加だが、増加幅は小幅にとどまった(前月:同+5.3%)(表 1 及び図 8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 2,735.3 千人泊、京都府 1,479.2千人泊、兵庫県 1,428.1 千人泊、三重県 724.5 千人泊、和歌山県 396.0 千人泊、滋賀県 357.6 千人泊、福井県 282.3 千人泊、鳥取県 229.0 千人泊、徳島県 207.1 千人泊、奈良県 200.3千人泊であった。2019 年同月比でみると、兵庫県(同+18.6%)、大阪府(同+4.1%)、奈良県(同+8.1%)や鳥取県(同+5.7%)はプラスとなった。

▶外国人延べ宿泊者数は 3,602.2 千人泊となった。2019 年同月比+30.3%と 8 カ月連続のプラス(表 1 及び図 9)。増加幅は前月(同+14.5%)から拡大し、7 カ月連続で 2 桁の伸びが続いている。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は堅調に推移している。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,857.9 千人泊、京都府 1,427.7 千人泊、兵庫県 130.9 千人泊、滋賀県 57.2 千人泊、和歌山県 56.9 千人泊、奈良県 35.7千人泊、徳島県 19.6 千人泊、三重県 17.3 千人泊、鳥取県 10.3千人泊、福井県 6.7 千人泊であった。なお、徳島県の外国人宿泊者数は単月として過去最高を更新した。2019 年同月比でみると、京都府(同+44.4%)、大阪府(同+28.1%)がいずれも 9カ月連続で増加。また、滋賀県(同+39.6%)、和歌山県(同+1.0%)、福井県(同+12.6%)や徳島県(同+63.3%)でもプラスとなった。

▶関西 2 府 8 県延べ宿泊者を居住地別でみると(図 10)、県内の延べ宿泊者数は 1,450.2 千人泊、県外は 9,869.9 千人泊であった。2019 年同月比では県内は同+8.8%と 30 カ月連続のプラスとなり、増加幅は前月(同+6.6%)から拡大。また、県外(含む外国人)は同+10.4%と、7 カ月連続のプラス(前月:同+10.0%)。

トピックス 3

2024 年 1-3 月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西

▶2024 年 1-3 月期における関西各府県の訪問率をみると(図11)、大阪府 36.2%が最も高く、次いで京都府 27.3%、奈良県7.7%、兵庫県 4.9%、三重県 0.8%、和歌山県 0.8%、滋賀県0.4%、鳥取県 0.2%、福井県 0.1%、徳島県 0.1%と続く。2019年同期と比較すると、京都府(+4.1%ポイント)、大阪府(+1.1%ポイント)、三重県(+0.2%ポイント)や和歌山県(+0.1%ポイント)はいずれも上昇。一方、奈良県(-1.1%ポイント)、兵庫県(-0.7%ポイント)、鳥取県(-0.3%ポイント)、滋賀県(-0.2%ポイント)、福井県(-0.1%ポイント)、徳島県(-0.1%ポイント)ではそれぞれ低下した。

▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数を要約しておこう。推計された 2024 年 1-3月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府が309万7,820人(2019 年同期比+9.7%)と最も多く、次いで京都府が 233 万 8,336 人(同+25.1%)、奈良県が 66 万 1,485 人(同-6.8%)、兵庫県が 42 万 358 人(同-7.1%)、三重県が 6 万 8,177 人(同+32.0%)、和歌山県が 6 万 5,712 人(同+20.7%)、滋賀県が 3 万 6,288 人(同-25.9%)、鳥取県が 1 万 6,544人(同-56.6%)、福井県が 1 万 1,708 人(同-30.1%)、徳島県が 1 万 1,203 人(同-36.5%)と続く。19 年同期比では大阪府、京都府、和歌山県と三重県がプラスとなった。

▶表 3 は 2024 年 1-3 月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者 1 人 1 回当たりの旅行消費金額)を示している。関西 2 府 4 県では 19 年同期比+13.2%増加した。費目別にみれば、娯楽等サービス費(同+75.3%)や宿泊費(同+73.3%)が大幅増加した一方、買物代は同-16.6%減少した。訪日外客の消費行動はモノ消費からコト消費へ着実に移りつつある。

▶なお、関西 2 府 4 県の訪日外客数(表 2)と消費単価(表 3)を用いて、2024 年 1-3 月期の関西における消費額を推計した。結果、訪日外客消費額は 3,827 億 9,198 万円となった。19 年同期比では+32.2%と、コロナ禍前の水準を大きく上回った。なお、同期の全国の消費額は 1 兆 7,700 億円、同+53.7%となっており、関西は全国の伸びを下回った。

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