ABSTRACT
2つの輸出により足下景気は堅調も先行きに黄信号-自然災害と米中貿易摩擦高進で高まる景気減速リスク-
1.2018年7-9月期実質GDP成長率は前期比-0.3%(年率換算-1.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。実質GDP成長率に対する寄与度は国内需要-0.8%ポイント、純輸出-0.3%ポイントとともにマイナスとなった。国内需要は相次ぐ自然災害の影響で伸び悩み、民間最終消費支出が-0.3%ポイント、民間企業設備が-0.1%ポイントと成長を押し下げた。また輸出は関空の一時閉鎖の影響もあり、-1.3%ポイントと5四半期ぶりのマイナスとなった。
2.2018年7-9月期の関西経済は、一部で自然災害の影響が見られたが、おおむね堅調を維持した。家計部門では、所得や雇用は改善が続いているが、センチメントや大型小売店販売は低調だった。企業部門では、景況感は堅調に推移し、設備投資計画は旺盛である一方、生産は弱い動きとなった。対外部門は、関空一時閉鎖により輸出入や外国人客数は一時的に前年割れとなったが、インバウンド需要は前年を上回る拡大を維持した。公的部門は弱い動きである。
3.関西の実質GRP成長率を2018年度+1.8%、19年度+0.7%、20年度+0.5%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は修正なし、19年度・20年度ともに-0.3%ポイントの下方修正である。
4.全国の成長率と比較すると、18年度は、所得環境の全国を上回る高い伸びやインバウンド需要の加速により、全国より高い成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速し、全国並みの成長率となる。2020年度には、全国に比して関西では内需の貢献が小幅となり、日本予測の成長率が関西を若干上回る。
5.標準予測に対して、海外・国内とも様々なリスクが懸念される。海外リスクとしては、世界経済全体の鈍化が指摘できる。特に中国経済にスローダウンの兆しが見えつつある中で、米中間の貿易戦争の高進は、関西経済にも影響が波及するおそれがある。国内リスクとしては、消費増税後の民間需要の停滞がある。一方で、2025年の万博開催が大阪・関西に決定したことは、先行きの明るい材料となろう。
6.トピックスとして、自然災害の中でも、9月の台風21号による影響について検討した。9月の関空一時閉鎖によりインバウンド関連では317億円、財輸出関連では281億円となり、合計では約598億円の経済的損失が発生した見込み。これは輸出の0.3%、関西GRPの0.1%に相当する。関西に対する風評被害が履歴効果として蓄積しないよう、迅速かつ適切な情報発信が必要である。また、関西2府4県のGDP早期推計の改定結果および超短期予測の結果が示されている。
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