最低賃金をどう決定するか
-経済実態、生活圏を反映した水準決定とエリア設定を-

Trend Watch No.63

洞察・意見 » トレンドウォッチ

ABSTRACT

新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機は、2020年度の最低賃金改定の議論に大きな影響を与えている。本稿では、最低賃金引上げについての近年の動向や議論の論点(国際比較、生産性との関係、全国一元化)を整理した上で、制度の見直し提案として、①エビデンスに基づく経済実態に即した引上げ額の検討、②都道府県単位のエリア設定を見直し、同一都道府県でも経済実態に即した区分けや都府県をまたがる生活圏としての一体化を反映した水準決定、③ポリシーミックスによる引上げが可能となる環境整備、という3点を示している。

 

  1. 近年、最低賃⾦の引上げが重要な政策テーマになっている。経済の好循環の実現という政府⽅針の下、最低賃⾦が⼤幅に引上げられてきている(4年連続で3%超えの引上げ)。その結果、最低賃⾦改定後に賃⾦額を引上げる必要がある労働者の割合である「影響率」が右肩上がりで上昇しており、労働分配率が⾼い中⼩企業の賃⾦⽀払余⼒は乏しくなってきている。
  2. 近年の最低賃⾦の⼤幅な引上げは、経済環境の良さに⽀えられてきたといえるが、新型コロナウイルスの感染拡⼤が経済環境を⼤きく変えている。未曾有の危機的な経済情勢の中で、2020 年度の最低賃⾦改定をどうするかは重要であるが、危機時であるからこそ、従来の議論の延⻑から離れ、最低賃⾦の⽔準が本来どうあるべきか、何を重視して制度設計すべきかといった「そもそも論」に⽴ち返った議論が必要である。
  3. 最低賃⾦引き上げ論は、⽇本の⽔準が国際的に低位にある、⽣産性向上の政策として有効ということを理由にあげる。だが、購買⼒平価での⽐較では必ずしも低位でなく、各国の労働市場などの違いを考慮すると、国際⽐較をあまり重視すべきでない。最低賃⾦引上げと⽣産性向上との関係性は実証分析からは確認されていない。最低賃⾦の全国⼀元化は、企業が地⽅への⽴地や投資を控えたり、海外シフトを加速する懸念があり、慎重に考えるべきである。
  4. 最低賃⾦の決定にあたり望ましい⽅向は 3 点である。第1に、専⾨家が調査・分析を⾏い、エビデンスに基づく経済実態に即した引上げ額の検討が必要である。第2に、都道府県単位のエリア設定の⾒直しが必要である。都府県をまたがる⽣活圏は同⼀⽔準が適当であり、同⼀都道府県内でも経済実態に即した区分けも必要と考える。第3に、最低賃⾦の継続的な引上げが可能となるよう、企業には⽣産性向上⽀援、労働者には就業調整しない働き⽅の実現や教育訓練プログラムの提供充実、勤労所得税額控除導⼊などのセーフティーネット強化といったポリシーミックスでの環境整備を関係省庁も連携し並⾏して進める必要がある。

DETAIL

1.最低賃⾦引上げにかかる動向

最低賃⾦制度は、最低賃⾦法(1959 年制定)に基づき、国が賃⾦の最低限度を定め、使⽤者はその⾦額以上の賃⾦を雇⽤者に⽀払うことを義務づけるものである。最低賃⾦は、全国⼀律でなく、地域別(都道府県ごと)に定められる。その審議機関として、労働者・使⽤者・公益を代表する委員が同数ずつ参加する審議会が中央及び都道府県労働局ごとに置かれている。

 

例年、中央最低賃⾦審議会が、厚⽣労働⼤⾂の諮問を受けて、毎年 7⽉ごろに地域別最低賃⾦の全体的整合性を図るための「⽬安」を作成し、それを参考にしながら、地域の実情も踏まえて、各地⽅最低賃⾦審議会が審議を⾏う。審議会の意⾒を聴いて都道府県労働局⻑が各年度の最低賃⾦を毎年8⽉ごろに決定し、毎年10⽉ごろに効⼒が⽣じる。

近年、最低賃⾦の引上げが重要な政策テーマになっている。相対的に賃⾦⽔準が低い⾮正規雇⽤者が増加する中で、経済の好循環の実現という政府の⽅針の下、最低賃⾦が⼤幅に引上げられてきている。図表1に⽰すとおり、2016年度以降は3%超えの引上げ率が4年連続で続いている。

 

政府は2016年度の「経済財政運営の基本⽅針」(⾻太の⽅針)で、最低賃⾦について、「年率3%程度を⽬途として、名⽬GDPの成⻑率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が 1,000 円となることを⽬指す」との⽅針を打ち出した。2019年度の⾻太の⽅針では、さらに「景気や物価動向を⾒つつ、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均が 1,000 円になることを⽬指す」とした。2019 年度は、現⾏⽅式で最⾼の上げ幅で、全国加重平均が 901 円となり、900 円を超えた。今後も3%程度の引上げが続くと仮定すると、2023 年度に政府⽬標の1,000 円を達成できることになる(図表1)。

 

 

最低賃⾦引上げの影響は年々増している。どれくらいの労働者に影響を与えているかは、厚⽣労働省が「最低賃⾦に関する基礎調査」を基にまとめている「影響率」という指標でみることができる。影響率とは、最低賃⾦を改定した後に、改定後の最低賃⾦を下回ることとなる労働者の割合である。最低賃⾦が引上げられると、法律上、賃⾦額を引き上げる必要がある労働者の割合を意味する。また、「未満率」という指標があり、最低賃⾦を改定する前に、最低賃⾦を下回っている労働者の割合である。当局による履⾏確保の監督指導が強化されているが、最低賃⾦を下回る時給で働く労働者も⼀定数存在する。最低賃⾦の影響率と未満率の推移を⽰したのが図表2である。

 

 

近年の最低賃⾦の⼤幅な引上げにより、影響率は2012年度の4.9%から2019年度は16.3%にまで上昇した。影響率の上昇は、最低賃⾦近傍で働く労働者が年々増加しているということであり、中⼩企業の労働分配率が⾼いことを考慮すると、中⼩企業の賃⾦⽀払余⼒は次第に乏しくなってきているとみてとれる。未満率が右肩上がりで上昇せず、1%から2%程度で横ばいに推移していることは、多くの企業が影響率の範囲に該当する雇⽤者の賃上げに応じていることとなるが、中⼩企業のコスト負担が近年は⼤幅に増加していることになる。

 

近年の最低賃⾦の⼤幅な引上げは、緩やかな景気回復という経済環境の良さに⽀えられてきたといえるが、2020年に⼊り、新型コロナウイルス感染拡⼤が経済環境を⼤きく変えている。特に、中⼩企業は、コロナショック以前から⼈⼝減少・市場縮⼩や後継者難の課題に直⾯していた上に、今は事業の存続と雇⽤の維持でかってない苦境に直⾯している。

 

2.コロナショックが最低賃⾦引上げ論議に影響

 

コロナショックによる危機的な経済情勢は、2020年度の最低賃⾦をどう決定するかの議論にも⼤きな影響を及ぼしている。図表 3 に⽰すとおり、最低賃⾦を改定した場合に賃⾦を引上げなければならない労働者が多い業種は、新型コロナウイルスの感染拡⼤による影響を強く受けている業種と⼀致しているからである。

 

 

政府は、最低賃⾦引上げの⽅針は堅持するとしつつも、コロナ禍の厳しい状況を踏まえて、今は官⺠を挙げて雇⽤を守ることが最優先課題としている。経済界からは、未曾有の危機の中で引上げ凍結も含めて慎重審議を求める意⾒が出ている。労働側は、セーフティーネット強化とデフレ脱却のためにも引上げのモメンタムを維持すべきと求めている。こうした中で、政府は6⽉26⽇に中央最低賃⾦審議会に 2020 年度の⽬安の諮問を⾏い、7 ⽉下旬のとりまとめに向けて審議が開始された。過去の危機時には、中央最低賃⾦審議会は「⽬安額を⽰さず」または「0円」との⽬安を⽰したことがあるが、どう決定されるかは⼤いに注⽬されるところである。

 

しかし、2020年度の最低賃⾦改定にだけ議論はとどまってはならないのではないか。最低賃⾦の現⾏⽅式が抱える課題は今も変わらない。未曾有の危機的な経済情勢にあるからこそ、最低賃⾦について、従来の議論の延⻑から離れ、最低賃⾦額の⽔準が本来どうあるべきか、何を重視して制度設計すべきかといった「そもそも論」に⽴ち返った議論も開始することが必要と考える。

 

3.最低賃⾦引上げ論の論点

 

最低賃⾦引上げを求める論調には様々なものがあるが、⼤きくまとめると3点になる。順に論点を整理しコメントしたい。

 

(1)⽇本の最低賃⾦は国際的に低位か

⽇本の最低賃⾦⽔準が他の先進国に⽐べて低位にあることを理由に⼤幅な引上げを求める意⾒がある。経済財政諮問会議(2019年5⽉14⽇)の有識者議員提出資料では、市場為替レートで⽶ドル換算した国際⽐較により⽇本の低さを指摘している。OECD統計で最低賃⾦の国際⽐較のデータがとれる。各国の物価⽔準に違いがあるので、市場為替レート換算での単純⽐較はできない。

 

そこで、より実態に近い購買⼒平価で⽶ドル換算したOECD加盟諸国の最低賃⾦額を⽰したものが図表4である。

 

購買⼒平価ベースでみると、⽇本は、オーストラリア、フランス、ドイツ、英国、カナダを下回るが、OECD加盟国平均や韓国、⽶国、スペインを上回る。

 

⼀⽅、各国の平均賃⾦の中央値あるいは平均値との対⽐で国際⽐較すると、図表5のとおりである。⽇本の⽔準は労働者の平均賃⾦(中央値)の約0.4倍で、他の先進国に⽐べて低位に位置する。

 

国際⽐較については、⽤いる尺度によって位置が変動する。また、各国の最低賃⾦制度や労働市場の成り⽴ち、雇⽤形態も違うので、国際⽐較データでもって⽇本の最低賃⾦は他の先進国に⽐べて低位とは決めつけられない。いずれにしても、国際⽐較をあまり重視すべきでないだろう。

 

(2)最低賃⾦引上げは経済政策として有効か

近年、最低賃⾦引上げが経済政策として有効という主張がある。最低賃⾦引上げがパートタイム労働者の平均賃⾦を押し上げ、可処分所得増加を通じて消費活性化に寄与することには⼤⽅異論ないことであり、望ましいことといえる。しかし、⼈⼝減少社会の中で⽣産性向上は⽇本経済の最重要課題の⼀つであるが、果たして最低賃⾦引上げが⽣産性向上に寄与するものなのかは、実効性いかんや副次的な影響もあって、議論の余地があると思われる。

企業の⽣産性向上は、設備投資や新たな技術の活⽤、働き⽅改⾰などを通じて実現され、その結果、賃⾦⽀払余⼒が拡⼤し、最低賃⾦を含む賃⾦⽔準が押し上がるというのが本筋と考えられる。法的拘束⼒ある最低賃⾦を引上げて、企業の⽣産性向上努⼒を強制するのは、本筋とは逆の⽅向での実現をめざすものといえる。

 

最近の実証分析結果では、過去の最低賃⾦引上げについて、個々の企業の⽣産性を⾼めるという明確なエビデンスは得られなかったと結論づけている。

 

マクロの統計をみると、先進国での労働⽣産性増加幅と最低賃⾦引上げ率に強い関係性は⾒られない(図表6)。⽇本においても、近年の労働⽣産性増加率と最低賃⾦引上げ率の関係性も同様に⾒てとれない(図表7)。

 

今後のさらなる実証分析の蓄積が期待されるが、企業の⽣産性向上は、最低賃⾦の⼤幅な引上げによる強制よりも、設備投資や経営統合などの企業の⽣産性向上努⼒に対し、税制・⾦融・財政上の⽀援措置を講じることの⽅が適切であると考える。

 

(3)最低賃⾦は全国で⼀元化すべきか

2019 年より、地域間で異なる最低賃⾦の全国⼀元化を進め、都市部と地⽅部の賃⾦格差を解消すべきとの議論が活発化している。国会議員の推進議員連盟も発⾜し、政治の後押しも出てきている。この議論は、⼤都市圏に⽐べて⽔準が低い地域の最低賃⾦を⼤都市圏並みにすることによって、労働者が⼤都市から地⽅へ移動することを狙っているようである。特に、⼀極集中の東京から地⽅への分散、地⽅創⽣という効果を期待しているとみられる。

 

仮に、最低賃⾦を全国で最も⾼い東京都(1,013円)の⽔準で全国⼀元化すると、地⽅の最低賃⾦は⼤幅な引上げとなる。最も低い県(790円)で、従業員⼀⼈当たり1カ⽉約1.8万円以上の⼈件費の負担増(パートタイム労働者、⽉間の所定内労働時間を80時間として計算)となる。地⽅の中⼩企業の経営に⼤きな影響を及ぼし、経営基盤の弱いところは経営不振に陥り、事業継続が困難になる可能性があろう。

 

⼀⽅、広域・全国に展開する企業からみれば、⽣産性に⾒合わない限り、⼈件費が増加する地⽅への事業所の⽴地や投資を控えたり、⼈件費のより安い海外へのシフトを加速するという可能性がありえる。

したがって、賃⾦格差是正や地⽅創⽣ということは正当であるが、それを最低賃⾦の全国⼀元化で達成しようとするのは、慎重に考えるべきではないだろうか。

 

4.最低賃⾦をどう決定するか︓望ましい⽅向

(1)経済実態に即した明確な根拠のもとでの決定

最低賃⾦の適切な引上げは、パートタイム労働者を中⼼に賃⾦⽔準を底上げし、消費の活性化はもとより、働き⼿の拡⼤や賃⾦格差是正にも寄与することから、重要な政策課題といえる。 しかしながら、近年の最低賃⾦の引上げの加速は、その影響を強く受ける中⼩企業において、雇⽤の減少や設備投資の抑制などにつながることの懸念が経済界で⾼まっている。

 

最低賃⾦は、各地域における①労働者の⽣計費、②労働者の賃⾦、③通常の事業の賃⾦⽀払能⼒を総合的に考慮して定めるとされている(最低賃⾦法第9条)。ところが、近年の引上げについては、法の決定原則よりも、⾻太の⽅針などの政策意図を重視した決定になっているようにみえる。中央最低賃⾦審議会から⽰される⽬安額の根拠も明確ではない。

2016 年以降、4年連続で3%強の最低賃⾦引上げが⾏われているが、企業収益拡⼤や⼈⼿不⾜などの経済環境に⽀えられ、完全失業率の低下など、マクロ的にマイナス影響は出ていない。しかし、今後も最低賃⾦の⼤幅な引上げが続けられた場合、何らかの閾値のようなものがあって、いずれ、雇⽤の減少、事業の縮⼩・撤退、ひいては廃業といったマイナス効果が⽬に⾒えて現れる可能性は否定できないだろう。

 

OECD加盟国について、各国の完全失業率と最低賃⾦の労働者平均賃⾦に対する⽐率を散布図(図表8)にすると、概ね右肩上がりの関係性があることがわかる。これだけで結論するのは早計であるが、最低賃⾦を平均賃⾦の伸びを上回って引き上げていくと、雇⽤にマイナス影響が⽣じる可能性がありうるとみられる。

 

 

実際、韓国において、2020年の最低賃⾦1万ウォンの公約を掲げる現政権の下、特に2018年と19年の2年は急激なペースで引上げられ、雇⽤・経済に⼤きな悪影響を及ぼした例もある10。 ⽇本においては、潜在成⻑率や物価上昇率が低いことから、そうした経済実態に即した緩やかなペースでの最低賃⾦引上げが現実的かつ望ましいだろう。

 

また、労働市場・賃⾦の状況・企業経営の状況などに関するエビデンスにもとづく⽬安額の明確な設定が必要と考える。このため、中央最低賃⾦審議会の下に、最低賃⾦の理論・実証分析に詳しい経済学者や研究者で構成する専⾨委員会11を設置し(その代表者が審議会の公益委員を兼務)、経済実態などの全国的な調査・分析、雇⽤や企業経営への影響に関する研究を継続的に⾏い、エビデンスにもとづいた、明確な根拠のある引上げの⽬安の設定につなげていく必要がある。

 

(2)⽣活圏や経済実態を重視したエリア設定

現⾏の地域別最低賃⾦のエリア設定は、都道府県単位で定められている。これまで、都道府県ごとの最低賃⾦⽔準の格差について問題を指摘する意⾒はよくあったが、そもそも、エリア設定が都道府県単位で良いのか、⾒直しが必要ではないかと問題提起したい。

 

都道府県をまたがっても、同じ⽣活圏の地域は最低賃⾦の⽔準が同じというのが⾃然だろう。例えば、関⻄の京阪神地域でいえば、⼤阪府964円、京都府909円、兵庫県899円という差があり、⼤阪府側へ⼈⼿が流れる、あるいは、⼤阪府の時給に引っ張られるという影響がある。

 

また、同じ都道府県でも、南北などで経済実態に差がある場合、全域が同じ最低賃⾦⽔準で良いのかという問題もある。経済実態と乖離した格差は、労働⼒⼈⼝流失、地場産業の衰退につながる懸念がある。

最低賃⾦決定のエリア設定による労働⼒⼈⼝移動などの影響に関する実証分析は、先⾏研究の蓄積がほとんどなく今後の研究課題である。簡易な⼿法によるが、居住地を変えないまでも就業場所の移動はあるので、都道府県別の就業者数の増加率と最低賃⾦⽔準の関係性をみたのが、図表9である。最低賃⾦が800円を超える⽔準になると、就業者数が増える(他地域へ移動)という関係性が強くあることがわかる(もちろん、就業者数増減は景気変動や産業構造の変化も関係するが)。

 

 

したがって、最低賃⾦の対象エリアについては、現⾏の都道府県単位から、経済実態や⽣活圏を重視したエリア設定に⾒直す必要があると考える。例えば、市町村の消費・給与・企業経営関係の統計や通勤・交通流動などを基に、地域の経済⼒がどの範囲でなら⼤きな差がないか、同じ⽣活圏としてどの範囲でくくれるかを判断してエリア分けを⾏い、エリアごとの最低賃⾦⽔準を検討するのが良いと考える。同⼀都道府県内での区分けは2〜3くらい、都府県をまたがる⽣活圏は⼤都市圏域でエリア設定されるのが適当だろう。

 

(3)ポリシーミックスでの環境整備

最低賃⾦の継続的な引上げが可能となるよう、ポリシーミックスでの環境整備を並⾏して進める必要がある。企業に対しては、賃⾦⽀払能⼒を⾼められる⽣産性の向上を促す⽀援策(設備投資、新技術導⼊、働き⽅改⾰への政策⽀援)が重要である。労働者に対しては、就業調整をしない働き⽅が可能な税制・社会保障の制度改⾰、労働の質を⾼める教育訓練プログラム提供の充実(失業なき労働移動にも寄与)、そして、雇⽤が不安定化あるいは失業した場合のセーフティーネット強化(マイナンバーを活⽤した勤労所得税額控除13の導⼊など)が重要である。

 

最低賃⾦の引上げの重要性を踏まえ、所管の厚⽣労働省での⾒直しの検討・実⾏はもちろんのこと、ポリシーミックスにかかわる関係省庁も連携した政府⼀体での取り組みを強く期待したい。

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