ABSTRACT
【ポイント】
- JNTO訪日外客統計によれば、8月の訪日外客総数(推計値ベース)は東京パラリンピックの選手や関係者が入国したこともあり25,900人であった。21年前半の月平均(16,049人)を2カ月連続で上回ったものの、前々年同月比では-99.0%となっている。
- JNTO訪日外客統計を目的別にみれば、6月の総数(暫定値ベース)は9,251人であった。うち、観光客は1,657人、商用客は1,121人、その他客は6,473人であった。
【トピックス1】
- 関西8月の輸出は6カ月連続で前年比増加。品目別にみれば、アジア向けを中心に半導体等電子部品の輸出額が8月として過去最高額。また、対米、対EU向けでは住宅建設やインフラ整備に用いられる建設用・鉱山用機械が好調であった。
- 8月の関西国際空港への2,476人となった。前月から減少し、21年前半の月平均(3,722人)を依然下回る状況が続いている。
- 7月のサービス業はCOVID-19感染再拡大による緊急事態宣言で悪化したものの、一部業種では改善も見られた。7月の第3次産業活動指数は2カ月ぶりの前月比マイナス。4度目の緊急事態宣言が発令され、小売業などを中心に悪影響した。
- 第3次産業活動指数のうち、対面型サービス業指数、観光関連指数はいずれも2カ月連続の前月比プラス。東京オリンピックの開催等の影響もあり宿泊業やその他生活関連サービス業等が改善した。
【トピックス2】
- 6月の関西2府8県の延べ宿泊者数は3,297.4千人泊で、伸びはコロナ禍の影響がない前々年同月(2019年6月)比-65.7%と前月の減少幅(同-72.2%)から縮小。京都府、大阪府、兵庫県に発令された3度目の緊急事態宣言が6月20日に解除されたが、依然弱含みでの推移が続いている。
- うち日本人延べ宿泊者数は3,264.4千人泊で伸びは前々年同月比-51.5%と前月から減少幅は縮小。外国人延べ宿泊者数は、33.0千人泊で伸びは同-98.9%となった。
- 関西の延べ宿泊者数を宿泊者の居住地別でみると、県内の延べ宿泊者数は913.2千人泊、県外は2,252.3千人泊であった。
DETAIL
ポイント
9月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表2)、8月の訪日外客総数(推計値ベース)は東京パラリンピックの選手や関係者が入国したこともあり25,900人となった(前月:51,100人)。21年前半の月平均(16,049人)を2カ月連続で上回ったものの、前々年同月比では-99.0%となっている。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると、米国が3,000人で前月に引き続き最も多かった。次いで中国が2,400人、フランスが1,800人、韓国が1,600人、英国が1,300人であった。
▶JNTO訪日外客統計を目的別にみれば(図2及び表3)、6月の総数(暫定値ベース)は9,251人であった。前々年同月比では99.7%と大幅減少が続く。うち、観光客は1,657人(同-99.9%)、商用客は1,121人(同-99.3%)、その他客は6,473人(同94.3%)であった。
▶目的別国・地域別のトップ5をみれば、6月の観光客は米国が414人、英国が169人、韓国が107人、中国が102人、フランスが57人。商用客は中国が231人、韓国が115人、米国が105人、ベトナムが73人、英国が59人。その他客は中国が1,640人、米国が643人、韓国が613人、インドネシアが428人、フィリピンが350人であった。
▶国際的な往来の再開にはワクチン接種が重要である。世界各国のワクチンの接種状況(2回接種)をみれば(9月15日時点)、スペインは76.1%、英国は64.9%、イタリアは64.8%、フランスは63.7%、ドイツは62.1%、米国は53.4%となっている(図3)。欧州ではワクチン接種が進捗していることから、入国緩和に向けた動きが活発化している。英国、イタリア、フランスでは、ワクチン接種の証明書があれば、一部の国・地域の渡航者に対して入国後の隔離措置などを免除することを決定した。変異株の感染動向に注意を要するが、入国緩和が予定通り行われることになれば、ビジネス客や旅行客の往来回復が期待される。
▶日本のワクチン接種も加速しており、19日には54.8%と、米国(54.7%)を上回った。政府は入国緩和に向けて、ワクチンを接種した人を対象に、入国後の待機期間を14日から10日へ短縮する方針を決定した。ただし、今回の水際対策の緩和は限定的なものにとどまっており、欧州と比べると依然厳しい入国規制が続いている。このため、訪日外客の急回復は望めず、当面の間は低位での推移が続くと予想される。
トピックス1
8月関西の財貨・サービス貿易及び7月のサービス産業動向
▶関西8月の輸出は昨年の経済活動停滞の反動に加え、電子部品などの好調もあり前年同月比+26.2%と6カ月連続で増加した(前月:同+25.0%)(図4)。品目別にみれば、アジア向けを中心に半導体等電子部品の輸出額が8月として過去最高額となった。また、対米、対EU向けでは住宅建設やインフラ整備に用いられる建設用・鉱山用機械が好調であった。輸入は同+30.6%と7カ月連続で増加した(前月:同+17.3%)。結果、関西の貿易収支は+2,169億円と19カ月連続の黒字となった(前年同月比+5.2%)。また、貿易総額(輸出入合計)は同+28.2%となり、8カ月連続のプラスであった(前月:同+21.4%)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西8月の対中輸出は前年同月比+14.7%で、15カ月連続の増加(前月:同+17.0%)。うち、プラスチックや半導体等電子部品が輸出増に寄与した。また、対中輸入は同+32.3%と3カ月連続で増加した(前月:同+11.9%)。うち、衣類及び同附属品や加熱用・冷却用機器が輸入増に寄与した。
▶8月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は2,476人となった。前月(2,776人)から減少し、21年前半の月平均(3,722人)を依然下回る状況が続いている(図6)。伸びは前々年同月比99.6%となり大幅減少が続いている。また、同月の日本人出国者数は5,778人で前月(2,998人)から増加したが、伸びは同98.6%と底這いの状況が続く。東京オリンピック・パラリンピック開催により選手や関係者の入国が期待されたが、多くは羽田空港や成田空港にとどまり、関空への影響はあまり見られなかった。
▶7月のサービス業はCOVID-19感染再拡大による緊急事態宣言で悪化したものの、一部業種では改善も見られた。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、7月は96.6で前月比-0.6%低下した。2カ月ぶりのマイナス。7月12日から東京都に対して4度目の緊急事態宣言が発令され、小売業などを中心に悪影響した。一方、対面型サービス業指数*は79.8で、同+0.4%と2カ月連続のプラス。東京オリンピックの開催等の影響もあり宿泊業やその他生活関連サービス業が改善した。
▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、70.5と前月比+5.2%上昇した(図7)。上述した東京オリンピック開催で、旅行業や航空旅客運送業が大幅改善したこともあり、伸びは2カ月連続のプラスとなった(前月:同+6.5%)。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
6月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶6月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は3,297.4千人泊であった。コロナ禍の影響がない前々年同月(2019年6月)比は65.7%と前月の減少幅(同-72.2%)から縮小した(表1)。京都府、大阪府、兵庫県に発令された3度目の緊急事態宣言が6月20日に解除されたが、依然弱含みでの推移が続いている。
▶うち日本人延べ宿泊者数は、3,264.4千人泊であった。前々年同月比-51.5%と前月の減少幅(同-62.6%)から縮小した(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府が1041.8千人泊、京都府が586.0千人泊、兵庫県が495.1千人泊、三重県が318.5千人泊、和歌山県が202.3千人泊、滋賀県が161.0千人泊、鳥取県が147.9千人泊、福井県が145.7千人泊、徳島県が96.1千人泊、奈良県が70.1千人泊であった。うち、和歌山県と鳥取県では自県民を対象とした需要喚起策「わかやまリフレッシュプラン2nd」や「#WeLove山陰キャンペーン」の影響もあり、前々同月比は前月からそれぞれ大幅に縮小した。
▶うち外国人延べ宿泊者数は、33.0千人泊と、前々年同月比-98.9%減少した(前月:同-98.6%)(表1及び図9)。府県別に外国人延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府が17.6千人泊、兵庫県が5.6千人泊、京都府が4.8千人泊、滋賀県が1.4千人泊、鳥取県が1.1千人泊、三重県が1.0千人泊、福井県が0.9千人泊、和歌山県、徳島県がそれぞれ0.3千人泊、奈良県が0.2千人泊であった。
▶6月の関西2府8県の延べ宿泊者数を居住地別でみると(図10)、県内の延べ宿泊者数は913.2千人泊(前々年同月比-32.1%)、県外は2,252.3千人泊(同-71.1%)であった。伸びは、県内、県外ともに前月の減少幅(県内:同-37.1%、県外:同-77.7%)から縮小した。延べ宿泊者数に占めるシェアは、県内が27.7%、県外が68.3%となっている。
▶7月の延べ宿泊者数については、東京五輪の開催に伴い外国人延べ宿泊者数は増加する見込みであり、関西2府8県においても外国人選手団の事前合宿の実施により幾分増加すると思われる。