都道府県別訪日外客数と訪問率:10月レポート No.29

洞察・意見 » インバウンドレポート

ABSTRUCT

【ポイント】

  • JNTO訪日外客統計によれば、10月の訪日外客総数(推計値)は22,100人と入国後の隔離措置期間の短縮などの入国緩和策の影響もあり前月(17,700人)から増加。なお、前々年同月比では-99.1%と大幅減少が続いている。
  • 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、8月25,916人となった。うち、観光客は13,304人、商用客は1,374人、その他客は11,238人。東京パラリンピック開催の影響もあり、短期滞在者扱いとなる観光客が1万人を超える水準となった。
  • 日本ではワクチン接種を完了したビジネス目的の短期滞在者や留学生などの新規入国を認めており、今後、ビジネス目的などの訪日外客を中心に増加が見込まれよう。しかし、入国後の隔離措置が依然とられていることに加え、観光目的の入国制限が続いているため、訪日外客の急回復は望めない状況が続こう。

 

【トピックス1】

  • 関西10月の輸出は8カ月連続で前年比増加した。半導体等製造装置と半導体等電子部品の好調で、輸出額は単月過去最高額。輸入は9カ月連続の同増加。結果、貿易収支は21カ月連続の黒字となり、輸出の伸びは横ばいであったが、輸入の伸びが減速したため、黒字幅は2カ月ぶりに拡大した。
  • 9月の関西国際空港への訪日外客数は1日当たりの入国者数の上限が緩和された影響もあり、3,743人と前月(3,079人)から増加した。
  • 9月のサービス業ではCOVID-19の感染状況が落ち着き、消費者心理の改善により、前月から活動指数が上昇した。第3次産業活動指数は、COVID-19の新規陽性者数の減少や、緊急事態宣言解除の見通しがたったことで個人向けサービス等の改善が好影響した。
  • 第3次産業活動指数のうち、対面型サービス業指数、観光関連指数はいずれも2カ月ぶりの前月比プラス。娯楽業や道路旅客運送業が改善に影響した。
  • コロナ禍前のピーク(19年10-12月期)と比較すれば、第3次産業は5.2ポイント、対面型サービス業指数は23.1ポイント、観光関連指数は36.3ポイントといずれも低水準。

 

【トピックス2】

  • 8月の関西2府8県の延べ宿泊者数は5,720.5千人泊、コロナ禍の影響がない前々年同月比は-55.1%と前月の減少幅(同-49.5%)から拡大。感染状況の悪化で、緊急事態宣言が発令された府県が拡大し、夏の帰省シーズンではあったが、旅行手控えにより低調となった。
  • うち日本人延べ宿泊者数は5,681.6千人泊で、前々年同月比-42.5%と前月の減少幅(同-28.3%)から拡大した。外国人延べ宿泊者数は38.9千人泊と、同-98.6%減少した。
  • 緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が全国で終了し、各都道府県は独自の旅行需要喚起策を開始、再開した。関西各府県では早いところで10月から割引適用を実施しており、三重県(11月30日まで)、奈良県(22年2月28日まで)を除き、12月31日までを宿泊割引の適用期間としている(2021年11月24日時点)。

DETAIL

ポイント

11月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表3)、10月の訪日外客総数(推計値)は22,100人と入国後の隔離措置期間の短縮などの入国緩和策の影響もあり前月(17,700人)から増加した。なお、前々年同月比では-99.1%と大幅減少が続いている。

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると、中国が4,000人で最も多かった。次いで米国が2,000人、韓国が1,900人、インドが1,500人、ベトナムが1,000人であった。

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、8月は25,916人となった(前々年同月比-99.0%)(図2及び表4)。うち、観光客は13,304人(同-99.4%)、商用客は1,374人(同-98.8%)、その他客は11,238人(同-94.4%)であった。東京パラリンピック開催の影響もあり、短期滞在者扱いとなる観光客が1万人を超える水準となった。

 

 

 

▶訪日外客数の目的別トップ5を国・地域別にみると、8月の観光客は米国が935人、英国が903人、フランスが682人、中国が662人、ドイツが605人。商用客は中国が230人、フランスが148人、米国が134人、韓国が113人、ドイツが86人。その他客は米国が1,912人、中国が1,504人、韓国が1,183人、フランスが972人、インドネシアが488人であった。

 

▶11月に入りアジアでもワクチン接種済みの観光客に対する入国条件の緩和がみられる。マレーシアでは一部のリゾート地に限って入国後の隔離措置を設けない緩和策を発表した。また、インドではCOVID-19の感染状況が落ち着いていることから約1年半ぶりに観光客の受け入れを再開した。上記2カ国の接種率(2回接種)をみると、マレーシアは76.0%、インドは27.9%となっており、接種率に差はあるものの(図3)、観光業の回復が期待されている。ただし、感染再拡大のリスクも懸念されているため、今後の動向には引き続き注視が必要である。

 

 

▶日本のワクチン接種率は、11月18日時点で76.2%となり、欧米を上回る水準となっている(図3)。ワクチン接種の普及もあり、政府は11月8日から接種を完了したビジネス目的の短期滞在者や留学生などの新規入国を認めた。また、26日から1日当たりの入国者数の上限が3,500人から5,000人へと緩和される。このため今後、ビジネス目的などの訪日外客を中心に増加が見込まれよう。しかし、入国後の隔離措置が依然とられていることに加え、観光目的の入国制限が続いているため、訪日外客の急回復は望めない状況が続こう。

 

トピックス1

10月関西の財貨・サービス貿易及び9月のサービス産業動向

▶関西10月の輸出は前年同月比+21.1%と8カ月連続で増加した(前月:同+21.2%)(図4)。品目別にみれば、半導体等製造装置と半導体等電子部品の好調もあり輸出額が単月で過去最高額となった。また、対米、対EU向けでは遊戯用具が好調であった。輸入は同+18.2%と9カ月連続で増加した(前月:同+30.1%)。結果、関西の貿易収支は+4,312億円と21カ月連続の黒字となった。輸出の伸びは横ばいであったが、輸入の伸びが減速したため、黒字幅は前年同月比+30.7%と2カ月ぶりに拡大した。

 

 

▶対中貿易動向をみると(図5)、関西10月の対中輸出は前年同月比+17.1%と17カ月連続で増加し、前月(同+11.9%)から加速した。うち、半導体等電子部品や半導体等製造装置が輸出増に寄与した。また、対中輸入は同+13.2%と5カ月連続で増加した(前月:同+31.4%)。うち、衣類及び同附属品や鉄鋼が輸入増に寄与した。

 

 

▶10月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は3,743人と前月(3,079人)から増加した(前々年同月比-99.4%)(図6)。8月16日から行われている1日当たりの入国者数の上限が緩和された影響が表れているようである。なお、前述したように政府は原則停止していた外国人の新規入国をビジネス目的などに限って緩和策を行っているため、今後入国者は幾分増加が見込まれよう。また、同月の日本人出国者数は4,160人で前月(4,090人)から増加したが、伸びは前々年同月比-98.7%と大幅減少が続く。

 

 

▶9月のサービス業ではCOVID-19の感染状況が落ち着き、消費者心理の改善により、前月から活動指数が上昇した。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、9月は96.0で前月比+0.5%上昇し、3カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-1.1%)。9月下旬以降、COVID19の新規陽性者数が減少し、緊急事態宣言の解除の見通しがたったことが個人向けサービスや小売業を中心に改善に影響した。対面型サービス業指数*は77.0で同+2.6%上昇し、2カ月ぶりのプラス(前月:同-6.0%)。うち、娯楽業の改善が大きく影響した。79月期を前期と比較すれば、第3次産業は-0.8%、対面型サービスは-1.5%といずれも3四半期連続で低下した。

 

▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、64.1と前月比+1.2%上昇した(図7)。道路旅客運送業や旅行業が改善した影響もあり、2カ月ぶりのプラスとなった。7-9月期では前期比-0.0%と2四半期ぶりのマイナスとなった。コロナ禍前のピーク(19年10-12月期)と比較すれば、第3次産業は5.2ポイント、対面型サービス業指数は23.1ポイント、観光関連指数は36.3ポイントといずれも低い水準である。

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

トピックス2

8月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶8月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は5,720.5千人泊であった。コロナ禍の影響がない前々年同月比は-55.1%と前月の減少幅(同-49.5%)から拡大した(表1)。感染状況の悪化により、緊急事態宣言が発令された府県が拡大し、夏の帰省シーズンではあったものの、旅行手控えにより低調な結果となった。

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は5,681.6千人泊であった。前々年同月比42.5%と前月の減少幅(同-28.3%)から拡大した(表1及び図8)。

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は、38.9千人泊と、前々年同月比-98.6%減少した(前月:同-98.7%)(表1及び図9)。

 

 

▶9月の宿泊者数について、全国的には感染状況が改善したものの、緊急事態宣言等の発令で人流が抑制されているため、引き続き弱含みで推移すると思われる。

 

▶緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が9月30日に全国で終了し、各都道府県は独自の旅行需要喚起策を開始、再開した。表2は、関西各府県の自府県民向け旅行補助事業をまとめたものである。他府県では早いところで10月から割引適用を実施しており、三重県(11月30日まで)、奈良県(22年2月28日まで)を除き、12月31日までを宿泊割引の適用期間としている。

 

pagetop
loading