都道府県別訪日外客数と訪問率:11月レポート No.30

洞察・意見 » インバウンドレポート

ABSTRUCT

【ポイント】

  • JNTO訪日外客統計によれば、11月の訪日外客総数(推計値)は20,700人と前月(22,100人)から幾分減少したが、水準は2カ月連続で2万人を超えた。
  • 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、9月は17,720人となった。うち、観光客は1,124人、商用客は1,676人、その他客は14,920人。
  • 日本政府はワクチン接種の完了した外国人の新規入国を条件付きで認めていたが、オミクロン株の感染拡大を受け、新規入国を一時停止した。日本国内においてもオミクロン株の影響への懸念から、政府が今後、入国制限を更に強化する可能性もあり、12月以降、訪日外客数は低水準が続くと予想される。

 

【トピックス1】

  • 関西11月の輸出は9カ月連続の前年比増加。アジア向けの半導体等電子部品やアラブ首長国連邦向けの原動機の好調もあり、輸出額は11月単月で過去最高額となった。輸入は原燃料価格の高騰もあり10カ月連続の同増加。結果、貿易収支は22カ月連続の黒字だが、輸入の伸びが加速し輸出の伸びを上回ったため、黒字幅は2カ月ぶりに大幅縮小した。
  • 11月の関西国際空港への訪日外客数は3,678人と前月(3,743人)から小幅減少した。
  • 10月のサービス業は飲食店などへの制約条件の緩和もあり前月から活動指数は加速した。第3次産業活動指数は2カ月連続の前月比プラス。COVID-19の感染状況が落ち着き、飲食店への酒類提供などの制約緩和が行われたこともあり、飲食関連の改善が好影響した。
  • 第3次産業活動指数のうち、対面型サービス業指数、観光関連指数はいずれも2カ月連続の前月比プラス。飲食店、飲食サービス業や宿泊業などがそれぞれ改善に影響した。

 

【トピックス2】

  • 9月の関西2府8県の延べ宿泊者数は4,051.8千人泊、コロナ禍の影響がない前々年同月比は-58.7%と前月の減少幅(同-55.1%)から拡大。三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県を対象とした4度目の緊急事態宣言(9月30日まで)が影響し、宿泊者数が落ち込んだ。
  • うち日本人延べ宿泊者数は4,012.9千人泊で、前々年同月比-45.3%と前月の減少幅(同-42.5%)から拡大。外国人延べ宿泊者数は38.9千人泊と、同-98.4%減少した。
  • 観光庁は11月19日、都道府県が独自で実施する府県民割の対象範囲拡大等について発表し、関西各府県でも支援対象を拡大し始めた。現在5府県が支援対象の拡大、3府県が期間の延長を発表した。

DETAIL

ポイント

12月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表3)、11月の訪日外客総数(推計値)は20,700人と前月(22,100人)から幾分減少したが、水準は2カ月連続で2万人を超えた。11月6日からワクチン接種を完了したビジネス目的の短期滞在者や留学生などの新規入国が許可されたが、緩和策の影響は限定的であった。

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると、中国が3,200人で最も多かった。次いで韓国が2,000人、ベトナムが1,800人、インドが1,600人、米国が1,400人であった。

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、9月は17,720人となった(前々年同月比-99.2%)(図2及び表4)。うち、観光客は1,124人(同-99.9%)、商用客は1,676人(同-98.9%)、その他客は14,920人(同-92.7%)であった。東京オリンピック・パラリンピックが閉幕したこともあり、観光客は再び低水準となった(7月:42,621人、8月:13,304人)。

 

 

 

▶訪日外客数の目的別トップ5を国・地域別にみると、9月の観光客は米国が229人、中国が89人、中東地域が73人、韓国が72人、フランスが56人。商用客は中国が362人、韓国が235人、米国が114人、ドイツが87人、英国が54人。その他客は中国が3,509人、韓国が1,917人、米国が1,314人、ベトナムが993人、インドネシアが487人であった。

 

▶11月下旬以降、世界各国は新変異株(オミクロン株)の感染拡大を受け、水際対策の強化を行っている。これまで各国・地域はワクチン接種完了者に対して入国緩和を行っていたが、オミクロン株の感染拡大により、再び厳しい入国制限を開始している。また、欧米の主要各国では、感染状況の悪化を受け、予防効果を高めるためにワクチンの追加接種を促進している。追加接種率をみれば、英国38.6%、ドイツ28.9%、フランス24.2%、米国17.9%となっている(図3)。欧州を中心に接種率が上昇しているが、依然感染拡大は続いており、先行きは不透明感が強い。

 

 

▶日本もオミクロン株の国内流入を防ぐため、水際対策を再び強化している。政府は11月8日からワクチン接種の完了した外国人の新規入国を条件付きで認めていたが、オミクロン株の感染拡大を受け、30日から新規入国を一時停止した。日本の感染状況は諸外国と比べ落ち着きをみせているが、日本国内においてもオミクロン株の影響への懸念から、政府が今後、入国制限を更に強化する可能性もあり、12月以降、訪日外客数は低水準が続くと予想される。

 

トピックス1

11月関西の財貨・サービス貿易及び10月のサービス産業動向

▶関西11月の輸出は前年同月比+22.9%と9カ月連続で増加した(前月:同+21.1%)(図4)。品目別にみれば、アジア向けの半導体等電子部品やアラブ首長国連邦向けの原動機の好調もあり、輸出額は11月単月で過去最高額となった。輸入は原燃料価格の高騰もあり同+39.2%と10カ月連続で増加した(前月:同+18.2%)。結果、関西の貿易収支は+844億円と22カ月連続の黒字となったが、輸入の伸びが加速し輸出の伸びを上回ったため、黒字幅は前年同月比-60.3%と2カ月ぶりに大幅縮小した。

 

 

▶対中貿易動向をみると(図5)、関西11月の対中輸出は前年同月比+20.6%と18カ月連続で増加し、前月(同+17.1%)から加速した。うち、半導体等電子部品や非鉄金属が輸出増に寄与した。また、対中輸入は同+19.4%と6カ月連続で増加した(前月:同+13.2%)。うち、有機化合物や衣類及び同附属品が輸入増に寄与した。

 

 

▶11月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は3,678人と前月(3,743人)から小幅減少した(前々年同月比-99.5%)(図6)。政府は11月6日からビジネス目的などに限った外国人の新規入国を認めていたが、入国緩和の影響は小さかったようである。また、同月の日本人出国者数は4,467人で前月(4,160人)から増加したが、伸びは前々年同月比-98.6%と大幅減少が続いており、アウトバウンド需要も低迷している。

 

 

▶10月のサービス業は飲食店などへの制約条件の緩和もあり前月から活動指数が加速した。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、10月は97.4で前月比+1.5%上昇し、2カ月連続のプラスとなった(前月:同+0.5%)。10月に入りCOVID-19の感染状況が落ち着き、飲食店への酒類提供などの制約緩和が行われたこともあり、飲食関連の改善が好影響した。対面型サービス業指数*は84.1で同+8.4%上昇し、2カ月連続のプラス(前月:同+3.4%)。うち、飲食店、飲食サービス業(同+26.3%)の改善が大きく影響した。

 

 

▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、74.6と前月比+14.6%大幅上昇した(図7)。緊急事態宣言解除で行動制限が解除され、国内旅行が増加したことから宿泊業(同+41.2%)が大きく改善し、2カ月連続のプラスとなった。

 

▶10月の活動指数を7-9月平均と比較すれば、第3次産業は+1.4%、対面型サービス業指数は+8.6%、観光関連指数は+12.4%といずれも上昇した。

 

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

 

トピックス2
9月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、9月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は4,051.8千人泊であった。コロナ禍の影響がない前々年同月比は-58.7%と前月の減少幅(同-55.1%)から拡大した(表1)。三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県を対象とした4度目の緊急事態宣言(9月30日まで)が影響し、宿泊者数が落ち込んだ。

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は4,012.9千人泊であった。前々年同月比45.3%と前月の減少幅(同-42.5%)から拡大した(表1及び図8)。

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は、38.9千人泊と、前々年同月比-98.4%減少した(前月:同-98.6%)(表1及び図9)。

 

 

▶10月の全国延べ宿泊者数(全体、1次速報ベース)は32,900千人泊であった。前々年同月比-34.3%と前月(22,427千人泊)の減少幅(同-54.0%)から大きく縮小した。緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が9月30日に終了し、人出の増加を背景に宿泊者数が回復したものと思われる。関西においても秋の行楽シーズンや府県独自の旅行補助事業が開始・再開したことに伴い、宿泊者数の押し上げが期待される。

 

▶観光庁は11月19日、都道府県が独自で実施する府県民割の対象範囲拡大等について発表し、関西各府県でも支援対象を拡大し始めた。現在5府県が支援対象の拡大、3府県が期間の延長を発表した(表2)。

 

pagetop
loading