ABSTRACT
1. 2月15日発表のGDP1次速報によれば、10-12月期の実質GDPは前期比年率+5.4%(前期比+1.3%)増加し、2四半期ぶりのプラス成長となった。実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト2月調査)の最終予測(前期比年率+6.06%)から幾分下振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同+6.5%、生産サイドは同+6.8%、平均は同+6.7%であった。
2. 10-12月期は、COVID-19感染者数の激減で消費者センチメントが大幅改善し、民間最終消費支出を中心に好調なパフォーマンスを示した。実質GDP成長率(+1.3%)への寄与度を見ると、国内需要は前期比+1.1%ポイントと2四半期ぶりのプラス。うち、民間需要は同+1.3%ポイントと2四半期連続のプラス寄与、公的需要は同-0.2%ポイントと3四半期ぶりのマイナス寄与となった。一方、純輸出は同+0.2%ポイントと2四半期連続のプラス寄与。半導体不足による供給制約が緩和し、輸出が増加に転じた結果である。ただ、交易条件の悪化から国内総所得(GDI)成長率は同+0.7%にとどまり、4四半期連続で実質GDPの伸びを下回った。
3. 10-12月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、21-23年度の日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、21年度+2.4%、22年度+2.3%、23年度+1.7%と予測。前回(第136回)予測に比して、21年度、22年度は-0.3%ポイント下方修正し、23年度は横ばいとなった。オミクロン株拡大による1-3月期の景気低迷を反映した結果である。
4. 実質GDPを四半期でみれば、21年10-12月期は2四半期ぶりのプラス成長となったが、主要国に比して回復が遅れている。22年1-3月期はオミクロン株の急拡大により再び経済活動が停滞している。4-6月期以降は、潜在成長率を上回るペースが持続するため、コロナ禍前(19年10-12月期)の水準を超えるのは22年4-6月期、コロナ禍前のピーク(19年7-9月期)を超えるのは23年4-6月期となる。
5. 消費者物価指数の先行きについて、21年度は宿泊料と通信料は基調に対するかく乱要因となろう。エネルギー価格高騰と円安で22年度は前年比プラス幅が1%台後半に拡大する。23年度はエネルギー価格が低下し、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調となる。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度-0.0%、22年度+1.4%、23年度+0.8%と予測する。
6. ベースライン予測では、ブースター接種が進捗し、COVID-19新規陽性者数が低位で推移、また治療薬の普及等を想定している。以上のベースライン予測に対して、(1)新たな変異株の出現、(2)原油価格の高騰、(3)円安の加速の3つのリスクを想定する。これら3つのリスクのうち、足下ロシアのウクライナ侵攻を契機とした原油価格100ドル超えのリスクをシミュレーションした。
※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①00:00~02:27 :Executive summary
②02:28~29:16:第137回「景気分析と予測」<遅れる日本経済の回復:リスクは変異株、原油高と為替安>
③29:17~42:14:Kansai Economic Insight Quarterly No.58<不安材料多く、霞む本格回復への途>
④42:14~44:42:トピックス1<京都府におけるDMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果>
トピックス2<足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTTP加盟による影響>