ABSTRACT
【ポイント】
- JNTO訪日外客統計によれば、11月の訪日外客総数(推計値)は93万4,500人と、前月(49万8,600人)から大幅増加し、100万人に迫る水準まで回復。うち、国・地域別では、韓国が31万5,400人とトップであり、2020年1月以来、単月で30万超の水準となった
- 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば9月は20万6,641人。うち、観光客は4万2,108人、商用客は5万3,265人、その他客は11万1,268人であった。観光客については前月東京オリンピックが開催された2021年7月以来の水準となった。
- 12月以降もインバウンド需要は回復傾向が続くと予想されるが、依然として訪日中国人客の回復が課題である。中国政府はゼロコロナ政策の大幅な緩和を発表し、これまで制限されていた中国人の海外旅行についても認可した。一方で日本政府は中国国内の感染拡大を受け、中国からの入国者に対する水際対策の強化を発表した。このため、訪日中国人客の戻りについては依然不透明性が高い。
【トピックス1】
- 関西11月の輸出は米国向けの建設用・鉱山用機械や医薬品の好調もあり21カ月連続の前年比増加。一方、輸入は22カ月連続の同増加だが、エネルギー価格の落ち着きや鉱工業生産の停滞により伸びは前月から減速。輸入の伸びが前月から減速し、輸出が加速した結果、関西の貿易収支は3カ月連続の黒字だが、黒字幅は縮小した。
- 11月の関西国際空港への訪日外客数は24万7,090人と、前月から倍増しコロナ禍の影響が出始めた2020年2月の水準を上回った。空港別に訪日外客数の戻りをみてみると、羽田や成田はコロナ禍前の5割程度回復しているが、関空は4割程度の回復にとどまっている。
- 10月のサービス業の活動は観光需要の増加で対面型サービス業を中心に持ち直している。第3次産業活動指数、対面型サービス業指数はいずれも2カ月連続の前月比上昇。また、観光関連指数は全国旅行支援事業の開始や水際対策の緩和もあり、3カ月連続で同上昇した。
【トピックス2】
- 9月の関西2府8県の延べ宿泊者数は7,436.5千人泊。2019年同月比では-24.2%と前月から減少幅は縮小。COVID-19感染拡大が落ち着き、外出機会が増加したことが影響した。
- うち、日本人延べ宿泊者数は7,278.4千人泊。2019年同月比では-0.8%と減少幅は前月(同-13.0%)から大幅縮小し、コロナ禍前の水準を回復しつつある。また、外国人延べ宿泊者数は158.0千人泊となり、2019年同月比では-93.6%と減少幅は3カ月連続で縮小。これまで低水準が続いていた外国人宿泊者数は水際対策の緩和が進むにつれ、徐々に持ち直しの動きがみられる。
DETAIL
ポイント
12月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表2)、11月の訪日外客総数(推計値)は93万4,500人と前月(49万8,600人)から大幅増加し、100万人に迫る水準となった。2019年同月比では-61.7%とコロナ禍前の4割まで回復。また、同月の日本人出国者数は37万9,200人と前月(34万9,557人)から増加し、4カ月連続で30万人超となった(2019年同月比-76.9%)。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表2)、韓国は31万5,400人とトップであり、2020年1月(31万6,812人)以来、単月で30万超の水準となった(なお、2019年の月平均では46万人)。次いで台湾が9万9,500人、米国が8万4,300人、香港が8万3,000人、タイが5万2,100人と続く。上記5カ国・地域の19年同月比をみれば、米国(同-43.4%)、香港(同-58.4%)、タイ(同-62.9%)、台湾(同74.6%)はいずれも減少幅が前月から縮小しており、着実に回復が進んでいる。なお、韓国が同+53.8%と前月(同-37.7%)からプラスに転じているが、これは19年後半の日韓関係悪化による訪日韓国人客の急減少が影響している。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、9月は20万6,641人となった(2019年同月比-90.9%)(図3及び表3)。うち、観光客は4万2,108人(同-97.8%)、商用客は5万3,265人(同65.4%)、その他客は11万1,268人(同-45.9%)であった。観光客は前月(3万1,441人)から増加し、東京オリンピックが開催された2021年7月(4万2,621人)以来の水準となった。
▶7-9月期の目的別訪日外客総数をみれば、観光客10万3,864人(2019年同期比-98.5%)、商用客13万1,230人(同68.8%)、その他客28万6,027人(同-46.1%)となった。観光客は添乗員なしの外国人観光客向けのパッケージツアー受入れ再開もあり、4-6月期(2万5,879人)から大幅増加した。
▶12月以降もインバウンド需要は回復傾向が続くと予想されるが、依然として訪日中国人客の回復が課題である。12月に入り、中国政府はゼロコロナ政策の大幅な緩和を発表し、これまで制限されていた中国人の海外旅行についても認可した。一方で日本政府は中国国内の感染拡大を受け、12月30日より中国からの入国者に対して入国時のCOVID-19検査を義務付け、陽性の場合は7日間の隔離措置をとる水際対策強化を発表した。このため、訪日中国人客の戻りについては依然不透明性が高い。
トピックス1
11月関西の財貨・サービス貿易及び10月のサービス産業動向
▶関西11月の輸出は前年同月比+19.0%と21カ月連続で増加し、前月(同+15.6%)から加速した(図4)。主に米国向けの建設用・鉱山用機械や医薬品の輸出が好調であった。また、輸入は同+23.9%と22カ月連続の増加だが、エネルギー価格の落ち着きや鉱工業生産の停滞により前月(同+48.6%)から減速。輸入の伸びが前月から減速し、輸出が加速した結果、関西の貿易収支は+212億円となった。3カ月連続の黒字だが、黒字幅は同-73.6%と縮小した(前月:同-85.0%)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西11月の対中輸出は前年同月比+5.5%と7カ月連続で増加し、前月(同+0.7%)から加速した。輸出増に寄与したのは映像機器や無機化合物等であった。中国経済の弱さを受け、輸出の戻りは遅い。また、対中輸入は同+20.3%と7カ月連続の増加だが、前月(同+38.4%)から減速。うち、輸入増に寄与したのは無機化合物やがん具及び遊戯用具等であった。
▶11月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は24万7,090人と前月(11万6,658人)から倍増し、コロナ禍の影響が出始めた2020年2月(22万8,987人)を上回った。2019年同月比では63.1%と前月(同-82.1%)から大幅縮小。関空への外国人入国者数も着実に回復が進んでいる。空港別に訪日外客数の戻りをみてみると、羽田(同-44.7%)や成田(同-52.7%)はコロナ禍前の5割程度回復しているが、関空は4割程度の回復にとどまっている(図6参照)。
▶10月のサービス業の活動は観光需要の増加で対面型サービス業を中心に持ち直している。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、10月は99.9で前月比+0.2%小幅上昇し、2カ月ぶりのプラス(前月:同-0.2%)。対面型サービス業指数*は91.1と同+0.5%上昇し、2カ月ぶりのプラス(前月:同-1.4%)。うち、飲食店、飲食サービス業が同+5.5%と2カ月ぶりに上昇した(前月:同-3.3%)。COVID19の感染拡大が落ち着いていたことが好影響した。
▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、84.4と前月比+2.5%上昇し、3カ月連続のプラス(前月:同+1.6%)(図7)。全国旅行支援事業の開始や水際対策の緩和もあり、旅行業(同+28.3%、2カ月連続)や宿泊業(同+1.7%、3カ月連続)が上昇した。11月以降も国内観光需要並びにインバウンド需要の増加が見込まれるため、観光関連指数の上昇が期待されよう。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
9月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、9月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は7,436.5千人泊となった(表1)。2019年同月比では-24.2%となり、減少幅は前月(同-31.5%)から縮小。COVID-19感染拡大が落ち着き、外出機会が増加したことが影響した。
▶日本人延べ宿泊者数は7,278.4千人泊であった。2019年同月比では-0.8%と減少幅は前月(同-13.0%)から大幅縮小し、コロナ禍前の水準を回復しつつある(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府が2,441.6千人泊、京都府が1,882.1千人泊、兵庫県が1,024.3千人泊、三重県が574.0千人泊、和歌山県が344.1千人泊、滋賀県が330.5千人泊、福井県が226.6千人泊、奈良県が168.8千人泊、鳥取県が159.9千人泊、徳島県が126.6千人泊であった。伸びは、京都府が+22.7%と4カ月連続のプラス、また徳島県を除いた各府県で減少幅が前月から縮小した。
▶外国人延べ宿泊者数は158.0千人泊であった。2019年同月比では-93.6%と減少幅は3カ月連続で縮小(前月:同-95.7%)(表1及び図9)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府が83.0千人泊、京都府が53.0千人泊、兵庫県が6.8千人泊、和歌山県が4.6千人泊、三重県が2.9千人泊、滋賀県が2.9千人泊、福井県が1.7千人泊、奈良県が1.4千人泊、徳島県が1.0千人泊、鳥取県が0.9千人泊であった。これまで低水準が続いていた外国人宿泊者数は水際対策の緩和が進むにつれ、徐々に持ち直しの動きがみられる。
▶関西2府8県延べ宿泊者を居住地別でみると(図10)、府県内の延べ宿泊者数は1,681.7千人泊となった(2019年同月比+35.7%)。伸びは前月(同+14.1%)から拡大し12カ月連続のプラス。また、2府8県以外からの宿泊者は5,550.5千人泊であった(同-30.6%)。伸びは前月(同-36.6%)から縮小した。
▶10月の全国延べ宿泊者数(全体、1次速報ベース)は44,259千人泊、2019年同月比-11.6%と減少幅は前月(同-19.2%)から縮小した。うち、日本人宿泊者は42,095千人泊(同+5.8%)、外国人宿泊者は2,163.8千人泊(同-78.9%)となった。日本人宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復し、外国人宿泊者数は水際対策の大幅緩和もあり、減少幅は前月(同-90.1%)から大幅に縮小した。