ABSTRACT
1. 2023年1-3月期の関西経済は、コロナ禍に伴う行動制限の解除、また賃上げの動きの広がりにより、家計部門を中心に緩やかに持ち直した。一方、企業部門や海外部門では、原材料価格の高騰、海外経済の減速などの不安要因から、弱い動きが見られる。先行きは、消費の復元を起点として民間部門全体に好影響が波及し、投資増や賃上げの継続につながるかがポイントとなる。
2. 家計部門をめぐる環境は、本格的な経済活動の再開、物価高に起因する賃上げ、マインドの回復と総じて改善している。このため家計部門は前期に引き続き、概ね持ち直している。センチメント、大型小売店販売、所得・雇用環境、住宅市場などいずれも堅調に推移している。依然として物価高の影響も見られるものの、政策効果もあり幾分緩和している。
3. 企業部門は、業種間で明暗が分かれている。製造業は原材料価格の高騰や海外経済の減速などから生産・景況感ともに軟調である。一方非製造業は経済活動再開に伴い、宿泊・飲食・小売など対面型サービスを中心に総じて復調。また23年度の設備投資計画は、増勢となった前年度の水準を維持し、業種問わず底堅い。
4. 対外部門のうち、財の貿易については輸出・輸入ともに前年比増となったが、増加幅は前期から縮小。輸出を地域別に見ると、欧米向けは伸びが鈍化、中国向けは前年を下回った。一方インバウンド需要は順調で、関空経由の外国人入国者数や免税売上高はコロナ禍前のピークの5割を超えるまでに回復した。
5. 公的部門は、引き続き堅調に推移している。
6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.3%、24年度+1.7%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1~2%のプラス成長が続く。23年度にはコロナ禍前のGRP水準をほぼ回復する。前回予測(2月28日公表)に比べて、23年度は修正なし、24年度は+0.1%ポイントの上方修正とした。
7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は23年度+1.1%ポイント、24年度+1.4%と成長の牽引役となる。また公的需要も23年度・24年度ともに+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、アジア向け輸出が弱い動きにとどまることなどから、成長に対する寄与はほとんどない。
8. 日本経済予測と比較すると、23年度日本経済予測では欧米経済の停滞で輸出の失速を見込むが、関西の輸出はウエイトの高いアジア向けの持ち直しにより、小幅増を見込む。24年度も民間部門・公的部門とも設備投資が堅調に推移し、日本経済を上回る成長となる。
9. 今号のトピックスでは、「関西各府県GRPの早期推計」および「急回復するインバウンド需要と関西経済」を取り上げる。
※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①00’00”~00’56”: Executive summary
②00’56”~27’23”: 第143回「景気分析と予測」
<サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い>
③27’23”~39:58: Kansai Economic Insight Quarterly No.64
<消費の復元を起点として好循環に向かう関西経済:景気は足下改善、先行きも改善を見込む>
④39’58”~42’42”: トピックス<関西2府4県GRPの早期推計>
⑤42’42”~47’27”: トピックス<急回復するインバウンド需要と関西経済>
※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください