144回景気分析と予測:詳細版
<財輸入の減少、サービス輸出の拡大で、実質GDPはコロナ禍前のピークを超える - 実質GDP成長率予測:23年度+1.9%、24年度+1.1% ->

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1. 8月15日発表のGDP1次速報によれば、4-6月期の実質GDPは前期比年率+6.0%増加し、3四半期連続のプラス成長となった。1-3月期が大幅上方修正され、4-6月期は純輸出の寄与で高成長となったため、同期の実質GDP(560.7兆円)はコロナ禍前のピーク(19年7-9月期:557.4兆円)を15四半期ぶりに上回った。
2. 4-6月期の実績は市場コンセンサス最終予測(前期比年率+2.41%)を大幅に上回る高成長となった。なお、超短期予測モデル(CQM)の支出サイドは同+4.4%、生産サイドは同+2.5%、平均は同+3.5%であった。CQMの予測動態を振り返れば、6月中旬には4%台後半を予測し、1%台前半で動かないコンセンサスとは対照的であった。CQMは早くから輸入減に伴う高い純輸出の成長押上げを予測した。
3. 4-6月期の実質GDP成長率(前期比+1.5%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.3%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与。うち、民間需要は同-0.4%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与。民間最終消費支出及び民間在庫変動の減少の影響が大きい。公的需要は同+0.1%ポイントと5四半期連続のプラス寄与。一方、財貨輸入の大幅減とサービス輸出の回復により、純輸出は同+1.8%ポイントと2四半期ぶりの大幅プラス寄与となった。輸入の減少は内需の弱さを意味しており、6%の高成長とはいえ、懸念されるのはその中身である。
4. 4-6月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-24年度日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、23年度+1.9%、24年度+1.1%と予測。前回(第143回予測)から、23年度は+1.0%ポイント大幅引き上げ、24年度は-0.3%ポイント下方修正した。23年度は4-6月期純輸出の大幅上方修正の影響が大きく、24年度は民間需要及び純輸出がともに小幅下方修正されるためである。
5. 23年度後半は、引き続き好調なインバウンド需要によりサービス輸出は増加するが、欧米を中心に海外経済が低迷することから財輸出が減少するため、純輸出のマイナス寄与は避けられず、また民間需要の寄与度も低下すると予測。24年度は社会経済活動の一層の正常化と実質賃金のプラス反転の影響で、家計は引き続き強制貯蓄を取り崩し、サービス支出を中心に民間最終消費支出主導の回復が期待できる。
6. 足下、輸入物価の下落により財価格は下落トレンドに転じるがサービス価格の上昇もあり、23年度前半の消費者物価インフレ率は3%台で高止まりするが、後半には減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.7%、24年度+1.5%と予測する。23・24年度を+0.2%ポイント、前回予測からそれぞれ上方修正した。交易条件が大幅改善するため、23年度のGDPデフレータは+3.3%上昇し、名目GDPは+5.3%の高成長となる。

 

 

※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。

①00’00”~02’37”: Executive summary

②02’37”~24’43”: 第144回「景気分析と予測」

<財輸入の減少、サービス輸出の拡大で実質GDPはコロナ禍前のピークを超える>

③24’43”~34’38: Kansai Economic Insight Quarterly No.65

<緩やかな回復が続くが力強い回復には未だ至らず:物価高と米欧中の経済動向に注視が必要>

④34’38”~39’20”: トピックス<コロナ禍とホテル建設>

⑤39’20”~44’26”: トピックス<インバウンド戦略と中国人客の回復>

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