2023年阪神タイガース優勝の地域別経済効果:速報版
-APIR関西地域間産業連関表による分析-

Trend Watch No.89

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ABSTRACT

今回の阪神タイガース優勝は慶賀に堪えない。本稿では、阪神タイガース優勝により発生する新規需要を球場観戦時の消費及び球場外の消費(優勝セール含む)に分けて想定した上で、APIR関西地域間産業連関表を用いてその経済波及効果を計測した。その際、地域経済に与える影響という視点が重要であり、この観点から分析を行った。分析結果を整理し、得られた内容は以下の通りである。

 

1. 阪神タイガースの優勝により全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円、うち直接効果465億8,700万円間接効果585億3,800万円となった。

2. うち、関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円関西を除くその他地域では364億2,800万円となる。

3. 地域間交易を考慮した関西地域間産業連関表の分析によれば、全体の効果は、関西に65.3%、その他地域に34.7%配分される。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その大部分は間接効果である。すなわち、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他府県で一定程度の需要が発生していることを意味している。

4. 次に関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)兵庫県は172億7,000万円(16.4%)圧倒的に2府県に効果が集中している。

5. 阪神のファン数は減少しているにもかかわらず、今回の優勝は一定の経済効果をあげている。これから得られる含意としては、新たなファン層の拡大やリピーター率の向上によりファン数の減少トレンドを抑制し、加えてファンサービスの高付加価値化による消費単価の引き上げにより一層の経済効果が期待できよう。

DETAIL

はじめに

2023年9月14日、阪神タイガースが18年ぶりとなるセントラルリーグ優勝を成し遂げた。2005年以来17年間も優勝から遠ざかっていた阪神タイガースは、2022年シーズンオフに新監督として岡田彰布氏を迎え「ARE」 をスローガンとしてシーズンに臨んだ。5月に首位に立って以降、順調に勝ち星を積み上げ、8月中旬にはマジック点灯、8月下旬から9月に入って瞬く間にマジックを減らしていき、栄えあるアレ=優勝の日を迎えたのである。

ところで、スポーツイベントや特定球団の優勝による経済効果は、これまでしばしば計測されている 。特に2003年に阪神タイガースが優勝した際には、いわゆる「暗黒時代」を経て18年ぶりの優勝だったということもあり、その経済効果が大きな話題となった。当時いくつかの機関によって計測が行われ、経済効果は734億円~1,587億円という規模であった。

本稿では、2023年の阪神タイガース優勝の経済効果を、APIR関西地域間産業連関表を用いて計測する 。なおここでいう優勝による経済効果とは、優勝により新規に発生する需要と、これを起点として様々な産業で誘発される効果を総称したものである。

経済効果の計測の手順は、まず優勝により発生する新規需要を推計する。新規需要は、(1)球場観戦者による消費と(2)球場外での阪神ファンによる消費(優勝セール含む)に分けて、それぞれ推計を行う。さらに推計された新規需要に対してAPIR関西地域間産業連関表を用い、全国ならびに関西2府8県に及ぼす経済効果を計算する。

われわれの分析の特徴は、関西2府8県と関西以外の全国他地域で構成されるAPIR関西地域間産業連関表を用いていることである。この表を用いることで、トータルの経済効果だけでなく、大阪府での効果、兵庫県での効果というように地域別の経済効果を計測することができる。また、計測の前提となる新規需要の想定については実態を反映するべく精緻に行った。また単に経済効果の結果を示すだけでなく、可能な限り前提条件やその算出方法を本稿内に明示することを心がけた。

*2「ARE」とは阪神タイガースの2023年スローガン「Aim! Respect! Empower!」の略称である。

*3 株式会社FFGビジネスコンサルティング(2018)「福岡ソフトバンクホークスの経済波及効果」、関西社会経済研究所(2003)「阪神タイガース優勝の経済効果を検証する」、中国電力エネルギア総合研究所(2017),「2016 年の広島東洋カープの経済効果~25年ぶりのリーグ優勝の影響~」、同(2019)「2018年の広島東洋カープの経済効果~リーグ3連覇と2年ぶりの日本シリーズ進出の影響~」、北海道銀行(2016)「爆ぜたファイターズ、2016年の経済効果は260億円超」、宮本勝浩(2023)「阪神タイガース2023年『アレ』の経済効果」など。

*4なお、今回取り扱う「優勝の経済効果」では、タイガースが優勝することで追加的に発生する需要のみを対象とする。例えば、優勝しようが最下位であろうが球場に毎日足を運ぶファンのチケット代は、優勝の経済効果にはならない。ただしこの人が優勝を祝して平時よりもビールを追加的に1杯多く飲むことにすれば、このビール代は優勝の経済効果となる。また、今回の計測では、クライマックスシリーズ・日本シリーズについては不確定要素が大きいため、分析対象としていない。

1. 球場観戦者の消費

ここでは、球場観戦者による消費を基にした優勝の経済効果を考える。球場観戦者による消費は、球場観戦者数に一人当たりの単価を乗じて求められる。これらを優勝しなかった場合(以下「平時」と呼ぶ)と優勝した場合について想定し、その差分を優勝によって発生する新規需要と捉える。

1-1. 球場観戦者数の想定

まず平時と今年の球場観戦者数を確認する。図1は、2005年以降の阪神タイガース主催ゲームの観客動員数の推移を示したものである 。また表1は、平時の観客動員数と2023年の観客動員数(推計値)を比較したものである。コロナ禍の影響(2020~21年)を除いた平時の観客動員数は、前回優勝の翌年となる2006年から2019年の1試合当たり平均40,861人に2023年の主催ゲーム数である71試合を乗じて、290万1,110人とする。今年の観客動員数は、9月10日までの実績値をベースとして、残り試合数に足下の観客動員数(42,600人)を乗じた人数を加え、291万5,262人と推計する。両者の差である14,152人(年間ベース)を優勝によって増加した観客数と考える。

 

図1 2005年以降の阪神タイガース主催ゲーム観客動員数の推移:単位:人

(注)2023年は推計値。以下同様。

(出所)日本野球機構ホームページ、プロ野球Freakホームページより筆者作成

 

表1 平時と2023年の比較:観客動員数:単位:人

(出所)日本野球機構ホームページ、プロ野球Freakホームページより筆者作成

なお後掲の参考表1には、2005年以降の阪神タイガースの公式戦順位、主催試合数、観客動員数、1試合平均観客数を示している

 

1-2. 球場での消費単価の想定

次に、球場観戦時の消費項目として、チケット代、交通費、飲食費、グッズ等購入費の4項目について、それぞれの消費単価を考える。

チケット代は、平時・今年ともに1試合1人あたり3,653円とする。チケット料金は、球場・席種・曜日等によって異なるが、今回は阪神甲子園球場のチケット料金表をもとに、座席数・日数等を考慮して算出した。チケット代は全て兵庫県の需要となる。

交通費、飲食費、グッズ等購入費は、MURC(2022)でのアンケート調査結果を平時の単価と想定し、交通費2,825円、飲食費2,064円、グッズ等購入費1,862円とする。これに対して、今年の消費単価では、足下の物価上昇を考慮して消費者物価指数の伸び(近畿地区、2023年7月、対前年同月比)を乗じる。事実、阪神甲子園球場内で販売されている生ビールやカレー、弁当など各種商品も2023年に一部値上げとなった 。さらにグッズ等購入費については、タイガースの好成績による売上の伸びを考慮し、平時に比べて1.5倍と想定する 。この結果、今年の消費単価は交通費2,921円、飲食費2,182円、グッズ等購入費を2,961円となる。飲食費とグッズ等購入費は全て兵庫県の需要となる。

なお阪神甲子園球場までの交通費の内訳は、鉄道旅客輸送(鉄道)と道路旅客輸送(バス・タクシー等)に分かれる。また兵庫県以外から球場に訪れた場合、出発地で交通費の支出が発生することになる。まず交通手段については、甲子園来訪者の約8割が甲子園駅を利用することから、8割を鉄道旅客輸送、残りの2割を道路旅客輸送に割り当てる。道路旅客輸送は、全て兵庫県で発生する需要とみなす。鉄道旅客輸送は、甲子園駅に到着する際には球場観戦者の出発地に需要が発生し、甲子園駅を出発する際には兵庫県で需要が発生すると考える。出発地の人口分布は、地域別の阪神ファンの人口シェアに従うと想定する。

またグッズ等購入費2,961円の内訳としては、選手名が入ったレプリカユニフォームやタオル等の繊維製品が83%、選手アクリルスタンドや缶バッジ、試合終了後の演出時に用いられるペンライトなどの雑貨類が17%を占めると想定する。この割合は、商品単価および店舗の売上ランキングをもとに算出した。

1-3. 結果

1-1の球場観戦者数と1-2の消費単価の想定を乗じると、平時と今年それぞれの球場観戦者による消費支出額が算出できる。算出結果をまとめると表2のようになる。球場観戦者による消費は、平時に比べて39.7億円押し上げられる。

「甲子園 ビールが700→750円に 甲子園カレーも値上げ 昨今の社会情勢により」デイリースポーツ(2023年2月28日)

「首位快走の阪神タイガース…岡田監督の「そらそうよ」「アレ」グッズも好調、売上額50%増」読売新聞オンライン(2023年6月9日)

表2 平時と2023年の比較:球場観戦時における消費の1試合単価と年間消費支出額

(出所)MURC(2022)等より筆者作成

 

2. 球場外での消費

次に、球場外での消費を考える。この推計は前節と同様に、消費を行う阪神ファンの人数と追加的な消費の単価の積として算出する。消費品目としては飲食費とグッズ等購入費を対象とする。飲食費は、阪神ファンが勝利を祝して、平時に比べて追加的に飲食する際の支出額がこれにあたる。またグッズ等購入費は、阪神タイガース関連グッズ、優勝記念グッズ、スポーツ新聞、雑誌等を購入する際の支出額である。また、阪神百貨店や家電量販店ジョーシンなどが実施する優勝セールについても新規需要として別途想定する。

2-1. 阪神ファン人口の想定

優勝を契機として球場外での消費を行う阪神ファンが全国に何人いるのか?これについては中央調査社が毎年実施している「人気スポーツ調査」の結果を用いる。この調査には「日本のプロ野球チームの中で、あなたが一番好きなチームはどこですか」という設問があり、全国および地域別に結果が示されている。2023年の調査結果によると、一番好きなプロ野球チームは1位巨人(得票率19.7%)、2位阪神(同9.6%)となっている。しかし地区別では結果が異なり、関西では1位阪神(関西内での得票率40.3%)、2位巨人(同10.5%)となっている。関西での圧倒的なタイガース人気を裏付ける結果となっている。

この地区別の阪神ファン率を各県の20歳以上人口に乗じると、各県の阪神ファンの人口を推計することができる。ここで計算のベースを20歳以上人口としているのは「人気スポーツ調査」の調査対象が20歳以上となっているためであるが、この想定で計算すると全国に阪神ファンが875万人いることになり、実感に比して多すぎるように思われる。他方、前述のMURC(2022)では全国の阪神ファン人口を404万人とする調査結果を示している。

そこで今回の推計では、まず中央調査社(2023)の調査結果から得られる地区別ファン比率と府県別人口を用いて阪神ファン人口の地域別シェアを算出する。次にこのシェアをMURC(2022)の調査結果である全国の阪神ファン人口(404万人)に乗じることによって、地区別阪神ファン人口を推計する。

上記の手順により計算した府県別阪神ファン人口の結果が表3の最右列に示されている。例えば大阪府の阪神ファン人口は137.1万人となる。これによると大阪府の総人口880万人の約15%であり、約大阪府民の6.7人に1人が阪神ファンということになる。

表3 地域別阪神ファン人口の推計:単位:人

(出所)中央調査社、MURCのアンケート調査結果および総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」より筆者作成

 

2-2. 消費単価の想定

次に球場外での消費として、飲食費とグッズ等購入費の消費単価を想定する。

飲食費については、関西社会経済研究所(2003)での想定を踏襲し、阪神ファン一人当たり年間1万円を追加支出すると想定する。

またグッズ等購入費については1,000円を追加的に支出すると想定する。1-2で示した球場観戦者によるグッズ等購入費の平時と今年の差(1,099円)に近い値としている。なおここでの追加的グッズ等購入費1,000円の内訳としては、食料品10%、繊維製品40%、雑貨類40%、書籍・雑誌・映像商品等10%とする。この割合も1.2と同様に商品単価と店舗売上ランキングを参考に想定しているが、球場での応援グッズが多い球場内での購入品目とは構成が異なっている。

2-3. 結果

2-1の地域別阪神ファン人口と2-2の消費単価の想定を乗じると、各地域の阪神ファンが優勝に伴い支出する追加的な飲食費とグッズ等購入費を算出できる。算出結果をまとめると表4のようになる。優勝に伴う全国の阪神ファンによる追加的飲食費は404億円、グッズ等購入費は40.4億円となる。

推計に用いたデータの詳細は後掲参考表2に示している。

表4 各地域の阪神ファンによる球場外での追加的消費

(出所)筆者作成

 

2-4. 優勝セール

阪神百貨店や家電量販店ジョーシンなどが実施する優勝セールについては、関西社会経済研究所(2003)での想定を踏襲し、売上を43.4億円とする。なお優勝セール売上の大半を占める阪神百貨店は、大阪府の梅田本店と兵庫県3店舗(尼崎・西宮・御影)でセールを行う。そこで地域別シェアを2022年度の各店舗売上高シェアに基づき、大阪府87.8%と兵庫県12.2%に按分する。

3.優勝の経済効果

1節および2節の想定を前提とし、APIR関西地域間産業連関表を用いて、優勝の経済効果を算出する。

3-1. 新規需要の整理

ここまで阪神タイガース優勝による新規需要について、球場観戦者の消費と球場外の消費及び優勝セールに分けて検討してきた。これらを支出項目別に整理すると表5のようになる。球場観戦者の消費は39億7,300万円、球場外での消費は444億4,000万円、優勝セール等は43億4,300万円、合計は527億5,300万円となる。

表5 優勝により発生する新規需要の想定

(出所)筆者作成

 

表5では支出項目別の総額を示しているが、これをAPIR関西地域間産業連関表に適用する際には、新規需要の発生地域と産業連関表の部門分類に対応させて按分しなければならない。参考表3に各支出項目の金額を地域別・部門分類別に按分した結果を示している。

3-2. 経済効果(全国、地域)

表5に示した新規需要を基に、経済効果を計測したのが表6及び図2である。ここでは新規需要発生による効果(直接需要)と、直接需要を満たすべく追加的に発生する間接的な効果、さらに所得増により発生する需要(1次・2次の波及効果)に分けて示している。両者の合計が経済効果の総額となる。

図表に示すように、阪神タイガース優勝の全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円となり、うち直接効果は465億8,700万円、間接効果は585億3,800万円となる。3-1で示した新規需要額527億円に対して、直接効果が小さくなっているのは、関西外からの輸入・移入で新規需要を賄っているためである。

表6 地域別経済波及効果:単位100万円、%

(注)表中のその他は関西2府8県を除く都道府県を指す。

(出所)筆者作成

 

前述の効果は全国ベースの経済効果であるが、重要なのはどの府県で経済効果が発生しているかである。図2は阪神タイガース優勝の地域別波及効果を見たものである。関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円(65.3%)であるが、関西を除くその他地域では364億2,800万円(34.7%)となる。全体の効果のうち、関西には65.3%、その他地域には34.7%が帰属していることになる。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その内訳は直接需要が81億5,200万円にとどまり、その大部分が間接効果(282億7,600万円)となっている。すなわち、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他地域に一定程度の需要が発生していることを意味している。

図2 地域別にみた経済波及効果:単位:100万円

(出所)筆者作成

 

関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)、兵庫県は172億7,000万円(16.4%)と圧倒的に2府県に効果が集中している。次いで京都府が78億1,500万円(7.4%)、滋賀県が37億6,400万円(3.6%)、奈良県が34億5,000万円(3.3%)、和歌山県が26億7,300万円(2.5%)と続く。

4.分析の整理と含意

以上の分析を整理し、得られた含意は以下の通りである。

  1. 阪神タイガース優勝により発生する新規需要を(1)球場観戦時の消費及び(2)球場外の消費(優勝セール含む)に分けて想定した上で、APIR関西地域間産業連関表を用いて経済波及効果を計測した。計測結果は、全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円、うち直接効果465億8,700万円、間接効果585億3,800万円となった。
  2. われわれの分析の特徴は、どの府県で経済効果が発生しているかを見ることができる点にある。関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円、関西を除くその他地域では364億2,800万円となる。全体の効果のうち、関西には65.3%、その他地域には34.7%が帰属している。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その大部分が間接効果(282億7,600万円)となっており、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他府県で一定程度の需要が発生していることを意味している。
  3. 関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)、兵庫県は172億7,000万円(16.4%)と圧倒的に2府県に効果が集中している。次いで京都府が78億1,500万円(7.4%)、滋賀県が37億6,400万円(3.6%)、奈良県が34億5,000万円(3.3%)、和歌山県が26億7,300万円(2.5%)と続く。
  4. 先行研究と比較すると、宮本(2023)では、今回の阪神優勝の全国での経済効果を969億1238万円、関西での経済効果はこのうちの9割の872億2,114万円と試算している。われわれの計算結果と比較すると、全国での効果は同程度であるが、関西での効果は宮本推計のほうが大きい。この違いは、新規需要の想定の差異もあるが、計算に用いる産業連関表のタイプが異なる(APIR関西地域間産業連関表では、関西と全国他地域など地域間交易を考慮している)点が影響していると考えられる。
  5. また、関西社会経済研究所(2003)によれば、2003年の阪神タイガース優勝の経済効果(直接需要のみ)を953億3,000万円と計測している。これに比べると今回の経済効果(直接需要のみ)はさほど大きなものでないが、その理由としては関西の阪神ファン数を318万人(表4参照)としており、前回の723万人に比してかなり低いことが影響している 。
  6. 5.で示したように阪神のファン数は前回に比べて減少しているにもかかわらず、経済効果としては一定程度の効果をあげている。これらから得られる含意としては、SNS等を用いた新たなファン層の拡大やリピーター率の向上によりファン数の減少トレンドを抑制し、加えてファンサービスの高付加価値化による消費単価の向上が重要となろう。

ファン数が減少した要因としては、長期低迷の後の優勝で爆発的なフィーバーとなった2003年に比べて、近年のタイガースの成績はおおむね上位であったことや、娯楽の多様化でプロ野球人気が抑制的であること、等が考えられる。

参考文献

株式会社FFGビジネスコンサルティング(2018),「福岡ソフトバンクホークスの経済波及効果」(最終閲覧日:2023年9月14日)。

関西社会経済研究所(2003),「阪神タイガース優勝の経済効果を検証する」(最終閲覧日:2023年9月14日)。

中央調査社,「人気スポーツ調査」各年版(終閲覧日:2023年9月14日)。

中国電力エネルギア総合研究所(2017),「2016年の広島東洋カープの経済効果~25年ぶりのリーグ優勝の影響~」,エネルギア地域経済レポート No.512(最終閲覧日:2023年9月14日)。

中国電力エネルギア総合研究所(2019),「2018年の広島東洋カープの経済効果~リーグ3連覇と2年ぶりの日本シリーズ進出の影響~」,エネルギア地域経済レポート No.535(最終閲覧日:2023年9月14日)。

北海道銀行(2016),「爆ぜたファイターズ、2016年の経済効果は260億円超」(最終閲覧日:2023年9月14日)。

三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社(2022),「【速報】2022 年スポーツマーケティング基礎調査」(最終閲覧日:2023年9月14日)。

宮本勝浩(2023),「阪神タイガース2023年『アレ』の経済効果」(最終閲覧日:2023年9月14日)。

本レポートは、執筆者の見解に基づき作成されたものであり、当研究所の見解を示すものではありません。

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