都道府県別訪日外客数と訪問率:10月レポート No.53

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ABSTRACT

【ポイント】

  • JNTO訪日外客統計によれば、10月の訪日外客総数(推計値)は251万6,500人、2019年同月比+0.8%と初めてコロナ禍前を上回った。なお、中国人客を除いた総数は226万200人(同+28.0%)で、4カ月連続でコロナ禍前を上回っている。
  • 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば8月は215万7,190人となった(2019年同月比-14.4%)。うち、観光客は189万7,129人となり、コロナ禍前の8割強(同-14.0%)を回復。また、商用客は7万4,600人(同-34.0%)、その他客は18万5,461人(同-7.4%)であった。

【トピックス1】

  • 関西10月の輸出額は前年同月比-8.8%と6カ月連続の減少。また、輸入額も同-14.9%と7カ月連続で減少し、6カ月連続で2桁のマイナス。輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は9カ月連続で黒字を維持した。
  • 10月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は65万5,571人で、初めてコロナ禍前を回復した。
  • 9月のサービス業の活動は悪化だが、持ち直しを維持。第3次産業活動指数は3カ月ぶりに、対面型サービス業指数は3カ月連続でいずれも前月比低下。また、観光関連指数も3カ月ぶりに同低下した。

 

【トピックス2】

  • 8月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,017.0千人泊。2019年同月比では8カ月連続で減少し、前月から減少幅は拡大。なお、2府4県ベースでも2カ月ぶりに減少した。
  • うち、日本人延べ宿泊者数は9,058.2千人泊と5カ月連続で2019年同月の水準を下回っており、回復ペースは鈍化。一方、外国人延べ宿泊者数は2,958.8千人泊で、2019年同月比+3.7%とコロナ禍前を初めて回復した。

 

【トピックス3】

  • 2023年7-9月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆614億円。2019年同期比-0.4%と2四半期連続のマイナスだが、4-6月期からマイナス幅は縮小。夏季休暇による旅行需要の増加もあり、宿泊旅行消費額が増加に寄与した
  • うち、7-9月期の宿泊旅行消費額は8,511億円で、2019年同期比+6.3%と2四半期ぶりのプラス。一方、日帰り旅行消費額は2,103億円で、同-20.5%と減少が続いているが、4-6月期(同-49.2%)からマイナス幅は縮小した。

DETAIL

ポイント

11月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶ JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、10月の訪日外客総数(推計値)は251万6,500人であった(前月:218万4,300人)。韓国や台湾など中国を除くアジア地域からの訪日外客数の増加もあり、2019年同月比+0.8%と初めてコロナ禍前を上回った(前月:同-3.9%)。なお、中国人客を除いた総数は226万200人(同+28.0%)、4カ月連続でコロナ禍前を上回っている。また、同月の出国日本人数は93万7,700人で、3カ月ぶりに100万人を下回る水準となった。19年同月比では-43.6%と前月(同-42.6%)からマイナス幅は幾分拡大した。

図1  訪日外客数及び出国日本人数の推移

出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成

注) 2022年まで確定値、23年1-8月は暫定値、23年9-10月は推計値

▶ 訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると、10月は韓国が63万1,100人(2019年同月比+219.9%)と最多であった。次いで台湾が42万4,800人(同+2.7%)、中国が25万6,300人(同-64.9%)、米国が21万1,900人(同+38.2%)、香港が17万9,300人(同-0.7%)と続く(図2及び表4)。

 

図2 国・地域別コロナ禍前の回復比較:2023年10月

出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成。

注) 韓国の大幅増加は19年同月の日韓関係悪化の影響が含まれる。

 

目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、8月は215万7,190人となった(2019年同月比-14.4%)(図3及び表5)。うち、観光客は189万7,129人となり、コロナ禍前の8割強(同-14.0%)を回復した。商用客は7万4,600人(同-34.0%)、その他客は18万5,461人(同-7.4%)であった。

▶ 観光客のTOP5を国・地域別にみれば、8月は韓国が54万959人(2019年同月比+105.8%)と最多であった。次いで台湾が38万3,880人(同-4.5%)、中国が28万4,411人(同-68.7%)、香港が20万2,911人(同+8.9%)、米国が12万2,898人(同+31.2%)と続く(表5)。19年同月比では米国が7カ月連続で、韓国、香港は2カ月連続でそれぞれプラスとなった。

 

図3  目的別訪日外客数推移

出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成

注) 目的別訪日外客数については訪日外客数(推計値)から2カ月遅れて発表される。「観光客」とは、短期滞在の入国者から「商用客」を引いた入国外国人で、親族友人訪問を含んでいる。「その他客」とは、観光、商用目的を除く入国外国人で、留学、研修、外交・公用などが含まれる。

 

▶ 国土交通省が公表した2023年冬期運航スケジュール(10月29日~24年3月30日)によれば、国際線の旅客便は週4,311便とコロナ禍前の8割程度(19年同期比-17%)を回復した。航空便を方面別にみれば、韓国が週1,130便(同+45%)、米国が週326便(同+10%)とコロナ禍前を上回った。また、台湾は週543便(同-15%)、香港は週369便(同-12%)とコロナ禍前を回復しつつある。一方、中国は週604便と夏期スケジュール(151便)より増加しているものの、依然コロナ禍前の4割程度(同-57%)の回復にとどまっており戻りは遅い。このため、中国を除くアジア地域を中心に引き続き回復が見込まれる一方、中国人客の回復は緩やかなものにとどまろう。

 

トピックス1

10月関西の財貨・サービス貿易及び9月のサービス産業動向

関西10月の輸出額は前年同月比-8.8%と6カ月連続で減少し、前月(同-2.2%)から減少幅が拡大した。また、輸入額も同-14.9%と7カ月連続で減少し、6カ月連続の2桁マイナスとなった(前月:同-15.7%)。輸出入いずれも減少したが、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、10月の貿易収支は+1,794億円と、9カ月連続の黒字。黒字幅は同+171.2%拡大した(図4)。

 

図4  関西 対世界貿易の推移

出所:「大阪税関貿易速報資料:近畿圏」より筆者作成

 

対中貿易動向をみると、関西10月の対中輸出は前年同月比-4.4%と6カ月連続で減少だが、減少幅は前月(同-7.1%)から縮小した。輸出減に寄与したのは半導体等電子部品や電気回路の機器等であった。また、対中輸入は同-14.5%と6カ月連続の減少(前月:同-5.9%)。輸入減に寄与したのは衣類及び同附属品や事務用機器等であった(図5)。2023年5月以降、対中貿易の停滞が続いている。

図5 関西 対中貿易の推移

出所:「大阪税関貿易速報資料:近畿圏」より筆者作成

 

10月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は65万5,571人であった(前月:59万1,610人)。2019年同月比では+0.6%と、前月(同-1.4%)からプラスに転じ、初めてコロナ禍前を回復した。また、同月の日本人出国者数は16万2,984人であった。2019年同月比では-49.5%と、前月(同-47.4%)からマイナス幅は幾分拡大した(図6)。

 

図6  関西国際空港 訪日外客入国者数推移

出所:出入国管理統計より筆者作成。2023年10月値は速報値

 

9月のサービス業の活動は悪化だが、持ち直しの傾向は維持。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、9月は101.3で前月比-1.0%低下し、3カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.7%)。また、対面型サービス業指数*は96.3で同-1.2%低下し、2カ月連続のマイナス(前月:同-0.5%)。うち、飲食店、飲食サービス業(同-7.4%、3カ月ぶり)が低下に寄与した。結果、7-9月期の第3次産業活動指数は101.7で、前期比+0.7%上昇し、3四半期連続のプラス(4-6月期:同+0.6%)。また、対面型サービス業は97.2で、同+3.8%上昇し、2四半期ぶりのプラスとなった(4-6月期:同-0.2%)。

観光関連指数**(2015年平均=100)は、9月は91.7と前月比-1.9%低下し、3カ月ぶりのマイナス(前月:同+3.8%)(図7)。うち、旅行業(同-18.1%、3カ月ぶり)が低下に寄与した。結果、7-9月期は91.8で、前期比+2.0%上昇し、2四半期ぶりのプラスとなった(4-6月期:同-0.9%)。

図7  観光関連 対面型サービス 第3次産業:2015年=100

出所:経済産業省「第3次産業活動指数」より筆者作成

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

トピックス2

8月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶ 観光庁によれば、8月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,017.0千人泊であった(表1)。2019年同月比では-5.7%と8カ月連続で減少し、前月(同-3.1%)から減少幅は拡大した。なお、2府4県ベースでも同-1.4%と2カ月ぶりの減少となっている。

▶ 8月の日本人延べ宿泊者数は9,058.2千人泊となった。2019年同月比-8.4%と5カ月連続で減少し、前月(同-4.3%)から減少幅は拡大。日本人宿泊者の回復ペースは鈍化している(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府3,023.7千人泊、京都府1,722.4千人泊、兵庫県1,484.1千人泊、三重県723.6千人泊、和歌山518.1千人泊、滋賀県477.9千人泊、福井県396.6千人泊、鳥取県255.1千人泊、徳島県229.6千人泊、奈良県227.1千人泊であった。2019年同月比をみれば、京都府が同+2.6%と3カ月連続のプラスとなった一方で、その他府県ではマイナスとなった。

 

図8  府県別日本人延べ宿泊者数 推移

 

▶ 8月の外国人延べ宿泊者数は2,958.8千人泊となった。2019年同月比+3.7%と、コロナ禍前を初めて回復した(表1及び図9)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,704.0千人泊、京都府1,041.8千人泊、兵庫県74.6千人泊、和歌山県46.6千人泊、奈良県32.7千人泊、滋賀県20.4千人泊、三重県13.0千人泊、徳島県11.3千人泊、鳥取県9.3千人泊、福井県5.2千人泊であった。2019年同月比でみると、京都府(同+0.5%)と大阪府(同+12.0%)がいずれも2カ月連続のプラスとなった。

 

図9  府県別外国人延べ宿泊者数の推移

 

▶ 関西2府8県延べ宿泊者を居住地別でみると(図10)、県内の延べ宿泊者数は1,812.8千人泊、県外9,881.2千人泊であった。2019年同月比をみれば、県内は同+5.8%と23カ月連続のプラスとなった(前月:同+12.4%)。一方、県外は同-3.5%と前月(同-1.8%)から減少幅が拡大した。

 

図10  関西 居住地別延べ宿泊者比率の推移

 

表1  関西 延べ宿泊者数伸び率:8月

出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成(図8~10及び表1)

 

トピックス3

2023年7-9月期国内旅行消費の動向:関西2府8県

▶ 観光庁によれば、2023年7-9月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆614億円であった(表2)。2019年同期比-0.4%と2四半期連続のマイナスだが、4-6月期(同-16.2%)からマイナス幅は縮小した。夏季休暇による旅行需要の増加もあり、宿泊旅行消費額が増加に寄与した。

▶ うち、7-9月期の宿泊旅行消費額は8,511億円で、2019年同期比+6.3%と2四半期ぶりのプラス(4-6月期:同-0.4%)(図11及び表2)。消費額のトップ5を府県別にみれば、大阪府が2,431億円(同+15.9%)と最も多く、次いで京都府が1,547億円(同+19.5%)、兵庫県が1,544億円(同+2.3%)、三重県が895億円(同+17.6%)、和歌山県が674億円(同-3.4%)と続く。19年同期比をみれば、福井県、奈良県、和歌山県と徳島県以外の府県がプラスとなり、中でも大阪府京都府宿泊旅行消費額の増加に大きく寄与した。

 

図11  関西2府8県 宿泊旅行消費額の推移

 

▶ うち、7-9月期の日帰り旅行消費額は2,103億円となった。2019年同期比-20.5%と4-6月期(同-49.2%)からマイナス幅は縮小したが、宿泊旅行消費額に比して回復のペースは遅い(図12及び表2)。消費額のトップ5を府県別にみれば、大阪府が478億円(同-29.7%)と最も多く、次いで京都府が405億円(同+17.3%)、兵庫県が364億円(同-31.2%)、福井県が228億円(同+189.8%)、滋賀県が213億円(同+5.4%)と続く。19年同期比でみれば、福井県滋賀県京都府奈良県(同+76.9%)はそれぞれプラスとなったが、その他府県ではマイナスとなった。

 

図12  関西2府8県 日帰り旅行消費額の推移

(注) 宿泊旅行、日帰り旅行ともに、観光・レクリエーション目的以外に帰省・知人訪問等、出張・業務目的を含む。

2022年、23年4-6月期までのデータは確報。23年7-9月期は速報(上図も同様)。

出所:観光庁『旅行・観光消費動向調査』より作成。

 

表2  関西 国内旅行消費額:2023年7-9月

出所:観光庁『旅行・観光消費動向調査』より作成。

 

表3  2023年10月 訪日外客数 (JNTO推計値) (対2019年比)

 

 

表4  2023年8月 目的別訪日外客数 (JNTO暫定値) (対2019年比)

注) 目的別訪日外客数の定義については、図3注参照。

出所: 日本政府観光局(JNTO)、2023年11月15日付より筆者加工

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