ABSTRACT
【ポイント】
- JNTO訪日外客統計によれば、1月の訪日外客総数(推計値)は268万8,100人、2019年同月比では-0.0%と2カ月ぶりに小幅マイナスに転じたが、コロナ禍前とほぼ同程度となった。なお、国・地域別では韓国、台湾とオーストラリアが単月で過去最高を記録した。
- 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば11月は244万890人。観光客は220万6,883人となり、2カ月連続で200万人超の水準となった。
- 令和6年能登半島地震は新潟県、富山県、石川県、福井県の観光業に大きな影響を与えている。政府は当該地域で落ち込んだ観光需要を喚起するために、3月より「北陸応援割」を開始した。喚起策により、国内旅行者及び訪日旅行者の増加が期待されよう。
【トピックス1】
- 関西1月の輸出は春節休暇の時期のズレも影響し、9カ月ぶりの前年比増加。一方、輸入は10カ月連続で減少した。貿易収支は12カ月ぶりの赤字となった。
- 1月の関西国際空港への訪日外客数は70万402人と、2カ月連続で70万人超の水準。低調なアウトバウンド需要に比してインバウンド需要は堅調に推移している。
- 12月のサービス業の活動は小幅改善だが、足踏みの状態が続く。第3次産業活動指数は4カ月ぶりの前月比上昇。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。観光関連指数も年末の旅行需要増加の影響もあり、旅行業や宿泊業が上昇に寄与し、4カ月ぶりの同上昇となった。
【トピックス2】
- 11月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,949.3千人泊で、2019年同月比+10.0%と3カ月連続の増加となった。
- うち、日本人延べ宿泊者数は8,124.0千人泊、2019年同月比+1.3%と3カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,825.3千人泊となり、同+34.6%と4カ月連続で増加した。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は着実に増加している。
【トピックス3】
- 2023年10-12月期における関西2府8県の国内旅行消費額(速報)は1兆1,331億円、19年同期比+12.4%と3四半期連続のプラス。23年通年では4兆1,034億円となり、コロナ禍前(19年比-0.6%)をほぼ回復した。
- 国内旅行消費額のうち、10-12月期の宿泊旅行消費額は9,101億円で2019年同期比+21.2%となり、2四半期連続のプラス。一方、日帰り旅行消費額は2,230億円。2019年同期比-13.1%と7-9月期(同-21.4%)からマイナス幅は縮小したものの、宿泊旅行消費額に比して回復ペースは緩慢である。
DETAIL
ポイント
2 月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO 訪日外客統計によれば(図 1 )、2024 年 1 月の訪日外客総数(推計値)は 268 万 8,100 人であった(前月:273万 4,000 人)。2019 年同月比では-0.0%と 2 カ月ぶりに小幅マイナスに転じたが、コロナ禍前とほぼ同程度となった(前月:同+8.2%)。なお、訪日中国人客を除いた総数では 227 万2,200 人で、同+17.4%と 7 カ月連続のプラスとなった。同月の出国日本人数は 83 万 8,600 人であった(前月:94 万7,900 人)。19 年同月比では-42.3%と前月(同-44.6%)から減少幅は小幅縮小したものの、依然回復ペースは緩慢である。
▶訪日外客数のトップ 5 を国・地域別にみると、韓国が85 万 7,000 人(2019 年同月比+10.0%)で最多であった。次いで台湾が 49 万 2,300 人(同+27.0%)、中国が 41 万 5,900人(同-44.9%)、香港が 18 万 6,300 人(同+20.7%)、米国が13 万 1,800 人(同+27.7%)と続く。なお、韓国、台湾とオーストラリアが単月で過去最高を記録した。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、2023 年 11 月は 244万 890 人となった(2019 年同月比-0.0%)(図 2 )。
うち、観光客は 220 万 6,883 人となり、2 カ月連続で 200万人超の水準(同+2.9%)。商用客は 11 万 6,855 人(同 32.0%)、その他客は 11 万 7,152 人(同-5.6%)であった。19年同月比では、観光客は 2 カ月連続でコロナ禍前を上回っているが、その他客は 9 割超、商用客は 7 割程度の回復にとどまっている。
▶観光客の TOP5 を国・地域別にみれば、11 月は韓国が 62 万 231 人(2019 年同月比+276.9%)と最多であった。次いで台湾が 39 万 623 人(同+4.2%)、中国が 20 万 4,486 人(同 69.8%)、香港が 19 万 7,019 人(同+1.1%)、米国が 16 万 9,383 人(同+36.8%)と続く。
▶令和 6 年能登半島地震は新潟県、富山県、石川県、福井県の観光業に大きな影響を与えている。このため、政府は当該地域で落ち込んだ観光需要を喚起するために、3 月より「北陸応援割」を開始した。喚起策により、国内旅行者及び訪日旅行者の増加が期待されている。一方で、北陸地域の国籍別宿泊者比率をみれば、全国シェアに比して日本人が圧倒的な比率を占めており、外国人のシェアは低い(図 3)。日本人宿泊者が伸び悩む一方(後掲トピックス2参照)、増加傾向が続く外国人宿泊者をいかに取り込むかが重要となろう。
トピックス1
1 月関西の財貨・サービス貿易及び 12 月のサービス産業動向
▶関西 1 月の輸出は前年同月比+6.2%と 9 カ月ぶりに増加した(図4)。中国の春節休暇の時期のズレも影響し、前月(同-1.9%)から伸びはプラスに転じた。一方、輸入額は同-9.0%と 10 カ月連続で減少した(前月:同-11.9%)。結果、関西の貿易収支は-408 億円と 12 カ月ぶりの赤字となった(同-85.4%)。
▶対中貿易動向をみると(図 5)、関西 1 月の対中輸出は前年同月比+21.8%と前月(同+3.3%)から大幅加速し、2 カ月連続で増加した。輸出増に寄与したのは半導体等製造装置やプラスチック等であった。一方、対中輸入は同-10.4%と 9 カ月連続の減少(前月:同-6.6%)。輸入減に寄与したのは通信機や無機化合物等であった。
▶1 月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は 70 万 402 人と、2 カ月連続で 70 万人超の水準となった(前月:72 万 1,677人)。2019 年同月比では+0.8%と 2 カ月連続のプラス(前月:同+11.9%)。インバウンド需要は堅調に推移している。日本人出国者数は 15 万 652 人であった(前月:17 万 7,085 人)。2019 年同月比では-47.7%と、前月(同-48.6%)からマイナス幅は小幅縮小したものの、依然低調が続いてる。インバウンド需要に比してアウトバウンド需要の回復のペースは緩慢である。
▶12 月のサービス業の活動は小幅改善だが、足踏みの状態が続く。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、12月は100.2で前月比+0.7%上昇し、4 カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-1.4%)。また、対面型サービス業指数*は 95.3 となり同+5.6%上昇し、2 カ月ぶりのプラス(前月:同-7.6%)。うち、運輸業(同+6.7%、2 カ月ぶり)や飲食店、飲食サービス業(同+2.5%、4 カ月ぶり)が上昇に寄与した。10-12 月期の第 3 次産業活動指数は 100.2、前期比-1.5%低下し、4 四半期ぶりのマイナス(7-9 月期:同+0.7%)。また、対面型サービス業は 94.4、同-2.8%低下。2 四半期ぶりのマイナス(前期:同+3.7%)。
(2015 年平均=100)は、90.6 と前月比+2.3%上昇し、4 カ月ぶりのプラス(前月:同-2.0%)(図 7)。年末の旅行需要増加の影響もあり、旅行業(同+36.0%、3 カ月ぶり)や宿泊業(同+7.3%、3 カ月ぶり)が上昇に寄与した。10-12 月期では 89.8、前期比-2.4%低下し、2 四半期ぶりのマイナス(7-9 月期:同+2.3%)。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
11 月延べ宿泊者数の動向:関西 2 府 8 県
▶観光庁によれば、11 月の関西 2 府 8 県の延べ宿泊者数(全体)は 11,949.3 千人泊であった。2019 年同月比+10.0%と 3 カ月連続のプラス(前月:同+10.1%)。
▶日本人延べ宿泊者数は 8,124.0 千人泊、2019 年同月比+1.3%と 3 カ月連続の増加だが、前月(同+4.7%)から増加幅は縮小(図 8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 2,665.7 千人泊、京都府 1,923.6 千人泊、兵庫県1,263.2 千人泊、三重県 671.3 千人泊、滋賀県 367.4 千人泊、和歌山県 338.5 千人泊、福井県 279.8 千人泊、奈良県 230.6千人泊、鳥取県 208.2 千人泊、徳島県 175.7 千人泊であった。2019 年同月比でみると、京都府(同+11.0%)が 6 カ月連続のプラス。また、大阪府(同+3.1%)、兵庫県(同+14.4%)、奈良県(同+8.7%)が、それぞれ 3 カ月連続でプラスとなった。
▶外国人延べ宿泊者数は 3,825.3 千人泊となった。2019 年同月比+34.6%と 4 カ月連続で増加し、前月(同+23.1%)から増加幅は拡大(表 1 及び図 9)。日本人宿泊者に比して、外国人宿泊者は着実に増加している。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 2,040.8 千人泊、京都府 1,446.2 千人泊、兵庫県 113.7 千人泊、和歌山県 73.7 千人泊、奈良県 39.1 千人泊、滋賀県 34.1 千人泊、三重県 22.7 千人泊、徳島県 17.0 千人泊、鳥取県 10.1 千人泊、福井県 8.0 千人泊であった。2019年同月比でみると、大阪府(同+44.6%)、京都府(同+34.2%)はそれぞれ 5 カ月連続で、徳島県(同+10.9%)は 3 カ月連続でいずれもプラス。また、和歌山県(同+14.3%)、兵庫県(同+3.7%)がプラスに転じた。
▶関西 2 府 8 県延べ宿泊者を居住地別でみると(図 10)、県内の延べ宿泊者数は 1,457.8 千人泊(2019 年同月比+14.0%)、県外は 10,108.3 千人泊(同+12.6%)であった。伸びをみれば、県内は 26 カ月連続のプラス。また、県外は 3 カ月連続のプラスとなった。
トピックス3
2023 年 10-12 月期国内旅行消費の動向:関西 2 府 8 県
▶観光庁によれば、2023 年 10-12 月期関西(2 府 8 県ベース)の国内旅行消費額(速報)は 1 兆 1,331 億円であった。2019年同期比+12.4%と 3 四半期ぶりのプラス(7-9 月期:同-1.6%)。結果、2023 年通年では 4 兆 1,034 億円となった(22 年:3 兆5,052 億円)。19 年比では-0.6%と 3 年連続のマイナスだが、22年(同-15.1%)から減少幅は縮小した。COVID-19 が 5 類へ移行し、社会経済活動が正常化したこともあり、旅行需要が回復した。なお、全国の 23 年通年は 21 兆 8,802 億円で(19 年比-0.2%)、政府目標である 22 兆円とほぼ同水準となった。
▶国内旅行消費額のうち、10-12 月期の宿泊旅行消費額は 9,101 億円で 2019 年同期比+21.2%となり、2 四半期連続のプラス(7-9月期:同+5.0%)(図 13 )。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府 2,884 億円(同+24.1%)、京都府 1,905 億円(同+37.4%)、兵庫県 1,658 億円(同+15.7%)、和歌山県 712 億円(同+289.7%)、三重県 499 億円(同-27.0%)、福井県 477 億円(同+38.6%)、奈良県 408 億円(同+35.0%)、鳥取県 252 億円(同+5.4%)、滋賀県 170 億円(同-25.5%)、徳島県 134 億円(同-65.4%)であった。
▶国内旅行消費額のうち、10-12 月期の日帰り旅行消費額は 2,230億円であった。2019 年同期比-13.1%と 7-9 月期(同-21.4%)からマイナス幅は縮小したものの、宿泊旅行消費額に比して回復ペースは緩慢である(図 14 )。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府 605 億円(同-13.0%)、兵庫県 483 億円(同+19.3%)、三重県 320 億円(同+77.2%)、京都府 298 億円(同 50.2%)、滋賀県 202 億円(同-13.0%)、奈良県 98 億円(同 1.2%)、福井県 84 億(同-48.2%)、徳島県 51 億円(同-32.1%)、和歌山県 48 億円(同-2.4%)、鳥取県 42 億円(同-40.4%)、であった。