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「関西経済」の検索結果 [ 16/17 ]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年9月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    8月30日に行われた衆議院総選挙で、民主党を中心とする野党勢力が議席の3分の2を確保した。この結果、今後の経済に対する政策アプローチが大きく変 わることになる。今後の民主党の政策運営については、同党のマニフェストを除いて具体的な金額などを盛り込んだ形での発表はまだ行われていない。ここで は、民主党マニフェストの「工程表」から政策運営が経済にもたらす影響を推計しよう。
    表1は、民主党のマニュフェストの工程表をベースに、景気対策支出額を見たものである。マニフェストでは2009年度に対して最終(2013)年度にな るほど支出金額は明確になるが、それ以外の年では一部支出金額の支出状況は不明確である。そのため、2010年度から12年度の金額については、工程表を ベースに実現可能性を考慮して推計した。
    主な項目は、①子ども手当・出産支援 (同1.3(2013年度時点の所要額5.5兆円)、②暫定税率の廃止(同2.5兆円)、③医療・介護の再生(同1.6兆円)、④高速道路の無料化兆 円)、⑤農業の戸別所得補償(同1.0兆円)などである。要するに家計に対する所得補償型政策が中心となっていることがわかる。

    一方、これらの財政支出の財源は、①予算の組み替えによる無駄な歳出の削減(2013年度時点で9.1兆円)、②「埋蔵金」や資産の活用(同5.0兆 円)、③税制見直し(同2.7兆円)によってファイナンスされることになっている(表2参照)。しかし、2010年度からの早急な実施が困難なものもあ る。特に、公共事業のスリム化や税制改革などである。支出財源が確保できない場合は国債発行によって賄われることになる。
    以上のような支出と財源の見通しから財政バランスの見通しをまとめると、2010年度、2011年度は支出が拡大する一方で、財源の手当てが間に合わないため、財政赤字が拡大することになる(表3上段)。
    GDPに与える影響では、純支出額に着目する必要がある。純支出額の計算には、支出である「埋蔵金」や資産の活用はコストがかからないから考慮しない。 したがって、純支出額は支出措置額から歳出削減額(予算の効率化)・増税額(税制改革)を減じた額となる(表3中段)。またGDP成長率には、この純支出 額の年度間増減幅が影響する(表3下段)。この増減幅が拡大する2010年度、2011年度にはGDP成長率が押し上げられることになる。2012年度、 2013年度には、増税や歳出削減が進み、増減幅が縮小するため、GDP成長率を押し下げることになる。

    最後に、この純支出増減幅を基に、関西経済に対する影響を試算しよう(表4)。試算では、GRP成長率に直接寄与する政策として、子ども手当・医療介護 の再生・農業の戸別所得補償・暫定税率の廃止の4つの政策を取り上げて計算した。また工程表の支出額は日本全国を対象とした額であるため、これに関西の世 帯数割合17.1%を乗じて、関西への影響額としている。さらに、関西経済予測モデルの消費関数の長期消費性向0.464を乗じて追加的消費支出金額を計 算している。これを関西のGRP(89.4兆円、2010年度の予測値)と比較する。この結果、2010年度には0.4%程度、2011年度には0.3% 程度のGRP押し上げ効果となる。しかし、2012年度、2013年度には-0.3%、-0.5%とGRPにマイナス効果をもたらすことになる。

    以上、経済効果を示した。より詳細な分析のためには、家計調査報告に基づいた所得階層別の分析が必要となろう。民主党政権が考える内需、特に、家計消費 の刺激を起点とする経済成長シナリオにより、どのような成長パスが実現されるのか、今後の政策運営動向に注視しなければならない。  (稲田義久・入江啓彰)

    日本
    <7-9月期、内需は久方ぶりにプラス成長に転じるも、持続性に疑問>

    9月11日発表のGDP2次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期年率+2.3%となり、1次速報値(同+3.7%)から下方修正となった。
    実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業在庫品増加である。実質民間企業在庫品増加は1次速報値の前期比-2.0%ポイント(寄与度年率ベース) から同-3.1%ポイントへと下方修正された。在庫調整が想像以上に進展していることを確認した。今後は在庫投資の積み上げが期待され、先行きにとっては 悪くない結果である。
    9月14日の予測では、8月の一部のデータと7月のデータがほぼ更新され、また4-6月期のGDP統計2次速報値が追加されている。支出サイドモデル は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.9%、同年率+3.6%と予測する。
    10-12月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.5%となろう。
    7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-0.8%、実質民間企業設備も同-2.1%といずれも マイナスながら小幅の減少にとどまる。7月の工事費予定額(居住用)と資本財出荷指数は前月比ともにプラスになっており、7-9月期の民間住宅や企業設備 が前期比で安定化する可能性が出てきた。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同-1.0%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比+0.9%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなり、久方ぶりに内需が景気を引き上げる。
    財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%と増加するが、実質輸入は同+1.9%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。
    一方、主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.6%と予測しており、支出サイドからの予測と一致している。また10-12月期を同+3.4%とみている。
    この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.6%、10-12月期が+2.6%となる。
    日本経済は4-6月期以降、内需が小幅ながら緩やかなプラス成長に転じている。しかし、今後は、民主党による補正予算の見直しも含め補正予算の政策効果 が剥落してくるため、経済のプラス成長の持続性には疑問が出ている。2010年度の民主党の消費拡大効果が出る前に一時的にマイナス成長に陥る可能性があ ることを指摘しておく。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    グラフに見るように、8月の雇用統計を更新した時点で超短期モデルは2009年7-9月期の実質GDP成長率を+1.3%と予測している。これは2008年4-6月期以来1年振りのプラス成長である。
    支出サイドから実質GDP成長率が急速に上昇した主な理由の一つには”Cash-For-Clunkers Program” (エコカー購入促進システム)により、自動車購入が増え実質個人消費支出が増えたことが上げられる。超短期モデルは実質耐久財の個人消費支出が2009年 7-9月期に11.9%(前期比年率)伸びると予測し、個人消費支出全体の伸び率を同+2.0%と予測している。エコカー購入促進システムによる購入が自 動車の在庫減になればその分GDP成長率の増加は相殺されるが、新車の生産につながればGDP成長率は高まる。支出サイドからの経済成長率上昇のもう一つ の大きな理由は実質住宅投資が7-9月期に同9.1%伸びると予想されていることによる。これは7月の民間住宅建設支出が2.3%(前月比)と大幅に上昇 したことによる。実質住宅投資の伸び率がプラスに転じるのは2005年10-12月期以来14四半期振りのことである。
    一方、所得サイドからの実質GDP成長率プラス転換の主な理由は2009年4-6月期の統計上の誤差が2,250億ドルと大きくなり、その結果7-9月 期の統計上の誤差も2,280億ドルになると超短期モデルが予測していることである。この統計上の誤差はGDP比率でみると1.6%に相当する。もう一つ の理由は、1-3月期、4-6月期とそれぞれ前期比-14%、同-5%と大きく落ち込んだ賃金・俸給が7-9月期には0%にまで持ち直すと予想されている ことが挙げられる。
    しかし、7-9月期経済のプラス成長の持続性には問題が残る。エコカー購入促進システムが8月24日で終了し、今後の個人消費支出の落ち込みが予想され る。また、住宅市場に回復の兆しが見えたものの今度は商業用不動産市場が悪化していることがある。所得サイドにおいても失業率が8月には9.7%と 1983年以来の高い水準になり、遅行指数とはいいながら労働市場の回復にはまだかなりの時間がかかるとみられ、個人消費支出の鍵をにぎる賃金・俸給の堅 調な伸びが今もって期待できない。このように、米国経済は7-9月期に一旦プラス成長に戻るものの、その持続性には多くの懸念が残る。

    [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]

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    関西エコノミックインサイト 第2号(2009年9月10日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析?関西経済の現況と予測?」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。

    第2号(2009年9月)の概要は以下の通りです。

    1. 2009年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.7%(1次速報値)となり、5四半期ぶりのプラスに転じた。当研究所では日本経済の成長率を09年度-2.6%、10年度+0.6%と予測した。

    2. 関西経済の経済指標をみると、回復と悪化を示すシグナルが相半ばしている。生産は回復の兆しを見せているとはいえ、ピーク時と比較すると水準はまだ低い。また雇用環境は悪化傾向が続いている。

    3. 日本経済の最新予測を織り込み、関西実質GRP成長率は09年度-2.5%、10年度同+0.8%と予測した。前回から09年度を0.7%ポイント下方修正、10年度を1.1%ポイント上方修正した。足下経済の回復と政策効果の見直しを反映した結果である。

    4. 民主党新政権の経済対策案は、短期的には家計消費を底上げするが、公共事業の見直しや増税は経済成長の抑制要因となる。

    5. 民主党政権の政策実施が関西経済に及ぼす影響を試算すると、2010,11年度は実質GRPをそれぞれ+0.4%ポイント、+0.3%ポイント押し上げるが、12,13年度にはそれぞれ-0.3%ポイント、-0.5%ポイントの押し下げとなる。

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    『関西メガ・リージョン活性化構想』シンポジウム(2009.07.09)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    【目的】
    関西は、多様な製造業や学術・研究機関、産業インフラ、さらには文化・歴史などさまざまな集積を有する一方、それらのポテンシャルの活用や中枢機能の発 揮といった面で課題がある。そこで、グローバル競争の激化、アジアをはじめ新興市場の発展、低炭素社会の構築、少子高齢化の進展など、関西経済をめぐる大 きな環境変化のなかで、関西が課題を解決し世界・アジアをリードする地域となるための産業振興方策、都市機能強化方策の立案に向け専門の研究会を設置し取 組む。
    現在、関西が抱える問題点を解消し将来に繋がる成長戦略をたて新たな産業創出 のモデル拠点となることを目指すためには今、国、自治体、民間が連携してクリヤすべき課題を明らかにしなければいけません。その要望に応えたものが近畿経 済産業局が3月に発表した『経済再生拠点化計画?関西メガ・リージョン活性化構想?』であり本構想を読み解くことこそ、足を踏み出す第一歩であります。活 性化グループの研究会を立ち上げる第一弾として、今回、構想に参画の方々にご出席願い、構想に携われた熱い思いを語って頂くことにより、産・官・学が構想 に理解を深めて頂くことを目的にシンポジウムを開催しました。

    ・日時
    2009年7月9日(木) 14時?17時

    ・場所
    リーガロイヤルNCB「淀の間」

    ・シンポジウム名
    未来に開く!アジアの扉、世界の扉。エネルギッシュ関西ここにあり
    『関西メガ・リージョン活性化構想』シンポジウム

    ・主催
    (財)関西社会経済研究所

    ・共催
    近畿経済産業局、(社)関西経済連合会、大阪商工会議所

    ・内容
    1.活性化の概要
    (1)構想の背景と論点      稲田義久氏 甲南大学経済学部教授
    (2)構想の意義と成長戦略   平工奉文氏 経済産業省近畿経済産業局局長
    2.パネルディスカッション
    パネリスト
    木村慎作氏     大阪府副知事
    手代木功氏     大阪医薬品協会会長(塩野義製薬(株)社長)
    畑野吉雄氏     (株)中央電機計器製作所代表取締役
    平工奉文氏     経済産業省近畿経済産業局局長
    町田勝彦氏     大阪商工会議所副会頭(シャープ(株)会長)
    コーディネータ
    稲田義久氏     甲南大学経済学部教授

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    関西エコノミックインサイト 第1号(2009年6月9日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析?関西経済の現況と予測?」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。

    第1号(2009年6月)の概要は以下の通りです。

    1. 関西経済は、世界経済の低迷に伴う輸出の急激な落ち込みにより、総じて停滞している。ただし中国経済に回復の兆しが見られることや、生産・在庫の調整が緩やかに進んでおり、景気の下げ止まりを示唆する指標が出始めている。

    2. 関西経済の実質GRP成長率は2009年度-1.8%、2010年度-0.3%と予測する。景気対策による民間消費の刺激および公的需要の大幅拡大を織り 込んでいるが、それでもなおマイナス成長となる。仮に景気対策が行われなかったとすると、2009年度の関西GRP成長率は-3.7%となる。

    3. 2010年度は景気対策の効果が剥落し、-0.3%と小幅ながらマイナス成長となる。ただし世界経済の回復と関西地域での企業設備投資が堅調であることから、日本経済より落ち込みは緩やかに推移する。

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  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年4月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか?>

    関西経済予測のアウトライン:2009-2010年度
    関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。今回われわれは、日本経済予測と整合的な形で、関西経済についても予測を行った。ベースラインを要約すれば、以下の様である。
    関西の実質GRP成長率は2009年度▲3.2%、2010年度+0.7%と予測する。第77回景気予測では、日本経済の実質GDP成長率について 2009年度▲3.7%、2010年度+1.5%と予測されていることから、関西経済は、日本経済と比較して落ち込み幅は緩やかに留まるが、回復局面では スピード感に欠く、といった予測のストーリーである。
    需要項目の中で、特徴的な予測結果となっているのは企業設備投資である。2009年度▲13.6%、2010年度▲0.8%と予測している。ただし、大阪湾ベイエリア地域での環境関連投資が進めば、上ぶれする可能性があることに注意しておこう。
    関西経済にとっての中国の役割
    また、輸移出については、2009年度▲2.6%、2010年度+1.6%と予測している。関西の輸出においては、アジア、特に中国が大きな役割を担っ ている。ここで、関西における輸出構造を中国を中心に確認しておこう。下図は2008年における関西の輸出相手地域のシェアを示したものである。関西の輸 出16.5兆円のうち、アジアは約10兆円で6割を占めており、特に中国はその3分の1(3.3兆円)を占めている。中国に対する輸出を品目別にみると、 電気機器や原料別製品といった品目の割合が高い(それぞれ32.1%、19.4%)。一方、輸送用機器はあまり輸出されておらず、ウェイトが低い (1.0%)。

    中国の財政刺激策の大きさ
    最近、中国の財政刺激策にスポットライトが当っている。ただし、財政規模4兆元が一人歩きをしている感がある。この規模の財政刺激策が実現した場合、ど の程度の経済拡張効果があるか見てみよう。2008年の名目GDPが30.067兆元であるから、4兆元は13.3%に相当する規模である。仮に乗数(国 民所得の拡大額÷有効需要の増加額)を1.5とした場合、6兆元の追加的な需要となり、名目GDPを約20%引き上げるという計算になる。
    ここで注意が必要である。意外と看過されているのは、この財政支出期間が2年を目処にしており、一部は昨年末から前倒しされていることである。なかには 単年度で4兆元が支出されてその効果を計算していると読める分析もある。それにしても、4兆元が仮にすべて真水として支出された場合、1年間で名目GDP を最大約10%押し上げる効果をもつと考えてよい。
    中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか
    われわれは関西経済の予測とともに、中国経済の実質成長率がベースラインから加速した場合、関西経済に与える効果(中国経済高成長ケース:シミュレー ション1)を計算している。ベースラインでは中国の実質GDP成長率を2009年+6.2%、2010年+8.3%と想定しているが、これが両年にわたっ て8.5%にシフトアップするケースをシミュレーションしている。
    シミュレーション結果によれば、中国経済が政府の目標に近い成長率(ここでは8.5%)を実現できた場合、関西経済の輸出を2009年度0.3%、 2010年度0.42%拡大するにとどまる。金額(2000年実質価格ベース)にして、それぞれ、336億円、479億円である。実質GRPは、2009 年度0.03%、2010年度0.05%の増加にとどまる。金額にしてそれぞれ283億円、411億円である。意外と効果は小さいのである。
    KISERの関西経済モデルでは実質輸出関数が推計されている。所得弾力性は0.864、価格弾力性は-0.651となっている。所得変数としては、中 国、米国、EUの実質GDPを2005年の3ヵ国の輸出シェアで加重平均したものを用いている。中国経済の成長率2.3%ポイントの上昇(6.2%から 8.5%へ)は、関西の実質輸出を0.3%押し上げることになる。
    中国経済に加えて、米国とEUの成長率がベースラインより2%ポイント上昇した場合、関西の実質輸出はベースラインから1.8%拡大することになる(シ ミュレーション2)。これらのシミュレーションが示唆するものは、関西経済にとって確かに中国経済の回復はそれなりの効果を持つが、決して大きくない。大 事なのは世界経済が一致して拡張的な財政・金融政策をとらない限り、大不況から脱出できないのである。16日に中国の1-3月期経済成長率が発表された が、前年同期比+6.1%に減速した。4半期ベースでは統計がさかのぼれる1992年以来の低い伸びにとどまった。この現実からも、中国経済の財政刺激策 の効果に過度の期待をかけないほうが無難である。(稲田義久・入江啓彰)

    日本
    <先行指標に一部明るさがみられるが1-3月期は前期を上回る2桁のマイナス>

    4月20日の予測では、3月の一部と2月のほぼすべての月次データが更新された。3月のデータで特徴的なのは、一部の先行指標に改善が見られたことであ る。3月の消費者態度指数は3ヵ月連続の前月比プラスを記録し、同月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIも3ヵ月連続で改善した。このように企業や消費 者の心理は2008年12月に底を打ち改善傾向を示しているが、水準は昨年秋口の値に等しく依然として低い。すなわち、前年同月では引き続き低下している が、悪化幅が縮小し始めたのであり、秋口以降の急速な落ち込みが減速しているのである。このように先行きに明るさが見られるものの、現状は非常に厳しいと いえる。
    支出サイドモデル予測によれば、1-3月期の実質GDP成長率は、内需が大幅縮小し純輸出も引き続き縮小するため、前期比-4.7%、同年率 -17.5%と予測される。10-12月期を上回るマイナス成長が予想され、この結果、2008年度の実質GDP成長率は-3.2%となろう。ちなみに4 月14日に発表された4月のESPフォーキャスト調査によれば、1-3月期実質GDP成長率予測のコンセンサスは前期比年率-12.76%となっている。 われわれの超短期予測はコンセンサスから5%ポイント程度低いといえよう。
    1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.8%となり、2期連続のマイナス。実質民間住宅は同-8.6%と3期ぶりのマイナス となる。実質民間企業設備は同-12.2%と5期連続のマイナスとなる。実質民間企業在庫品増加は2兆8,400億円となる。実質政府最終消費支出は同 0.4%増加し、実質公的固定資本形成は同0.6%増加する。国内需要の実質GDP成長率(前期比-4.7%)に対する寄与度は-2.8%ポイントとな る。
    財貨・サービスの実質輸出は同22.1%減少し、実質輸入は同11.4%減少にとどまる。このため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.9%ポイントとなる。
    4-6月期の実質GDP成長率については、内需は停滞し、純輸出も引き続き縮小するため、前期比-1.5%、同年率-5.7%と予測している。
    一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率-16.0%と予測している。また4-6月期を同-9.5%とみている。
    この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が-16.7%、4-6月期が-7.6%となる。両モデルの平均で見れば、2009年後半は引き続きマイナス成長となり、当面景気回復の糸口が見つからないようである。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    4月29日に2009年1-3月期のGDP速報値が発表される。その2週間前における同期の実質GDP伸び率(前期比年率)に対する市場のコンセンサス は-4%?-5%である。一方、超短期モデルは実質GDP伸び率を、支出サイドから-0.2%、所得サイドから-1.7%、そしてその平均値(最もありえ る値として)を-0.9%と予測している。
    この超短期予測が正しいとすれば、2008年10-12月期(実質GDP成長率:-6.3%)を米国経済の景気の底と見ることができる。実際に、バーナ ンキFRB議長のように、景気をそのようにみるエコノミストもいる。しかし、世界的なリセッションによる大幅な輸出入の減少が2009年1-3月期の数字 上の景気判断を難しくしている。
    名目輸出入に関しては2009年の1月、2月の実績値が既に発表されている。従って、この2ヵ月の平均値を10-12月期の月平均値と比べることができ る。名目財輸出、同サービス輸出、同財輸入、同サービス輸入の減少率は、前期比年率でそれぞれ-45%、-16%、-57%、-17%となる。超短期予測 は時系列モデル(ARIMA)で3月以降を予測している。財とサービスを合わせた名目輸出、同輸入の下落率はそれぞれ-37%、-51%となる。すなわ ち、輸出入が共に3月に減少すると予測している。一方、輸出入価格は季節調整前だが、3月までの実績値がそろっており、前期比年率でそれぞれ-9%、 -24%である。
    その結果、超短期予測は1-3月期の実質輸出、同輸入の下落率を前期比年率でそれぞれ-32%、-51%と予測している。すなわち、世界的なリセッショ ンの結果このような実質輸出入の大幅な減少が生じており、米国では更に実質輸入の落ち込みが実質輸出の落ち込みを大きく超えることから、数値上実質GDP の伸び率が高くなる。実質輸出入がこのようにそれぞれ大幅に減少するとき、純輸出の予測には多くの不確実性が伴う。
    そのため、正しい景気判断をするにはGDPから純輸出を除いた実質国内需要で景気を判断するのが良い。超短期予測は1-3月期の実質国内需要の伸び率を -5.7%と予測しており、これは2008年10-12月期-5.9%とほとんど変化はない。すなわち、1-3月期の実質GDPの伸び率が市場のコンセン サスよりも高くなっても、同期の経済状況は前期と同じように悪かったと判断すべきであり、米国経済の底は2008年10-12月期から更に深くなっている と見るべきである。超短期予測が1-3月期の実質GDPが市場のコンセンサスに近くなるのは、季節調整後の輸入価格と3月の輸入を超短期予測が共に過小評 価している場合である。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

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    マクロモデル研究会で報告(2009年7月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    2009年7月24-25日、日本経済研究センター(東京)で開催されたマクロモデル研究会において、当研究所の入江研究員が「関西経済予測モデルの開発と応用」というテーマで報告を行いました。報告論文はディスカッションペーパーNo.15に公開しています。

    また、マクロモデル研究会に参加した当研究所分析チームスタッフが業務と関連の深い報告をピックアップしてレポートとしてまとめました(研究会の全ての報告概要は、日本経済研究センターのホームページでご覧になれます)。

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    第77回 景気分析と予測(2009年2月24日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
    2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    2月16日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受け、2008-2009年度の改訂および2010年度の最新経済見通しとなっている。
    ポイントは以下の通り。

    * 2008年度10-12月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は、前期比▲3.3%、同年率▲12.7%と、第一次オイルショック期 1974年1-3月期に次ぐ急激な落ち込みとなり、3期連続のマイナス成長となった。これまで景気の牽引役であった輸出の急激な落ち込みと、低調な民間需 要が原因であり、輸出に大きく依存する日本経済成長モデルの脆弱性が示唆される。

    * 2008年度、2009年度の改訂見通し‥‥2008年度の実質GDP成長率は▲2.8%と7年ぶりのマイナス成長に転じよう(前回予測▲1.3%から大 幅下方修正)。主要貿易相手国である米国・EU経済のマイナス成長、消費の減速および企業設備の減少による民需の落ち込みの影響である。民需の回復が停滞 し、世界経済の不況が深化するため、2009年度の実質GDP成長率は▲3.7%(前回予測▲1.4%から大幅下方修正)と2年連続のマイナス成長とな る。

    * 2010年度の見通し‥‥2009年後半に一旦プラス成長に戻るが、緩やかながら持続的なプラス成長に転じるのは2010年以降となろう。2010年度の実質GDP成長率は+1.5%となろう。

    * 以上の標準予測に対して、追加的経済対策として定額給付金、住宅ローン減税、法人税減税、その他の財政支出の4つの政策を同時に実施した場合の効果は2009年度の実質GDPを約0.9%程度拡大させると検証された。

    * 関西経済は急激に悪化しており、成長率は2008年度▲2.2%、2009年度▲3.1%、2010年度+1.6%と予測している。

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年1月)

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <2009年度の日本経済・関西経済>

    年末年始にかけて、関西社会経済研究所では、リーマン・ショック以降の急激に変化する足下の状況を織り込み、昨年11月に発表した予測を改定するとともに、新たに関西経済の予測を行った。(予測改定の詳細は研究所HPに掲載)
    2009年度の日本経済
    今回の景気回復(2002年2月-07年10月)のメイン・エンジンは純輸出であり、かつ戦後の日本経済の景気回復局面でも最も寄与度が高い項目であっ た。今や成長のメイン・エンジンが逆回転し始めている。これを印象付ける象徴的なイベントは、2008年11月の貿易統計と鉱工業生産指数の落ち込みで あった。10-12月期の実質GDP成長率は2桁に届くほどのマイナスが予測されており、かつてない景気後退となりそうである。
    7-9月期GDP2次速報値を織り込み予測を改訂し、実質GDP成長率を2008年度-1.3%、2009年度-1.4%とした。前回(11月)予測から 2008年度は1.1%ポイントの、2009年度は1.5%ポイントの大幅な下方修正である。前回予測では捉えきれなかった、リーマン・ショック以降の急 速な経済の悪化が反映されている。
    2008年度の実質GDP成長率は前年の+1.9%から-1.3%へと7年ぶりのマイナス成長に転じる。民間需要の寄与度は-0.7%ポイントと、前年度 の+0.5%ポイントから大きく低下する。公的需要は-0.2%ポイントの寄与となり、純輸出の寄与度は前年の+1.2%ポイントから-0.4%ポイント へと大幅低下する。
    日本の主要貿易相手国のうち米国とEU経済の成長率は2009年にはマイナス成長となり、新興諸国の成長率も減速する。このため2009年度には純輸出の寄与度のマイナス幅は拡大する。
    2009年度の実質GDP成長率は-1.4%と2年連続のマイナス成長となる。民間需要の回復は期待できず、純輸出の寄与はさらに低下する。内外需の寄与 度を見ると、民間需要は前年の-0.7%ポイントから-0.8%ポイントと小幅悪化、公的需要は+0.1%ポイントとなる。純輸出の寄与度は前年の -0.4%ポイントから-0.7%ポイントへと更に低下する。
    幸いなことに原油価格や商品価格が大幅に下落しており、これが徐々に最終財価格に波及するであろう。このため、2008年度のコア消費者物価指数前年 比+1.3%となるが、2009年度は-0.4%とデフレに転じる。国内企業物価指数は同+3.6%、同-3.7%、GDPデフレータは同-0.7%、 同+0.9%と予測している。物価上昇率がプラスに転じるのは2010年度に入ってからである。
    景気回復は2010年度と見込んでいるが、景気回復が感じ取れるのは2010年後半からと予測している。2009年度の成長率の四半期パターンは一様な落 ち込みの後の回復の様相を呈さず、2008年末から2009年初にかけて経済は大がかりな生産調整が起こり、2009年央に一旦落ち着くものの、2009 年後半から2010年初にかけて再び落ち込むという、いわばダブルディップ型のリセッションを予測している。2009年度は非常にBumpy(荒っぽい) な経済となろう。
    2009年度の関西経済
    関西経済は、全国と比較して設備投資が相対的に底堅いことや、アジア向け輸出が緩やかな減速にとどまることから、昨年後半時点では、2009年度は緩やか な調整にとどまるとみていた。しかし、足下この想定には疑問符がつき始めた。2009年度の関西経済は前年度の-0.7%に続き、-0.8%と2年連続の マイナス成長となると見込まれる。
    雇用・所得環境の悪化、金融危機の深刻化を背景とした株安などから、個人消費および住宅投資のマインドは低調に推移するとみられる。企業の収益環境が厳し さを増すなか、投資意欲の低下に伴い、鈍化傾向であるものの、既に確定している大型投資が下支えとなると考えられる。近畿地区の企業短期経済観測調査をみ ても関西の投資計画は全国と比べ底堅さを維持している。ただし、パナソニックの薄型テレビ用パネル投資の約1,300億円の削減(2009年1月9日発 表)にも見られるように、今後下振れする可能性もある。
    これまで米国、EUの景気減速により、関西以外の地域では純輸出が減少し始めていたが、関西はアジア向けの割合が高く比較的持ちこたえていた。2009年 に入り、新興諸国および国内他地域の景気減速が顕著となり、タイムラグを持って関西に影響が出てきた。関西の地域別輸出動向をみると、2008年11月に は北米・EU向けよりもアジア向けの減少幅が大きい結果となっている。このような状況から、今後関西の輸出も減速していくとみられ、他地域よりも急激に悪 化するリスクがある。

    日本
    <10%近い下落が予想される10-12月期実質GDP成長率>

    今回の日本経済超短期モデル予測では、一部の12月データと多くの11月データが更新されている。最新の(支出サイドモデル)予測によれば、10-12月 期の実質GDP成長率は、前期比-2.4%、同年率-9.3%と見込まれる。前月の予測(-4.3%)から大幅の下方修正となった。
    今回の大幅下方修正を象徴的に示唆するデータは、2008年末に発表された11月の鉱工業生産と貿易収支である。11月の鉱工業生産指数は前月比8.1% 低下し、2ヵ月連続のマイナスとなった。下落幅は、政府が比較可能なデータを公表して(1953年2月)以来、最大となった。業種別に見ると、輸送機械工 業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等の輸出関連産業で落ち込みが大きかった。製造工業生産予測調査によると、12月の生産は前月比-8.0%、1 月は同-2.1%と予想されている。10-12月期の鉱工業生産指数は4期連続のマイナスになるのは確実で、かつてない景気後退になりそうである。
    11月の貿易収支は2ヵ月連続の赤字を記録した。輸出額は2ヵ月連続で前年の水準を下回り、下げ幅は月次統計が比較可能な1980年以来の最大(前年同月 比-26.5%)となった。輸入額も前年比14ヵ月ぶりのマイナス(同-13.7%)となった。輸出入の大幅減少は内外の市場が急速に収縮していることを 意味する。
    これらのデータを反映した12月末の超短期予測によれば、実質GDP成長率予測はそれまでの前期比年率-3%?-4%程度から、一気に同-9%程度に低下 した(図参照)。5%ポイントという大幅な予測の修正は、1993年から開始した週次ベースの超短期予測で初めての経験である。かつてないスピードで景気 の減速が起こっているのである。
    10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.3%となる。実質民間住宅も同-5.5%と、ともに2期ぶりのマイナス。実質民間 企業設備も同-1.6%となる。一方、実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同+0.5%、それぞれ増加する。このため、国内需要 の実質GDP成長率(前期比-2.4%)に対する寄与度は-0.4%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同6.1%減少し、実質輸入は同8.9%増加する。名目ベースの輸出入がそれぞれ同-15.1%、-12.1%と同程度の減少 にとどまっているが、円高の影響を受け輸出デフレータが同-9.6%と下落する以上に、輸入デフレータが円高に加え国際商品市況の急下落により同 -19.3%と輸出デフレータの下落幅を大きく上回るためである(交易条件の改善)。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-2.0% ポイントとなる。
    2009年1-3月期の実質GDP成長率については、内需拡大は小幅にとどまり、純輸出は引き続き縮小するため、前期比-1.6%、同年率-6.1%と予測している。この結果、2008年暦年の実質GDP成長率は-0.3%、2008年度は-2.0%となろう。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <両刃の剣: 景気刺激策と財政赤字>

    1月9日の超短期モデル予測は、2008年10-12月期の米国の実質GDP成長率を-5%?-6%と予測している。これは市場のコンセンサスより約1% 低い。また2009年1-3月期もマイナス成長が見込まれている。このようななか、1月20日にワシントンに入る次期大統領のオバマは1月8日、できるだ け速やかに景気刺激対策を議会で通過させるために、“米経済の回復と再投資計画”を発表した。景気刺激策の主な内容は次の通りである;
    ・ 3年間に代替エネルギーの生産を2倍にする。
    ・ 連邦政府の建物の75%を近代化する。
    ・ 200万戸に対してエネルギーの効率化を促進する。
    ・ 5年以内にすべての医療記録をコンピューター化する。
    ・ 学校に新しいコンピューターと技術を供給する。
    ・ 代替エネルギー供給のためのスマートグリッドの導入。
    ・ 全米におけるブロードバンドの拡張。
    オバマは更に労働者家計の95%に対して1,000ドルの減税を考えている。オバマはスピーチの中で景気刺激策の規模について明言はしていないが、約8,000億ドルと推定されている。
    一方、連邦議会予算局(CBO)は1月7日、“2009、2010財政年度の予算と経済見通し”を発表した。CBOは現在決まっている政策にのっとって予 算・経済予測をすることから、オバマの景気刺激策によるコストは考慮されていない。にもかかわらず、その内容は以下のように市場にとってショッキングな内 容であった。
    ・ 財政赤字は2009年度には1.2兆ドルにまで拡大する。GDP比率でみれば8.3%になる。
    ・ 実質GDP成長率は2009年に2.2%の下落となる。
    ・ 失業率は2009年、2010年度にはそれぞれ8.3%、9.0%にまで上昇する。
    ・ 2008年Q3?2010年Q2の期間において住宅価格は更に14%低下するだろう。
    オバマは景気刺激策による財政赤字拡大というジレンマを熟知しているため、景気刺激策を長期の経済成長の基盤に向けている。しかし、金融危機回避のために は、まだ住宅ローン貸し手のバランスシートの改善、住宅の抵当化の低減など課題が残っており、新大統領の船出は経済問題だけでも困難を極めている。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2008年9月)

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <米国住宅価格はどこまで下落するか>

    米国の今月の見通しでも指摘しているように、当局が採るべき政策は、第一に、住宅ローン市場における人々の不安を解消すること。第二に、追加の景気刺激 策の導入である。9月7日にポールソン財務長官が連邦住宅抵当公庫と連邦住宅貸付抵当公社の2社を政府の管理下におくと発表し、第一の政策は実施された。 この結果、週明けの8日の米国株式市場は大幅高になった。しかし、それは1日しか続かなかった。
    米国政府が住宅公社救済に踏み切っても金融市場の動揺が収まらないのは、サブプライムローン問題の解決にまだしばらく時間がかかるとマーケットが見ている からだ。その主因は、住宅価格の下げ基調が止まらないことにある。図は米国住宅価格の代表的な指標であるS&Pケース・シラー指数(全国ベース) を見たものである。2006年4-6月期をピーク(100)として08年4-6月期は81.8となり、約20%下落したことになる。今後、住宅価格はどこ まで下落するのであろうか。

    去る9月8日に国際金融問題の専門家であるカリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授の講演会(主催:関西社会経済研究所・関西経済連合会)が大 阪で開催された機会に、同教授と議論し、今後、住宅価格がどの程度下落するかの質問を行った。慎重ながら、彼は、過去の住宅購入価格と賃貸料の関係からす れば、現在の住宅価格は依然として14%高いという。すなわち、彼によれば、住宅市場が底入れするには、ピークから35%程度下落する必要があるという。 7月時点で住宅在庫が月間販売数の11ヵ月分を上回って積みあがっている。90年代平均はせいぜい5ヵ月程度であるから、住宅市場の底入れはさらに1年は かかりそうである。したがって、住宅価格がさらに14%下落するという予測は十分実現する可能性が高い。
    資金循環表によれば、2008年1-3月期末の家計の保有する住宅資産は20兆ドル程度ある。今後、家計の資産が2.8兆ドル減少することを示唆してお り、逆資産効果が民間消費を悪化させることになる。これは民間消費が今後2年で1,000億ドル程度(約1%)押し下げられることを意味する。逆資産効果 は、ホーム・イクイティー・ローンを中心とした消費者ローンが縮小することにより民間消費が直接削減される経路と、消費者が住宅価格下落によりネガティ ブ・イクイティーに陥ることにより消費マインドが悪化して消費性向が低下する経路を通じて、民間消費に影響を及ぼす。その意味で、第二に必要な政策として 追加の景気刺激策が重要となろう。

    日本
    <2008年後半は前期比年率+0.5%に減速、年度末減税は一定の効果>

    9月12日に発表された4-6月期GDP2次速報値によれば、同期の実質GDPの成長率は前期比年率-3.0%と1次速報値の同-2.4%から下方修正 された。4 半期ぶりのマイナス成長となり、また2001年7-9月期(同-4.5%)以来の大幅な下落となった。また1-3月期の成長率も同+3.2%から 同+2.8%へと下方修正された。図が示すように、前年比で見ればこの1年の成長減速は明瞭である。2007年1-3月期の前年同期比+3.2%をピーク として、4-6月期の同+1.8%、7-9月期の同+1.7%、10-12月期の同+1.6%、さらに2008年1-3月期同+1.2%から4-6月期は 同+0.7%へと5期連続して減速しており、ダウントレンドが明瞭である。

    今後の日本経済はどうような成長パターンを示すのであろうか。現在、マーケットには悲観的なムードが漂っている。その背景には、世界経済、特に米国・EU の成長減速があり、また新興諸国も明瞭ではないが成長減速の兆しが見られるからである。しかし、一方で原油価格の下落という明るい兆しがある。 7月の月 次データを反映した最新の超短期モデル予測によれば、7-9月期の実質GDP成長率を前期比+0.5%、同年率+1.9%と見込んでいる。 10-12月期は前期比+0.4%、同年率+1.4%と予測している。この結果、2008暦年の経済成長率は+1.0%となろう。前回(+1.2%)より 下方修正されたが、これは2008年前半のGDPデータが下方修正されたためである。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比+0.5%)への寄与度を見れば、国内需要と純輸出がそれぞれ+0.2%ポイント程度、小幅の貢献となっている。国 内需要では、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%と小幅ながら増加する。一方、実質民間住宅は同-4.2%と減少し、実質民間企業設備は同横ばいとな る。公的需要では、実質政府最終消費が同+0.2%、実質公的固定資本形成が同-0.6%となる。外需では、実質輸出は同0.5%増加するが、実質輸入は 同1.3%減少しよう。 半期ベースで見れば、2008年後半は前期比年率+0.5%と前半の同+1.2%から減速が避けられない。原油価格の下落が浸透 し、企業収益が回復するのは2009年後半と予想される。その間、民間最終消費支出が底割れしないように、年度末までに定額の所得税減税を実施することは それなりの効果を持つであろう。

    [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]

    米国
    <失業増によるリセッションに直面、インフレ率も上昇>

    8月の非農業部門の雇用者数は前月比8万4千人減少し8ヵ月連続のマイナスとなった。この結果、今年に入ってからのネットの雇用減は60万6千人となった。失業率も7月の5.7%から6.1%へと0.4%ポイントも上昇した。
    9月5日の超短期予測は支出・所得の両サイドからの平均実質GDP成長率を7-9月期、10-12月期においてそれぞれ前期比年率-0.2%、同 -0.5%と2四半期連続のマイナス成長を予測している。新規失業保険申請件数もリセッションの入り口といわれる40万人を7月の半ばから超えている。一 方、GDP価格デフレーターや総合・コア個人消費支出価格デフレーターでみたインフレ率は前期比+4?+6%となっており、米国がスタグフレーションに直 面し ていることは間違いない。
    このような経済環境において当局が採るべき政策は、第一に、Fannie Mae(連邦住宅抵当公庫)とFreddie Mac(連邦住宅貸付抵当公社)の救済計画をできるだけ速やかに公表し、住宅ローン市場における人々の不安を解消することである。実際、9月7日にポール ソン財務長官は2公社を政府の管理下におくと発表し、第一の政策は実施された。その次に、政策担当者は追加の景気刺激策を導入すべきである。
    残念なことに、共和党のマケイン大統領候補のチーフ経済アドバイザーのダグラス・ホルツ・イーキンは、「米国経済は修復すべきファンダメンタルズの問題 を抱えており、追加的景気刺激策が無駄になる可能性がある」と追加の景気刺激策には悲観的である。一方、バラクオバマは雇用減少を重く見て、1150億ド ルの追加刺激策を考えている。中身は650億ドルを中間層への還付税とし、500億ドルをインフラ投資と州・地方政府への支出としている。マケイン・ペイ リンの共和党ペアもすぐにでも追加の景気刺激策を打ち出すことが選挙に勝つためには不可欠である。選挙が最終的には“It’s the economy, Stupid (結局、肝心なのは経済)”になることは間違いない。

    注)本レポート執筆は先週時点のものであり、リーマンブラザーズ経営破綻については触れていない。

    [熊坂有三 ITエコノミー]

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    橋下府政改革・広域連携に関するアンケート結果(2008年8月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    財団法人関西社会経済研究所(会長:下妻博関西経済連合会会長・住友金属工業会長)では、自治体改革や国と地方制 度改革の問題も重要な研究テーマとして取り組んでいます。橋下府政改革により地域住民の自治体改革に対する関心が高まっていることから、広域連携関連の意 識と併せてアンケート調査を実施しました。
    設問中、関西地域住民の橋下府政改革や広域連携に関する意識が端的に読み取れる内容を中心に紹介させていただきます。

    アンケート結果概要

    橋下知事の改革に対する支持率は73%と高く、しかも「生活への痛み」を十分に認識した上での評価となっている。これまでの財政悪化の責任者としては、自治体議員、職員、首長を挙げる比率が高くなっている。
    広域連携の必要性に関しては、82%が必要と認識し、関西広域連合への取り組みに対する期待は高いといえる。
    しかし、道州制導入による府県合併については意見がわかれており、現状ではコンセンサスはないといえる。

    ☆ 『自治体財政破綻のおそれを感じる』は74%。大阪府では80%と更に高い。
    ☆ 『橋下知事の改革による生活への痛み』は大阪府では62%が予想
    ☆ 橋下大阪府知事の財政再建プログラムは大阪府では「断固決行」63%と「来年度から」10%をあわせると73%の支持。
    ☆ 『大阪府財政悪化の責任』は、自治体議員、自治体職員、自治体首長が三大責任者との認識。
    ☆ 『行政サービスのための自治体増税』は「少々なら納得できる」が63%。「納得できる」は8%。このふたつの合計は3府県とも70%台。
    ☆ 『府県連携の行政協力について』は82%が必要と回答。(大阪府83%、京都府82%、兵庫県75%)
    ☆ 『関西広域連合が連携すべき分野』としては「救急医療」(70%)と「大規模災害」(40%)が上位。
    ☆ 『道州制による大阪府、兵庫県、京都府の合併』は、「合理性あり」「抵抗感あり」「どちらともいえない」が各30%台と意見がわかれる。但し、京都府で「抵抗感あり」が44%とやや多い。
    ☆ 尚、住民意識としては各府県とも「関西人」意識が最も高く(39?42%)、「府県民意識」が最も低い(4?14%)。中でも兵庫県での「県民意識」の低さは際立っている(4%)。

    <アンケートの実施方法>
    ・ ウェブアンケート形式、6月上旬
    ・ 分析対象数は大阪府400名、京都府100名、兵庫県100名で合計600名

    「橋下府政改革・広域連携に関するアンケート結果」

    PDF
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    関西の全都市の財政健全性を評価 (2008年8月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    財団法人関西社会経済研究所(会長:下妻博関西経済連合会会長・住友金属工業会長)では、関西の全ての都市の財 政健全性分析を実施しました。そして、関西の各都市が全国の都市の中でどのポジションにあるかも明らかにしました。さらに、人口構成や産業構造などの要因 と財政指標の関係についても調査しました。
    これらの研究により、外部環境が悪い中で効率的な行政サービスを運営している自治体、或いは逆に、環境は良いが効率が悪い自治体などを数値で分類しました。

    研究成果のポイント

    ☆ 全国平均の一人当り基礎的経常収支(地方交付税除く)は2000年度から2005年度にかけて12.7千円悪化。地方交付税を含むベースで比較しても、12.5千円悪化。
    ☆ 地方交付税を含まないベースで見ると、2000年度、2005年度ともに芦屋市が全国最良で1位。また、兵庫県と大阪府の地方税収に恵まれた都市が上位にある。
    政令指定13都市の中で、大阪市は8位。
    ☆ 1人当り地方税収と65才以上人口比率は基礎的経常収支に影響している。
    これらを非裁量要因として、その影響を除去した数値と現実の値を比較することで、財政運営の効率性を評価した。
    関西では芦屋、田辺、三木の評価が高い。
    全国13政令市の中では、神戸市は上位にランクされるが、京都と大阪は下位にランクされており、課題が残されているといえる。

    今回の調査結果が、自治体住民及び行政に広く理解され、効率的な自治体運営につながることを期待しています。

    <政令指定都市中、下位の大阪市本庁舎>    <全国トップランクの芦屋市の街並み>

    **写真は大阪市、芦屋市提供

    関西社会経済研究所「自治体財政健全性」研究会メンバー
    主査:
    林  宏昭 関西大学経済学部教授
    アドバイザー:
    跡田 直澄 慶應義塾大学商学部教授
    委員:
    後藤 達也 大阪産業大学経済学部准教授

    関西社会経済研究所が、関西の全都市の財政健全性を評価

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    水都ジェントリフィケーション 大阪Triangle構想 を提案!!(2008年7月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    財団法人関西社会経済研究所では、かつての“港”としての賑わいを急速に失いつつある安治川、木津川、尻無川の川 沿いを中心としたエリアにスポットをあて、水辺の都市の長期的転換手法として、従来のハード主体・大規模開発手法とは異なった、文化芸術を含むソフト主 体・段階的転換の手法を研究し、「水都ジェントリフィケーション 大阪トライアングル構想」として、発表しました。
    これは昨年度の同研究所が提案したグレーター中之島に焦点をあて打ち出した「社交都心 21世紀版大阪の“都心の磁石”」(平成18年12月)の大阪 東西軸コンセプトを更に西に延長し完成させたものであり、水都大阪創生の1つの方向として、行政・経済界はじめ各界の関係者の皆様にご高覧、ご検討頂くこ とを期待しております。

    関西社会経済研究所「都市創生」研究会メンバー
    ・主査
    嘉名 光市 大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻准教授
    ・アドバイザー
    跡田 直澄 慶應義塾大学商学部教授
    ・アドバイザー
    橋爪 紳也 大阪府立大学特別教授
    ・委員
    竹林 幹雄 神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻准教授
    ・委員
    谷口 康彦 (株)URサポート執行役員・都市再生企画部長
    ・委員
    中谷ノボル (株)アートアンドクラフト代表・建築家
    ・委員
    弘本由香里 大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所客員研究員
    ・オブザーバー
    藤原 幸則 (社)関西経済連合会地域連携部部長
    ・オブザーバー
    日高 明子 (社)関西経済連合会地域連携部次長
    ・コンサルタント
    岸田 文夫 (株)環境開発研究所専門部長

    「提言:水都ジェントリフィケーション 大阪Triangle構想」

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    産業創生報告書「関西における中小企業の現状と課題」(2008年5月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    産業創生研究会
    <研究体制>
    ・主査
    竹内 常善 大阪産業大学アジア共同体研究センター研究員
    ・委員
    後藤 達也 大阪産業大学経済学部准教授
    ・アドバイザー
    跡田 直澄 慶應義塾大学商学部教授
    ・協力者
    北浦 義朗 関西社会経済研究所研究員
    (順不同、敬称略)

    <研究テーマと狙い>
    ☆テーマ : 「関西における中小企業の現状と課題」
    ☆狙  い : 関西経済の発展を考える上で中小企業の発展は欠かせない。
    これまでも中小企業振興の観点から、様々な政策提言そして施策が実施されてきた。
    しかし、関西の中小企業の現況は全国平均を上回る廃業率に象徴される通り、満足できる状況にはない。真に効果的な産業振興策を立案するには、再度、中小企業の現況を分析し、成長の桎梏点を明らかにすることが有益である。

    <研究成果の概要>
    ☆成功している中小企業には様々なパターンがある。
    海外進出で成功、国内にとどまり成功
    伝統的技術で成功、新技術で成功
    伝統市場で成功、新市場で成功
    ☆共通する成功要因
    確固たる経営の意思と持続力
    人材育成
    世界レベルの技術とブランド
    ☆今後の課題
    モノづくりだけで競争に勝つのは困難か(収益性含め)
    地域、街、住民が産業レベルを向上させるとの観点からは、現状の関西の取り組みは不十分か
    国及び行政の産業振興への取り組みも再検討の必要有りか

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    「抜本的税制改革に向けた調査研究」最終報告 (2008年4月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)

    主査:
    跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授

    ゆるやかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現 れている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案 すると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。
    しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ21 世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強にむけ た税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。
    そこで、本研究では、総合的な財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索し てみる。さらに、財政改革の中でも税制改革 は 経済のさまざまな側面に影響を与えることになるので、その影響を考慮しながら、抜本的改革のあり方を議論してみた 。

    第1章  2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
    第2章  法人課税の実効負担分析に基づき税制が企業の投資行動に与える影響を明らかにし、減税の必要性に言及する。
    第3章  所得格差の原因を明らかにした上で、所得課税における給与所得控除、所得控除、さらには税率表のあり方を議論する。
    第4章  消費税の増税根拠を再考し、増税時期や増税論議における消費税偏重の問題を検討する。
    第5章  財源格差と地方課税の問題をとりあげ、法人税割と事業税を地方消費税に交換した場合のシミュレーションを行い、その影響を踏まえて税源交換のあり方を検討する。
    終 章  本報告書における分析結果を再述するとともに、その意義をまとめ今後の課題に言及する。

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    「抜本的税制改革に向けた調査研究」中間報告 (2007年9月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)

    主査:
    跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授
    担当:
    前川聡子 関西大学経済学部准教授

    緩やかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現れ ている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案す ると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。  しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ 21世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強に むけた税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。 そこで、本受託研究では、総合的な 財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索している。さらに、財政改革の中で も税制については、経済のさまざまな側面に与える影響を考慮しながら、その抜本的改革のあり方を議論している。

    この中間報告では、
    第1章  2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
    第2章  財政収支を長期的に展望しながら、次なる改革をどうすべきかの検討資料を提示する。

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    「受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する研究・研究」成果報告 (2007年4月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)
    (主査: 橋本恭之・関西大学経済学部教授
    アドバイザー:跡田直澄・慶應義塾大学商学部教授)

    わが国の地方税制が法人課税に過度に依存している状況は是正されるべきとの見方に立ち、地方税としての法人課税の見直しの方向性について検討した。 ま た、19年度税制改革に向けて減価償却制度の見直しが課題として挙がっており、特に償却可能限度額・残存価額の引き下げを行った場合、企業の設備投資にど のような影響を与えるかを研究した。

    成果報告書の構成は以下の通り。

    1. 地方法人課税の見直しについて
    2. 減価償却制度見直しによる影響について
    3. 2006年将来人口推計と社会保障制度の受ける影響

    『受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する調査・研究』

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    関西マクロ経済分析モデルの開発(中間報告)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2006年度

    ABSTRACT

    主査: 福重 元嗣 大阪大学大学院経済学研究科 教授)

    地域経済を総合的に捉えることができる経済分析モデル構築への要請はますます高まっている。各地域が独自の発展戦略をもつことが求められる「地方 分権の時代」にあって、経済分析モデルを利用したシミュレーションや将来予測は、戦略の立案や各種施策の評価、外生的なショックの影響測定に有効な情報を 与えてくれる。関西に拠点をおく企業や個人にとっても経済分析モデルは有力な武器となろう。
    当研究所は2003年5月から学界、官界、関連研究機関の専門家からなる「関西経済分析モデル開発研究会」を組織し、連携・協力しつつ、「関西マクロ経 済分析モデル」の開発に取り組んでいる。開発の過程でまず、関西7府県(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、福井)の産業連関表を結合した「関西地域 間産業連関表」を完成させ、続いて、関西マクロ計量モデルを整備し、両者を結合したモデルを構築した。すなわち、関西マクロ経済分析モデルは、「関西地域 間産業連関表」を内包したモデルであり、乗数効果だけでなく産業間や府県間への波及効果を測定することができる。シミュレーションの一例として、大阪府の 公共投資が1994年から2003年まで毎年400億円増加した場合の影響を試算すると、関西地域のGDPは710億円増加するとの結果を得た。
    今回、中間報告として成果を公表したところ、研究会委員の方々から貴重なご意見を頂戴した。現在、それらを反映したうえで本年度末の最終報告を目指すべく、改訂作業を急いでいる。

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    市民目線による自治体財務情報の評価」 市民主導の公共サービス選択システムの確立に向けて

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2006年度

    ABSTRACT

    「自治体改革の実践に関する調査研究」研究成果報告
    主査 村尾 信尚 関西学院大学教授

    当研究所(会長:秋山喜久関西経済連合会会長、所長:本間正明大阪大学大学院経済学研究科教授)は、これまで研究の主要な柱として地方分権・地方改革に 関する研究に力を注いでまいりました。こうした中、自治体改革は、現下に取り組むべきわが国の最重要課題の一つになりました。
    改革実践のためには主役たる市民が大きな役割を果たさねばなりません。このためには、まず、市民へ行政の実態についての情報を徹底的に公開することが必 要であり、特に、財務情報の公開は最重要であります。昨今の自治体の財政破綻の顕在化はこの課題の緊急性を浮き彫りにしています。
    今回の研究において、「市民目線での財務情報公開の標準モデル」を設定し、それに基づく評価方法表を開発して横浜市をベンチマークとし、京都、大阪、神戸市の公開状況を比較評価し、財務情報の改善についても言及しました。
    本研究が、自治体財務情報の改革・公開促進、財務情報についての市民意識の更なる向上、そして、市民主役の自治体改革に貢献することを期待します。

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    「医療保険制度改革に関する研究」 (2005年9月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2005年度

    ABSTRACT

    「医療保険制度改革に関する研究」

    本研究は、社団法人関西経済連合会から調査・研究委託を受け、当研究所において医療保険制度の改革案を取りまとめたものである。関経連の経済財政委員会 社会保障部会(部会長:石橋三洋・日本生命保険(相)副会長)が10月28日に公表した「医療制度改革に関する提言」の基礎データニなるものである。
    なお、検討に当たっては、「医療保険制度改革研究会」(主査:小塩隆士・神戸大学経済学研究科教授)を設け、国保・政管健保・老健など保険者が異なり十分な保険者機能が働いていない現在の諸制度を見直した。
    また、保険者機能を都道府県に集約しようする厚生労働省案にも分析を加え、地域ブロック制導入について試算している。

    【研究体制】 (順不同、敬称略)

    主査
    小塩 隆士  神戸大学大学院経済学研究科教授

    アドバイザー
    齊藤  愼  大阪大学大学院経済学研究科教授

    委員
    日高 政浩  大阪学院大学経済学部助教授
    前川 聡子  関西大学経済学部助教授
    吉田 有里  甲南女子大学人間科学部講師
    木村  慎   北海道大学公共政策大学院特任助手
    阿部  崇   ニッセイ基礎研究所副主任研究員

    オブザーバー
    窪井  悟   (株)大丸経営計画本部担当課長
    鶴岡  武   (株)UFJ総合研究所主任研究員

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    日本経済のマクロ分析

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2005年度

    ABSTRACT

    主査
    稲田 義久     甲南大学経済学部教授
    主査
    高林喜久生    関西学院大学経済学部教授
    委員
    地主 敏樹    神戸大学大学院経済学研究科教授
    (敬称略)

    本調査研究は、1976年、京都大学経済研究所の森口親司教授(当時)の主唱により、同研究所と関西経済研究センター(現関西社会経済研究所)との共同プ ロジェクトとして発足し、その後、1986年より、関西経済研究センター(現関西社会経済研究所)の単独プロジェクトとなった。理論と実態の融合をめざ し、学界の指導と協力を得て、在阪の大手会員企業・団体の若手スタッフ参加の下で「マクロ経済分析プロジェクト研究会」を組織している。
    本調査研究は、産学協同研究体制の典型として当研究所の研究活動・人材育成活動の核を成しており、「社会人のための大学院」を目指している。
    研究会活動の概要および研究成果の発表については以下の通り。

    ・特別研究
    会員企業、関連団体の若手スタッフ、当研究所員をメンバーとする「マクロ経済分析プロジェクト研究会」において、時宜に適した、関西経済の活性化に 資するテーマをマクロ経済の観点から取り上げる特別研究を、毎年実施している。その成果は、2月?3月頃に報告書として取り纏め、会員企業に提供するとと もに、広く企業・自治体・経済団体等を対象に発表会を実施している。

    ・日米中超短期予測フォーラム
    日米中の専門家が協力して各国経済の2四半期予測を月次ベースで行う。日米中3国間の経済相互関係にも留意した内容を盛り込んで、毎月中旬に研究所HPにて発表する。

    ・四半期経済予測(景気分析と予測)
    研究会において、予測作業に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同作業を行っている。時代のニーズに合わせ、2005年度より「超短期 予測モデル」を使用し、予測インターバルを四半期から月次ベースへと移行、またその「超短期経済予測」結果により四半期経済予測の足元をかため、より精度 の高い景気見通しの実践に取り組んでいる。 四半期経済予測は「景気分析と予測」として四半期毎(2月、5月、8月、11月)に記者発表を実施している。

    ・景気討論会
    年2回(夏および新年)、民間・官界から外部講師を招いてパネルディスカッション形式で開催している。稲田主査による「景気分析と予測」(上記参 照)を基調報告とし、日本経済および関西経済の見通し、金融市場の現況と行方、政策運営のあり方など、時宜に適したテーマで幅広い議論が展開される。

    ・関西エコノミックインサイト
    関西経済の現況を全国の動きと比較しながら分析し、その動向を探るとともに、適宜、重要な経済問題をトピックスとして解説する。コンパクトかつ、ポイントを突いたレポートを目指すもので、原則として四半期毎(2月、5月、8月、11月)に当研究所HPにて発表する。