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「関西経済」の検索結果 [ 6/17 ]

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.125-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: 輸出停滞と生産伸び悩みによる景気下押し圧力に注意-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は2カ月ぶりの減産となり、低調な動きとなった。雇用環境は失業率が悪化したが、労働力人口と就業者数の増加で、持ち直しの動きを維持している。消費は百貨店を中心に回復しており、景況感はインバウンド需要の増加もあり改善。先行きは海外経済悪化による輸出の停滞と生産の伸び悩みが景気の下押し圧力となっており、足踏みの兆しがみられる。
    ・7月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械、汎用・業務用機械や化学(除.医薬品)等が減産に寄与しており、生産は低調な動きとなった。
    ・7月の失業率は4カ月ぶりに悪化したが、労働力人口と就業者数はいずれも増加した。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。また、新規求人数と新規求職者数がともに大幅増加し、足下労働需給の動きが活発となっている。
    ・6月の現金給与総額は19カ月連続の前年比増加となり、伸びは前月より縮小した。一方、実質ベースでは減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
    ・7月の大型小売店販売額は22カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は衣料品とその他の商品などが高い伸びを示し、インバウンド需要も堅調。スーパーは10カ月連続で拡大した。
    ・7月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比減少。マンションの大幅減少により全体が押し下げられた。
    ・7月の建設工事は前年比増加が続くものの、関西は減速、全国は加速となった。うち公共工事については依然として全国より関西のほうが伸びは高いが、減速が目立つ。また、8月の公共工事請負は、前年比減少に転じた。
    ・8月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や行動制限のない夏祭り等のイベントの開催が好影響した。一方、先行き判断は円安進行や原油価格高騰への懸念から2カ月ぶりに悪化した。
    ・8月の関西の貿易は輸出入ともに前年比減少だが、どちらも減少幅は前月から縮小となった。輸出は4カ月連続で1桁の減少にとどまる。なお、対中食料品輸出の動向については、p.14【BOX】において分析を行っている。
    ・8月の関空への外国人入国者数はコロナ禍前の9割に迫る水準となり、コロナ禍前をほぼ回復した。
    ・8月の中国経済は、生産と消費はともに増加し、回復ペースは前月より加速した。ただし、住宅販売の不振による影響で耐久財消費の低迷が続いている。長引く雇用情勢の悪化と不動産市場の不況は景気回復の足かせとなっているため、7-9月期の経済成長率は前期より減速する可能性が高い。

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  • 野村 亮輔

    中国人客の回復とインバウンド戦略について

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    2023年8月10日に中国政府は日本への団体旅行を解禁した。そのため、23年後半以降、インバウンド需要の加速が期待される。本稿では中国人客の団体旅行解禁が日本及び関西に与える経済的影響を一定の仮定を置き分析した。分析内容を整理し、得られた含意は以下の通りである。

    1.  水際対策が大幅緩和された2022年10月以降訪日外客数は急拡大し、中国人客を除けば23年7月に2019年同月の水準を上回った。この間、回復には3四半期程度を要した。

    2.  中国人客の回復については、2023年8月の団体旅行解禁から3四半期をかけて中国人客が100%回復するCase1を想定。なお、回復パターンについてはこのベースラインに対して中国経済や対日関係の変化の影響をも考慮し、回復が遅れる2つのケースを想定した。

    3.  各Caseに基づいて訪日中国人旅行消費額を推計すれば、2023年度においてCase1では全国で1兆7,631億円、関西で6,044億円となる。Case2では全国で1兆4,926億円、関西で5,114億円。Case3では全国で1兆2,222億円、関西で4,183億円と試算される。

    4.  中国人客の回復は、コロナ禍により鮮明になってきた労働供給制約の課題を一層強く意識させる。このため、生産性向上を目指し、DX推進に向けた投資の一層の拡大が必要となろう。

    5.  今回のケースはこれまでのインバウンド戦略を再考するにあたり重要な教訓となる。団体旅行解禁により、上昇した消費単価を低下させないよう、高付加価値サービスを提供することが一層重要となろう。すなわち、これまでのモノ消費からコト消費への転換を一層推進する仕組みづくり(インバウンド戦略)が必要となろう。

    6.  また、団体旅行客の増加による観光地におけるオーバーツーリズム現象の解消も課題である。観光地への観光客集中を避けるためにも、他地域への周遊促進が一層重要となる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.65 -緩やかな回復が続くが力強い回復には未だ至らず:米欧中の経済動向に注視が必要-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2023年4-6月期の関西経済は、緩やかな回復が続いている。家計部門では一部弱含みとなっているが、総じて緩やかに持ち直している。企業部門では、生産や景況感は底堅く推移しており、設備投資計画も旺盛である。海外部門では、中国経済の停滞が影響し輸出・輸入ともに前年を下回った。インバウンド需要はコロナ禍前の水準をほぼ回復した。先行きは、物価の動向および米欧中の経済動向に注視が必要である。
    2. 家計部門は前期に引き続いて緩やかに持ち直している。センチメント、大型小売店販売は堅調に推移している。ただし物価高に伴う実質所得の減少や節約志向の高まりにより、本格的な回復には至っていない。所得・雇用環境、住宅市場などでは回復に一服感が見られ、弱含みとなっている。
    3. 企業部門は、製造業・非製造業ともに底堅く推移している。製造業は、原材料価格の高騰や海外経済の減速などから弱含みではあるが、緩やかに改善している。非製造業は、経済活動再開やインバウンド需要の回復で、宿泊・飲食など対面型サービスを中心に総じて復調している。また23年度の設備投資計画は製造業・非製造業とも旺盛で、増勢となった前年度からさらなる加速が見込まれている。
    4. 対外部門のうち、財の貿易については輸出・輸入ともに前年を下回った。輸出を地域別に見ると、欧米向けは前年比プラスを維持し堅調であったが、中国向けは低調で2四半期連続のマイナスとなった。インバウンド需要は順調で、関空経由の外国人入国者数や免税売上高はコロナ禍前の水準をほぼ回復した。
    5. 公的部門は前期から引き続き、堅調に推移している。特に4-6月期は前年比で大幅増加となった。
    6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.6%、24年度+1.4%と予測。21年度以降は1~2%の緩やかな回復基調を維持し、23年度にコロナ禍前(19年度)のGRP水準を回復する。前回予測(5月30日公表)に比べて、23年度は+0.3%ポイントの上方修正、24年度は-0.3%ポイントの下方修正とした。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は23年度+1.0%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も23年度・24年度ともに+0.4%ポイントと成長を下支える。域外需要は23年度+0.2%ポイント、24年度-0.1%ポイントと低調に推移する。
    8. 日本経済予測と比較すると、23年度の外需では、足下での中国向け輸出の停滞を反映し、関西では日本経済予測より小幅の寄与にとどまる見通し。24年度は次年度に万博開催を控えていることから公的需要の押し上げが大きく、日本経済を上回る成長となる。
    9. 今号のトピックスでは、「コロナ禍と関西のホテル建設」および「インバウンド戦略と中国人客の回復」を取り上げる。

     

     

    ※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。

    ①00’00”~02’37”: Executive summary

    ②02’37”~24’43”: 第144回「景気分析と予測」

    <財輸入の減少、サービス輸出の拡大で実質GDPはコロナ禍前のピークを超える>

    ③24’43”~34’38: Kansai Economic Insight Quarterly No.65

    <緩やかな回復が続くが力強い回復には未だ至らず:物価高と米欧中の経済動向に注視が必要>

    ④34’38”~39’20”: トピックス<コロナ禍とホテル建設>

    ⑤39’20”~44’26”: トピックス<インバウンド戦略と中国人客の回復>

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.124-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: インバウンド需要回復も輸出減速が景気下押しリスク-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、回復のペースは緩慢。雇用環境は失業率が改善した一方で、求人倍率は悪化しており鈍化がみられる。消費は百貨店売上を中心に好調で、景況感はインバウンド需要の増加もあり改善した。先行きは海外経済悪化による輸出減速が景気下押しリスクとなっており、足踏みの兆しがみられる。
    ・6月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇。4-6月期は3四半期ぶりの前期比上昇だが、1-3月期の落ち込みを回復できていない。
    ・6月の失業率は3カ月連続で低下した。4‐6月期は失業率、労働力人口と就業者数はいずれも前期より改善。雇用の回復が進んでいる。ただし、原材料価格の高騰や海外景気の減速による影響もあり、足下新規求人数が減少した。
    ・5月の現金給与総額は18カ月連続の前年比増加となり、伸びは前月より拡大した。春季労使交渉の結果が名目賃金の上昇に反映されているようである。結果、実質ベースでの減少は続いているが、減少幅は前月より縮小した。
    ・6月の大型小売店販売額は21カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は外出機会の増加で、衣料品と化粧品などが好調。スーパーは9カ月連続で拡大した。
    ・6月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比減少。持家、貸家と分譲はいずれも減少した。
    ・6月の建設工事出来高は18カ月連続の前年比増加。伸びは前月から大きく減速したものの、全国に比して関西の伸びが大きい状態が続いている。また、7月の公共工事請負は、前月に続き大幅増加した。
    ・7月の景気ウォッチャー現状判断は3カ月ぶりの前月比改善。インバウンド需要の増加や夏物商材の売上が好調だったこともあり、小売関連が改善した。また、先行き判断も4カ月ぶりに改善した。
    ・7月の関西の貿易は輸出入ともに前年比減少となった。輸出は3カ月連続で1桁の減少にとどまっているが、輸入は3カ月連続で2桁の減少となっている。そのため、貿易収支は前年同月から改善となった。
    ・7月の関空への外国人入国者数は60万人を超え、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復した。
    ・7月の中国経済は、生産と消費はともに回復が続いているが、その勢いが鈍化した。住宅市場の冷え込みが進み、関連産業の需要を下押ししており、景気回復の足かせとなっている。そのため、7-9月期の経済成長率は前期より減速する可能性が高い。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.123-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: 消費は緩やかに回復も輸出減速が景気下押しリスク-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は2カ月連続の減産だが、1-3月期から幾分持ち直している。雇用環境は底堅く推移し、消費は緩やかに回復している。一方、景況感は物価やコストの上昇もあり悪化が続く。先行きについては海外経済悪化による輸出の減速が景気下押しリスクとなっており、足踏みの兆しがみられる。
    ・5月の生産は2カ月連続の前月比低下。電気・情報通信機械、輸送機械や化学(除.医薬品)等が減産に寄与した。4-5月平均は1-3月期平均に比して幾分持ち直している。
    ・5月は失業率が2カ月連続で改善し、4‐5月期の労働力人口と就業者数の平均値はいずれも1‐3月期平均を上回っている。また、有効求人倍率が横這いで、新規求人倍率が上昇した。雇用環境は底堅く推移している。
    ・4月の現金給与総額は26カ月連続の前年比増加となったが、目立った増加が見られず、春季労使交渉の結果は速報値に十分に反映されていないようである。実質ベースでは14カ月連続で減少した。
    ・5月の大型小売店販売額は20カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は外出機会の増加で、衣料品と化粧品などが好調。スーパーは8カ月連続の増加となった。
    ・5月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加。前月の反動増の影響もあり、貸家と分譲は大幅に増加した。
    ・5月の建設工事出来高は17カ月連続の前年比増加。4カ月連続で2桁の伸びとなった。うち公共工事は2桁の伸びが5カ月続いている。また、6月の公共工事請負をみれば、兵庫県神戸市の再開発工事に関連する発注が影響し、2カ月連続の大幅増加となった。
    ・6月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の前月比悪化。物価やコスト上昇が続いたことに加え、天候不順で客足が減少したことが影響した。また、先行き判断も3カ月連続で悪化した。
    ・6月の貿易は輸出入ともに前年比減少となり、どちらも減少幅は前月から拡大した。特に輸入は2カ月連続で2桁のマイナスとなった。結果、4-6月期の輸出は前年同期比-4.3%と11四半期ぶりの減少、輸入は同-11.0%と10四半期ぶりの減少となった。
    ・6月の関空への外国人入国者数は2カ月連続で50万人超の水準となり、コロナ禍前の7割を回復した。4-6月期では、16年4-6月期に次ぐ水準となった。
    ・中国の4-6月期実質GDPは前年同期比+6.3%と前期から加速した。しかし、その背景には前年に実施されたロックダウンに対する反動増がある。足下は雇用回復が緩慢なため家計の先行き不安が強く、需要の持ち直しは弱い。そのため、雇用の大幅な改善が見込めない限り、7-9月期の経済成長率は前期より減速する可能性が高い。

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  • 木村 福成

    アジア太平洋地域の政治・経済的協力のあり方

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » アジア太平洋軸

    RESEARCH LEADER : 
    木村 福成

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 木村 福成 慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト

    成果報告

    2023年度は、世界を取り巻く様々な状況を踏まえて日本の経済外交はいかにあるべきか、日本企業のアジア戦略はどのように展開していくべきかを探るため、以下3つのテーマでフォーラムを開催しました。

    ①拡大する半導体産業の日本・関西経済への影響

    世界各国に張り巡らされた半導体産業のサプライチェーンの全体像と、米中対立をきっかけとした米国によるサプライチェーン巻き戻しの動き、今後の日本における半導体産業の可能性について

    ②ASEAN経済の将来シナリオと日本経済への影響

    10加盟国により着実に経済統合、貿易自由化を進めているASEANにおける2025年以降の中長期的な政策シナリオと課題について

    ③権威主義体制の弊害を「無害化」する通商ルール構築を~中国とどう向き合うか~

    中国の異質な経済体制とそれに起因する法的不安定性・予見不可能性のリスク、国際通商ルールが実効的なものになるための規律づけの可能性や中国経済の今後の見通しについて

    当初計画

    研究の背景

    広島で開催された主要7か国首脳会議では、対中国を念頭にまとめられた共同文書に「経済的威圧を抑止し対抗する」と明記され、半導体やレアアース(希土類)といった重要物資のサプライチェーン(供給網)の枠組みを構築する方針が示された。特定の分野でのサプライチェーンのデカップリングが進むなか、一方で東アジア全域において展開されている国際的生産ネットワークは引き続き活発に動いている。

    本プロジェクトでは、経済安保上の利益とグローバル化の経済的利益の間の折り合いをつけながら、国際通商ルールに基づき自由で開かれた経済活動を発展させていくことの重要性を再確認していく。

    国際経済学のみならず、国際法学、政治学ならびに企業研究など様々な知見を得ながら、アジア太平洋地域における政治・経済協力のあり方について研究を進めていく。

     

    分析の手法または現地調査の詳細

    2022年度に引き、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を深めていく。
    また、米中対立、ウクライナ戦争の影響による地政学的緊張が継続するなか、今年度は日本が米国や欧州諸国と協調し実施する輸出管理の日本・関西経済への影響についても分析しつつ、あわせて活力を維持している東アジア生産ネットワークの現状とルールに基づく国際貿易秩序の行方についても検討してく。

    木村リサーチリーダーによるASEANと日本についての経済研究を軸に、学識者、研究者並びに実務家に登壇いただき、複眼的な見地に立ったディスカッションにつなげる。企業の見識を高め、事業活動に資する情報提供の場としたい。

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々を中心に還元する。
    対海外、特にアジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。

    研究体制

     
    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪大学名誉教授

     
    リサーチリーダー

    木村 福成  APIR上席研究員、慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト
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  • 高林 喜久生

    関西地域間産業連関表の利活用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    高林 喜久生

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 高林 喜久生 大阪経済法科大学経済学部教授

    研究成果

    2023年度は、APIRが独自に開発した「関西地域間産業連関表」の2015年版を作成し、これを用いて、各種イベントにおける経済波及効果を試算・公表し、大きな反響を呼び各種のメディアに数多く取り上げられました。

    59年ぶりに行われた阪神・オリックスの関西ダービーの経済波及効果では、①公式戦およびポストシーズンにおける球場観戦や球場外での消費、②リーグ優勝および感謝セール、③優勝パレードに伴う様々な消費を精緻に想定し、関西各府県への経済波及効果を936億円と算定しました(日本全体では1607億円)。その中でも、大阪府と兵庫県を中心に効果が大きく、関西のGRP(域内総生産)を0.05%程度押し上げると分析しました。

    また、国、自治体等から公表された最新のデータを基に、大阪・関西万博の経済波及効果を試算しました。万博関連事業費と来場者消費に分けて、基準ケース※2と観光客が万博会場外のイベントや施設を訪れる「拡張万博」※1ケース1※3、2※4における経済波及効果をそれぞれ算定しました。結果、基準ケースで2兆7,457億円、拡張万博ケース1で3兆2,384億円、拡張万博ケース2で3兆3,667億円と試算しました。
     
    ※1拡張万博:万博のテーマ・時間軸・空間軸の概念を拡張し、関西全体を仮想的なパビリオンに見立て、万博本体では実施しにくい事業も含めて様々な経済活動を展開する取り組み

     

    当初計画

    研究の背景

    関西2府8県+1地域を対象地域とする唯一無二の地域間産業連関表である。当プロジェクトでは様々な事象による経済社会活動に対する影響について産業連関表を用いて府県別・産業部門別に推計してきている。今後関西においては大阪・関西万博をはじめとするイベント、さらにIRを機に新たな産業が予想され、産業連関表を用いた様々な経済分析が重要である。

     

    研究内容

    ・奈良県DATA取得後に正式版関西地域間産業連関表の作成:奈良県のDATAの差し替えを行い再度統合作業とバランス調整を行う

    ・昨年度算出した大阪・関西万博の経済波及効果の再算出:万博アクションプランVer3を反映し、さらに正式版関西地域間産業連関表完成後に再度試算する。

    ・分析結果を関西経済白書、APIRの各種レポートへの掲載、マスコミ取材時、セミナー等における経済波及効果試算のPR

    期待される成果と社会貢献のイメージ

    成果物である2015年表は、2011年表と同様、経済部門の一部をAPIRのホームページ上で発表する。また、分析成果は景気討論会や環太平洋産業連関分析学会やセミナー等で報告することを予定している。

    地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行う上での重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。

    研究体制

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    高林 喜久生 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授

    リサーチャー

    下田 充   日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
    下山 朗   大阪経済大学経済学部教授
    入江 啓彰  近畿大学短期大学部商経科教授
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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.122-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: 消費は緩やかな増加も生産と輸出に陰り-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりの減産となり、回復のペースは依然緩慢。雇用環境、消費は持ち直しているものの、景況感は食料品価格高騰の影響もあり悪化した。消費は緩やかに増加しているものの、欧米を中心とした海外経済減速リスクから生産と輸出の下振れが懸念されており、先行きは足踏みの兆しがみられる。
    ・4月の生産は3カ月ぶりに前月比低下。電気・情報通信機械や汎用・業務用機械等が減産に寄与した。生産の回復ペースは依然緩慢である。
    ・4月は失業率が前月から低下したと同時に、就業率の上昇が見られた。また、有効求人倍率は4カ月ぶりに上昇した。雇用情勢は前月より持ち直した。
    ・3月の現金給与総額は25カ月連続の前年比増加となったが、実質では13カ月連続で減少した。物価上昇が止まらず、実質賃金の低下が続いている。
    ・4月の大型小売店販売額は19カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は外出機会の増加とマスク着用ルールの緩和もあり、衣料品などの需要が増加し、売上をけん引した。スーパーは7カ月連続の増加となった。
    ・4月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比減少。貸家と分譲が大幅に減少した。
    ・4月の建設工事出来高は16カ月連続の前年比増加となった。伸びは3カ月連続で2桁の伸びが続く。うち公共工事は4カ月連続で2桁の伸びとなった。また、5月の公共工事請負をみれば、大学法人や万博に関連する発注が影響し、2カ月ぶりの大幅増加となった。
    ・5月の景気ウォッチャー現状判断は6カ月ぶりの前月比悪化。物価高の影響により小売関連が悪化したようである。また、先行き判断も2カ月連続で悪化。食料品の値上げやコストの価格転嫁などが悪影響した。
    ・5月は輸出入ともに前年比減少となったため、貿易収支は4カ月連続の黒字。輸出は4カ月ぶりに前年比減少に転じたが、輸入の減少幅が大幅に拡大したため黒字を維持した。
    ・5月の関空への外国人入国者数は50万人超の水準となり、インバウンド需要は回復傾向を維持。ただし、依然として中国からの団体旅行が認められていないため、先行き回復のペースは緩やかなものとなろう。
    ・5月の中国経済は、前年のロックダウンに対する反動増が弱まったため、生産と消費の回復は前月より減速した。その上、雇用と所得の改善は緩慢であるため、耐久財や住宅など高額消費支出は低迷している。そのため、4-6月期の経済成長率は前期より小幅加速にとどまろう。

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  • 小川 亮

    関西2府4県GRPの早期推計 No.1

    経済予測

    経済予測 » 関西2府4県GRPの早期推計

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    小川 亮 / 稲田 義久 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    【トピックス:関西各府県のコロナ禍からの回復過程】

    ・コロナ禍から3年が経過した。今回のトピックスでは関西各府県GRPの回復過程をレビューする。2021年度以降の回復の推移を見れば、兵庫県、京都府、大阪府、和歌山県には順調な回復の兆しが見える。特に京都府や和歌山県では22年度における回復は急激である。一方で、滋賀県、奈良県においては他府県と異なり回復軌道に乗っているようにはみられず、コロナ禍によるダメージから未だ回復しきれていない状況が見える。

    【ポイント】

    ・2020年度のGRPは、関西各府県のマイナスの寄与度が大きく増し、国全体に近いマイナス成長になったと見込まれる。21年度には、大阪府と兵庫県を中心とした反転により関西全体でプラス成長であったが、関西の回復力は更に国を下回っている。そして、22年度では回復の傾向を強めたと予想される。

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  • 稲田 義久

    143回景気分析と予測:詳細版<サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い - 実質GDP成長率予測:23年度+0.9%、24年度+1.4% ->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. 5月17日発表のGDP1次速報によれば、2023年1-3月期の実質GDPは前期比年率+1.6%増加し3四半期ぶりのプラス成長となったが、前期と均してみれば回復は緩やかである。結果、23年度の実質成長率は+1.2%と2年連続のプラス成長となった。しかし、足下のGDPの水準はピーク(19年7-9月期)から依然1.5%低い。民間最終消費支出、民間資本形成の回復の遅れが主要因である。一方、インバウンドの急回復もありサービス輸出はほぼ戻りつつある。今後は、社会経済活動の正常化からサービス消費中心の回復が期待できる。
    2. 1-3月期の実質GDP成長率(前期比+0.4%)への寄与度を見ると、国内需要は同+0.7%ポイントと2四半期ぶりのプラスとなった。うち、民間需要は同+0.6%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与。民間最終消費支出(同+0.6%)、民間住宅(同+0.2%)、民間企業設備(同+0.9%)がいずれも増加したためである。公的需要は同+0.1%ポイントと4四半期連続のプラス寄与。一方、純輸出は同-0.3%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与となった。
    3. 交易条件が2四半期連続で改善したため、国内総所得(GDI)成長率は前期比年率+4.0%となり、実質GDPの伸び(同+1.6%)を2四半期連続で上回った。
    4. 1-3月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-24年度日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、23年度+0.9%、24年度+1.4%と予測。前回(第142回予測)から、23年度は据え置き、24年度-0.1%ポイント下方修正した。23年度については民間需要の上方修正が純輸出の下方修正で相殺され、24年度は民間需要及び純輸出がともに小幅下方修正されたためである。
    5. COVID-19の5類移行に伴い社会経済活動が一層正常化することから、家計は累積した強制貯蓄を取り崩すため、サービス支出を中心に民間最終消費支出主導の回復が期待できる。一方、海外経済は欧米を中心に低迷することから純輸出のマイナス寄与は避けられず、また民間需要の寄与度が減速するため、23年度の成長率は前年から低下すると予測。このため、実質GDPがコロナ禍前のピークを超えるのは24年7-9月期以降となろう。回復に5年(20四半期)を要することになる。ちなみに、リーマンショックはピークからは22四半期を要している。
    6. 足下、政府の激変緩和政策の影響もありエネルギー価格は下落に転じたが、電気料金は再び値上げが予定されており、消費者物価指数基調のかく乱要因となる。加えて賃金の動きに連動するサービス価格の上昇もあり、インフレ率は23年度前半には3%台で推移するが、後半は原材料高と円安は落ち着きを見せ減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.5%、24年度+1.3%と予測する。前回予測から、足下の状況を反映し、23年度を+0.3%ポイント上方修正した。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~00’56”: Executive summary

    ②00’56”~27’23”: 第143回「景気分析と予測」
    <サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い>

    ③27’23”~39:58: Kansai Economic Insight Quarterly No.64
    <消費の復元を起点として好循環に向かう関西経済:景気は足下改善、先行きも改善を見込む>

    ④39’58”~42’42”: トピックス<関西2府4県GRPの早期推計>

    ⑤42’42”~47’27”: トピックス<急回復するインバウンド需要と関西経済>

     

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.121-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:消費は持ち直しも海外経済減速が下押しリスク-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産は依然コロナ禍前の水準を下回るが、2カ月連続の増産。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられるが、消費・景況感は持ち直している。消費の持ち直しから先行きは改善を見込むが、欧米などの海外経済の減速が景気下押しリスクとなろう。
    ・3月の生産は2カ月連続の前月比上昇。電気・情報通信機械や電子部品・デバイス等が増産に寄与した。ただし、1-3月期でみれば、1月の大幅減産が影響し、2四半期連続の低下。また水準は依然コロナ禍前を下回っている。
    ・3月は失業率が前月から上昇したと同時に、就業率の低下が見られた。また、有効求人倍率は3カ月連続、新規求人倍率は2カ月連続でいずれも低下した。1-3月期は雇用環境の回復が一服したとみられる。
    ・2月の現金給与総額は24カ月連続の前年比増加となったが、実質では12カ月連続で減少した。電気・ガス料金の抑制策にもかかわらず依然として消費者物価指数の上昇率は名目賃金の伸びを上回っているためである。
    ・3月の大型小売店販売額は18カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は外出機会の増加で、衣料品と身の回り品の需要が増え、売上をけん引した。スーパーは6カ月連続の増加となった。
    ・3月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。1-3月期は分譲の寄与もあり、4四半期連続の増加となった。
    ・3月の建設工事出来高は15カ月連続の前年比増加となった。伸びは4カ月ぶりに減速したものの、うち公共工事は2カ月連続で大幅な伸びが続いている。なお、4月の公共工事請負金額は4カ月ぶりの減速となった。
    ・4月の景気ウォッチャー現状判断は5カ月連続の前月比改善。経済社会活動の正常化に加え、インバウンド需要の回復が好影響した。一方、先行き判断は5カ月ぶりに小幅悪化。生活必需品などの値上げが景況感に悪影響した。
    ・4月の貿易収支は3カ月連続の黒字となった。輸出は3カ月連続の前年比増加だが、小幅の伸びにとどまった。一方、輸入は27カ月ぶりに前年比減少に転じたためである。
    ・4月の関空への外国人入国者数は2カ月連続で40万人超の水準となった。先行きについては水際対策の終了で入国者数の回復が続くと見込まれるが、重要なのはこれまで遅れていた中国客の戻りである。
    ・4月の中国経済は、前年実施されたロックダウンに対する反動による影響もあり、生産と消費の回復は加速した。しかし、雇用の持ち直しが緩慢であるため、耐久財や住宅の回復は依然緩やかである。4-6月期は小幅な成長加速が見込まれるが、今後景気回復が持続的になるためには雇用回復が欠かせない。

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    景気討論会レポート 2022

    その他の活動・出版物紹介

    その他の活動・出版物紹介 » 出版物紹介

     / DATE : 

    ABSTRACT

    APIRでは、最新の日本・関西経済の見通しを四半期毎に報告するとともに、時宜に適ったテーマで有識者による景気討論会を毎年開催しています。

     

    2022年度は以下2回に分けて開催し、成果をレポート(冊子)にまとめました。

     

    ・APIR景気討論会〈日本経済編〉

    「生産性と賃金上昇の同時実現策を追求する―シン・景気好循環とは―」

    2022年12月15日(木)15:00~16:30

     

    ・APIR景気討論会〈関西経済編〉

    「関西のシン・景気好循環の実現に向けて」

    2023年3月13日(月)15:00~16:30

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.120-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:サービス消費持ち直しも海外経済減速がリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 新田 洋介 / 今井 功

    ABSTRACT

    ・ 関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産はコロナ禍前の水準を下回るが、2カ月ぶりの増産。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられるが、消費・景況感は持ち直している。先行きはサービス消費を中心に改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速がリスク要因となろう。
    ・ 2月の生産は2カ月ぶりの前月比上昇。ただし、1月の大幅落ち込みを回復できておらず、依然コロナ禍前の水準を下回っている。
    ・ 2月は失業率が前月から上昇したと同時に、就業者数の減少が見られた。ただし、非労働力人口が横ばいであることから見れば、失業者の増加は転職意欲が高まっていることを反映している可能性がある。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅な増加が続いているため、今後も人手不足感が続こう。
    ・ 1月の現金給与総額は23カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では11カ月連続の減少となった。なお今回の春闘で妥結する賃上げ率は前年を上回り、高水準となる見通しである。
    ・ 2月の大型小売店販売額は17カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は前年のまん延防止等重点措置の反動による外出機会の増加が売上増に寄与した。スーパーは5カ月連続の増加となったが、小幅にとどまった。
    ・ 2月の新設住宅着工戸数は3カ月ぶりに前月比減少したが、1月は大幅増加しており、1-2月期を均せばプラス基調となっている。
    ・ 2月の建設工事出来高は14カ月連続の前年比増加で、伸びは3カ月連続で加速した。特に公共工事の伸びが大きく全体に寄与した。また、3月の公共工事請負金額は3カ月連続で同増加し、1-3月期は前期から加速した。
    ・ 3月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも4カ月連続の前月比改善。マスク着用の制限緩和やインバウンド需要の回復が好影響した。
    ・ 3月の貿易収支は2カ月連続の黒字となった。1-3月期は2四半期連続の黒字だが、黒字幅は前年比縮小した。
    ・ 3月の関空への外国人入国者数は40万人超の水準まで回復。1-3月期ではコロナ禍の影響が表れ始めた20年1-3月期の水準を上回った。
    ・ 中国の1-3月期実質GDPは前年同期比+4.5%と前期から加速した。3月はサービス産業の大幅な改善に牽引され、経済は活気を取り戻しつつある。4-6月期の経済成長率は今期より小幅加速すると見込まれる。ただし、雇用は依然として持ち直しが緩慢であるため、今後持続的に加速するかは注視を要する。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.119-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:海外経済減速による景気下振れリスクが懸念材料-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産は大幅減産し、弱い動きとなった。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費・景況感は持ち直している。先行きは改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速による景気の下振れリスクに注意が必要である。
    ・1月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械や輸送用機械が大幅減産となり、中国ロックダウンの影響が大きかった22年5月以来の低水準となった。
    ・1月は失業率が低下したと同時に、就業者数の増加と非労働力人口の減少が見られた。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅に増加したことから、今後も人手不足感が続こう。
    ・12月の現金給与総額は22カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では10カ月連続の減少となった。今春闘で、多くの大手企業は労働組合の要求に応じて賃上げを実現した。ただし、賃上げが全体に波及するかは中小企業における動向が重要である。
    ・1月の大型小売店販売額は16カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド需要の回復により11カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり4カ月連続の増加となった。
    ・1月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比増加した。うち、マンションが好調で全体の増加に大きく寄与した。
    ・1月の建設工事出来高は13カ月連続の前年比増加で、伸びは2カ月連続で加速した。特に公共工事は22年3月以来の2桁の伸びとなった。また、2月の公共工事請負金額は2カ月連続で同増加となっている。
    ・2月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも3カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や感染状況の落ち着きにより、ホテルや百貨店などを中心に景況感が改善した。
    ・1月は春節の影響を受けたため貿易収支は赤字となったが、2月は2カ月ぶりの黒字。ただし、1-2月を均してみれば赤字にとどまった。
    ・2月の関空への外国人入国者数は36.9万人、3カ月連続で30万人超の水準となった。中国人客の戻りが依然遅れていることもあり、回復のペースは緩慢。
    ・1-2月期の中国経済は、生産の回復が加速したことに加え、個人消費も対面型サービスを中心に大幅に改善した。しかし、民間企業が先行き不安を払拭し雇用拡大に踏み込むまで、景気回復のカギとなる雇用の改善は見込めない。そのため、1-3月期の景気回復が持続可能となるかは民間企業次第である。

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  • 稲田 義久

    拡張万博の経済波及効果:UPDATE

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 下山 朗 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    2022年関西経済白書の第6章3節において、拡張万博の経済効果について2015年関西地域間産業連関表(暫定版)を用いて分析した。本稿では、消費単価と日帰り客の新たな想定に基づき、大阪・関西万博の経済効果を再推計した。本試算は3つのケース(基準ケース、拡張万博ケース1、拡張万博ケース2)に分けて分析を行った。得られた分析結果と含意は以下のようである。

     

    1. 経済効果を生産誘発額でみれば、基準ケースでは2兆3,759億円、拡張万博ケース1では2兆7,875億円、拡張万博ケース2では2兆8,818億円と試算された。拡張万博の効果を考慮した場合、経済効果は約4千~5千億円程度の上振れが見込まれる。
    2. 拡張万博の経済効果は基準ケースに比べて、大阪府以外の地域ではかなり大きくなる。生産誘発額の地域別シェアをみれば、大阪府のシェアが基準ケースの74.5%から、拡張万博ケース2では62.4%まで低下する。すなわち、拡張万博の展開に伴う延泊と日帰り客の増加により、大阪府以外の地域での経済効果が相対的にも高まることになる。
    3. 関西広域にわたって拡張万博に類する様々な取り組みが広がり、観光客にとって魅力的なコンテンツ、滞在型消費を促すようなインセンティブが高まれば、本試算を上回る経済効果が期待できる。
    4. 大阪・関西万博に代表される大規模なイベントの経済効果は、特定の地域や特定の時期に留まるのではなく、関西広域で中長期的な取り組みがなされていくことが求められる。大阪・関西万博をひとつの「呼び水」として、関西経済の成長に繋げていくことが重要である。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.63 -内需を中心に緩やかな持ち直しの動き続く:物価高と世界経済の行方が攪乱要因-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年10-12月期の関西経済は、前期から引き続き緩やかに持ち直した。経済活動の正常化に伴い、生産、雇用、公共投資など内需を中心に幅広い項目で堅調な回復が見られた。ただし先行きについては、物価高が家計や企業に影響するほか、米欧中経済の動向が攪乱要因となるなど、力強い回復は見込みづらい。
    2. 家計部門は、物価高が回復の足かせとなっている部分もあるが、各種行動制限が解除となるなど経済活動の正常化により、概ね持ち直している。大型小売店販売、所得・雇用環境、住宅市場など堅調に推移している。センチメントや実質賃金などこれまで低調だった指標でも底打ちの兆しが見られる。
    3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていることから、概ね緩やかに持ち直した。生産は一進一退で伸び悩んでいるものの、景況感は非製造業を中心に持ち直しており、設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。
    4. 対外部門は、財の貿易については輸出・輸入ともに前年を上回ったものの、増加幅は縮小した。輸出を地域別に見ると、米国向けは堅調だったが、EU向けはやや伸び悩み、中国向けは停滞した。関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上などインバウンド需要については、水際対策が緩和されたことで急回復した。
    5. 公的部門では、全国に比べて堅調な動きが続いている。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.3%、23年度+1.3%、24年度+1.6%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は内需が成長を牽引して1~2%のプラス成長が続く。コロナ禍前のGRP水準を回復するのは24年度となり、前回予測に比べて後ずれする。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は22年度+1.8%ポイント、23年度+1.0%ポイント、24年度+1.3%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は22年度-0.7%ポイントと成長を押し下げる。23年度以降はプラスの寄与となるが、小幅にとどまる。
    8. 実質GRP成長率について前回予測(22年12月19日公表)と比較すると、22年度は-0.19%ポイントの下方修正、23年度は+0.11%ポイントの上方修正としている。24年度は大きな修正はない。
    9. 今号のトピックスは「大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート」として、新たな消費需要の想定に基づく経済効果を試算した。生産誘発額は、基準ケースの2.4兆円に対して、日帰り客数や宿泊数の増加を織り込んだ拡張万博ケースでは2.9兆円となる。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①01’01”~02’35” :Executive summary

    ②02’36”~36’39”:第142回「景気分析と予測」<強まるインフレと海外経済減速の影響>

    ③36’40”~53:02:Kansai Economic Insight Quarterly No.63<景気は足下、先行きともに改善を見込む:消費者物価上昇と海外経済減速のリスクに注意>

    ④53’03”~58’54”:トピックス<大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

     

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.118-景気は足下、先行きともに改善を見込む:消費者物価上昇と海外経済減速のリスクに注意-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、回復のペースは遅い。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費は百貨店を中心に持ち直しが続く。先行きは消費者物価の上昇と海外経済減速による景気下押しリスクに注意が必要である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は減少が続く。3月13日よりマスクの着用は個人の判断に委ねられ、5月8日から感染症法上の分類が5類へ変更となる。
    ・12月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇だが、小幅増産にとどまった。2022年平均では2年ぶりのマイナスとなり、依然としてコロナ禍前の水準を回復できていない。
    ・22年通年では、失業率は3年ぶりに低下したと同時に、労働力人口と就業者数はともに増加し、雇用の回復は順調に進んだ。しかし、足下12月に失業者数の減少が見られたが、10‐12月期を均してみると、失業率の上昇及び労働力人口と就業者数の減少が同時に見られ、雇用の回復に一服感が出ている。
    ・11月の現金給与総額は21カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では9カ月連続の減少となった。ただし、一部の企業で賃上げの動きが見られ、賃上げの機運が高まりつつある。今後の実質賃金の動向に注視を要する。
    ・12月の大型小売店販売額は15カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド需要の回復により10カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり3カ月連続の増加となった。
    ・12月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。うち、貸家と分譲が全体の増加に寄与した。
    ・12月の建設工事出来高は12カ月連続の前年比増加で全国に比して高い伸びが続いている。関西、全国ともに民間工事は前月から減速、公共工事は加速した。また、1月の公共工事請負金額は3カ月ぶりに増加に転じた。
    ・1月の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月連続で改善。インバウンド需要増加の影響もあり、百貨店やホテルなどが好調であった。
    ・1月の貿易収支は5カ月ぶりの赤字。中国の春節時期のずれの影響もあり、輸出は23カ月ぶりに減少し、一方、輸入は24カ月連続で増加したためである。
    ・1月の関空への外国人入国者数は37.9万人。2カ月連続で30万人を超えたが、訪日中国人客の回復が遅れており回復のペースは緩やかである。
    ・1月の中国経済は、経済活動の再開と春節連休による旅行機運の高まりが景況感の回復に繋がり、消費者物価指数からも対面型サービスを中心に個人消費は持ち直しつつあることが窺える。ただし、新規貯蓄が高水準で、消費に慎重な姿勢が続いているため、1-3月期の景気は大きな改善が見込まれない。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.117-景気は足下、先行きともに改善を見込む:不確実性上昇に伴う景気下押しリスクに注意-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は2カ月連続の減産で、弱い動きが続く。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費・景況感は持ち直しが続く。先行きは物価や海外経済の見通し不確実性上昇に伴う景気下押しリスクに注意が必要である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は1月11日をピークに減少に転じた。また政府は感染症法上の分類を今春に変更する意向を示した。
    ・11月の生産は2カ月連続の前月比低下。特に電子部品・デバイスは3カ月連続で減産しており、全国と比して弱い動きとなっている。
    ・11月は失業者数が増加するとともに、労働力人口と就業者数はいずれも減少した。また、就業率も2カ月連続で低下し、コロナ禍前の水準を下回っている。雇用の回復は停滞している。
    ・10月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で20カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では8カ月連続の減少となった。
    ・11月の大型小売店販売額は14カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド回復により9カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり2カ月連続の増加となった。
    ・11月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比減少。建設費高騰と円安の影響もあり、分譲と持家が低調だった。
    ・11月の建設工事出来高は11カ月連続の前年比増加で全国に比して高い伸びが続いているが、公共工事・民間工事ともに前月から減速となった。また、12月の公共工事請負金額は2カ月連続で同減少となっている。
    ・12月の景気ウォッチャー現状判断DIは5カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月連続で改善。国内旅行需要やインバウンド需要が回復しつつあることから、関連するサービス業が改善した。
    ・12月の貿易収支は4カ月連続の黒字。エネルギー価格の落ち着きや円安修正の影響で、輸入額の伸びは前月から大幅に減少した。このため黒字幅は前月から拡大した。
    ・12月の関空への外国人入国者数は33.1万人とコロナ禍前の5割程度まで回復。22年通年では水際対策の大幅緩和もあったが、年前半の低調により88.5万人にとどまった。
    ・中国の10-12月期実質GDPは前年同期比+2.9%と前期から減速した。その結果、22年通年の経済成長率は+3.0%にとどまり、政府の目標成長率(5.5%)を大幅に下回った。1月に4年ぶりに行動制限のない春節休暇を控え、消費の回復が期待されている一方、更なる感染拡大による混乱が懸念されている。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.116-景気は足下、先行きともに改善を見込む:物価の高止まりと海外経済減速がリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は減産で、回復のペースは遅い。雇用環境・消費・景況感は持ち直しが続く。先行きは物価の高止まりに加え、海外経済減速がリスク要因となろう。
    ・COVID-19の新規陽性者数は12月中旬より再度増加傾向に転じた。また6都県においてインフルエンザ流行期入り。ツインデミック(同時流行)が現実となりつつある。
    ・10月の生産はプラスチック製品や電子部品・デバイスなどの減産もあり、3カ月ぶりの前月比低下。7-9月平均比小幅上昇だが、回復のペースは遅い。
    ・10月は失業者数が増加するとともに、労働力人口と就業者数はいずれも減少に転じた。また、就業率も前月より微減した。雇用の回復は一服したとみられる。なお、新規求人数が大幅に増加したことから、今後も人手不足感が続こう。
    ・9月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で19カ月連続の前年比増加。一方、消費者物価指数の上昇により、実質では7カ月連続の減少となった。物価高は当面続くと見込まれるため、実質賃金はマイナスで推移し続けるだろう。
    ・10月の大型小売店販売額は13カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品と秋冬衣料品の販売が好調で8カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり3カ月ぶりの増加となった。
    ・10月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加。一方、建設資材の高騰による価格転嫁が進んでおり、先行きは住宅購入意欲の低下が懸念される。
    ・10月の建設工事出来高は10カ月連続の前年比増加と全国と比して堅調。公共工事・民間工事ともに増加基調が続いている。一方、11月の公共工事請負金額は2カ月ぶりに同減少している。
    ・11月の景気ウォッチャー現状判断DIは4カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月ぶりの改善。国内旅行需要やインバウンド需要の増加もあり、サービス関連を中心に回復した。
    ・11月の貿易収支は3カ月連続の黒字。輸出の伸びが前月より加速し、輸入の伸びが減速したため。1月からの累計をみれば、輸出入額ともに19兆円を超えており、年別過去最高額を更新している。
    ・11月の関空への外国人入国者数は24万7,090人と前月から倍増。水際対策の大幅緩和が継続されていることもあり外国人入国者数は着実に回復が進む。
    ・11月の中国経済は、感染急拡大に応じて多くの地域で行動制限が強化された影響もあり、生産回復の減速と個人消費の大幅な減少が見られた。12月にゼロコロナ政策の大幅な緩和など明るい動きもあるが、先行き不透明感は依然として強いため、10-12月期の景気は悪化するだろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.61 -持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年7-9月期の関西経済は、前期に続き緩やかに持ち直した。COVID-19感染第7波に対して行動制限措置は取られず、前年に比べて経済活動が正常化した。また前期に発生した中国のロックダウンの影響が、今期は幾分落ち着いた。しかし一方で、海外経済の減速懸念や物価高により景気後退への警戒感が強まっている。
    2. 家計部門は、持ち直している部分もあるが、物価高が回復の足かせとなっている。各種行動制限が解除となったことで百貨店販売は回復し、雇用環境も改善している。しかしながら、食料品やエネルギー価格など消費者物価の高騰により、センチメントや実質賃金などは弱い動きとなっている。
    3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていること、また中国・上海のロックダウンの影響が落ち着いたことから、概ね緩やかに持ち直した。生産は幾分持ち直し、また設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。一方、原材料価格の高騰が続いていること、海外経済の減速などを警戒する向きもあり、景況感については足踏み状態にある。
    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。特に輸入の伸びが大きく、貿易収支は赤字に転じた。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けは鈍化した。インバウンド需要などのサービス輸出については、入国規制の緩和により、関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上で大幅な改善が見られる。
    5. 公的部門は、引き続き全国に比べて堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.1%、24年度+1.4%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。しかしコロナ禍からの回復としては力強さに欠く。日本経済予測と回復経路に大きな違いはない。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が22年度+2.3%ポイント、23年度+0.8%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.6%ポイントと成長を押し下げ、23年度以降も成長に対する貢献は大きくない。
    8. 今号のトピックスは「関西各府県GRPの早期推計」と「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」を紹介する。後者の分析結果によると、中国の実質GDPが1%下落したと仮定すると、それに伴い関西の実質輸出が0.462%減少し、関西の実質GRPは0.12~0.13%減少する。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~02’56” :Executive summary

    ②02’57”~34’42”:第140回「景気分析と予測」<世界経済の減速を反映し、23年度成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.7%、23年度+1.2%、24年度+1.4% ->

    ③34’43”~47:52:Kansai Economic Insight Quarterly No.61<持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高>

    ④47’53”~53’33”:トピックス<「関西各府県GRP早期推計」「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください