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「日本経済」の検索結果 [ 16/26 ]

  • 藤原 幸則

    金融所得課税のあり方 – 国民の資産形成と成長資金供給の促進を重視した議論を –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    昨年秋、自民党総裁選挙を契機に金融所得課税の見直し議論がにわかに注目された。しかし、市場関係者から懸念の声があり、昨年10月初めには株価下落もあって、表立った議論は消えた。昨年12月の令和4年度与党税制改正大綱では、今後の検討課題とされている。今回の議論の背景は、いわゆる「1億円の壁」というフレーズに端的に集約されている。本稿では、金融所得課税の見直し議論の背景と論点を概観したうえで、そのあり方について私見を提起している。今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると考える。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に付加増税することは現実的に納得性があるものと考える。

     

    1. 「1億円の壁」の問題は、申告所得税において所得階層別にみた場合、合計所得金額が1億円超になると所得税の負担率が下がっていくことをさしている。高所得者層ほど所得に占める株式等譲渡所得の割合が高くなっており、その金融所得の大部分は分離課税の対象として、累進所得課税よりも相対的に低い税率が適用されているからである。これがゆえに、税負担の不公平、所得再分配機能の低下、格差の拡大と問題視されている。

    2. 金融所得課税の見直しについて、分離課税の税率を一律に引き上げる場合、高所得者層の税負担増加にとどまらず、中低所得者層も増税になるという問題がある。株式・債券等の有価証券を持つ中低所得者は幅広く存在している。大衆増税にならないよう、たとえば、税率引き上げの対象を合計所得金額が1億円超の超高所得者に限定するということが考えられる。
    しかし、税率が高率になると、投資家心理を冷やし株価下落などの金融資本市場への影響がありうる。こうした影響の判断は難しいが、何よりも、成長資金供給に向けて、投資家が積極的にリスクテイクを行うという機能を損なってしまうことにならないかが懸念される。

    3. 今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると提起したい。中低所得者層の資産形成の支援に向けてはNISAの拡充や株式等譲渡所得の総合課税選択可とすること、高所得者層には損益通算範囲のさらなる拡充などを検討する必要がある。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に引き上げることは現実的に納得性があることだと考える。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.58 -不安材料多く、霞む本格回復への途:コロナ禍に加え国際情勢や物価高などが下押し圧力に-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2021年10-12月期の関西経済は、新型コロナ「第5波」が収束し、緊急事態宣言等の感染抑止策が全て解除となった。これにより経済活動は正常化したものの、半導体不足に伴うサプライチェーンの混乱や物価高など足下で不安材料が多く、下押し圧力がかかる。

    2. 家計部門は、「第5波」の収束と緊急事態宣言の解除で、百貨店販売額などで持ち直しの動きが見られた。センチメントや所得は伸び悩んでおり、本格的な回復には至っていない。雇用環境も横ばい続きで、全国に比べて回復が遅れている。

    3. 企業部門は、前期から引き続いて足踏み状態にある。景況感は緩やかに回復しているが、生産は部材供給不足や物流逼迫の影響から弱い動きとなった。またエネルギー価格の高騰は企業収益を圧迫している。

    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加してコロナ禍前の水準を上回っている。特に資源価格高の影響により、輸入の伸びが顕著で、足下1月の貿易収支は赤字となった。インバウンド需要などのサービス輸出は、底ばいが続いている。

    5. COVID-19感染状況は、秋口から新規陽性者数の減少が続いていたが、感染力の強いオミクロン株の広がりにより、12月下旬以降急速に増加し「第6波」を迎えた。このため22年1月以降、まん延防止等重点措置が各自治体に順次適用され、再び経済活動が制限されている。

    6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+2.6%、22年度+2.5%、23年度+1.9%と予測。22年度にコロナ禍前の水準に戻り、23年度もプラス成長を見込む。ただしコロナ禍の収束見通し、地政学的リスク、エネルギー価格の高進など、懸念材料が非常に多く、下振れリスクは大きい。

    7. 日本経済予測と比較すると、21年度から23年度にかけて、関西が全国の伸びを上回って推移する見込み。公的需要と域外需要の寄与が関西の方が大きい。

    8. 実質GRP成長率について、前回予測(12月23日公表)に比べて、21年度は-0.28%ポイントの下方修正、22年度-0.30%ポイントの下方修正、23年度は+0.2%ポイントの上方修正。21年度は、民間需要を中心に、需要項目いずれも下方修正。22-23年度は、輸出の伸びを下方修正。

    9. 2021年度は、民間需要が+1.0%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。公的需要はコロナ対策の効果から+0.5%ポイント、域外需要も+1.0%ポイントとそれぞれ堅調。22年度以降は、経済活動の正常化により3項目すべてがバランス良く成長に貢献する。

    10. 今号のトピックスでは、「DMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果」および「足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTPP加盟による影響の考察」と題する当研究所レポート2篇の概要を紹介する。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00:00~02:27 :Executive summary

    ②02:28~29:16:第137回「景気分析と予測」<遅れる日本経済の回復:リスクは変異株、原油高と為替安>

    ③29:17~42:14:Kansai Economic Insight Quarterly No.58<不安材料多く、霞む本格回復への途>

    ④42:14~44:42:トピックス1<京都府におけるDMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果>
            トピックス2<足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTTP加盟による影響>

  • 稲田 義久

    DMOのインバウンド誘客の取組とその効果 -マーケティング・マネジメントエリアに着目した分析:京都府の事例から-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 古山 健大 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    京都府は訪日外客の偏在する京都市とそうでない地域を抱える典型的な自治体である。本稿では観光庁の『宿泊旅行統計調査』の個票データを基礎統計として用いて、その問題の解決を目指す京都府の3つの地域連携DMOと京都市を例にとり、マーケティング・マネジメントエリア別にその取組と成果を分析する。分析を整理し、得られた含意は以下のようにまとめられる。

    1.   府域及び京都市の宿泊施設の推移をみれば、府域においては宿泊施設数や宿泊者の収容人数が増加している地域がみられるものの、京都市の宿泊施設の急増が他エリアを圧倒している。

    2.   京都市やお茶の京都エリアに注目すれば、外国人宿泊者の急増や住宅宿泊事業法が施行されたこともあり、簡易宿所及びタイプ不詳の宿泊施設が急増している。今後は京都市と府域の宿泊施設の需給バランスを意識し、施設の質の向上を担保する政策が課題となろう。

    3.   外国人宿泊者を国籍別にみると、全エリア共通して、中国、香港、台湾等東アジア地域のシェアが高まっている。京都市では他エリアに比して観光消費額の拡大が期待される欧米豪地域のシェアが高く、一定程度占めている。今後は、欧米豪の府域への誘客と宿泊増が課題となろう。

    4.   各DMOが実施した観光プロモーション事業展開は重要である。例えば、海の京都DMOは台湾に向けてのプロモーションに力をいれた結果、同国のシェアが大幅に拡大した。しかし、実効的なプロモーション活動のためにも、KPI等に基づく指標管理が重要となろう。

    5.   これまでのプロモーション活動に加え、京都市から、各府域へも足を伸ばし、利用客が府域を観光したくなる魅力的な仕組みづくりが課題である。その際に留意すべきは、各府域DMOで宿泊を増加させるような仕組みづくりまたはプログラムを開発する必要があろう。

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  • 稲田 義久

    136回景気分析と予測<21年7-9月期GDP2次速報を更新し、経済見通しを改定 – 実質GDP成長率予測:21年度+2.7%、22年度+2.6%、23年度+1.7% ->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  12月8日発表の2021年7-9月期GDP2次速報によれば、同期の実質GDP成長率は前期比年率-3.6%となり、1次速報(同-3.0%)から下方修正された。改定にあたって、21年1-3月期までの系列が速報値から年次推計値に置き換えられた上に、COVID-19の影響を考慮した季節調整のダミー処理が変更された。このため、過去の四半期パターンが比較的大きく改定された。
    2.  7-9月期2次速報により過去のGDPの水準が改定されたため、これまでコロナ前のピークは2019年7-9月期であったが、2次速報で19年7-9月期が下方修正(556.6兆円)され、4-6月期が上方修正(557.3兆円)されたため、新たな過去のピークは19年4-6月期となった。新たなピークを100とすると、コロナ禍により20年4-6月期は89.9(501.1兆円)と過去のピークより10.1%(-56.1兆円)低下した。足下、21年7-9月期は95.6(532.8兆円)と依然ピークより4.4%(-24.5兆円)低い水準である。日本経済の回復は遅いことが確認された。
    3.  新たに、7-9月期GDP2次速報を追加、外生変数の想定を織り込み、21-23年度の日本経済の見通しを改定した。今回(第136回)、実質GDP成長率を、21年度+2.7%、22年度+2.6%、23年度+1.7%と予測する。前回(第135回)予測に比して、21年度は-0.1%ポイントの下方修正、22年度は変化なし、23年度は+0.3%ポイントの上方修正となった。7-9月期の下方修正を反映した結果、21年度を下方修正し、23年度は回復が後ずれするため上方修正となった。
    4.  実質GDP成長率への寄与度をみれば、21年度は、民間需要+1.7%ポイント、公的需要+0.4%ポイント、純輸出+0.9%ポイントと、前回予測から公的需要を下方修正、民間需要及び純輸出を上方修正した。23年度は、民間需要(+1.0%ポイント)及び純輸出(+0.4%ポイント)の寄与度を上方修正し、公的需要(+0.3%ポイント)は変化なし。
    5.  実質GDPを四半期ベースでみれば、21年10-12月期は一旦制約条件が解消されるため、コロナ禍により累積していた強制貯蓄が取り崩され、民間最終消費の急拡大(リベンジ消費)が期待できる。このため、実質GDPの水準がコロナ禍前の水準を超えるのは22年1-3月期、コロナ禍前のピークを超えるのは23年1-3月期となろう。今回7-9月期のマイナス成長もあり、前々回(第134回)予測から1四半期遅れる。
    6.  消費者物価指数の先行きについて、宿泊料と通信料は基調に対するかく乱要因となろう。エネルギー価格高騰で年後半以降前年比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度0.0%、22年度+0.9%(前回+0.8%)、23年度+0.6%(前回+0.7%)と予測する。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.56 -感染症対策により持ち直しの動き一服 本格回復は22年以降に後ずれ-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2021年7-9月期の関西経済は、持ち直しの動きに一服感が見られ、踊り場を迎えた。緊急事態宣言の長期化による消費活動の停滞や、半導体不足の影響により、持ち直しの動きが弱まった。
    2. 家計部門は、前期には緩やかながら持ち直しの動きが見られていたが、第5波となる感染拡大および緊急事態宣言の発令により、足踏み状態となった。センチメントや所得は伸び悩んでおり、雇用環境は全国に比べて回復が遅れている。
    3. 企業部門は足踏み状態にある。生産は半導体不足の影響により減速した。一方、景況感は堅調に回復している。
    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも持ち直しの動きが続いている。ただし関西では自動車輸出減や原油高の影響は小さく、全国に比べて緩やかな推移となっている。インバウンド需要などのサービス輸出は、依然低調である。
    5. COVID-19感染状況は、7-9月期は第5波の最中にあり、8月には緊急事態宣言が大阪府、次いで京都府と兵庫県、滋賀県に発令された。新規陽性者数は8月28日にピークを打ち、その後は減少傾向が続いている。こうした状況を受けて、政府は9月末で緊急事態宣言等を全て解除した。
    6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+2.8%、22年度+2.9%、23年度+1.7%と予測。21年度以降に回復に転じる。ただし21年度の回復は緊急事態宣言長期化による消費の伸び悩みが影響し、20年度の大幅落ち込みに比べると小幅である。
    7. 前回予測(8月31日公表)に比べて、2021年度は-0.4%ポイントの下方修正、22年度は+0.4%ポイントの上方修正。21年度は、緊急事態宣言の長期化による消費の伸び悩みを反映したことによる民間需要の下方修正が主因である。一方、公的需要はコロナ対策による政府支出の増加を見込み、上方修正。22年度は民間需要を小幅下方修正、公的需要および域外需要を上方修正した。
    8. 2021年度は、民間需要が+1.1%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。公的需要は+0.5%ポイント、域外需要も+1.2%ポイントとそれぞれ底堅く成長を下支える。22年度も民間需要+1.8%ポイント、公的需要+0.5%ポイント、域外需要+0.6%ポイントと3項目すべてが成長に貢献する。23年度も同様に3項目すべてが成長に貢献するが、寄与度はいずれも前年から小幅となる(民間需要+0.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.6%ポイント)。
    9. トピックスでは、関西各府県GRPの早期推計(2019-20年度)の結果を示した。関西経済全体では2019年度・20年度と2年連続のマイナス成長であるが、日本経済に比べると落ち込みは小さかったと見込まれる。

     

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  • 稲田 義久

    135回景気分析と予測<岐路に立つ回復シナリオ:供給制約と第6波のリスク – 実質GDP成長率予測:21年度+2.8%、22年度+2.6%、23年度+1.4% >

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. 11月15日発表のGDP1次速報によれば、7-9月期実質GDPは前期比年率-3.0%(前期比-0.8%)減少し、2四半期ぶりのマイナス成長となった。市場コンセンサスの最終予測(同-0.56%)から大幅に下振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同-0.7%、生産サイドは同-3.8%、平均は同-2.2%であった。支出サイド予測が上振れたのに対し、生産データに反応しやすい生産サイドはむしろ実績に近い予測となった。通常、両モデルの予測は最終予測に向けて収束の方向に向かうが、今回は最後まで乖離した。このことは供給制約の影響がいかに強かったかを示唆している。
    2. 7-9月期は4回目の緊急事態宣言期を含むため、民間最終消費支出を中心に低調なパフォーマンスとなった。実質GDP成長率(前期比-0.8%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.9%ポイントと2四半期ぶりのマイナス。うち、民間需要は同-1.4%ポイントと2四半期ぶりの大幅なマイナス寄与。ヘッドライン指標である、民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備のいずれもが大幅に減少。一方、純輸出は3四半期ぶりのプラス寄与だが、同+0.1%ポイントと小幅となった。緊急事態宣言の長期化や半導体不足など供給制約が大きく影響した結果といえよう。
    3. 新たに、7-9月期GDP1次速報を追加、外生変数の想定を織り込み、21-22年度の日本経済の見通しを改定し、新たに23年度の予測を追加した。今回、実質GDP成長率を、21年度+2.8%、22年度+2.6%、23年度+1.4%と予測する。前回(第134回)予測に比して、21年度は-0.5%ポイント下方修正、22年度は+0.3%ポイント上方修正。供給制約と緊急事態宣言による7-9月期大幅マイナス成長を反映の結果、21年度を下方修正、また成長加速を後ずれさせたため22年度は上方修正となった。
    4. 実質GDP成長率への寄与度をみれば、21年度は、民間需要(+1.6%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+0.8%ポイント)、すべての項目が景気を押し上げるが、民間需要は前年度の落ち込みに比すれば回復力に欠ける。22年度も、民間需要、公的需要、純輸出は前年と同程度の寄与となるが、23年度は民間需要、公的需要、純輸出の寄与度が前年から低下する。
    5. 実質GDPを四半期でみれば、10-12月期は一旦制約条件が解消され、コロナ禍による貯蓄拡大(強制貯蓄)の影響で、民間最終消費支出の急拡大(リベンジ消費)が期待できる。このため、実質GDPの水準がコロナ禍前の水準を超えるのは22年1-3月期、コロナ禍前のピークを超えるのは23年1-3月期となろう。今回7-9月期のマイナス成長もあり、前回予測から1四半期遅れる。
    6. 消費者物価指数の先行きについて、宿泊料と通信料は基調に対するかく乱要因となろう。エネルギー価格高騰で年後半以降前年比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度0.0%、22年度+0.8%、23年度+0.7%と予測する。

     

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  • 稲田 義久

    134回景気分析と予測<岐路に立つ回復シナリオ:景気回復は後ずれ-実質GDP成長率予測:21年度+3.3%、22年度+2.3%->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。8月31日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1.  8月16日発表のGDP1次速報によれば、4-6月期の実質GDPは前期比年率+1.3%(前期比+0.3%)増加した。2四半期ぶりのプラス成長だが、1-3月期の落ち込み(同-3.7%)を回復できておらず、前期の反動とみてよい。21年前半は世界主要国が着実に回復するのに比して、日本経済は停滞していたといえよう。4-6月期の実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト8月調査)の最終予測(同+0.66%)から上振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同+0.9%であった。
    2.  4-6月期は3回目の緊急事態宣言期を含むため、マーケットは低調なパフォーマンスを見込んでいた。しかし、緊急事態宣言の人流抑制効果、特に消費抑制効果は小さかった。一方、期待されていた公的固定資本形成は2四半期連続のマイナス。実質GDP成長率(前期比+0.3%)への寄与度を見ると、国内需要は同+0.6%ポイントと2四半期ぶりのプラス。うち、民間需要は同+0.6%ポイント、公的需要は同+0.0%ポイントと、いずれも2四半期ぶりのプラス。一方、輸入の回復もあり純輸出は同-0.3%ポイントと2四半期連続のマイナスとなった。
    3. 新たに、4-6月期GDP1次速報を追加し、外生変数の想定を織り込み、21-22年度の日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、21年度+3.3%、22年度+2.3%と予測。暦年ベースでは、21年+2.3%、22年+2.5%と予測した。前回(第133回)予測に比して、21年度は-0.1%ポイント下方修正したが、22年度は変化なし。足下、ワクチン接種は遅ればせながら加速しているが、コロナ変異株のまん延が7-9月期の人流を抑制し、成長の加速を後ずれさせるとみる
    4.  実質GDP成長率への寄与度をみれば21年度は、民間需要(+2.3%ポイント)、純輸出(+0.7%ポイント)、公的需要(+0.3%ポイント)、すべての項目が景気を押し上げるが、民間需要は前年度の落ち込みに比すれば回復力に欠ける22年度も、民間需要(+1.8%ポイント)、公的需要(+0.3%ポイント)、純輸出(+0.2%ポイント)と、いずれも景気を押し上げるが、民間需要、純輸出の寄与度が前年から低下する
    5.  四半期パターンをみれば、21年7-9月期はCOVID-19感染再拡大(第5波)と4度目の緊急事態宣言の影響で民間消費の急回復は後ずれる。感染力が強いコロナ変異株のまん延と感染者数の急増から、センチメントの急回復は期待できない。22年以降、潜在成長率を上回るペースが持続するため、コロナ禍前の水準を超えるのは21年10-12月期、コロナ禍前のピークを超えるのは22年10-12月期となる。
    6.  消費者物価指数の基準年が2020年に移行した。先行きについて、宿泊料と通信料は基調に対するかく乱要因となろう。年後半以降前年同月比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調である。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度-0.1%、22年度+0.7%と予測する

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.55 -総じて持ち直しているが本格回復の道険し:変異株拡大で翻弄される回復パターン-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。8月31日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 2021年4-6月期の関西経済は、総じて持ち直しているが、コロナ禍の影響が続いていることから、本格回復にはまだ至っていない。部門や業種によって回復のパターンは不均一となっている。
    2.コロナ禍は依然として収束の見通しが立たない。ワクチン接種の進展は好材料であるが、変異株の拡大もあり関西でも新規陽性者が急増している。8月にはまず大阪府、次いで京都府と兵庫県、さらに滋賀県に緊急事態宣言が発令されるなど、関西における社会・経済活動は依然制約されたままであり、関西経済の回復に向けて重い足枷となっている。
    3. 家計部門は、前年に比べると社会・経済活動が幾分正常化していることから、緩やかながら持ち直しの動きが見られる。前年の反動もあるが総じて改善しており、センチメントなどコロナ禍前の水準を回復した指標もある。ただし回復パターンはコロナ禍の感染拡大状況によって一進一退の動きとなっており、本格的な回復とはまだ言いがたい。
    4. 企業部門は、総じて持ち直している。製造業は、生産や景況感などコロナ禍前の水準をおおむね回復している。非製造業も総じて持ち直しているが、製造業に比べるとやや力強さを欠いている。設備投資計画は、製造業・非製造業とも増勢が見込まれている。ただし製造業・非製造業とも、コロナ禍の影響が続く業種も散見され、回復パターンは不均一となっている。
    5. 対外部門は、財の輸出の持ち直しの動きが続いている。また輸入も持ち直している。一方、インバウンド需要などのサービス輸出は、全面的な入国制限解除がなされていないことから、回復の見込みが立っていない。
    6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+3.2%、22年度+2.5%と予測。2020年度の大幅マイナスから反転して、21年度以降は回復に向かうが、ペースは緩やかである。GRPがコロナ禍前の水準を回復するのは実質・名目とも22年度以降となる。
    7. 前回予測に比べて、2021年度は-0.4%ポイントの下方修正、22年度は+0.4%ポイントの上方修正。21年度の修正は、民間需要の下方修正が主因である。前回予測以降に発現した変異株の拡大等により、民間需要、なかでも民間最終消費支出の回復が後ずれする。
    8. 成長に対する寄与度を見ると、2021年度は、民間需要が+1.6%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。ただし前年度の大幅マイナスを回復するには至らない。また公的需要+0.3%ポイント、域外需要+1.2%ポイントとそれぞれ底堅く成長を下支える。22年度も民間需要+1.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.3%ポイントと3項目すべてが景気を押し上げる。
    9. トピックスでは、第3次産業活動指数の変化による府県別・産業別への経済波及効果を産業連関表により試算した。コロナ禍での第3次産業減産により、生産額で約4.2兆円、粗付加価値額ベースでは2.4兆円、率にして約3%程度の影響があった。

     

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  • 藤原 幸則

    コロナ後における財政の規律回復と健全化 – 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から考察した論点 –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    内閣府は、例年1月と7月に「中長期の経済財政に関する試算」の結果を公表している。今年、7月21日に最新の試算結果が示された。2025年度のPB(プライマリーバランス)黒字化目標を堅持した骨太方針2021を数字で裏付けるものである。本稿では、この最新の試算結果を考察し、コロナ後における財政の規律回復と健全化の論点整理を行った。要約は以下の通りである。

    1. 今回の試算結果によると、「成長実現ケース」では、2027年度にPB黒字化が達成される。前回(2021年1月)試算結果では2029年度であったのが2年早くなっている。コロナ前への経済回復がやや遅れると見通しているにもかかわらず、こうした試算結果となるのは、名目GDPの水準の落ち込みによる収支悪化要因よりも、2020年度の税収の予想外の上振れによる収支改善要因の方が大きいということの結果といえるだろう。また、歳出改革を今後も継続すれば、PB黒字化の前倒しが視野に入る試算結果ともなっており、コロナ後における財政健全化の道筋についての検討で、歳出改革は重要なポイントになることがわかる。

    2. 内閣府の中長期試算の前提となっている全要素生産性の上昇率(いわば技術進歩率)については、以前から多くの研究者から非現実的あるいは過大な想定との疑問が呈されている。潜在成長率の過去の推移から、今回試算の「成長実現ケース」の想定は過大ではないかという見方はどうしても否めない。かといって、1%弱を下回る「ベースラインケース」の想定のままであってもいけない。政府が成長戦略の柱に掲げるグリーンやデジタルについて、具体的な戦略を積み上げていく議論が、財政健全化の道筋の具体化という意味でも必要である。

    3. コロナ感染の収束が見極められてから、財政規律の回復とともに、PB黒字化などの財政健全化目標を再設定するのがよいだろう。コロナ後の財政健全化については、人口減少・高齢化等による構造的な財政赤字への対処と、コロナ対策のような予期できない緊急措置による財政赤字への対処とを、分けて考える必要がある。また、コロナ後の財政規律の確保のために、コロナ対応の施策を中心に、必要なくなったものが存続しないよう既存歳出のスクラップに取り組む必要があるし、補正予算も含め、追加的な歳出にはそれに見合う安定的な財源を確保するというペイアズユーゴー(pay as you go)原則が踏まえられるべきである。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.54 -持ち直しているが本格回復には道半ば:ワクチン接種を促進し、内需主導の確固たる成長を-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。6月1日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 2021年1-3月期の関西経済は、緩やかに持ち直している。ただしコロナ禍が依然続く中、緊急事態宣言等で経済活動が抑制されているため、家計部門や企業部門など内需部門の改善ペースは緩慢である。規模・業種によっても回復度合いに差が見られる。
    2. 2021年に入り、新規陽性者数は「第3波」の収束から「第4波」を迎えた。その「第4波」は4月末にピークアウトし、足下では収束に向かっている。ただし重症患者病床使用率は依然として高水準にあるため、4月以降、3度目となる緊急事態宣言が発令され、6月以降も継続となる。
    3. 新型コロナワクチンの接種が21年2月から開始となった。ワクチン接種の進展は、先行きの新規陽性者数の減少に加え、消費者心理の改善、先送りしていたペントアップ需要の発現に貢献しよう。
    4. 家計部門は、COVID-19の感染拡大や緊急事態宣言発令の影響から、総じて弱い動きとなっている。センチメントや所得・雇用環境など持ち直してはいるものの、前年の反動といった部分もあり、堅調な回復とは言いがたい状況である。
    5. 企業部門は、製造業と非製造業で回復度合いに差異が見られる。製造業は、輸出の回復を背景にして生産や景況感など持ち直しの動きが見られる。一方非製造業は、特に対面型サービスでコロナ禍の影響が根強く、弱い動きとなっている。
    6. 輸出の回復は鮮明となっている。中国向けに続き、米国・EU向けも足下で2019年同月の水準を上回った。一方インバウンド需要は回復の見込みが立たない。
    7. 関西の実質GRP成長率を2021年度+3.6%、22年度+2.1%と予測する。20年度の大幅マイナスから21年度以降回復に転じる。ただしコロナ禍前の水準に戻るのは22年度以降となる。前回予測(3月1日公表)に比べて、21年度は輸入を上方修正したため-0.2%ポイントの下方修正、22年度は成長の加速を見込み+0.5%ポイントの上方修正とした。
    8. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が21年度+2.2%ポイント、22年度+1.4%ポイントと2018年度以来3年ぶりにプラスとなり、成長を牽引する。また、公的需要・域外需要も成長を下支えし、バランスの取れた成長となる。
    9. 感染抑制と景気回復の両立に向け、ワクチン接種の進展は、経済活動再開を促進しよう。今後景気を加速していくにあたっては、外需のみに依存するのではなく、内需を刺激する経済対策も望まれる。経済活動の正常化には、過剰な自粛・萎縮は避け「正しく恐れる」ことが必要であろう。
    10. トピックスでは、関西各府県における2019-20年度のGRPの早期推計結果を紹介する。2020年度は関西2府4県いずれもマイナス成長となった。

     

    ※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。

     

  • 稲田 義久

    133回景気分析と予測<ワクチン接種にgame changerとしての期待が高まる-実質GDP成長率予測:21年度+3.4%、22年度+2.3%->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。6月1日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1.  2021年1-3月期実質GDP(1次速報)は前期比年率-5.1%(前期比-1.3%)減少し、3四半期ぶりのマイナス。結果、2020年度実質GDP成長率は-4.6%と2年連続のマイナスとなった(19年度-0.5%)。リーマンショック時の08年度(-3.6%)、09年度(-2.4%)を超えるマイナス成長となった。1-3月期実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査)の最終予測(前期比年率-4.61%)から下振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同-3.8%であった。
    2.  1-3月期のマイナス成長の主要因は緊急事態宣言による民間最終消費支出の減少である。またGo Toキャンペーン一時停止による政策的効果の剥落と感染者急増による医療機関への受診手控え等による政府最終消費支出の減少が影響した。実質GDP成長率(前期比-1.3%)への寄与度を見ると、国内需要は同-1.1%ポイントと3四半期ぶりのマイナス。うち、民間需要は同-0.7%ポイントと3四半期ぶりのマイナス、公的需要も同-0.4%ポイントと10四半期ぶりのマイナス寄与。また純輸出も同-0.2%ポイントと3四半期ぶりのマイナスとなった。
    3. 新たに、1-3月期GDP1次速報を追加し、外生変数の想定を織り込み、21-22年度の日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、21年度+3.4%、22年度+2.3%と予測した。暦年ベースでは、21年+2.1%、22年+2.6%と予測した。前回(第132回)予測に比して、21年度は変化なし、22年度は+0.5%ポイント上方修正した。ワクチン接種普及が後ずれすることから、成長の加速効果を21年後半から22年にかけて発現するとした
    4.  実質GDP成長率への寄与度をみれば21年度は、民間需要(+1.7%ポイント)、純輸出(+1.2%ポイント)、公的需要(+0.5%ポイント)、すべての項目が景気を押し上げるが、民間需要、純輸出は前年度の落ち込みに比すれば回復力に欠ける22年度も、民間需要(+1.7%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+0.3%ポイント)と、いずれも景気を押し上げるが、純輸出の寄与度が前年から低下する
    5.  実質GDPの四半期パターンをみれば、21年4-6月期はCOVID-19感染再拡大(第4波)と3度目の緊急事態宣言の影響で停滞は避けられない。以降、ワクチン接種普及に伴うセンチメントの急回復により、潜在成長率を上回るペースが持続する。このため、コロナ禍前の水準を超えるのは22年1-3月期、コロナ禍前のピークを超えるのは10-12月期となろう。
    6.  消費者物価指数の先行きについては、通信料、エネルギー価格、宿泊料がポイントとなろう。年後半以降前年同月比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調である。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度+0.4%、22年度+0.5%と予測する

     

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  • 稲田 義久

    132回景気分析と予測<足下二番底も、ワクチン接種の普及で21年後半から回復:実質GDP成長率予測:20年度-4.8%、21年度+3.4%、22年度+1.8%>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  10-12月期実質GDP(1次速報)は前期比年率+12.7%と大幅増加した。2四半期連続のプラスでかつ2桁の成長となったが、前半の低調が影響し2020年の実質GDP成長率は-4.8%と大幅なマイナス。マイナス成長は、リーマンショック後の09年(-5.7%)以来11年ぶりである。10-12月期実績は市場コンセンサス最終予測から上振れたが、CQM最終予測の支出サイドにほぼピンポイントとなった。
    2.  10-12月期経済の牽引役は、財貨・サービスの輸出と民間最終消費支出である。前者には世界経済の持ち直し、後者にはGo Toキャンペーンなどの政策的効果が影響した。実質GDP成長率(前期比+3.0%)への寄与度を見ると、国内需要は同+2.0%ポイントと2四半期連続のプラス。うち、民間需要は同+1.5%ポイントと2四半期連続のプラス、公的需要も同+0.5%ポイントと3四半期連続のプラス寄与。また純輸出は同+1.0%ポイントと2四半期連続のプラスとなった。
    3.  10-12月期GDP1次速報を追加し外生変数の変更を織り込み、予測を改定した。結果、2020年度の実質GDPはコロナ禍の影響もあり-4.8%大幅減少し、消費増税の影響があった前年度(-0.3%)に続いてのマイナス成長。21年度は前年の大幅落ち込みの反動から+3.4%と回復に転じるが戻りは遅い。22年度は+1.8%に減速しよう。前回(第131回)予測に比して、20年度+0.2%ポイント、22年度+0.2%ポイント、上方修正した。10-12月期の高めの回復とワクチン接種の普及に伴う民間需要の回復を織り込んだ。
    4.  実質GDP成長率への寄与度をみれば20年度は、公的需要(+0.9%ポイント)を除き、民間需要(-4.9%ポイント)、純輸出(-0.9%ポイント)のマイナス幅が大きい21年度は、民間需要(+1.7%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+1.3%ポイント)すべての項目が景気を押し上げるが回復力に欠ける22年度は民間需要(+1.4%ポイント)、公的需要(+0.2%ポイント)、純輸出(+0.1%ポイント)がともに景気を引き上げるが、各項目の寄与度が前年から低下する
    5.  実質GDPの四半期パターンをみれば、21年1-3月期はCOVID-19感染再拡大(第3波)と緊急事態宣言再発令の影響でマイナス成長は避けられない(二番底)。以降、潜在成長率を上回るペースが持続するが、コロナ禍前の水準を超えるのは22年4-6月期、コロナ禍前のピークを超えるのは23年度となろう。
    6.  消費者物価の先行きにとって、エネルギー価格と宿泊料の動向が重要である。対面型サービスを中心に賃金の下落が続くため、サービス価格には下押し圧力となろう。このため、消費者物価指数の基調は低調である。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、20年度-0.4%、21年度+0.4%、22年度+0.7%と予測する

     

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  • 稲田 義久

    緊急事態宣言再発令の関西経済への影響 -高頻度・ビッグデータを用いた振り返りと分析-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    政府は2021年1月7日に1都3県に対して緊急事態宣言を再発令した。当初、対象地域のGDPシェアは33.2%であったが、1月13日には7府県が加えられたことで、シェアは約60%に拡大した。ほとんどの大都市圏が含まれたことから、経済全体への影響は深刻度を増している。関西でも大阪府、京都府、兵庫県がその対象となっており、経済的な影響が懸念されている。
    そこで、本稿では、高頻度・ビッグデータを用いて緊急事態宣言の経済的影響を振り返り、そこで得られた知見をもとに、今回の緊急事態宣言再発令が関西経済に与える影響を分析した。結果は以下のように要約できる。

     

    1. 緊急事態宣言により、人々は行動変容を迫られた。日次ベースの消費支出額は、4月7日以降前年比マイナス幅が拡大し、5月初旬を底として緩やかに縮小した。カテゴリー別では、半耐久財やサービスへの支出が大きく減少する一方、非耐久財や耐久財では増加がみられた。

     

    2. 人流(経済活動)への影響では、前回は小売店・娯楽施設、公共交通機関、職場で人出が大きく減少した。一方、食料品店・薬局は大幅な減少は見られなかった。今回と前回を比べると、今回の方が公共交通機関、小売店・娯楽施設、職場で人出の戻りが観察できる。

     

    3. 前回宣言時の経験と足下の人流の動向を踏まえ、緊急事態宣言再発令による家計消費減少額を試算した。基本ケース(1月14日~2月7日)では、今回緊急事態宣言の対象である大阪府・兵庫県・京都府の2府1県の消費減少額は1,858億円。関西2府4県では2,233億円となり、2020年度関西2府4県の名目GRPを0.3%程度追加的に引き下げることとなる。

     

    4. 今回の再発令が経済に与える影響(基本ケース)は前回の4分の1強とみられる。しかし、コロナ禍によりサービス業を中心に弱い動きが続いている中、関西経済にとって大きな下押し圧力となる。結果、コロナ禍からの回復過程に水を差すことになろう。

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  • 稲田 義久

    131回景気分析と予測<新基準改定を反映した実質成長率の予測:20年度-5.0%、21年度+3.4%、22年度+1.6%>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. GDP2次速報によれば、7-9月期の実質GDPは前期比+5.3%(同年率+22.9%)増加し、1次速報の前期比+5.0%(同年率+21.4%)から上方修正された。純輸出寄与度は下方修正されたが、国内需要が上方修正された結果である。国内需要では、民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、政府最終消費支出が上方修正された。
    2. 7-9月期2次速報公表に合わせて、国民経済計算の2015年基準改定が行われた。改定では、(1)「産業連関表」、「国勢統計」といった構造統計をベンチマークとして取り込み、 過去の計数が再推計された。(2)同時に、国際基準(08SNA)への対応や経済活動の適切な把握(住宅宿泊事業の反映)に向けた推計法の改善が行われた。結果、名目GDPは1994-2019年度平均で7.7兆円、1.5%程度上方修正された。また、2019年度の実質GDP成長率は、0.0%から-0.3%に下方修正され、5年ぶりのマイナス成長となった。
    3. 新基準年の7-9月期GDP2次速報と外生変数の変更を織り込み、予測を改定し、新たに22年度予測を追加した。2020年度の実質GDPはコロナ禍の影響もあり-5.0%大幅減少し、消費増税の影響があった前年(-0.3%)に続いてのマイナス成長。21年度は前年の大幅落ち込みの反動もあり+3.4%と回復に転じ、22年度は+1.6%となろう。10-12月期の超短期予測を反映し、前回(第130回)予測に比して、20年度を+0.4%ポイント上方修正、一方、21年度を-0.4%ポイント下方修正した。
    4. 実質GDP成長率への寄与度をみれば、20年度は、公的需要(+0.8%ポイント)を除き、民間需要(-4.5%ポイント)、純輸出(-1.3%ポイント)のマイナス幅が大きい。21年度は、民間需要(+1.9%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+1.0%ポイント)すべての項目が景気を押し上げるが回復力に欠ける。22年度は民間需要(+1.2%ポイント)、公的需要(+0.2%ポイント)、純輸出(+0.2%ポイント)、3項目ともに寄与度が低下する。
    5. 実質GDPの四半期パターンをみれば、7-9月期の高成長は持続せず、一時的なリバウンドにとどまる。以降は潜在成長率を上回るペースがしばらく持続するが、コロナ禍前(19年10-12月期:548.7兆円)の水準を超えるのは22年4-6月期、コロナ禍前のピーク(19年7-9月期:559.1兆円)を超えるのは23年度以降となろう。前年同期比でみると、19年10-12月期から21年1-3月期までマイナス成長は避けられない。拡大したGDPギャップの縮小には時間がかかりデフレ圧力は厳しい。
    6. 内外需の低迷から総じてデフレ圧力は強く、厳しい状態が続く。エネルギー価格は前年比マイナスが続き、対面型サービスを中心にサービス価格の基調は弱い。このマイナス基調は21年夏まで続こう。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、20年度-0.6%、21年度+0.2%、22年度+0.5%と予測する。

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  • 稲田 義久

    129回 景気分析と予測<COVID-19感染再拡大と景気回復のバランス:難解なパズルの解を求めての試行錯誤>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  8月17日発表のGDP1次速報によれば、4-6月期実質GDPは前期比年率-27.8%(前期比-7.8%)減少し、3四半期連続のマイナス成長。市場コンセンサス(ESPフォーキャスト8月調査)最終予測(同-26.59%)とほぼ同程度であった。CQM最終予測は、支出サイドが同-25.0%、生産サイドが同-20.2%、平均同-22.6%となった。
    2.  4-6月期に、国内総生産(実質GDP)は前期比-41.1兆円大幅減少したが、需要側では民間最終消費支出と財貨の輸出の減少がこれに対応した。緊急事態宣言による影響が民間最終消費支出に、ロックダウンによる海外経済停滞の影響が財貨の輸出減に出たといえよう。一方、1-3月期は、前期比-3.3兆円の国内生産減少と中国の生産停止による財貨輸入の減少に対して、需要側ではサービス輸出、民間最終消費支出、財貨の輸出の減少が対応した。
    3.  新たに認定された暫定的な山(2018年10月)からの今回の景気後退は、緊急事態宣言の解除により5月に底打ちした可能性も出てきた。しかし、経済活動の再開に伴い第2波の感染再拡大が起こっている。今後も続く感染拡大と景気回復のバランスという難解なパズルにとって、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保が必須で、これが今後の日本経済の回復を緩やかなものにとどめる
    4.  4-6月期GDP1次速報を追加し外生変数の情報を織り込み、予測を改定した。2020年度の実質GDPは-5.9%大幅減少し6年ぶりのマイナス成長となろう。21年度は大幅落ち込みの反動もあり+3.3%と回復に転じるが、コロナ禍前のピークを回復するのは22年度以降となろう。前回(第128回)予測に比して、今回は20年度を-0.3%ポイント下方修正。21年度を+0.8%ポイント上方修正した。
    5.  月次指標から明らかなように、景気は5月に大底を打っており、6月は大幅な改善を示している。実質GDPの四半期パターンをみれば、7-9月期は前期比年率10%を超える成長を予測する。ただ高成長は持続せず一時的なリバウンドにとどまり、以降は潜在成長率を上回るペースが持続するが、前年同期比でみると、19年10-12月期から21年1-3月期までマイナス成長は避けられない
    6.  19年10-12月期にマイナスに転じたGDPギャップはしばらく悪化をたどる。内需外需の低迷からデフレ圧力は高まり深刻。原油安を背景としたエネルギー価格の下落幅は縮小するが、幼児教育無償化に加え高等教育無償化の影響はCPIを引き下げる。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、消費者物価コア指数のインフレ率を、20年度-0.3%、21年度+0.4%と予測する。

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  • 稲田 義久

    128回 景気分析と予測<COVID-19収束後のV字型回復は期待薄:ソーシャルディスタンシングが回復のスピードを遅らせる>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  5月18日発表のGDP1次速報によれば、1-3月期実質GDPは前期比年率-3.4%(前期比-0.9%)低下し、2四半期連続のマイナス成長を記録した。市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査)の最終予測同-4.63%を上回った。CQM最終予測は、支出サイドが同-5.2%、生産サイドが同-1.7%、平均同-3.4%となった。
    2.  1-3月期のGDP統計を供給面からみると、COVID-19による供給ショックで国内総生産は前期比-4.5兆円、財貨サービスの輸入は同-4.6兆円減少した。これに対して、需要面では、民間最終消費支出が-2.1兆円、民間資本形成-1.3兆円、また財貨サービスの輸出-5.3兆円の減少が対応した。4-6月期には、4月の緊急事態宣言発令による民間消費削減の影響が一層強く出てこよう
    3.  COVID-19の感染拡大は急速に経済を縮小に追い込んでいる。財とサービスの2つの輸出の縮小に加え、自粛活動の広範化による民間最終消費支出への影響を今回の予測に反映した。緊急事態宣言が解除されても、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)が持続するため、生産・消費の急速な(V字型)回復は期待薄である
    4.  1-3月期GDP1次速報を追加し外生変数の情報を織り込み、予測を改定した。2020年度の実質GDPは-5.6%大幅減少し2年連続のマイナス成長となろう。21年度は大幅落ち込みの反動もあり+2.5%と回復に転じるが、19年度の水準が回復するのは22年度以降となろう。前回(第127回)予測に比して、今回は20年度を-5.2%ポイント大幅下方修正。21年度は前年度の大幅下方修正からの反動もあり+1.3%ポイント上方修正した。
    5.  実質GDPの四半期パターンをみれば、緊急事態宣言の影響もあり、4-6月期は-20%を超える大幅なマイナス成長は避けられない。20年の後半の2四半期はマイナス成長からの反動で比較的高い成長となるが、以降は潜在成長率を幾分上回るペースが持続する。ただ前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はマイナス成長が避けられない
    6.  標準予測ではCOVID-19による経済悪化は4-6月期を大底と想定しているが、収束・回復については不確実性が高い。内需外需の低迷からデフレ圧力は高まり深刻である。原油安を背景としたガソリン価格の下落、幼児教育無償化に加え高等教育無償化の影響もCPIを引き下げる。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、消費者物価コア指数のインフレ率を、20年度-0.4%、21年度+0.4%と予測する。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.49 – 弱含みの関西経済にCOVID-19が追い打ち:民需・外需が軒並み急落 –

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.  20年1-3月期実質GDPは前期比年率-3.4%(前期比-0.9%)で、2四半期連続のマイナス成長となった。COVID-19の感染拡大の影響(経済活動の自粛)により、民間最終消費支出を中心に民間需要が減少し、加えて二つの輸出(財とサービス)が大幅に減少した。4-6月期はマイナス幅がさらに拡大することが予想されている。
    2.  2020年1-3月期の関西経済は、民需と外需が急激に悪化した。前期の消費税率引き上げと中国経済の減速に加えて、COVID-19感染拡大による外出自粛と外国人観光客の入国規制が追い打ちとなった。景況感やインバウンド関連の指標では統計開始以来最低となった指標もある。
    3.  関西の実質GRP成長率を2020年度-5.1%、21年度+2.6%と予測する。日本経済と同様に20年度は記録的な大幅マイナスとなる。21年度には回復に転じると見込むが、以前の水準に戻るのは22年度以降となる。
    4.  前回予測(3月16日公表)に比べて、20年度は-4.6%ポイントの下方修正、21年度は+1.5%ポイントの上方修正である。20年度の下方修正は、COVID-19感染拡大による世界経済および国内経済の失速を反映した。一方21年度は民間需要を中心に、公的需要・域外需要いずれも上方修正とした。
    5.  実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ていく。2020年度は、民間需要が-4.7%ポイントと成長を大きく押し下げる。域外需要も-0.7%ポイントとマイナスの寄与である。公的需要は経済対策の効果から+0.3%ポイントと成長に貢献するが、民間需要のマイナスを補うには至らない。21年度は、民間需要が+1.8%ポイントと回復する。また公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.5%ポイントといずれも成長に寄与する。
    6.  緊急事態宣言に伴う経済活動の抑制ならびにその後の経済社会活動の変化による影響について、前回予測の時点では織り込んでいなかったが、今回の標準予測では織り込んでいる。前回と今回の予測結果の差をみると、緊急事態宣言等が2020年度の関西経済に与えた影響は、民間最終消費支出2兆1,543億円、民間企業設備8,252億円、輸出3兆2,118億円、GRP3兆7,537億円の損失であり、追加的な失業者は157,966人にのぼると見られる

     

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  • 稲田 義久

    127回 景気分析と予測<新型コロナウイルスの影響で2四半期連続の マイナス成長は不可避:2次速報更新後の予測改定>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. 3月9日発表のGDP2次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-7.1%と1次速報(同-6.3%)から更に下方修正された。前回増税時(14年4-6月期:同-7.4%)以来の下げ幅となった。

    2. 10-12月期GDP2次速報発表に合わせて、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しが行われ、過去値が改訂された。注意を要するのは、7-9月期が-0.4%ポイント(前期比年率+0.5%→同+0.1%)下方修正された結果、ほぼゼロ成長になったことである。駆け込み需要は前回増税時に比して限定的であったが、その反動減は一部台風の影響もあるとはいえ大きかった。日本経済は消費増税前から景気減速に入っていたといえよう。

    3. 新型コロナウイルス感染拡大は急速に経済を縮小に追い込んでいる。財とサービスの2つの輸出の減少に加え、自粛活動の広範化による民間最終消費支出への影響を今回の予測に反映した。このため、もともと基調の弱い民間最終消費支出の大幅落ち込みにつながった。

    4. 10-12月期GDP2次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は-0.0%、20年度は-0.4%と2年連続のマイナス成長、21年度は+1.2%と回復に転じよう。前回(第126回)予測に比して、今回は(1)7-9月期のほぼゼロ成長、(2)10-12月期大幅マイナス成長の下方修正、(3)1-3月期以降の新型コロナウイルスの民間最終消費支出への影響を反映し、19年度を-0.3%ポイント、20年度を-0.6%ポイントいずれも下方修正。21年度は下方修正からの反動もあり、+0.1%ポイント上方修正した。

    5. 実質GDPの四半期パターンをみれば、2019年10-12月期は5四半期ぶりのマイナス成長。純輸出はプラス寄与となったものの、民間需要が総崩れとなったためである。標準予測(後掲、表2参照)では、新型コロナウイルスの影響で1-3月期は民間需要の戻りが遅いことに加え、純輸出がマイナス寄与に転じるため、2四半期連続のマイナス成長は避けられない。20年度の最初の2四半期はマイナス成長からの反動で比較的高い成長となるが、以降は潜在成長率ないしはそれを幾分下回るペースが持続する。前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はマイナス成長が避けられない

    6. 新型コロナウイルスの感染拡大の終息は標準予測では4-6月期と想定しているが、終息・回復が一層遅れる可能性もある。その回復の程度は、経済活動の下落幅とその持続期間に依存する。また中国での生産や輸出活動が回復したとしても、風評被害により人の移動の回復が遅れる可能性が高い。2011年東日本大震災の場合は、訪日外客の回復に1年を要した。生産・消費の回復スピードは一様ではない。

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  • 稲田 義久

    第126回景気分析と予測<消費増税、新型コロナウイルスの影響で大幅減速>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  CPB World Trade Monitor(25 Feb. 2020)によれば、2019年10-12月期の世界輸出(数量ベース:2010年=100)は前期比+0.1%と2四半期連続のプラスだが小幅にとどまった。12月14日に、米中貿易交渉は第1段階の合意に達し世界貿易の一層の悪化は避けられたが、世界貿易の先行きは依然読みにくい。
    2.  2月17日発表のGDP1次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-6.3%(前期比-1.6%)大幅低下し、5四半期ぶりのマイナス成長マイナス幅は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト1月調査)の最終予測同-4.05%を大きく下回った。CQM最終予測は、支出サイドが同-4.2%、生産サイドが同-6.4%、平均同-5.3%となり、生産サイドからの予測が実績に近かった。
    3.  10-12月期1次速報発表に合わせて、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しが行われ、過去値が改訂された。過去1年を振り返ると、18年10-12月期+1.0%ポイント、19年1-3月期0.0%ポイント、4-6月期-0.1%ポイント、7-9月期-1.3%ポイント、それぞれ修正された。特に、7-9月期の下方修正が大きい
    4.  10-12月期GDP1次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は+0.3%、20年度は+0.2%と減速する。21年度は+1.1%と回復に転じよう。前回(第125回)予測に比して、今回は(1)7-9月期の下方修正、(2)10-12月期の大幅マイナス成長と(3)1-3月期以降の新型コロナウイルスの影響を反映し、19年度を-0.6%ポイント、20年度を-0.2%ポイント下方修正。下方修正からの反動もあり、21年度は+0.4%ポイント上方修正した。
    5.  経済政策の影響もあり今回の駆け込み需要は低く出たものの、増税後は駆け込み需要の反動減や10月の台風の影響もあり、消費の落ち込みは相対的に大きかった。そもそも民間最終消費支出の基調は弱く、その後の回復はしばらく緩やかなものにとどまろう。
    6.   米中貿易戦争は一時的な休戦に入ったが、1月下旬に明らかになった中国を発生源とする新型コロナウイルスの感染拡大は日本経済の先行きに大きな影響を与える。その影響はまず財とサービスの輸出に表れる。またその影響の程度は、経済活動の下落幅とその持続期間に依存する。このため、19-20年度の日本経済は大きく減速し、回復に転じるのは21年度である
    7.  物価の先行きについては、エネルギー・非エネルギー価格の動向と消費税増税に加え教育無償化の影響が重要だ。1月における消費増税と幼児教育無償化のCPIに与える影響は+0.4%にとどまった。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、コアCPIのインフレ率を、19年度+0.6%、20年度+0.5%、21年度+0.4%と予測するる。

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  • 稲田 義久

    第125回景気分析と予測<世界貿易悪化は一服も、予断を許さない先行き>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.   CPB World Trade Monitor (24 Dec. 2019) によれば、2019年7-9月期の世界輸出数量は前期比+0.5%増加し、4四半期ぶりのプラス。10月の世界輸出数量も前月比+0.9%と3カ月ぶりのプラスとなった。また12月14日米中貿易交渉は第1段階の合意に達し世界貿易の一層の悪化は避けられたが、先行き世界貿易の回復については依然予断を許さない。
    2.  12月8日発表のGDP2次速報によれば、7-9月期実質GDPは前期比年率+1.8%(前期比+0.4%)と1次速報(前期比+0.1%、同年率+0.2%)から大幅上方修正された。なおCQMの最終予測は前期比年率+1.7%。
    3.  過去に遡って基礎データが改訂された結果、2018年すべての四半期の成長率が1次速報から下方修正され、19年の3四半期はすべて上方修正された。このため、18年度の実質GDP成長率は前年比+0.7%から同+0.3%へと大幅下方修正された。18年度は公的固定資本形成が大幅上方修正(-4.0%→+0.6%)されたものの、民間最終消費支出(+0.4%→+0.1%)と民間企業設備(+3.5%→+1.7%)が下方修正されたためである。
    4.  7-9月期GDP2次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は+0.9%、20年度は+0.4%と減速する。21年度は+0.7%と回復に転じよう。前回(第124回)予測に比して、今回は7-9月期の上方修正を反映し、19年度を+0.2%ポイント上方修正した。20-21年度はいずれも変化なし。
    5.  駆け込み需要やその反動減は前回増税時に比して限定的だが、低い可処分所得の伸びに加え消費性向(消費者センチメント)が低下トレンドにあるため、消費増税後の民間最終消費支出の回復基調は弱い。このため、19年10-12月期はマイナス成長を避けられず、その後の回復はしばらく緩やかなものにとどまる。ただ、政府の手厚い経済対策、オリンピック需要の効果が剥落する20年度後半に景気落ち込みは避けられない。加えて、米中貿易戦争解決には時間がかかり世界貿易への下押し圧力は依然強いことから20年度の日本経済は減速し、回復に転じるのは21年度である。
    6.  物価の先行きについては、エネルギー・非エネルギー価格の動向と消費税増税に加え教育無償化の影響が重要だ。10月における消費増税と幼児教育無償化のCPIに与える影響は+0.2%にとどまった。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、コアCPIのインフレ率を、19年度+0.6%、20年度+0.4%、21年度+0.5%と予測する。

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