研究成果

research

研究プロジェクト : 2023年度

「アジア太平洋経済展望」と「地域発展戦略」を主軸に、アジア太平洋地域(関西を含む)の社会・経済動向や政策等に関する研究を行っています。

  • 木村 福成

    アジア太平洋地域の政治・経済的協力のあり方

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » アジア太平洋軸

    RESEARCH LEADER : 
    木村 福成

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 木村 福成 慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト

    成果報告

    2023年度は、世界を取り巻く様々な状況を踏まえて日本の経済外交はいかにあるべきか、日本企業のアジア戦略はどのように展開していくべきかを探るため、以下3つのテーマでフォーラムを開催しました。

    ①拡大する半導体産業の日本・関西経済への影響

    世界各国に張り巡らされた半導体産業のサプライチェーンの全体像と、米中対立をきっかけとした米国によるサプライチェーン巻き戻しの動き、今後の日本における半導体産業の可能性について

    ②ASEAN経済の将来シナリオと日本経済への影響

    10加盟国により着実に経済統合、貿易自由化を進めているASEANにおける2025年以降の中長期的な政策シナリオと課題について

    ③権威主義体制の弊害を「無害化」する通商ルール構築を~中国とどう向き合うか~

    中国の異質な経済体制とそれに起因する法的不安定性・予見不可能性のリスク、国際通商ルールが実効的なものになるための規律づけの可能性や中国経済の今後の見通しについて

    当初計画

    研究の背景

    広島で開催された主要7か国首脳会議では、対中国を念頭にまとめられた共同文書に「経済的威圧を抑止し対抗する」と明記され、半導体やレアアース(希土類)といった重要物資のサプライチェーン(供給網)の枠組みを構築する方針が示された。特定の分野でのサプライチェーンのデカップリングが進むなか、一方で東アジア全域において展開されている国際的生産ネットワークは引き続き活発に動いている。

    本プロジェクトでは、経済安保上の利益とグローバル化の経済的利益の間の折り合いをつけながら、国際通商ルールに基づき自由で開かれた経済活動を発展させていくことの重要性を再確認していく。

    国際経済学のみならず、国際法学、政治学ならびに企業研究など様々な知見を得ながら、アジア太平洋地域における政治・経済協力のあり方について研究を進めていく。

     

    分析の手法または現地調査の詳細

    2022年度に引き、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を深めていく。
    また、米中対立、ウクライナ戦争の影響による地政学的緊張が継続するなか、今年度は日本が米国や欧州諸国と協調し実施する輸出管理の日本・関西経済への影響についても分析しつつ、あわせて活力を維持している東アジア生産ネットワークの現状とルールに基づく国際貿易秩序の行方についても検討してく。

    木村リサーチリーダーによるASEANと日本についての経済研究を軸に、学識者、研究者並びに実務家に登壇いただき、複眼的な見地に立ったディスカッションにつなげる。企業の見識を高め、事業活動に資する情報提供の場としたい。

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々を中心に還元する。
    対海外、特にアジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。

    研究体制

     
    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪大学名誉教授

     
    リサーチリーダー

    木村 福成  APIR上席研究員、慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト
    PDF
  • 後藤 健太

    サステイナビリティと人権

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » アジア太平洋軸

    RESEARCH LEADER : 
    後藤 健太

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR主席研究員 後藤 健太 関西大学経済学部教授

    当初計画

    研究の背景

    アジアにおけるビジネス戦略を考える上で、SDGs(Sustainable Development Goals)の達成、ESG投資、持続可能なサプライチェーンの構築は欠かせない視点である。

    2019年度から4年にわたり企業経営についてSDGs視点が不可欠であることを情報発信するとともに、具体的な事例(ベトナムにおけるエビ養殖業サプライチェーン)について調査研究してきた。これらの成果を土台とし、2023年度からは繊維産業のグローバル・バリューチェーンにおける日本企業の強みを生かしたSDGs経営のあり方を探る。

     

    研究内容

    日本国内の地方にある「産地」を訪問し、サステイナビリティと人権の視点でSDGs経営の実態と課題を明らかにする。その上でグローバル・バリューチェーン全体に対してどのようにSDGs経営を担保していくかを考察する。

    *グローバル・バリューチェーンの維持を通じて社会経済活動の持続可能性を高める啓蒙活動

    *繊維産業のグローバル・バリューチェーンの中で日本が今も強みを持つ分野を明らかにすることを通じて、日本のDe Facto型SDGs経営がもつ優位性を示す

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・地域経済活性化の視点をもつ。

    ・人権に関する国際社会、日本政府での動きを踏まえ、まだ踏み込めていない企業に対する理解促進につながるエビデンスとなるように意識する。

    ・SDGs経営が地域産業の特性・強みを生かした企業経営、地域経営につながる視点であることを発信する。

    ・消費者の行動変容が起点になり生産者の行動変容が促され、社会全体が変化する

    研究体制

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪大学名誉教授

     
    リサーチリーダー

    後藤 健太   APIR主席研究員、関西大学経済学部教授

     
    リサーチャー

    菊池 淳子  日本工営 サステナビリティデザイン室長
    草郷 孝好  関西大学 社会学部教授
    佐井 亮太  コーエイリサーチ&コンサルティング 主任コンサルタント
    佐藤 寛   開発社会学舎 主宰
    田中 竜介  ILO駐日事務所 プログラムオフィサー/渉外・労働基準専門官
    PDF
  • 稲田 義久

    持続可能なツーリズム先進地域・関西をめざして

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久

    当初計画

    研究目的

    自治体・DMO等での、持続可能なツーリズム戦略策定への情報提供の必要性

    コロナ後の観光戦略には、万博開催に向けて急回復が見込まれるインバウンドの獲得に加えて、国内客も含めた高付加価値化、さらにSDGs・観光地域づくりも踏まえ、経済、環境、地域社会いずれの面でも持続可能であることが求められている。自治体・DMO等での今後の戦略策定に寄与するため、数量分析を中心に現状の課題と解決の方向性を検討したい。

    観光地の「ブランド力」指標の必要性

    本研究が示してきたインバウンド消費の4つの決定要因のうち、地域のツーリズム関係者が唯一、自力で向上できる「ブランド力」には定量的な指標が確立されていない。ブランド力向上の戦略策定に寄与すべく、これを定量化する指標を作りたい。

     

    研究内容

    2022年度に引き続き、以下の5つの軸でバランスよく進める。

    ①関西基礎統計の整理

    ②マイクロデータによる実証分析

    ③ブランド力指標の開発のための、アンケート調査と結果の解釈

    ④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題検討

    ⑤万博に向けた戦略を官民で意見交換する場の設定

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(トレンドウォッチ)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、フォーラム等での情報提供と議論)を予定している。
    また、上記研究成果を「ポストコロナにおける観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。

    研究体制

    研究統括・リサーチリーダー

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチャー

    松林 洋一  APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科教授
    野村 亮輔  APIR副主任研究員
    郭 秋薇  APIR研究員
    KARAVASILEV Yani  APIR研究員、京都文教大学総合社会学部講師
  • 下條 真司

    関西・大阪における都市ぐるみ、都市レベルのDX

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    下條 真司

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 下條 真司 青森大学教授

    成果報告

    政府は「デジタル田園都市国家構想」の検討を開始し、デジタルを最大限活用して公共サービスの維持・強化と地域経済の活性化を図り、地域の個性を生かしながら「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すとしています。しかし、国内での取組み以上に、GAFAを中心とする米系プラットフォーマーによるデータ収集と利活用の動きは目覚ましく、個人や地域のデータが、米系プラットフォーマーに一極集中する事態を招いています。

    研究会では、様々な論点で都市OS基盤の在り方を議論し、以下提言を示しました。

    【データ主権の確保】
    集中型プラットフォームによる富(データ)の集中を防ぐには、 データ主権を維持する仕組みが必要

    【多様性・寛容性のあるスマートシティの実現】
    自己組織的、かつ、データの地産地消が可能な“地域のプラットフォーム”を適用すべき

    【個人データの二次利用拡大】
    利活用審査による二次利用も認めることが必要であり、そのための第三者機関を新たに設置すべき

    【データの所有権と利用権の分離】
    データは所有権と利用権を分離して、データの価値創出を加速する取組みが必要

    【住民のリテラシー向上】
    住民にリスキリングの機会(リカレント教育)の提供が必要

    【デジタル民主主義の構築】
    地域住民自身による熟議を促すプラットフォームと、市民参加型予算の導入について検討すべき

    当初計画

    ※期中の研究会の進捗(議論の方向性)により、一部変更となりました。

    研究の背景

    本研究プロジェクトはICTによる「人々の幸せを中心とする、持続的に成長する都市」の実現に向けて、ICTの負の影響を避けるための留意点を検討する、2016年度発足の研究の一環である。

    わが国では岸田内閣の「デジタル田園都市国家構想」等、内閣府、国土交通省、総務省等主導で、スマートシティに関連する計画や事業が、全国で実装へ進みだした。大阪府市でも、2025年度 大阪・関西万博に向け、2つのフィールド(夢洲、うめきた2期)で先端的なサービスの提供を強力に推進して、実証・実装や規制改革によりスーパーシティ構想の実現に取り組んでいる。

    各自治体は、取り組みを進める上で、海外でのスマートシティの先進成功事例(バルセロナ、アムステルダム等)を学ぶ一方、うまく進まなかった事例(トロント、ポートランド、国内自治体DX街づくり等)について、必ずしも十分に検証尽くされていません。また、国主導の街づくり推進事業では、自治体の安易なIT企業への依存により、成果がなく実用化されない事例も問題視されている。

    そこで、大阪府市が2つのフィールド(夢洲、うめきた2期)で、スーパーシティ構想への取り込みを進めている一方、一般市民の日常生活には、現状あまり具体的な変化や展望が伝わっていない。

    各地のスマートシティ事例調査から過去経験した課題を抽出し、今後必要となる要件を明らかにし、スマート技術で一般市民の日常を可視化し改善する、データ利活用の方向性を提案していく。

     

    研究内容

    (1)  スマートシティや、自治体DXの(失敗)事例から、諸課題を抽出、論点を整理。

    (2) 課題を設定し、新たな視点からの解決策を議論。

    (3)  フォーラムを開催、(1) (2)で得た課題や解決策を討議し、方向性を共有する

    (4)  研究会(3)で得た知見や方向性で更に課題抽出

    (5)  大阪で実装へ進みだした、各スマートシティの取組との、情報共有や意見交換を実施し、成功に資する協力をすすめる。

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々を中心に還元する。

    大阪府市のスーパーシティ、都市OSに向けた提言、産官学・各社の枠を超えたDX/スマートシティの諸課題に関する情報共有と議論の場(研究会、フォーラム)を提供することで、交流の場として各社での取り組み事例や先進事例を共有できる機会としていただく。

    研究体制

    研究統括

    宮原 秀夫  APIR所長

    リサーチリーダー

    下條 真司  APIR上席研究員、青森大学ソフトウェア情報学部教授

    リサーチャー

    岸本 充生  大阪大学データビリティフロンティア機構教授
    木多 道宏  大阪大学大学院工学研究科教授

    オブザーバー

    行政、団体、民間企業、より適宜参加を要請(※1)(※2)

    ※1:必要に応じて、大学、自治体や企業等にも参画いただく。
    ※2:万博・スーパーシティ構想に向けた実証実験の実施が想定される官民の組織を研究会のオブザーバーとしており(昨年実績16団体)、今年度も参画を打診する。

  • 松繁 寿和

    Digital XがもたらすCareer X

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    松繁 寿和

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 松繁 寿和 高松大学経営学部教授、大阪大学名誉教授

    成果報告

    業務効率改善や人材不足解消等の手段として、多くの企業や団体がDXを展開しています。本プロジェクトは、統計データや企業へのフィールド調査を通じてDXがもたらす人々の働き方や必要なスキルの変化を明らかにし提言としてまとめることを目的にしてきました。

    研究2年目となる2023年度は、主にデジタルツールを導入している業種(介護サービス業、宿泊業、食品製造業)のフィールド調査を実施しました。その結果、デジタルツールの活用を通じて業務の可視化や情報共有がなされ、書類作成や申し送り等の事務的な業務に要する時間が大幅に短縮されていました。さらに、それにより利用者に向ける時間が確保できるようになり、従業員のモチベーションの向上に繋がった事例も多く確認され、実効性のあるDXの取り組みが実現されていることを紹介しました。また、DXを実現したいと考えた人、DXへのシフトを現場に浸透させる人、デジタルツールを使い実際業務を行う人といった役割ごとの人材や組織の特性およびスキルについても議論しました。

    当初計画

    研究の背景

    AIに代表される技術革新や新型コロナウイルスによるパンデミックなどによる社会の変化により、仕事の中身やその進め方が大きく変化していると思われる。特に、DX(Digital Transformation)の加速化により、要求されるスキルが急速に変化している可能性は高く、労働者のスキルマッチングが重要な課題となっている。

    そこで本研究では、近年の新技術の導入により人々の働き方がどのように変化したのか、特に求められるスキルと持っているスキルのギャップはどのように生じているのかを明らかにする。統計分析だけでなくフィールド調査を通じてより詳細な情報を入手し吟味することで、DXがCX(Career Transformation)におよぼす影響を明らかにしたい。

    研究内容

    ・フィールド調査(ヒアリング調査)によるDXがもたらす仕事の変化分析。

    ①酒造、②介護、③宿泊の3分野で、調査対象企業を選定

    ヒアリング項目は、
    ①コンピテンシー項目の変化、職場の配置転換
    ②リスキリング、職務変化(職種構成)
    ③技術の変化⇒求められる人材、スキルの変化など分野に応じた観点も含めて調査

    ・DXの進展に伴うCareer Xの変化、ミスマッチングの現状把握(マクロ)を行い、日本の現状と動向を分析。

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・DXの進展・加速化がもたらすCareer Xの変化に、個人・企業・国はどう対応すべきかに関する提言を報告書としてまとめる。

    ・フィールド調査結果により得られた知見を基にフォーラムを開催。

    ・DXによる仕事の変化に関して、現状を分析し、課題を抽出する。自社でDXによる業務や組織改革を行う際の、方針や考えるべきポイントを提供する。

    研究体制

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    松繁 寿和  APIR上席研究員、大阪大学名誉教授、高松大学経営学部教授

    リサーチャー

    勇上 和史  APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科教授
    岡嶋 裕子  京都先端科学大学経済経営学部准教授
    久米 功一  東洋大学経済学部教授
    小松 恭子  労働政策研究・研修機構研究員
    平尾 智隆  摂南大学経済学部准教授
    郭 秋薇   APIR研究員
    PDF
  • 稲田 義久

    関西経済の持続的発展に向けて ~大阪・関西万博を契機に~

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久

    成果報告

    当プロジェクトは、2年間にわたり研究活動を行いました。初年度は、1970年大阪万博以降 50 年にわたる経済のシェア低下の原因・理由を分析し、関西経済の持続的発展を実現するための課題を整理しました。
    2年目の2023年度は、前年度整理した課題から「人材・投資が集まる関西」に向け、人材を呼び込むための生活環境や、投資を呼び込むためのビジネス環境の現状把握と改善策を検討しました。また、2025年大阪・関西万博を契機に、万博を体験した次世代を担う子どもたちが夢を描き、将来、世界で活躍するためには何が必要か、具体的には万博をきっかけとして子どもたちのモチベーションを高めるにはどのような教育が必要かについて議論しました。さらに、今回の万博は「関西」の名が付くことから、「関西はひとつ」の意識で世界に発信し、知名度・認知度を高める絶好の機会として、個性・特徴のある関西各府県が、それぞれの魅力を発揮し目指す方向をあわせていくにはどうすればよいかについて議論しました。

    当初計画

    研究概要

    今年度は、前年度に積み残した論点を引き続き議論し、研究成果をとりまとめる。

    前年度は、EXPO70をピークに関西経済のシェアが低下してきた原因・課題をもとに、関西経済の持続的発展に向け、もうかる産業(分野)を発掘する考え方を整理した。今年度は、経済発展を続ける都市の事例を参考に、投資、人材を関西に呼び込む方策を議論する。さらには、2025年大阪・関西万博を見た小・中学生(EXPO2025世代)が2050年に世界中で活躍している状況にするため、教育・人材育成をはじめ、Web社会がどのように変わっていなければならないかを議論し、成果を経済界・行政に向けに発信し、政策・戦略立案に活用していただく。

     

    研究内容

    ①関西へ投資・ヒトが集まる環境整備に向けて
    対日直接投資の状況、関西における行政の政策や経済団体等の提言を振り返るとともに、国内外で成果を上げている事例を参考に、関西への投資や人を呼び込むための制度・規制緩和、生活環境の整備の方策を議論する。

    ②EXPO2025世代が活躍している社会の実現
    万博を見に来た小・中学生(EXPO2025世代)が2050年には世界中で、また関西を中心に活躍いているようにしたい。そのためには、この世代にどのような教育・育成が必要か議論する。

    ③関西への帰属意識が定着
    地元への帰属意識が醸成されている他地域の調査・ヒアリング等を行い、その結果を参考に関西での帰属意識定着に向けた議論をする。

     

    研究体制

    研究統括・リサーチリーダー

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチャー

    足利 朋義  APIR総括調査役
    井上 建治  APIR総括調査役
    野村 亮輔  APIR副主任研究員
    吉田 茂一  APIR所員
    寺田 憲二  APIRアウトリーチ推進部長
    新田 洋介  APIR調査役

    研究協力者

    経済産業省近畿経済産業局、関西広域連合、公益社団法人関西経済連合会、一般社団法人関西経済同友会

    オブザーバー

    近畿2府4県(政策企画部署、産業政策部署、万博関連部署)

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・「フォーラム」、「研究報告書」等により情報発信を行う。

    ・関西経済の持続的発展につながる産業の発掘、関西のあらまほしき姿の実現に向けた提案を行い、経済団体・企業には新しいビジネスの発掘に、自治体には地域経済の持続的発展に向けた政策立案に活用いただく。

    PDF
  • 関 和広

    テキストデータを利用したS-APIR指数の実用化

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    関 和広

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR主席研究員 関 和広 甲南大学知能情報学部教授

    成果報告

    景況感指数は、金融当局の政策決定や企業の生産計画、機関投資家・個人の投資判断等、様々な経済活動の拠りどころとして重要な役割を担っています。本プロジェクトでは、日々配信されるニュース記事のテキストデータを事前学習させた言語モデルに読み込ませ、景況感を数値として推定する「S-APIR指数」を開発しています。政府による既存の景況感指数に比べて速報性があり、日次での集計も可能なことが特徴です。2023年度は、様々なテキストデータの組み合わせや言語モデルの選定とその設定の違いが及ぼす影響について調査し、政府の景況感指数との相関をより高めてきました。

    また、いくつか新たな機能も追加しています。例えば任意のキーワードを入力すると、それが指数にどのような影響を与えたのかについて可視化するだけでなく、そのキーワードを含む影響度の大きな文章(記事の一部)を例示したり、当月においてバーストしているキーワード(急上昇ワード)を表示したりする機能等です。

    当初計画

    研究目的

    従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究プロジェクトではビッグデータの一つであるテキストデータを利用して、経済の動向を把握することを試みる。

     

    研究内容

    S-APIR指数(景気関連指数)を推定するため、Transformerを用いた大規模言語モデルを利用する。Transformerは、それ以前に用いられていた回帰的ニューラルネットワーク(RNN)のように単語の順番に入力して学習することはせず、文中の全ての単語を一度に入力することで全ての単語同士の依存関係を学習する。その処理を基本として、S-APIR指数を推定するモデルの精度向上を図る。

    期待される成果と社会還元のイメージ

    景気動向を代理する「S-APIR指数」を見ることで、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用していただくことを検討する。また、本研究の成果の一つとして期待できるデモ・システムを、会員企業に試行的に提供する。システムのユーザー自身が、デモ・システムへ興味ある単語を入力すると、その単語がS-APIR指数にどのような影響を与えているのか知ることができる。例えば、「大阪関西万博」という語を入力した場合、ミクロの波及メカニズム(例、建設需要)までは見ることができないが、大阪関西万博が最終的に景気動向へ正の影響を及ぼすのかどうかを調べるための、きっかけとなる。

    研究体制

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    関 和広   APIR主席研究員、甲南大学知能情報学部教授

    リサーチャー

    松林 洋一  APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科教授
    生田 祐介  大阪産業大学経営学部准教授
    盧 昭穎  APIR研究員
    吉田 茂一  APIR研究推進部員
    PDF
  • 高林 喜久生

    関西地域間産業連関表の利活用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2023年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    高林 喜久生

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 高林 喜久生 大阪経済法科大学経済学部教授

    研究成果

    2023年度は、APIRが独自に開発した「関西地域間産業連関表」の2015年版を作成し、これを用いて、各種イベントにおける経済波及効果を試算・公表し、大きな反響を呼び各種のメディアに数多く取り上げられました。

    59年ぶりに行われた阪神・オリックスの関西ダービーの経済波及効果では、①公式戦およびポストシーズンにおける球場観戦や球場外での消費、②リーグ優勝および感謝セール、③優勝パレードに伴う様々な消費を精緻に想定し、関西各府県への経済波及効果を936億円と算定しました(日本全体では1607億円)。その中でも、大阪府と兵庫県を中心に効果が大きく、関西のGRP(域内総生産)を0.05%程度押し上げると分析しました。

    また、国、自治体等から公表された最新のデータを基に、大阪・関西万博の経済波及効果を試算しました。万博関連事業費と来場者消費に分けて、基準ケース※2と観光客が万博会場外のイベントや施設を訪れる「拡張万博」※1ケース1※3、2※4における経済波及効果をそれぞれ算定しました。結果、基準ケースで2兆7,457億円、拡張万博ケース1で3兆2,384億円、拡張万博ケース2で3兆3,667億円と試算しました。
     
    ※1拡張万博:万博のテーマ・時間軸・空間軸の概念を拡張し、関西全体を仮想的なパビリオンに見立て、万博本体では実施しにくい事業も含めて様々な経済活動を展開する取り組み

     

    当初計画

    研究の背景

    関西2府8県+1地域を対象地域とする唯一無二の地域間産業連関表である。当プロジェクトでは様々な事象による経済社会活動に対する影響について産業連関表を用いて府県別・産業部門別に推計してきている。今後関西においては大阪・関西万博をはじめとするイベント、さらにIRを機に新たな産業が予想され、産業連関表を用いた様々な経済分析が重要である。

     

    研究内容

    ・奈良県DATA取得後に正式版関西地域間産業連関表の作成:奈良県のDATAの差し替えを行い再度統合作業とバランス調整を行う

    ・昨年度算出した大阪・関西万博の経済波及効果の再算出:万博アクションプランVer3を反映し、さらに正式版関西地域間産業連関表完成後に再度試算する。

    ・分析結果を関西経済白書、APIRの各種レポートへの掲載、マスコミ取材時、セミナー等における経済波及効果試算のPR

    期待される成果と社会貢献のイメージ

    成果物である2015年表は、2011年表と同様、経済部門の一部をAPIRのホームページ上で発表する。また、分析成果は景気討論会や環太平洋産業連関分析学会やセミナー等で報告することを予定している。

    地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行う上での重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。

    研究体制

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    高林 喜久生 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授

    リサーチャー

    下田 充   日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
    下山 朗   大阪経済大学経済学部教授
    入江 啓彰  近畿大学短期大学部商経科教授
    PDF