ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、10月の訪日外客総数(推計値)は331万2,000人。紅葉シーズンに入り、訪日旅行需要が高まった影響もあり、過去最高値を更新した。なお、1-10月累計の訪日客数は3,019万2,600人となり、1964年の統計開始以降、最速で3,000万人を超えた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば8月は293万3,381人。うち、観光客は264万6,445人と、8月として過去最高値を更新した。
【トピックス1】
・関西10月の輸出額は前年同月比+4.0%と2カ月ぶりに増加。また、輸入額は同+4.6%と6カ月連続で増加した。関西の貿易収支は+1,689億円と9カ月連続の黒字、黒字幅は同-1.3%と2カ月連続で縮小した。
・9月の関空への訪日外客数は82万9,341人となり、10月として過去最高値を更新。前年比2桁の伸びが続いており、関空への訪日外客数は堅調に推移している。
・9月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く。第3次産業活動指数は2カ月連続で前月比低下した一方、対面型サービス業指数は「運輸業」や「宿泊業」が上昇した影響もあり2カ月連続で上昇した。また、観光関連指数は「旅客運送業」や「鉄道旅客運送業」等が上昇に寄与し、小幅ながら2カ月連続で上昇した。
【トピックス2】
・8月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,701.1千人泊となった。前年同月比+2.3%と前月から増加幅は縮小。8月は台風や「南海トラフ臨時情報」が発表された影響が表れた。うち、日本人延べ宿泊者数は2カ月ぶりに前年比減少に転じた一方、外国人延べ宿泊者数は8カ月連続で2桁の伸びが続いており、堅調に推移している。
・大阪府と京都府の最近の動向を見ると、外国人宿泊者数は着実に増加しているものの、日本人宿泊者数は減少傾向が見られる(特に京都府において)。宿泊費高騰の影響がその要因の一つと考えられる。
・宿泊料金と現金給与総額の相対的関係(2019年=100)をみると、2023年に9.3ポイント、24年1-10月平均は22.0ポイントそれぞれ悪化。一方、平均為替レートは、19年が109.01円、24年1-10月平均は151.03円と19年に比して、約28%円安になっている。この間の宿泊料金を巡る状況は、日本人には急速に厳しくなっているが、円安を享受している外国人には影響がない。
【トピックス3】
・2024年7-9月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆1,531億円となった。
・国内旅行消費額のうち、7-9月期の宿泊旅行消費額は9,083億円であった。前年同期比+8.1%と3四半期連続のプラスだが、4-6月期(同+19.1%)から増加幅は縮小。府県別では福井県が宿泊両行消費額の増加に大きく寄与した。北陸新幹線の敦賀延伸の一部影響も考えられる。
・また、7-9月期の日帰り旅行消費額は2,448億円。前年同期比+17.7%と4四半期連続のプラスだが、4-6月期(同+60.9%)から増加幅は大幅縮小した。
DETAIL
ポイント
11月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によればば(図1及び表4)、10月の訪日外客総数(推計値)は331万2,000人となった(前年同月比+31.6%)。紅葉シーズンに入り、訪日旅行需要が高まった影響もあり、過去最高値を更新した。なお、1-10月累計の訪日客数は3,019万2,600人となり、1964年の統計開始以降、最速で3,000万人を超えた。また、出国日本人数は114万8,400人となり、4カ月連続で 100万人超の水準となった(同+22.5%)。ただし、19年同月比でみると、-31.0%となっており、依然回復が遅れている。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、 10月は韓国が73 万2,100人(前年同月比+16.0%)で最多であった。次いで中国が58万2,800人(同+12 .3%)、台湾が47万8,900人(同+12. %)、米国が27万8,500人(同+31.5%)、香港が19万8,800人(同+10.9%)と続く。なお、10月はカナダ、メキシコなどが過去最高値を更新した。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、8月は 293万3,381人であった(前年同月比+36.0%)。うち、観光客は 264万6,445人と、8月として過去最高値を更新(同+39.5%)。また、商用客は7万5,730人(同+1.5%)、その他客は21万1,206人(同+13.9%)であった。
▶観光客のTOP5を国・地域別にみれば(表5)、8月は中国が65万5,002 人(前年同月比+130.3%)と最多であった。次いで韓国が58万1,265人(同+ .5%)、台湾が54万9,594人(同+43.2%)、香港が24万2,602人(同+19.6%)、米国が15万7,571人(同+28.2%)と続く。なお、8月はイタリアとスペインが過去最高値となった。
▶中国政府は2020年3月にCOVID-19感染拡大を受けて停止していた日本人の短期滞在ビザ免除を11月30日から再開した。これを受け、日本政府も訪日中国人客のビザの発給要件緩和に向けて調整を行っている。現在、中国人客が観光目的で日本へ訪れる際、所得や預金残高の証明書などの提出が必要となっている。今回の緩和措置では申請に必要な提出書類の見直しや手続きを一部簡素化すること等が検討されている。緩和措置が実現すればビザの取得が容易となることもあり、訪日中国人観光客の増加につながる可能性が高まろう。
トピックス1
10月関西の財貨・サービス貿易及び9月のサービス産業動向
▶関西10月の輸出額は前年同月比+4.0%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-3.0%)。また、輸入額は同+4.6%と6カ月連続の増加となった(前月:同+4.5%)。結果、関西の貿易収支は+1,689億円と9カ月連続の黒字(図4)、黒字幅は同-1.3%と2カ月連続で縮小した(前月:同-39.3%)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西10月の対中輸出は前年同月比+3.1%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-4.0%)。輸出増に寄与したのは半導体等電子部品や非鉄金属等であった。また、対中輸入は同+13.1%と3カ月ぶりの増加(前月:同-2.4%)。輸入増に寄与したのは通信機や事務用機器等であった。
▶10月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は82万9,341人となり(前月:73万8,390人)、10月として過去最高値を更新した。前年同月比+26.5%と、前月(同+24.8%)から増加幅は小幅拡大しており、外国人入国者数は堅調に推移している。なお、国土交通省が公表した2024年冬期国際定期便スケジュール(週次ベース)によれば、関空の国際旅客便数は1,353便とコロナ禍前の96%を回復した。方面別では、中国が456便(19年比-24%)と最多であり、次いで韓国が366便(同+58%)、東南アジアが191便(同-4%)と続く。このため、関空への外国人入国者数は引き続きアジアを中心に堅調に推移すると見込まれよう。また、日本人出国者数は21万5,352人であった。前年同月比では+32.1%と前月(同+28.7%)から幾分加速。ただし、19年同月比では-33.3%と依然マイナスが続いており、日本人出国者の回復は遅れている。
▶サービス業の活動は一進一退の動きが続く(図7)。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば、9月は102.3で前月比-0.2%小幅低下し、2カ月連続のマイナスとなった(前月:同-1.1%)。一方、対面型サービス業指数*は98.6で同+0.7%上昇し、2カ月連続のプラス(前月:同+0.5%)。うち、運輸業(同+1.1%、2カ月ぶり)や宿泊業(同+1.7%、2カ月連続)が上昇に寄与。結果、7-9月期の第3次産業活動指数は前期比+0.8%と(4-6月期:同+1.2%)、対面型サービス業は同+1.1%と(4-6月期:同+2.5%)、いずれも2四半期連続のプラスとなった。
▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、94.4と前月比+0.3%小幅上昇し、2カ月連続のプラス(前月:同+1.2%)。うち、旅客運送業(同+2.2%、2カ月ぶり)、鉄道旅客運送業(同+3.3%、2カ月ぶり)等が上昇に寄与した。7-9月期の観光関連指数は前期比+1.3%と2四半期ぶりのプラスとなった(4-6月期:同-0.7%)。
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
8月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、8月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,701.1千人泊であった(表1)。前年同月比では+2.3%と前月(同+11.7%)から増加幅は縮小。8月は台風や「南海トラフ臨時情報」が発表された影響が表れた。
▶日本人延べ宿泊者数は8,959.7千人泊となった(表1及び図8)。前年同月比-4.6%と2カ月ぶりに減少した(前月:同+1.6%)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,812.4千人泊、兵庫県1,608.0千人泊、京都府1,406.7千人泊、三重県896.6千人泊、滋賀県524.5千人泊、和歌山県448.6千人泊、福井県440.6千人泊、鳥取県319.1千人泊、徳島県269.6千人泊、奈良県233.8千人泊であった。前年同月比でみると、京都府が同-20.3%(15カ月連続)、大阪府が同-9.3%(2カ月連続)や和歌山県が同-16.9%(2カ月ぶり)とそれぞれ減少しており、日本人延べ宿泊者の減少に寄与した。
▶外国人延べ宿泊者数は3,741.4千人泊となった(表1及び図9)。前年同月比+24.0%と前月(同+34.8%)から増加幅は縮小したものの、8カ月連続で2桁の伸びが続いており、外国人延べ宿泊者は堅調に推移している。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,144.6千人泊、京都府1,334.7千人泊、兵庫県105.1千人泊、和歌山県59.3千人泊、奈良県35.1千人泊、滋賀県16.8千人泊、三重県16.5千人泊、徳島県13.8千人泊、鳥取県11.7千人泊、福井県3.8千人泊であった。前年同月比をみれば、大阪府(同+24.5%)や京都府(同+25.9%)が全体の増加に寄与した。
▶大阪府と京都府の最近の動向を見ると、外国人宿泊者数は着実に増加しているものの、日本人宿泊者数は減少傾向が見られる(特に京都府において)。宿泊費高騰の影響がその要因の一つと考えられる。宿泊料金と現金給与総額の相対的関係(2019年=100)をみると(図10)、2023年に9.3ポイント、24年1-10月平均は22.0ポイントそれぞれ悪化している。一方、平均為替レートは、19年が109.01円、24年1-10月平均は151.03円と19年に比して、約28%円安になっている。この間の宿泊料金を巡る状況は、日本人には急速に厳しくなっているが、円安を享受している外国人には影響がない。
トピックス3
2024年7-9月期国内旅行消費の動向:関西2府8県*
▶観光庁によれば、2024年7-9月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆1,531億円となった(表2)。前年同期比+10.0%と3四半期連続のプラスだが、4-6月期(同+27.3%)から増加幅は縮小。前述(トピックス2)したしように8月の自然災害の影響が表れたようである。
▶国内旅行消費額のうち、7-9月期の宿泊旅行消費額は9,083億円であった。前年同期比+8.1%と3四半期連続のプラスだが、4-6月期(同+19.1%)から増加幅は縮小した(図11及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府2,398億円(同-5.9%)、兵庫県1,543億円(同+12.1%)、京都府1,412億円(同-1.8%)、福井県924億円(同+176.0%)、三重県876億円(同+1.5%)、和歌山県688億円(同+3.8%)、滋賀県555億円(同+53.6%)、鳥取県230億円(同-48.9%)、徳島県229億円(同+7.1%)、奈良県228億円(同+43.6%)であった。前年同期比でみると、京都府、大阪府と鳥取県を除く県がプラスとなり、うち福井県が宿泊旅行消費額の増加に大きく寄与した。北陸新幹線の敦賀延伸の一部影響も考えられる。
▶国内旅行消費額のうち、7-9月期の日帰り旅行消費額は2,448億円であった。前年同期比+17.7%と4四半期連続のプラスだが、4-6月期(同+60.9%)から増加幅は大幅縮小(図12及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、兵庫県678億円(同+51.0%)、京都府368億円(同-1.1%)、大阪府324億円(同-29.0%)、三重県265億円(同+143.6%)、滋賀県230億円(同+27.0%)、福井県190億円(同-10.1%)、奈良県141億円(同+8.7%)、和歌山県115億円(同+1.1%)、徳島県84億円(同+225.2%)、鳥取県53億円(同+62.5%)であった。前年同期比でみれば、兵庫県、三重県、徳島県や鳥取県が大幅プラスとなっており、日帰り旅行消費額の増加に大きく寄与した。
*トピックス3は四半期ごとの掲載である。