Kansai Economic Insight Quarterly No.34 <停滞を抜けて内外需とも好材料が見られる関西 先行きの力強い改善に期待>
Abstract
停滞を抜けて内外需とも好材料が見られる関西 先行きの力強い改善に期待
1.2017年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%(前期比+0.5%)となった。5四半期連続のプラス成長で、潜在成長率を超える成長率が続いている。GDP成長率に対する寄与度をみると、国内需要が+1.5%ポイント、外需が+0.6%ポイントとバランスの良い成長となった。特に輸出と消費が成長を牽引した。
2.2017年1-3月期の関西経済は、内需・外需の両方に好材料が見られはじめ、先行きの力強い改善に期待を持たせる内容となった。家計部門、企業部門ともに持ち直している。対外部門についても、対アジアを中心に輸出輸入とも持ち直してきており、貿易収支は黒字基調が続いている。一方、公的部門は、弱い動きとなっている。また所得環境については、前年割れが続き、全国の伸びと比べて低調である。
3.関西の実質GRP成長率を2017年度+1.4%、18年度+1.3%と予測する。足下での景気指標の持ち直しの動きを反映して、前回予測から17年度+0.3%ポイント、18年度+0.2%ポイントのそれぞれ上方修正とした。また過年度の実績見通しについては県内GDP早期推計の改定を反映し、15年度は修正なし、16年度は-0.6%ポイントの下方修正とした。
4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度は、2017年度は民間需要が+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイント、各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度も内需外需ともに成長を牽引するパターンが続き、民間需要+0.6%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイントと見込む。
5.日本経済予測と比較すると、関西の成長率自体は全国に近い結果となるが、需要項目の寄与のパターンは異なる。民需は所得環境の回復の動きが緩慢であることから、民間消費の貢献が全国に比べて小さく、公的需要も日本経済予測に比べて小幅にとどまる。一方外需については、アジア向けを中心とした輸出の伸びが旺盛なことと純移出の貢献から、全国よりも寄与が幾分大きくなる。
6.2015-16年度の県内GDP早期推計を改定した。関西2府4県の実質GRP(生産側)の合計は、2015年度が84.98兆円、16年度が84.80兆円となり、実質成長率では2015年度-0.06%、16年度-0.21%と予測される。全国でプラス成長が続いたのとは異なり、15-16年度の関西経済は、横ばいで停滞したことになる。
“
著者
研究統括 稲田 義久
数量経済分析センター センター長・甲南大学名誉教授
日本経済および関西経済の短期予測、
関西地域の成長牽引産業の展望、
計量経済学、環境経済学、政策シミュレーション
入江 啓彰
近畿大学 短期大学部 商経科 教授
関西経済・地方財政
木下 祐輔
APIR研究員
地域経済分析、医療経済学、労働経済学、関西経済論、首都機能に関する研究
James Brady
農業政策、貿易協定、政治経済学
CAO THI KHANH NGUYET
ベトナム経済、中小企業金融、銀行システム
生田 祐介
大阪産業大学 講師
産業組織論、ビジネス・エコノミクス、競争政策
関連論文
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都道府県別訪日外客数と訪問率:5月レポート No.60
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AUTHOR :
野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、5月の訪日外客総数(推計値)は304万100人。桜シンガポールやインド等における学校休暇や中国の大型連休があったことが影響し、3カ月連続で300万人超の水準となった。
・目的別訪日外客総数(暫定値)では、3月は308万1,781人。うち、、観光客は277万1,105人と6カ月連続で200万人を超えており、単月として過去最高を更新した。
・先行きの訪日外客については引き続き堅調に推移すると見込まれる。一方で、訪日外客が一部の地域に集中する結果、オーバーツーリズムが深刻化しつつある。今後、地域の観光資源を一層磨き上げ、訪日外客へ訴求することで、広域観光を促進していくかが重要となろう。
【トピックス1】
・関西5月の輸出額は前年同月比+10.4%と2カ月ぶりの増加。また、輸入額は同+8.1%と2カ月連続の増加となった。輸出の伸びが輸入のそれを上回った結果、関西の貿易収支は4カ月連続の黒字となり、黒字幅は拡大した。
・5月の関空への訪日外客数は79万8,812人となり、過去最高値を更新。全国と同様に好調を維持している。
・4月のサービス業の活動は一進一退で推移している。第3次産業活動指数、対面型サービス業指数いずれも2カ月ぶりの前月比上昇。また、観光関連指数は旅行業や旅客運送業が上昇に寄与し、2カ月ぶりの同上昇となった。
【トピックス2】
・3月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,659.5千人泊で、2019年同月比+7.9%と7カ月連続の増加となった。
・うち、日本人延べ宿泊者数は8,039.3千人泊で、2019年同月比+0.1%と7カ月連続の増加だが、増加は小幅にとどまった。一方、外国人延べ宿泊者数は3,602.2千人泊で、同+30.3%と8カ月連続で増加し、増加幅は拡大。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は堅調に推移している。
【トピックス3】
・2024年1-3月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府36.2%が最も高く、次いで京都府27.3%、奈良県7.7%、兵庫県4.9%、三重県0.8%、和歌山県0.8%、滋賀県0.4%、鳥取県0.2%、福井県0.1%、徳島県0.1%と続く。
・2024年1-3月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は19年同期比+13.2%増加。費目別では、飲宿泊費や娯楽等サービス費が大幅増加した一方、買物代は減少した。訪日外客の消費行動はモノ消費からコト消費へ着実に移りつつある。
・関西2府4県の訪日外客数と消費単価を用いて、2024年10-12月期の関西における消費額を推計した。結果、訪日外客消費額は3,827億9,198万円となり、19年同期比では+32.2%とコロナ禍前を大きく回復した。
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日本経済(月次)予測(2024年6月)<6月末発表の月次データ及びGDP2次速報改定を反映し、4-6月期実質GDP成長率を前期比年率+2.5%と上方修正>
経済予測
経済予測 » Monthly Report(日本)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久ABSTRACT
5月発表データのレビュー
▶今回の予測では5月末までに発表されたデータを更新。また1-3月期GDP1次速報を追加した。家計消費関連指標、公共工事、及び国際収支状況を除けば、4-6月期GDP推計に必要な基礎月次データのほぼ1/3が更新された。
▶GDP1次速報によれば、1-3月期実質GDPは前期比年率-2.0%と2四半期ぶりのマイナス成長。CQM最終予測の予測誤差はほぼ想定内に収まった。
▶4月の生産指数は前月比-0.1%と2カ月ぶりのマイナスだが、1-3月平均比+2.6%上昇した。経産省は生産の基調判断を「一進一退ながら弱含み」と据え置いた。
▶4月を1-3月平均と比較すれば、建築工事費予定額は+14.0%、資本財出荷指数は+3.0%上昇した。民間住宅や民間企業設備は前期の低迷から回復。1-3月期の実質総消費動向指数は前期比+0.1%と4四半期ぶりの小幅増、公共工事は同+5.6%と3四半期ぶりのプラスとなった。
▶4月の輸出入動向(日銀ベース)を1-3月平均と比較すれば、実質輸出額は+1.3%、実質輸入額は+2.9%、それぞれ増加した。実質財貨純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度はマイナスとなっている。
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改定版:148回 景気分析と予測<建設総合統計の遡及改定で23年度実質成長率は下方修正 - 実質GDP成長率予測:24年度+0.3%、25年度+1.2% ->
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(日本)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 下田 充ABSTRACT
- 7月1日発表の1-3月期GDP2次速報改定によれば、実質GDP成長率は前期比年率-2.9%となり、2次速報(同-1.8%)から下方修正された。2四半期ぶりのマイナスと成長率のパターンは前回より変化がなかったが、大幅な下方修正。このため、2024年度への成長の下駄が前回から低下した。2次速報改定で、下方修正されたのは民間住宅と公的固定資本形成である。これらの基礎統計である建設総合統計が4月発表時に過去値が大幅に遡及改定されたためである。
- 過去1年の実質成長率を2次速報改定と2次速報を比較すると、2023年1-3月期+0.4%ポイント上方修正だが、4-6月期-0.4%ポイント、7-9月期-0.3%ポイント、10-12月期-0.4%ポイント、24年1-3月期-1.0%ポイントといずれも下方修正となった。結果、23年度の実質成長率は-0.2%ポイント下方修正された。
- 2023年度の実質GDPは前年度比+1.0%と3年連続のプラスとなったが、成長率を年度内(前年同期比)でみると-0.8%と3年ぶりのマイナス成長であった。このため、2024年1-3月期の実質GDPは再びコロナ前のピークを割り込んだ。
- デフレータを見ると、1-3月期の国内需要デフレータは前期比+0.6%と13四半期連続のプラスだが、交易条件は6四半期ぶりに悪化。結果、GDPデフレータは同+0.5%と6四半期連続で上昇し、名目GDPは前期比年率-0.9%と2四半期ぶりの減少となった。2023年度の名目GDPは前年度比+5.0%と3年連続のプラス。バブル崩壊の影響が残る1991年以来の高成長である。
- 1-3月期GDP2次速報改定と新たな外生変数の想定を織り込み、2024-25年度日本経済の見通しを改定。実質GDP成長率を、24年度+0.3%、25年度+1.2%と予測。前回(148回予測)から、24年度を-0.2%ポイント、25年度を-0.1%ポイントそれぞれ下方修正した。24年4-6月期には自動車の減産や輸出の反動減からの回復を予測している。1-3月期の大幅下方修正により24年度成長率への下駄が低下したため、4-6月以降は回復が見込まれるものの、24年度平均成長率は低めにとどまる。内需と純輸出のバランスのとれた回復は25年度となろう。
- 実質賃金がプラス反転せず、また自動車減産(耐久消費財大幅減)の影響もあり、1-3月期の実質民間最終消費支出は4四半期連続の減少となり、減少幅も前期から拡大した。実質賃金のプラス反転は、インフレ高止まりの影響が剥落する24年後半以降となろう。加えて、7-9月期には定額減税の効果が表れるため可処分所得の増加も期待できるため、民間消費は緩やかに持ち直そう。
- 24年度前半にかけて消費者物価インフレ率は加速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、24年度+2.4%、25年度+1.7%と予測する。前回予測から変化なし。GDPデフレータは23年度交易条件改善の裏が出るため、24年度+1.6%、25年度+1.6%となる。
【予測結果の概要】
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Kansai Economic Insight Monthly Vol.134-景気は現況、先行きともに悪化の兆し: 生産回復が見込まれるが物価上昇加速が景気下押し圧力-
経済予測
経済予測 » Monthly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 劉 子瑩 / 吉田 茂一 / 古山 健大 / 宮本 瑛 / 新田 洋介 / 壁谷 紗代ABSTRACT
- 関西の景気の判断は、現況、先行きともに悪化の兆しがみられるとした。現況判断CIは前月差上昇したが、基調判断を引き上げる程度ではなかったために前月から据え置いた。8月には「酷暑乗り切り緊急支援」が実施されるものの、電気・ガス負担軽減策終了につれてエネルギー価格の一時的な上昇が見込まれるため、景気の先行きに対して下押し圧力となろう。
- 足下、生産は2カ月連続の増産。雇用環境は、失業率が4カ月ぶりに改善したものの、有効求人倍率と新規求人倍率はいずれも低下した。大型小売は、好調なインバウンド需要により百貨店を中心に持ち直している。貿易収支は輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったため、4カ月連続の黒字である。
- 関西4月の生産は、2カ月連続の増産。業種別にみれば、生産用機械は半導体製造装置の増産が影響し、大幅上昇となった。
- 4月の失業率は前月より改善し、就業者数と労働力人口の大幅な増加がみられた。また、就業率も前月より上昇し、足下の雇用情勢は回復傾向にある。ただし、昨年10‐12月期から1‐3月期にかけて停滞がみられたため、今後の動向に注意を要する。
- 3月の現金給与総額は4カ月連続の前年比増加となり、伸びは前月より小幅拡大。しかし、物価上昇に追いついておらず、実質賃金の減少が続いている。
- 4月の大型小売店販売額は31カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンドによる高額品の売上が堅調だったことから、26カ月連続のプラス。スーパーは飲食料品などの単価上昇が影響し19カ月連続で増加した。
- 4月の新設住宅着工戸数は3カ月ぶりに前月比増加。持家が減少したものの、貸家と分譲は増加となり、着工数全体を押し上げた。
- 4月の建設工事出来高は3カ月ぶりの前年比増加。民間工事、公共工事ともに全国に比して強い。5月の公共工事請負金額は前年比、前月比ともに2カ月連続の増加となった。結果、1-3月期の落ち込みから大幅回復した。
- 5月の景気ウォッチャー現状判断、先行き判断DIいずれも3カ月連続で前月比悪化。物価の高止まりやコストの上昇が景況感に悪影響を与えている。
- 5月は輸出入ともに前年比増加となった。輸出は好調な対中国と対欧米の影響で2カ月ぶりに増加に転じた。一方、輸入は対中及び対ASEANが堅調に推移し、対EUが増加に転じたため、2カ月連続で増加した。輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったため、貿易収支は4カ月連続の黒字となった。
- 5月の関空経由の外国人入国者数は過去最高値を更新し、インバウンド需要は好調を維持している。
- 5月の中国経済は、生産の回復が停滞気味である一方、消費の回復は6カ月ぶりに加速した。しかし、雇用回復の遅れに加えて、不動産市場の不況も短期間での改善が望めないため、消費の更なる加速は期待しにくい。そのため、4-6月期の景気は1-3月期より大きな改善が見込まれないと予想される。
【関西経済のトレンド】
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都道府県別訪日外客数と訪問率:4月レポート No.59
インバウンド
インバウンド
/ DATE :
AUTHOR :
野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、4月の訪日外客総数(推計値)は304万2,900人。桜の開花シーズンの影響もあり、2カ月連続で300万人超の水準となった。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば2月は278万8,224人。うち、うち、観光客は254万8,085人と5カ月連続で200万人を超える水準となった。
【トピックス1】
・関西4月の輸出額は前年同月比-1.8%と2カ月ぶりの減少。一方、輸入額は同+1.4%と2カ月ぶりの増加となった。結果、貿易収支は3カ月連続の黒字だが、黒字幅は縮小した。
・4月の関空への訪日外客数は77万2,860人となり、過去最高値を更新した。
・3月のサービス業の活動は対面型サービス業を中心に悪化した。第3次産業活動指数、対面型サービス業指数いずれも2カ月ぶりの前月比低下。また、観光関連指数は旅行業や旅客運送業が低下に寄与し、4カ月ぶりの同低下となった。
【トピックス2】
・1月の関西2府8県の延べ宿泊者数は9,352.4千人泊で、2019年同月比+7.9%と6カ月連続の増加となった。
・うち、日本人延べ宿泊者数は6,574.0千人泊で、2019年同月比+5.3%と6カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は2,778.4千人泊で、同+14.5%と7カ月連続で増加した。
【トピックス3】
・2024年1-3月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆350億円。新型コロナ5類移行後、初めての年始休暇の影響もあり、宿泊旅行消費、日帰り旅行消費ともに増加した
・国内旅行消費額のうち、宿泊旅行消費額は8,158億円、日帰り旅行消費額は2,193億円であった。
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人口減少下における活力ある関西を目指して~2050年を見据えて~
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2024年度 » 日本・関西経済軸
RESEARCH LEADER :
稲田 義久ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久
研究計画
研究の背景
2024年4月に人口戦略会議は、全国地方自治体の「持続可能性」についての分析レポートを発表した。その中で、2020年から2050年までの間に若年女性人口の減少率が50%以上になる自治体(消滅可能性自治体)は全国1,729のうち744(43%)あるとし、関西は全198のうち門真市等81の自治体(41%)が該当している。まずは、この状況が前回2014年のレポートと比較して改善しているのか、そして今何が問題になっているかを把握する必要がある。
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の最新の推計によると、日本の総人口は2023年の1億2,435万人から2056年に1億人を割り、2070年には8,700万人になるとされている。特に関西(2府4県)は、全国や関東に比べて人口減少のスピードが速い。社人研の推計を基に2022年~2050年の減少率をみると、全国-19.4%、関東-7.5%に対し、関西は-23.3%となる。
また、高齢化の進行も厳しい。社人研の推計によると2050年には生産年齢人口が5,540万人と2023年(7,395万人)比25.1%の減少、およそ4人に1人が75歳以上になるとされている。将来の労働力となる子どもの出生数も年々減少しており、人手不足によって社会インフラの維持が困難になる可能性も指摘されている。
人手不足は足下でも深刻である。帝国データバンクによると、2023年の人手不足を理由とした倒産件数は260件で前年比1.9倍(前年:140件)と過去最多を更新した。業種別では建設業や運輸業が多く、生活に必要不可欠な職種(エッセンシャルワーカー)の人手不足は深刻である。
一方で、労働参加率を上げ、特にサービス業の生産性を向上させれば人口が減少しても問題ないとする議論もあるが、最適解はどこにあるかについて検討する必要があると考える。
そこで、全国に比して人口減少・高齢化が厳しい関西において、人口や労働等に関する様々な基礎データを整理し、加えてAPIRがこれまで蓄積してきたデータベースや知識を組み合わせながら総合的に分析しつつ、データを可視化することで、関西各府県及び自治体の特徴と課題を明らかにする。そして中長期的な視点で、この先人口が減っても豊かさと活力を維持・向上させていくための方策を模索していきたい。
研究内容
●関西基礎統計の整理
・労働に関する基礎データ(就業構造基本調査、賃金構造基本統計調査 等)を基に、関西の地域別、産業別、企業規模、性別、年齢別の5軸でデータベースを構築し、県民経済計算に対応できるようなシステム開発及びメンテナンスを行う。
・地域別将来人口推計データを整理しつつ、足下と比較して関西の特徴を明らかにする。●関西における詳細なデータ分析と労働需給分析
・整理したデータベースを基に産業構造や雇用構造、年齢構造、賃金構造等から、関西が抱える労働問題を総合的に明らかにする。
・介護、建設、宿泊サービスの分野に焦点を絞って詳細なデータ分析を行い、どの職種に労働需給のミスマッチが起きるのかを明らかにし、中長期視点で解決策を検討する。●経済成長を維持し、持続可能な社会をつくるための施策の検討
・労働需給の課題に対してどのような処方箋が考えられるか、有識者等から様々な視点での知見をもらい、関西において実現できる未来の姿を模索する。期待される成果と社会還元のイメージ
・マクロデータの分析成果(関西経済白書、トレンドウォッチ)
・人口減少による人手不足の課題の共有化(研究会等での情報提供と議論)・人手不足(特に介護、建設、宿泊分野)の解消に向けた対応の検討
・人口減少下においても人手不足を補い経済力を維持するための施策の立案研究体制
研究統括・リサーチリーダー
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学 名誉教授サブリサーチリーダー
松林 洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科 教授リサーチャー
野村 亮輔 APIR副主任研究員
吉田 茂一 APIR研究推進部員
古山 健大 APIR研究推進部員 -
日本経済(月次)予測(2024年5月)<5月末の統計集中発表日のデータを更新して、4-6月期の実質GDP成長率予測を前期比年率+2.0%に上方修正>
経済予測
経済予測 » Monthly Report(日本)
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AUTHOR :
稲田 義久ABSTRACT
5月発表データのレビュー
▶今回の予測では5月末までに発表されたデータを更新。また1-3月期GDP1次速報を追加した。家計消費関連指標、公共工事、及び国際収支状況を除けば、4-6月期GDP推計に必要な基礎月次データのほぼ1/3が更新された。
▶GDP1次速報によれば、1-3月期実質GDPは前期比年率-2.0%と2四半期ぶりのマイナス成長。CQM最終予測の予測誤差はほぼ想定内に収まった。
▶4月の生産指数は前月比-0.1%と2カ月ぶりのマイナスだが、1-3月平均比+2.6%上昇した。経産省は生産の基調判断を「一進一退ながら弱含み」と据え置いた。
▶4月を1-3月平均と比較すれば、建築工事費予定額は+14.0%、資本財出荷指数は+3.0%上昇した。民間住宅や民間企業設備は前期の低迷から回復。1-3月期の実質総消費動向指数は前期比+0.1%と4四半期ぶりの小幅増、公共工事は同+5.6%と3四半期ぶりのプラスとなった。
▶4月の輸出入動向(日銀ベース)を1-3月平均と比較すれば、実質輸出額は+1.3%、実質輸入額は+2.9%、それぞれ増加した。実質財貨純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度はマイナスとなっている。
4-6月期実質GDP成長率予測の動態
▶今回のCQM(支出サイド)は、4-6月期実質GDP成長率を前期比年率+2.0%、生産サイドは同+2.4%、平均同+2.2%と予測する。市場コンセンサス(同+2.10%)は支出サイドとほぼ同じ成長率を予測(図表1参照)。
図表1
4-6月期インフレ予測の動態
▶4月の全国消費者物価コア指数は前年同月比+2.2%と32カ月連続の上昇だが、インフレ率は2カ月連続で前月から縮小。一方、コアコア指数(除く生鮮食品及びエネルギー)は同+2.4%と25カ月連続の上昇だが、インフレ率は8カ月連続で減速している。
▶今回のCQMは、4-6月期の民間最終消費支出デフレータを前期比+0.4%、国内需要デフレータを同+0.6%と予測。交易条件は悪化するため、ヘッドライン(GDPデフレータ)インフレ率を同+0.3%と予測する(図表2参照)。
図表2
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大阪・関西万博の経済波及効果 -3機関による試算の比較-
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
/ DATE :
AUTHOR :
高林 喜久生 / 入江 啓彰 / 下田 充 / 下山 朗 / 稲田 義久 / 野村 亮輔ABSTRACT
本稿では3機関(経済産業省、大阪府市、アジア太平洋研究所(以下、APIR))の産業連関表による大阪・関西万博の経済波及効果の試算を比較し、試算結果の違いを分析した。その結果、各機関が想定した最終需要の大きさが違うこと、取り扱う最終需要の範囲が異なること、加えて産業連関表の対象地域が異なることが、経済波及効果の違いを生じさせていることが明らかとなった。分析を整理し、得られた含意は以下の通りである。
- 経済波及効果を比較するうえで、まず最終需要の想定が重要である。最終需要のうち、万博関連事業費(建設投資・運営・イベント・その他)及び来場者消費において、APIRが経済産業省及び大阪府市の想定を上回っている。
- 経済産業省と大阪府市は発生した需要額(発生需要)をそのまま用いて経済波及効果を計算しているのに対し、APIRでは2府8県以外のその他地域分を除いた直接需要ベースで行っており、そこからも効果の違いが表れている。
- 経済産業省は全国表、APIRは2府8県とその他地域の産業連関表を含む関西地域間産業連関表を用いているので、両者がカバーする地域は同一である。そのため、経済波及効果を発生需要もしくは直接需要で除した両者の乗数には大きな違いはない。一方、大阪府域への経済波及効果はAPIRの方が大きい。理由は、大阪府市が用いている産業連関表は大阪府内を対象とするものであり、府県間をまたいだ経済波及効果を考慮できないためである。
- より高い経済効果を実現するためにも来場者消費の効果の引上げが重要となろう。そのためにもAPIRが主張する「拡張万博」のコンセプトが重要であり、それに基づいた旅行コンテンツの一層の磨き上げが重要となる。
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Kansai Economic Insight Quarterly No.69 -足踏み局面から緩やかな持ち直しへ:先行きの回復は企業の賃上げペース次第-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 小川 亮 / 郭 秋薇 / 劉 子瑩 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 古山 健大ABSTRACT
- 2024年1-3月期の関西経済は、足踏み状況から緩やかな持ち直しに向かう局面にある。家計部門では、消費者センチメント、所得、雇用など力強い回復には至らないものの、底打ちの兆しが見られる。企業部門では、生産は自動車工業の大幅減産で弱い動きであるが、景況感は堅調である。対外部門では、インバウンド需要はコロナ禍前の水準以上に回復しており、財輸出は持ち直してきている。
- 家計部門は一部に弱い動きも見られるが、緩やかに持ち直しつつある。大型小売店販売、センチメント、所得、雇用など多くの指標で回復ないし持ち直しの動きとなっている。実質賃金も依然として前年比マイナスが続いているが、底打ちの兆しが見られる。一方、住宅市場は低調である。
- 企業部門は、足踏みの状況が続いている。生産は自動車工業の大幅減産で弱い動きとなっている。設備投資計画は、非製造業で前年の反動が見られるなど全国に比べてやや控えめとなっている。景況感は製造業・非製造業ともに堅調に推移している。
- 対外部門のうち、財貿易は輸出・輸入ともに底打ちの兆しが見られる。輸出は対中国向けの持ち直しを背景に4四半期ぶりの前年比プラスとなった。インバウンド需要は順調に回復している。関空経由の外国人入国者数、免税売上高など増加傾向が続いている。
- 公的部門は、請負金額・出来高とも前年を下回り、弱い動きとなった。
- 関西の実質GRP成長率を2024年度+1.2%、25年度+1.4%と予測。22年度以降1%台前半の緩やかな伸びが続く。24年度は日本経済を上回る伸びとなる見通し。前回予測に比べて、24年度は-0.3%ポイント、25年度は-0.1%ポイントといずれも下方修正。
- 成長に対する寄与を見ると、民間需要は24年度+0.5%ポイント、25年度+1.0%ポイントとなり、緩やかな回復で成長を支える。公的需要は万博関連の投資により24年度+0.4%ポイントと成長を下支えるが、25年度には万博効果が剥落し、小幅寄与となる。域外需要は24年度+0.3%ポイント、25年度+1%ポイントとなる。
- 経済成長率を日本経済予測と比較すると、24年度は関西が全国を上回り、25年度はほぼ同程度となる。24年度は設備投資や公共投資など万博関連需要の押し上げにより全国を上回る伸びとなる。25年度は関西、全国とも民間需要が成長の牽引役となる。
- 今号のトピックスでは「関西各府県GRPの早期推計」および「各機関における大阪・関西万博の経済波及効果の比較」を取り上げる。
予測結果表
※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。
①00’00”~01’42”: Executive summary
②01’42”~26’14”: 第148回「景気分析と予測」 <自動車減産の影響は一時的、緩やかな回復を予測>
③26’14”~36’10”: Kansai Economic Insight Quarterly No.69 <足踏み局面から緩やかな持ち直しへ―先行きの回復は企業賃上げペース次第―>
④36’10”~38’45”: トピックス1 <関西2府4県GRPの早期推計>
⑤38’45”~43’34”: トピックス2 <大阪・関西万博の経済波及効果—3機関による試算の比較->
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148回景気分析と予測:詳細版<自動車減産の影響は一時的、緩やかな回復を予測 - 実質GDP成長率予測:24年度+0.5%、25年度+1.3% ->
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(日本)
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稲田 義久 / 下田 充ABSTRACT
- 5月16日発表のGDP1次速報によれば、1-3月期実質GDPは前期比年率-2.0%減少し、2四半期ぶりのマイナス成長となった。実績は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査)の最終予測(同-1.17%)から下振れた。またCQM最終予測(支出サイド)は同-1.4%となり、予測誤差はほぼ想定内に収まった。
- 1-3月期の実質GDP成長率(前期比-0.5%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.2%ポイントと4四半期連続のマイナス寄与。うち、民間需要は同-0.4%ポイントと4四半期連続のマイナス寄与。民間最終消費支出、民間住宅及び民間企業設備はいずれも減少した。一方、純輸出も同-0.3%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与となった。不正問題発覚に伴う自動車減産の影響が民間最終消費支出、民間企業設備や輸出の減少に表れたようであるが、影響は一時的にとどまろう。
- 結果、2023年度の実質GDPは前年度比+1.2%と3年連続のプラスとなったが、成長率を年度内(前年同期比)でみると-0.4%と3年ぶりのマイナス成長であった。このため、2024年1-3月期の実質GDPは再びコロナ前のピークを5%割り込んだ。
- デフレータを見ると、1-3月期の国内需要デフレータは前期比+0.7%と13四半期連続のプラスだが、交易条件は6四半期ぶりに悪化した。結果、GDPデフレータは同+0.6%と6四半期連続で上昇し、名目GDPは前期比年率+0.4%と2四半期連続の増加となった。2023年度の名目GDPは前年度比+5.3%と3年連続のプラス、バブル崩壊の影響が残る1991年以来の高成長となった。
- 1-3月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2024-25年度日本経済の見通しを改定。実質GDP成長率を、24年度+0.5%、25年度+1.3%と予測。前回(147回予測)から、24年度を-0.3%ポイント下方修正、25年度を+0.2%ポイント上方修正した。24年4-6月期は自動車の減産や輸出の反動減からの回復を予測している。4-6月期以降は強めの回復を見込むが、1-3月期のマイナス成長のため24年度成長率への下駄が低下した。このため24年度平均成長率は低めにとどまる。25年度は内需と純輸出のバランスのとれた潜在成長率を上回る回復となろう。
- 8四半期連続の実質賃金減少と自動車減産(耐久消費財大幅減)の影響もあり、1-3月期の実質民間最終消費支出は4四半期連続の減少となり、減少幅も前期から拡大した。実質賃金のプラス反転は、昨年春闘を上回る賃上げが実現し、インフレ高止まりの影響が剥落する、24年後半以降となろう。また、7-9月期には定額減税の効果から可処分所得の増加も期待できるため、民間消費は緩やかに持ち直そう。
- 2024年夏場にかけ消費者物価インフレ率は加速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、24年度+2.4%、25年度+1.7%と予測する。前回予測から+0.4%ポイント、+0.3%ポイントそれぞれ上方修正した。GDPデフレータは23年度交易条件改善の裏が出るため、24年度+1.4%、25年度+1.5%となる。
【予測結果の概要】
※説明動画は下記の通り5つのパートに分かれています。
①00’00”~01’42”: Executive summary
②01’42”~26’14”: 第148回「景気分析と予測」 <自動車減産の影響は一時的、緩やかな回復を予測>
③26’14”~36’10”: Kansai Economic Insight Quarterly No.69 <足踏み局面から緩やかな持ち直しへ―先行きの回復は企業賃上げペース次第―>
④36’10”~38’45”: トピックス1 <関西2府4県GRPの早期推計>
⑤38’45”~43’34”: トピックス2 <大阪・関西万博の経済波及効果—3機関による試算の比較->