交通網の整備拡充に伴う交通近接性の改善と期待できる経済効果の予測

研究プロジェクト 2015年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

主任研究員 後藤孝夫 近畿大学准教授

 

研究目的

交通ネットワーク整備に関する研究・分析は,国内外を問わず,これまで数多く実施されてきた。そのなかには,いわゆる従来型の研究課題として,「新規交通ネットワークの整備効果あるいは既存の交通ネットワークを拡充する際の整備効果の測定」がある。たとえば,関西圏では訪日観光客が近年激増し,広域観光振興を達成するための交通ネットワークの整備・改善が求められており,現在複数の事業化が検討されている。このような事業化の際の評価として経済効果を測定することは,経済活動を支える交通ネットワークの重要性を鑑みれば,引き続き重要であると思われる。

一方,交通インフラのプロジェクトごとには,すでに交通政策実施上でも費用便益分析が用いられて,整備の可否を判断する重要な指標の1つとなっているものの,交通インフラの整備・拡充の地域に与える経済波及効果を計測する方法については,交通分野の知見とマクロ経済モデル分野の知見の整合性が必ずしもとれていないと思われる。

そこで,本研究の目的は,アジア太平洋研究所の研究グループによって蓄積されてきた「関西経済モデル」に,上記交通ネットワーク整備に伴う所要時間の減少を指標化した「交通近接性」を組み込んだ新たなモデルの構築を検討することにある。そして,従来から必要とされてきた交通ネットワークの整備・拡充に伴う経済波及効果をより精緻に計測する方法を検討する。

 

研究内容

1.関西圏における交通ネットワークの課題調査と交通近接性指標の改良

①先行研究の調査・整理

②交通ネットワークの特性を加味した交通近接性指標の検討・改良

③交通近接性を表す方程式の検討

2.交通ネットワークの整備経済効果の導出方法の検討

①関西経済モデルの対象範囲の拡張(福井県を含む関西2府5県)の検討

②府県ごとの経済効果の算出方法の検討(効果の分割)

③交通近接性指標およびネットワーク効果を組み込んだモデル構築の検討

3.新たな経済効果モデルでの経済波及効果の推計

関西圏における交通インフラあるいは公共交通機関ネットワークの実際の整備事例を取り上げて,上記新たなモデルで経済波及効果の推計を実施

 

統括

稲田義久 APIR数量経済分析センター センター長

 

リサーチャー

入江啓彰 近畿大学短期大学部講師

下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員

 

期待される成果と社会還元のイメージ

・関西圏の交通ネットワーク整備における将来的な課題を提示すること

・交通近接性指標あるいはネットワーク効果を組み込んだ関西圏経済効果モデルの基礎的な枠組みを提示すること

上記枠組みを用いて,関西圏における交通インフラあるいは公共交通機関ネットワークの実際の整備事例を対象とした経済波及効果の推計結果を提示すること

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