アジアの成長に資する開発金融

研究プロジェクト 2016年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

研究目的

2015年における新興国(主要30カ国)への資本流入は、対前年比で半減し、新興国から海外への資本流出も減少するが、ネットでは5,400億ドルの流出超過となる見通しである(IIF)。流出超は1988年以来27年ぶりである。中国経済の減速を背景に、国別では中国が4,775億㌦と過去最大の流出超過、アジアでは韓国743億㌦、マレーシア334億㌦、タイ216億㌦と続いている。新興国の外貨準備高は、過去15年間で11倍に増え、1997年の通貨危機のようなリスクは低いものの、海外からの資金を引き付け、それを原資として工業品の輸出で稼ぐ成長モデルは転換点を迎えている。こうした現状を背景に、本研究では、アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方を提示する。

研究内容

アジアの開発金融(アジアの成長・開発目的に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。(1)アジア通貨危機、世界金融危機、中国経済の減速を画期として、「アジアの開発金融」がどのような影響を受けたか、(2)その課題をどのように克服しながら現在に至っているか、(3)「海外からの資金流入・海外への工業品輸出」に代わる将来のアジアの成長・開発モデルはどのようなものか。また、アジアインフラ投資銀行とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびタイに現地調査を行う予定である。

具体的には以下のようなテーマを取り上げ、各テーマについて1-2名のリサーチャーが担当。研究者のみならず、官民の現場で開発金融に携わっている実務家を招聘し、研究会やセミナーを開催する予定である。(1)アジア太平洋の資金フローの変化(主として研究者)、(2)東南アジアの銀行部門(アジアの民間銀行の在日支店、JBIC審査部)、(3)アジアのインフラ開発とアジアインフラ投資銀行(AIIB)の役割(JICA、中国関係の実務家)、(4)アジアにおける国際協力とABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)の現状(財務省、JBIC)、(5)マイクロ・ファイナンス(主として研究者)、(6)人民元改革とアジアの金融統合。

統括

林 敏彦 研究統括

リサーチャー
三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授
青木浩治 甲南大学 経済学部教授
北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長

研究協力者
高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授
榊 茂樹 野村アセットマネジメント 運用調査本部チーフ・ストラテジスト

リサーチアシスタント
芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

期待される成果と社会還元のイメージ

アジアにおける資本フローのパネルデータ(時系列とクロスセクションを統合したデータ)。アジアの民間企業・銀行部門の資金調達に関するパネルデータ。アジアのインフラ開発に関する州・県レベルのパネルデータ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方に関する報告書。
政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け。公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ。

<研究会の活動>

研究会
・2016年6月20日   第1回研究会開催  プレゼン資料はこちら
・2016年8月1日  第2回研究会開催?  プレゼン資料はこちら
・2016年10月17日  第3回研究会開催
・2016年11月21日  第4回研究会開催
・2017年2月13日  第5回研究会開催

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