ABSTRUCT
リサーチリーダー
上席研究員 京都大学教授 岩本 武和
研究目的
2016年度のプロジェクトでは、「アジア新興国における国際資金フロー」について、特に「中国からの資本の純流出と外貨準備の減少」に焦点を当て、「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)と「一帯一路」構想を、こうした文脈において考察した。現在の中国では、景気回復のための元安が資本流出を招き、それに対応するためには金融を引き締めざるを得ず、当初の景気回復策を打ち消してしまうという意味で、典型的なトリレンマに直面している。今年度においても、中国を中心としたアジアにおける国際資本フローの研究を継続する一方で、中国のみならず広く「金融協力」という側面から、アジアの成長に資する開発金融のあり方を検討する。
研究内容
アジアの開発金融(アジアの経済成長に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。第一に、リーマン・ショック後の中国経済の減速を背景にした「アジアの新興国、特に中国からの資本流出」についての昨年度の研究を継続する。第二に、ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果を検証し、今後の課題を展望する。(3)アジアインフラ投資銀行(AIIB)とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびASEAN数カ国に現地調査を行う予定である。
具体的には、以下のようなテーマを取り上げ、以下のような研究会、ワークショップ、フォーラムを行う予定である。(1)「東南アジアの金融メカニズムと政策的取り組み」に関する研究会、(2)「リーマン・ショック後の中国の国際資本フロー」に関するワークショップ、(3)「ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果と今後の課題」に関する研究会、(4)「アジア太平洋における地域統合と金融統合」に関するフォーラム(「アジア太平洋地域におけるFTAとEPAのあり方」プロジェクト(木村福成上席研究員)とのジョイント・フォーラム)
統括
猪木武徳 研究統括
リサーチャー
三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授
青木浩治 甲南大学 経済学部教授
Cao, Thi Khanh Nguyet APIR研究員
辻 俊晴 APIR総括調査役
研究協力者
北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長
高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授
伊藤亜聖 東京大学 社会科学研究所講師
リサーチアシスタント
芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科
期待される成果と社会還元のイメージ
(1)中国における国際資本フローに関する時系列データ
(2)アジアにおけるよる金融協力の成果に関する報告
(3)アジアのインフラ開発に時系列データ
(4)マイクロ・ファイナンスに関する実験データ
(5)アジアにおける開発金融と金融協力に関する報告書
(1)政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け
(2)公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ
<研究会の活動>
研究会
・2017年5月18日 第1回研究会開催
・2017年8月3日 第2回オープン研究会(予定)