アジアにおける開発金融と金融協力

研究プロジェクト 2018年度

ABSTRUCT

上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

 

研究目的

2017年度は、アジアにおける開発金融の実態について、(1)中国からの資本の純流出と外貨準備高減少の問題、(2)マイクロ・ファイナンスやイスラム金融などの新たな金融手法に焦点を当て、ゲストスピーカーを招聘し、足下の実態について考察した。

中国に関しては、景気回復を企図とした人民元安が資本流出を招き、その対応策としての金融政策の引き締めが当初の景気回復策を打ち消してしまうという典型的な「国際金融のトリレンマ」に直面した状態が継続している。今年度においても、「生産能力の過剰」、「不動産在庫の過剰」及び「債務の過剰」という3つの過剰問題を中心とした中国の資本フローの研究を継続する一方で、2017年に続いてアジアの成長に資する開発金融のあり方に関して、カンボジアを中心とする途上国のドル化の問題や行政経験のある有識者を招聘して金融面からみたアジア経済の主要な課題についての検討を試みたい。

 

研究内容

アジアの開発金融(アジアの経済成長に資する投資のために動員される国内外の公的及び民間金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。

(1)リーマン・ショック後の中国経済の減速を背景にした「アジアの新興国、特に中国からの資本流出」についての昨年度の研究を継続する。

(2)東南アジアの金融メカニズムの実態(カンボジアにおける基軸通貨のドル化)調査を実施。

(3)東南アジアの国際機関の勤務経験を有する専門家を招聘し、金融面からみたアジア経済の主要な課題の検討を実施。

(4)アジアインフラ投資銀行(AIIB)とインフラ開発及びアジアにおける金融システム改革や  銀行部門の資金調達等に関して、中国・ASEAN数カ国に現地調査を行う予定である。

以下のようなテーマ、研究会、ワークショップ、フォーラムを行う予定である。

(1)「東南アジアの金融メカニズムの実態」に関する研究会

(2)「金融面からみたアジア経済の主要な課題を考える」ワークショップ

(3)「ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果と今後の課題」に関する研究会

(4)「人民元改革とアジアの金融統合」に関する研究会(3年間の研究成果のまとめ))

 

統括

本多佑三  APIR研究統括

リサーチャー

三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授

矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科教授

青木浩治 甲南大学 経済学部教授

中山健悟 APIR調査役・研究員

リサーチアシスタント

芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

 

期待される成果と社会還元のイメージ

(1)中国における国際資本フローに関する報告(時系列などの金融市場データを含む)

(2)『アジアにおける開発金融と金融協力』に関する報告書

(3)本研究会の研究成果を踏まえた書籍の出版

そのほか、政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け、公共財や研究インフラとなる研究成果やデータに資する。

 

<研究会の活動>

研究会

・2018年8月8日   第1回研究会開催

「カンボジアのドル化:アジア開発金融への示唆」講師:一橋大学大学院 奥田英信 教授

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