関西地域間産業連関表の利活用と2015年表に向けての検討

研究プロジェクト 2019年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

上席研究員 高林喜久生 関西学院大学経済学部教授

 

研究目的

APIRでは,前身の関西社会経済研究所の時代から,関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでいる.昨年度の自主研究プロジェクト(2011年版・APIR関西地域間産業連関表の作成と活用)では,2011年度に2005年表作成後,7年ぶりに同連関表の改訂作業を実施した。

「2011年版APIR関西地域間産業連関表(以下2011年表)」は現在暫定版が完成している。2011年表は対象地域の拡大,産業部門数の拡大,交易マトリクスの作成を通じた域外取引の精緻化など,地域の取引実態を正確に反映させるための様々な工夫を行った。その結果,自治体やシンクタンクにおける経済波及効果推計だけでなく、アカデミックな研究としても耐えられる質の高いものとなっている.そこで,今年度は暫定版を確定版へと修正するとともに,産業連関表自体の利活用に重点を置いて取り組む。

 

研究内容

1)「2011年版APIR関西地域間産業連関表」確定版への更新

昨年度の研究成果である2011年表は現在暫定版である.これを自治体の統計担当者へのヒアリングや,各部門の推計に利用した既存統計を再度見直すことで,暫定版を確定版へと修正する.

2)関西が会場となる大規模イベントの経済波及効果の推計

2019年度はG20やラグビーワールドカップの開催が予定されている.また,翌年以降もワールドマスターズゲームズ(2021年)やIR開業(2024年)、大阪・関西万博(2025年)など,関西地域が会場となる大規模イベント開催が多数予定されており,これらのイベントがもたらす経済波及効果の推計を行う.

3)対外的な成果報告

夏頃を目途に,2011年表(確定版)を基に関西地域における取引構造について報告する成果報告会を実施する.また,各々の立場で2011年表を活用した分析結果を報告することを通じて,積極的な対外発信に努める。

4)2015年産業連関表作成に向けた交易マトリックスの更新に向けての準備作業

次の産業連関表のベンチマークイヤーは2015年である.2011年から15年にかけては,2013年以降のアベノミクス,14年以降の外国人観光客急増によるインバウンド需要の高まりなど,関西経済にとって重要な出来事が多く起こった重要な期間でもある.よって,交易マトリックスの更新を行うことで,2015年の関西地域間産業連関表作成の準備作業を行う。

 

研究体制

研究統括

稲田義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学教授

リサーチャー

下田 充  日本アプライドリサーチ研究所主任研究員

下山 朗  奈良県立大学地域創造学部教授

入江啓彰  近畿大学短期大学部准教授

藤原幸則  APIR主席研究員

木下祐輔  APIR調査役・研究員

 

期待される成果と社会還元のイメージ

関西全体を一地域として捉えた近畿経済産業局の「近畿地域産業連関表」は2005年表を最後に作成中止となっており,本表が関西地域を対象とする唯一の本格的な2011年表となる.そのため,2011年表を活用した分析結果や対外発表等は非常に価値が高い.

また,2011年表は政策評価を行う上での基礎資料でもあることから,所内の他の自主研究(インバウンドや地域創生等)とクロスオーバーが期待できる。

2011年表を確定版へと修正作業を行うとともに,関西経済の構造分析を行い、また今後関西地域で開催が予定されている大規模イベントの経済波及効果の推計についても検討する予定である。こうした作業の過程で蓄積された知見は,トレンドウォッチ,コメンタリーの形で適宜報告を行うとともに,学会などでも対外発表も行いたい。

 

<研究会の活動>

研究会・分科会

  • 2019年4月26日  第1回研究会開催
  • 2019年5月17日  第1回分科会開催
  • 2019年6月7日   第2回分科会開催
  • 2019年6月25日  第3回分科会開催
  • 2019年7月30日  第4回分科会開催
  • 2019年10月28日  第5回分科会開催(予定)

 

pagetop
loading