ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を析出することを試みる。
研究内容
2018年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習(ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模したモデルを構築し、コンピュータに機械学習させること)を、テキストマイニングに用いる。本年度も、深層学習における推定モデルの一つである、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)を、基本の分析枠組みとする。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部准教授
生田祐介 大阪産業大学経営学部講師
岡野光洋 大阪学院大学経済学部准教授
期待される成果と社会還元のイメージ
テキストデータから景況感を推定するモデルを構築する。政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その成果として「テキスト版景況感指数」を公表する。
「テキスト版景況感指数」を見ることで、消費者にとっての景況感を、より深く知ることができるようになる。まずは、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。