ABSTRUCT
リサーチリーダー
主席研究員 藤原幸則
研究目的
近年、全国各地で自然災害が相次いでいる。特に、昨年の豪雨、台風、地震は、広範な地域で甚大な被害をもたらすとともに、空港閉鎖やブラックアウト、サプライチェーンを通じて、経済や生活面において大きな影響を与えた。関西においても、昨年9月の台風21号による暴風、高波、高潮の影響で、関西国際空港が大規模な浸水被害に見舞われ、タンカー船の衝突による空港連絡橋の損傷も重なり、空港機能が一時停止するに至った。
インフラの民営化やPPP導入が進んでいるが、所有と管理が分離され、民間が運営主体となることについて、災害リスク管理の視点から、初動対応、迅速な回復、今後の対策に至るまで、課題を抽出し、事前に手当すべきことなど、適切な対応策を考えることが必要である。災害リスク管理の視点からは、インフラ以外にも、人口や経済機能の東京への一極集中、情報ネットワーク化、都市計画・土地利用計画といった日本の社会システムについて、潜在的な課題を浮き彫りにし、適切な対応策を探ることが必要である。
また、災害からの復旧、復興にはファイナンスが必要であるが、巨大災害には事後的なファイナンスは極めて困難となり、国家の財政対応能力を超えることにもなりかねない。公的部門における資本市場へのリスク移転など、持続的なリスクファイナンスの制度化の検討が必要である。
研究内容
研究会を開催し、法学、経済学、ファイナンス、防災の専門家や研究者から、検討テーマについて講演をいただくとともに、その質疑応答や意見交換を通じて、課題と対応方向を探る。あわせて、海外事例の調査、必要に応じて関係機関へのヒアリング調査も行い、研究の深耕を行う。
災害や防災に関する研究は、減災・防災や避難などのハード・ソフトの対策に関して、いろいろなところで行われているので、当研究所は社会科学分析に強い特性を活かし、社会システムの在り方やリスクファイナンスについての研究を行うことで差別化する。
研究会は毎回、関心ある会員企業・団体の参加を可能とするオープン研究会で開催し、企業等の現場の課題認識も聴取できるものとする。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授
研究協力者
服部和哉 AIG総合研究所 主任研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
災害リスク管理の視点から、日本の社会システムの潜在的な課題を浮き彫りにし、必要な法律・制度・政策などの提案、巨大災害に備えた持続的なリスクファイナンスの制度化の提案を報告書にまとめる。報告書はHPにて公開する。研究成果の政策提言に関する内容は、Policy Brief として発信し、政府、自治体、経済界、マスコミ、学界の関係者に広くアピールする。
行政の法律・制度・政策への反映、企業や社会の課題認識と世論形成につなげたい。
<研究会の活動>
研究会
・2019年7月25日 第1回研究会開催
・2019年9月2日 第2回研究会開催
・2019年9月30日 第3回研究会開催