マイナス金利環境下における地域金融機関の現状と課題

研究プロジェクト 2020年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

上席研究員 家森 信善 神戸大学経済経営研究所教授

 

研究目的

金融庁の分析によれば、2018年度において本業赤字の銀行が45行ある。特に、2016年1月に、日本銀行がマイナス金利政策を採用して以来、状況は一層厳しくなっている。金融庁は、金融機関の経営の持続可能性について大きな関心を払うようになっている。

金融政策の効果波及の重要な経路が銀行であり、銀行の行動を理解しておくことはマイナス金利政策の評価を行う上でも重要である。現在、銀行の貸出金利と預金金利の利鞘が傾向的に低下しており、また、フィンテック企業の台頭などにより、伝統的な銀行の手数料分野(振込手数料など)も浸食されつつある。

こうした厳しい経営環境の下で、地域の代表的な金融機関どのような方針で対応しているのかを、金融機関の財務データ、IR資料、企業側の情報、支援機関の評価などから分析する。あわせて、その行動が金融政策の効果波及経路としてどのような影響を持つのかを検討する。

 

研究内容

地域金融機関の役割を様々な視点で検証し、地域金融機関がどのように生き残り、社会的な機能を果たしていくのかを、以下のような取り組みを通じて検討するため、銀行アナリスト、金融庁・日本銀行などの当局者、欧州金融事情に詳しい研究者・専門家を講師とし招いた研究会を実施する。

・地域金融機関の現状について把握する。このために、銀行・信用金庫の経営者から経営の現状と対応策についてヒアリングを実施する。

・政府、自治体による地域金融支援状況、地域別の取組状況を把握する。このために、金融庁や日本銀行等に対してヒアリングを実施する。

・現在の地域金融の取組について、銀行アナリスト、研究者からの分析のヒアリングを実施する。

・ヨーロッパのマイナス金利政策について、関連する研究論文等をメンバーで読み解く。

・ヒアリングより得られた結果と、研究会によって得られた我々の解釈を外部の研究者や実務家に対して提示し、そのフィードバックを活用して提言としていく。

 

研究体制

研究統括

本多佑三 APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

リサーチリーダー

家森 信善  APIR上席研究員、神戸大学経済経営研究所教授

リサーチャー

高屋定美  関西大学・教授

水野伸昭  愛知学院大学・教授

播磨谷浩三  立命館大学・教授

小塚匡文  摂南大学教授

柴本昌彦  神戸大学経済経営研究所准教授

海野晋悟  香川大学・准教授

橋本理博  名古屋経済大学・准教授

尾島雅夫  神戸大学経済経営研究所・研究員

芝田健二  APIR研究員・総括調査役

 

期待される成果と社会還元のイメージ

年次報告書を取りまとめ、アンケート調査を軸にした書籍の刊行を企画している(2020年度内出版を計画するが、年度をまたぐ可能性有)。また、対外的に開かれたシンポジウムを計画(金融庁や近畿財務局の後援を得ることで、金融機関の参加者を増やしたいと考えている)。

それらの成果を、地域金融機関の金融業務以外の事業検討、金融当局による金融仲介機能向上に向けた施策の立案に活用されたい。

・地域経済を支える金融機関の経営課題に関し提言を目指す。

・銀行行動を理解することで、金融政策の効果波及経路についての理解を深め、金融政策のあり方に対しての提言を目指す。

・事業承継を課題として考えている関西の企業に対して、事業承継に成功した企業の事例を紹 介することで、自らの準備のヒントを提供する。

また、研究内容に厚みをつけるために、当該分野の実務家や研究者などを招いた研究会や意見交換会を開催する。

 

<研究会の活動>

研究会

・2020年 6月24日  第1回研究会開催

・2020年 8月 4日   第2回研究会開催(オンライン)

・2020年 9月25日   第3回研究会開催(オンライン)

・2020年10月28日   第4回研究会開催(オンライン)

・2021年 1月 8日   第5回研究会開催(オンライン)

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