関西地域間産業連関表の利活用

研究プロジェクト 2023年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

APIR上席研究員 高林 喜久生 大阪経済法科大学経済学部教授

研究成果

2023年度は、APIRが独自に開発した「関西地域間産業連関表」の2015年版を作成し、これを用いて、各種イベントにおける経済波及効果を試算・公表し、大きな反響を呼び各種のメディアに数多く取り上げられました。

59年ぶりに行われた阪神・オリックスの関西ダービーの経済波及効果では、①公式戦およびポストシーズンにおける球場観戦や球場外での消費、②リーグ優勝および感謝セール、③優勝パレードに伴う様々な消費を精緻に想定し、関西各府県への経済波及効果を936億円と算定しました(日本全体では1607億円)。その中でも、大阪府と兵庫県を中心に効果が大きく、関西のGRP(域内総生産)を0.05%程度押し上げると分析しました。

また、国、自治体等から公表された最新のデータを基に、大阪・関西万博の経済波及効果を試算しました。万博関連事業費と来場者消費に分けて、基準ケース※2と観光客が万博会場外のイベントや施設を訪れる「拡張万博」※1ケース1※3、2※4における経済波及効果をそれぞれ算定しました。結果、基準ケースで2兆7,457億円、拡張万博ケース1で3兆2,384億円、拡張万博ケース2で3兆3,667億円と試算しました。

※1拡張万博:万博のテーマ・時間軸・空間軸の概念を拡張し、関西全体を仮想的なパビリオンに見立て、万博本体では実施しにくい事業も含めて様々な経済活動を展開する取り組み

 

当初計画

研究の背景

関西2府8県+1地域を対象地域とする唯一無二の地域間産業連関表である。当プロジェクトでは様々な事象による経済社会活動に対する影響について産業連関表を用いて府県別・産業部門別に推計してきている。今後関西においては大阪・関西万博をはじめとするイベント、さらにIRを機に新たな産業が予想され、産業連関表を用いた様々な経済分析が重要である。

 

研究内容

・奈良県DATA取得後に正式版関西地域間産業連関表の作成:奈良県のDATAの差し替えを行い再度統合作業とバランス調整を行う

・昨年度算出した大阪・関西万博の経済波及効果の再算出:万博アクションプランVer3を反映し、さらに正式版関西地域間産業連関表完成後に再度試算する。

・分析結果を関西経済白書、APIRの各種レポートへの掲載、マスコミ取材時、セミナー等における経済波及効果試算のPR

期待される成果と社会貢献のイメージ

成果物である2015年表は、2011年表と同様、経済部門の一部をAPIRのホームページ上で発表する。また、分析成果は景気討論会や環太平洋産業連関分析学会やセミナー等で報告することを予定している。

地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行う上での重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。

研究体制

研究統括

稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

リサーチリーダー

高林 喜久生 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授

リサーチャー

下田 充   日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
下山 朗   大阪経済大学経済学部教授
入江 啓彰  近畿大学短期大学部商経科教授
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