ABSTRUCT
リサーチリーダー
APIR上席研究員 松繁 寿和 高松大学経営学部教授、大阪大学名誉教授
成果報告
業務効率改善や人材不足解消等の手段として、多くの企業や団体がDXを展開しています。本プロジェクトは、統計データや企業へのフィールド調査を通じてDXがもたらす人々の働き方や必要なスキルの変化を明らかにし提言としてまとめることを目的にしてきました。
研究2年目となる2023年度は、主にデジタルツールを導入している業種(介護サービス業、宿泊業、食品製造業)のフィールド調査を実施しました。その結果、デジタルツールの活用を通じて業務の可視化や情報共有がなされ、書類作成や申し送り等の事務的な業務に要する時間が大幅に短縮されていました。さらに、それにより利用者に向ける時間が確保できるようになり、従業員のモチベーションの向上に繋がった事例も多く確認され、実効性のあるDXの取り組みが実現されていることを紹介しました。また、DXを実現したいと考えた人、DXへのシフトを現場に浸透させる人、デジタルツールを使い実際業務を行う人といった役割ごとの人材や組織の特性およびスキルについても議論しました。
当初計画
研究の背景
AIに代表される技術革新や新型コロナウイルスによるパンデミックなどによる社会の変化により、仕事の中身やその進め方が大きく変化していると思われる。特に、DX(Digital Transformation)の加速化により、要求されるスキルが急速に変化している可能性は高く、労働者のスキルマッチングが重要な課題となっている。
そこで本研究では、近年の新技術の導入により人々の働き方がどのように変化したのか、特に求められるスキルと持っているスキルのギャップはどのように生じているのかを明らかにする。統計分析だけでなくフィールド調査を通じてより詳細な情報を入手し吟味することで、DXがCX(Career Transformation)におよぼす影響を明らかにしたい。
研究内容
・フィールド調査(ヒアリング調査)によるDXがもたらす仕事の変化分析。
①酒造、②介護、③宿泊の3分野で、調査対象企業を選定
ヒアリング項目は、
①コンピテンシー項目の変化、職場の配置転換
②リスキリング、職務変化(職種構成)
③技術の変化⇒求められる人材、スキルの変化など分野に応じた観点も含めて調査
・DXの進展に伴うCareer Xの変化、ミスマッチングの現状把握(マクロ)を行い、日本の現状と動向を分析。
期待される成果と社会還元のイメージ
・DXの進展・加速化がもたらすCareer Xの変化に、個人・企業・国はどう対応すべきかに関する提言を報告書としてまとめる。
・フィールド調査結果により得られた知見を基にフォーラムを開催。
・DXによる仕事の変化に関して、現状を分析し、課題を抽出する。自社でDXによる業務や組織改革を行う際の、方針や考えるべきポイントを提供する。
研究体制
研究統括
リサーチリーダー
リサーチャー