関西・大阪における都市ぐるみ、都市レベルのDX

研究プロジェクト 2023年度

ABSTRACT

リサーチリーダー

APIR上席研究員 下條 真司 青森大学教授

成果報告

政府は「デジタル田園都市国家構想」の検討を開始し、デジタルを最大限活用して公共サービスの維持・強化と地域経済の活性化を図り、地域の個性を生かしながら「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すとしています。しかし、国内での取組み以上に、GAFAを中心とする米系プラットフォーマーによるデータ収集と利活用の動きは目覚ましく、個人や地域のデータが、米系プラットフォーマーに一極集中する事態を招いています。

研究会では、様々な論点で都市OS基盤の在り方を議論し、以下提言を示しました。

【データ主権の確保】
集中型プラットフォームによる富(データ)の集中を防ぐには、 データ主権を維持する仕組みが必要

【多様性・寛容性のあるスマートシティの実現】
自己組織的、かつ、データの地産地消が可能な“地域のプラットフォーム”を適用すべき

【個人データの二次利用拡大】
利活用審査による二次利用も認めることが必要であり、そのための第三者機関を新たに設置すべき

【データの所有権と利用権の分離】
データは所有権と利用権を分離して、データの価値創出を加速する取組みが必要

【住民のリテラシー向上】
住民にリスキリングの機会(リカレント教育)の提供が必要

【デジタル民主主義の構築】
地域住民自身による熟議を促すプラットフォームと、市民参加型予算の導入について検討すべき

当初計画

※期中の研究会の進捗(議論の方向性)により、一部変更となりました。

研究の背景

本研究プロジェクトはICTによる「人々の幸せを中心とする、持続的に成長する都市」の実現に向けて、ICTの負の影響を避けるための留意点を検討する、2016年度発足の研究の一環である。

わが国では岸田内閣の「デジタル田園都市国家構想」等、内閣府、国土交通省、総務省等主導で、スマートシティに関連する計画や事業が、全国で実装へ進みだした。大阪府市でも、2025年度 大阪・関西万博に向け、2つのフィールド(夢洲、うめきた2期)で先端的なサービスの提供を強力に推進して、実証・実装や規制改革によりスーパーシティ構想の実現に取り組んでいる。

各自治体は、取り組みを進める上で、海外でのスマートシティの先進成功事例(バルセロナ、アムステルダム等)を学ぶ一方、うまく進まなかった事例(トロント、ポートランド、国内自治体DX街づくり等)について、必ずしも十分に検証尽くされていません。また、国主導の街づくり推進事業では、自治体の安易なIT企業への依存により、成果がなく実用化されない事例も問題視されている。

そこで、大阪府市が2つのフィールド(夢洲、うめきた2期)で、スーパーシティ構想への取り込みを進めている一方、一般市民の日常生活には、現状あまり具体的な変化や展望が伝わっていない。

各地のスマートシティ事例調査から過去経験した課題を抽出し、今後必要となる要件を明らかにし、スマート技術で一般市民の日常を可視化し改善する、データ利活用の方向性を提案していく。

 

研究内容

(1)  スマートシティや、自治体DXの(失敗)事例から、諸課題を抽出、論点を整理。

(2) 課題を設定し、新たな視点からの解決策を議論。

(3)  フォーラムを開催、(1) (2)で得た課題や解決策を討議し、方向性を共有する

(4)  研究会(3)で得た知見や方向性で更に課題抽出

(5)  大阪で実装へ進みだした、各スマートシティの取組との、情報共有や意見交換を実施し、成功に資する協力をすすめる。

 

期待される成果と社会還元のイメージ

オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々を中心に還元する。

大阪府市のスーパーシティ、都市OSに向けた提言、産官学・各社の枠を超えたDX/スマートシティの諸課題に関する情報共有と議論の場(研究会、フォーラム)を提供することで、交流の場として各社での取り組み事例や先進事例を共有できる機会としていただく。

研究体制

研究統括

宮原 秀夫  APIR所長

リサーチリーダー

下條 真司  APIR上席研究員、青森大学ソフトウェア情報学部教授

リサーチャー

岸本 充生  大阪大学データビリティフロンティア機構教授
木多 道宏  大阪大学大学院工学研究科教授

オブザーバー

行政、団体、民間企業、より適宜参加を要請(※1)(※2)

※1:必要に応じて、大学、自治体や企業等にも参画いただく。
※2:万博・スーパーシティ構想に向けた実証実験の実施が想定される官民の組織を研究会のオブザーバーとしており(昨年実績16団体)、今年度も参画を打診する。

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