アジア太平洋地域の政治・経済的協力のあり方

研究プロジェクト 2023年度

ABSTRUCT

リサーチリーダー

APIR上席研究員 木村 福成 慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト

成果報告

2023年度は、世界を取り巻く様々な状況を踏まえて日本の経済外交はいかにあるべきか、日本企業のアジア戦略はどのように展開していくべきかを探るため、以下3つのテーマでフォーラムを開催しました。

①拡大する半導体産業の日本・関西経済への影響

世界各国に張り巡らされた半導体産業のサプライチェーンの全体像と、米中対立をきっかけとした米国によるサプライチェーン巻き戻しの動き、今後の日本における半導体産業の可能性について

②ASEAN経済の将来シナリオと日本経済への影響

10加盟国により着実に経済統合、貿易自由化を進めているASEANにおける2025年以降の中長期的な政策シナリオと課題について

③権威主義体制の弊害を「無害化」する通商ルール構築を~中国とどう向き合うか~

中国の異質な経済体制とそれに起因する法的不安定性・予見不可能性のリスク、国際通商ルールが実効的なものになるための規律づけの可能性や中国経済の今後の見通しについて

当初計画

研究の背景

広島で開催された主要7か国首脳会議では、対中国を念頭にまとめられた共同文書に「経済的威圧を抑止し対抗する」と明記され、半導体やレアアース(希土類)といった重要物資のサプライチェーン(供給網)の枠組みを構築する方針が示された。特定の分野でのサプライチェーンのデカップリングが進むなか、一方で東アジア全域において展開されている国際的生産ネットワークは引き続き活発に動いている。

本プロジェクトでは、経済安保上の利益とグローバル化の経済的利益の間の折り合いをつけながら、国際通商ルールに基づき自由で開かれた経済活動を発展させていくことの重要性を再確認していく。

国際経済学のみならず、国際法学、政治学ならびに企業研究など様々な知見を得ながら、アジア太平洋地域における政治・経済協力のあり方について研究を進めていく。

 

分析の手法または現地調査の詳細

2022年度に引き、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を深めていく。
また、米中対立、ウクライナ戦争の影響による地政学的緊張が継続するなか、今年度は日本が米国や欧州諸国と協調し実施する輸出管理の日本・関西経済への影響についても分析しつつ、あわせて活力を維持している東アジア生産ネットワークの現状とルールに基づく国際貿易秩序の行方についても検討してく。

木村リサーチリーダーによるASEANと日本についての経済研究を軸に、学識者、研究者並びに実務家に登壇いただき、複眼的な見地に立ったディスカッションにつなげる。企業の見識を高め、事業活動に資する情報提供の場としたい。

 

期待される成果と社会還元のイメージ

オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々を中心に還元する。
対海外、特にアジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。

研究体制

研究統括

本多 佑三  APIR研究統括、大阪大学名誉教授

リサーチリーダー

木村 福成  APIR上席研究員、慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト
pagetop
loading