人口減少下における活力ある関西を目指して
~2050年を見据えて~

研究プロジェクト 2024年度

ABSTRACT

リサーチリーダー

APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久

研究の進捗

  • 2024年10月4日(金)第1回研究会開催
  • 2024年12月26日(木)第2回研究会開催

研究計画

研究の背景

2024年4月に人口戦略会議は、全国地方自治体の「持続可能性」についての分析レポートを発表した。その中で、2020年から2050年までの間に若年女性人口の減少率が50%以上になる自治体(消滅可能性自治体)は全国1,729のうち744(43%)あるとし、関西は全198のうち門真市等81の自治体(41%)が該当している。まずは、この状況が前回2014年のレポートと比較して改善しているのか、そして今何が問題になっているかを把握する必要がある。

国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の最新の推計によると、日本の総人口は2023年の1億2,435万人から2056年に1億人を割り、2070年には8,700万人になるとされている。特に関西(2府4県)は、全国や関東に比べて人口減少のスピードが速い。社人研の推計を基に2022年~2050年の減少率をみると、全国-19.4%、関東-7.5%に対し、関西は-23.3%となる。

また、高齢化の進行も厳しい。社人研の推計によると2050年には生産年齢人口が5,540万人と2023年(7,395万人)比25.1%の減少、およそ4人に1人が75歳以上になるとされている。将来の労働力となる子どもの出生数も年々減少しており、人手不足によって社会インフラの維持が困難になる可能性も指摘されている。

人手不足は足下でも深刻である。帝国データバンクによると、2023年の人手不足を理由とした倒産件数は260件で前年比1.9倍(前年:140件)と過去最多を更新した。業種別では建設業や運輸業が多く、生活に必要不可欠な職種(エッセンシャルワーカー)の人手不足は深刻である。

一方で、労働参加率を上げ、特にサービス業の生産性を向上させれば人口が減少しても問題ないとする議論もあるが、最適解はどこにあるかについて検討する必要があると考える。

そこで、全国に比して人口減少・高齢化が厳しい関西において、人口や労働等に関する様々な基礎データを整理し、加えてAPIRがこれまで蓄積してきたデータベースや知識を組み合わせながら総合的に分析しつつ、データを可視化することで、関西各府県及び自治体の特徴と課題を明らかにする。そして中長期的な視点で、この先人口が減っても豊かさと活力を維持・向上させていくための方策を模索していきたい。

研究内容

●関西基礎統計の整理

  • 労働に関する基礎データ(就業構造基本調査、賃金構造基本統計調査 等)を基に、関西の地域別、産業別、企業規模、性別、年齢別の5軸でデータベースを構築し、県民経済計算に対応できるようなシステム開発及びメンテナンスを行う。
  • 地域別将来人口推計データを整理しつつ、足下と比較して関西の特徴を明らかにする。

●関西における詳細なデータ分析と労働需給分析

  • 整理したデータベースを基に産業構造や雇用構造、年齢構造、賃金構造等から、関西が抱える労働問題を総合的に明らかにする。
  • 介護、建設、宿泊サービスの分野に焦点を絞って詳細なデータ分析を行い、どの職種に労働需給のミスマッチが起きるのかを明らかにし、中長期視点で解決策を検討する。

●経済成長を維持し、持続可能な社会をつくるための施策の検討

  • 労働需給の課題に対してどのような処方箋が考えられるか、有識者等から様々な視点での知見をもらい、関西において実現できる未来の姿を模索する。

期待される成果と社会還元のイメージ

  • マクロデータの分析成果(関西経済白書、トレンドウォッチ)
  • 人口減少による人手不足の課題の共有化(研究会等での情報提供と議論)
  • 人手不足(特に介護、建設、宿泊分野)の解消に向けた対応の検討
  • 人口減少下においても人手不足を補い経済力を維持するための施策の立案

研究体制

研究統括・リサーチリーダー

稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学 名誉教授

 

サブリサーチリーダー

松林 洋一  APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科 教授

 

リサーチャー

野村 亮輔  APIR副主任研究員
吉田 茂一  APIR研究推進部員
古山 健大  APIR研究推進部員
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