アジア太平洋地域軸
研究プロジェクト
2020-07-30
- 2020年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 木村福成 慶應義塾大学経済学部教授
研究目的
アジア諸国は、日EU EPAの大枠合意、TPP11の署名、RCEP交渉の継続などを受け、新たな段階に入りつつあったが、Brexitと米トランプ政権の登場に象徴される保護主義的風潮が高まり、さらにコロナ禍がそれを加速させているような状況が生じている。アジアは自由貿易に対する向かい風に抗していけるのか、デジタルエコノミーの波はこれまでの製造業ベースのグローバル・バリューチェーンを中心に据えた開発戦略をどう変えていくのか、高いレベルの自由化と新たな国際ルール作りは進むのかなど、最新の情報を踏まえつつ検討すべき課題は多い。本プロジェクトでは、国際経済学のみならず、国際法学、企業研究などさまざまな知見を得ながら、アジアの経済統合について研究を進めていく。
研究内容
2020年度は昨年度に引き、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を固めていくことに力を傾けながらも、コロナ禍の影響でアジアをめぐる情勢は時々刻々、急激に変化しており、日本、関西経済への影響もその時点での最新の状況の中での本質を分析する。
「アジアにおける経済のダイナミズムとグローバリゼーションの展望」をテーマにシンポジウム形式のオープン研究会にて適宜、外部講師を招聘し、最新情勢の把握と認識の共有を促進したい。
オープンなシンポジウム形式の研究会とすることで、会員企業の方々等との情報共有を進め、また同時に多方面の方々からのフィードバックも受ける。喫緊の課題についての研究実施となるため、事態の新展開を常に追っていく必要がある。それら最新の情勢に関して専門性をもって解釈し、将来を見据えた議論を展開していくところに、本プロジェクトの独自性が存在する。
研究体制
研究統括
本多佑三 APIR研究統括
リサーチリーダー
木村福成 APIR上席研究員、慶應義塾大学経済学部教授
期待される成果と社会還元のイメージ
会員企業向けの年次報告書は、2021年3月末に取りまとめる。
アジアをめぐる情勢は時々刻々と変化しており、日本、関西経済への影響も流動的であるため、研究活動をオープン研究会として開催する事を想定している。
シンポジウム形式のオープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々に還元する。
アジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。
<研究会の活動>
研究会
・2020年 6月26日 第1回オンラインフォーラム「アジアにおける経済のダイナミズムとグローバリゼーションの展望-コロナ禍がグローバル・バリューチェーンに及ぼす影響-」開催
・2020年10月29日 第2回オンラインフォーラム「アジアにおける経済のダイナミズムとグローバリゼーションの展望-これからの東アジア-保護主義の台頭とメガFTAs-」開催
・2020年12月14日 第3回オンラインフォーラム「アジアにおける経済のダイナミズムとグローバリゼーションの展望-米大統領選後の世界経済・政治の展望-」開催
研究プロジェクト
2020-07-30
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ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 後藤健太 関西大学経済学部教授
研究の背景
アジアにおけるビジネス戦略を考えるうえで、SDGs(Sustainable Development Goals)の達成、持続可能なサプライチェーンの構築はかかせない視点である。
当研究所においては、設立当初からアセアン諸国の研究機関等との連携を通じて、アジア太平洋地域の持続的な発展をサポートしていく調査研究を進めていくことをひとつの使命としている。
研究内容
SDGsオープンイノベーションプラットフォームと共同で大企業と中堅・中小企業によるビジネス創出を通じて、新型コロナ禍にある経済の再生に向けて、SDGsが掲げる誰一人取り残さないを基軸に据え、経営理念に基づく持続可能なビジネス構築を支援する。特に、ゴール12(つくる責任つかう責任)とゴール8(働きがいも経済成長も)を意識する。
SDGオープンイノベーションプラットフォームのビジネスマッチングを実例として、リサーチャーの知見を活用し、SDGsウォッシュにならないような真の意味での持続可能なビジネス創出に関与することを通じてSDGsの実装化を支援する。
研究体制
研究統括
本多祐三 APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授
リサーチリーダー
後藤健太 APIR主席研究員、関西大学経済学部教授
リサーチャー
別府幹雄 コニカミノルタ 関西支社長(中小企業診断士)
長縄真吾 国際協力機構 関西センター(JICA関西) 企業連携課課長
菊池淳子 日本工営 コンサルタント海外事業本部 SDGs&CSR戦略ユニット長
期待される成果と社会還元のイメージ
会員企業をはじめ、企業、経済団体など民間で利活用可能な好事例の創出とその分析。
SDGsが直接ビジネスと直結するグローバルな企業活動展開において重要な要素であることの理解促進。
<研究会の活動>
研究会
・2020年 7月10日 第1回研究会開催
・2020年10月 7日 第2回研究会開催(オンライン)
・2020年11月27日 第3回研究会開催
・2021年 3月22日~4月4日 フォーラム動画配信
研究プロジェクト
2020-07-30
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ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 守屋貴司 立命館大学経営学部教授
研究の背景
米国の大手IT企業のCEO(グーグル、マイクロソフト等)として多くのインド出身者が活躍している。インド工科大学(IIT)は超難関大学として知られ、卒業生は現地のGAFA関連などの巨大企業の研究所への高度人材供給源となっており、国内起業家の育成にも熱心に取り組んでいる。また、インドを含め、シンガポール、ベトナムなどアジア諸国では、各国とも大学教育(産業界との連携)を含めて、先進的な取り組みを行い、高度人材を、自国の経済発展への繋げる動きが、活発、加速化している。
そこで、本研究プロジェクトでは、インドを中心に、シンガポール、ベトナムの3カ国に焦点をあて、下記通り検討を進めたい。
・優秀な高度人材を育成する環境、教育などに関して、各国の文化、風土を背景とした相違点や共通点を抽出、明確化する。
・世界企業が高度人材をどのように生かしているかを明らかにする。
・日本企業が積極的に高度人材に目を向けて、企業の成長に活かしていくための課題、高度人材獲得に向けた魅力的な制度、取り組みなどに関して研究会活動を通じて提言を行う。
研究内容
2020年度は、インド、シンガポールおよびベトナムにおいて上記の目的を達成するために、現地の新型コロナの影響を含めて最新状況の把握を中心に行い、まとめる。
①インドをはじめとする文化・経済の調査・検討
インド人材の活用に関しては、カースト制などの社会構造制度の理解などが不可欠であり、インドを中心として文化や経済について、人材活用の背景を理解するために調査・検討を行う。
②世界企業の高度人材活用に関する調査・検討
欧米の大手IT企業がインド/アジア人材をどのように活用しているか、新型コロナの影響を含めて、その実態を調査・検討し、分析を行う。現地の人材コンサルタント、企業駐在員などのWEBヒアリングなども行う。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチリーダー
守屋貴司 APIR上席研究員、立命館大学経営学部教授
リサーチャー
安田聡子 関西学院大学商学部教授
松下奈美子 名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授
宮本和明 HENNGE株式会社 代表取締役副社長
奥田 智 株式会社をくだ屋技研 代表取締役社長
期待される成果と社会還元のイメージ
2020年度末に研究会成果報告書を取りまとめ、APIRホームページに掲載する。
インド/アジアの高度人材活用に関して活用されることを想定している。
<研究会の活動>
研究会
・2020年 8月25日 第1回研究会開催(オンライン)
・2020年 9月14日 第2回研究会開催(オンライン)
・2020年10月29日 第3回研究会開催(オンライン)
・2020年11月26日 第4回研究会開催(オンライン)
・2020年12月17日 第5回研究会開催(オンライン)
・2021年 1月29日 第6回研究会開催(オンライン)
・2021年 2月12日 第7回研究会開催(オンライン)
・2021年 3月12日 第8回研究会開催(オンライン)
日本・関西経済軸
研究プロジェクト
2020-07-30
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ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 下條真司 大阪大学サイバーメディアセンター教授・センター長
研究目的
2016~19年度の本研究プロジェクトでは、IoTの活用が今後都市にもたらす変化と、「人々の幸せ」のためのIoTのあるべき姿を、スマートシティ実証実験を含めて検討し、多くの示唆を得た。
2020年度は、新型コロナウイルスの流行によって社会・経済活動が大きな転機を迎えていることを反映し、都市の「持続可能な発展」を担保するには、IoT・スマートシティはどのようなものであるべきかを検討したい。具体的課題としては、国連が提示するSDGsの諸課題に加え、コロナ禍がもたらした新しい社会課題が注目される。
なお現在策定中の第6次科学技術基本計画をめぐる議論でも、科学技術政策に人文・社会科学を含める必要性が提言されており、人文・社会科学の視点をより積極的に導入したい。
研究内容
上記の目的を達成するために、研究会を開催し、関連事例をもとに課題・提言の意見交換を行い、2019年度の実証実験に関連した、共通基盤的なテーマでフォーラムを開催する。
・各研究会では、IoT/スマートシティ構築に関わる「各種の課題」または「起こりつつある新たな社会変化」の視点でテーマを設定し、有識者による事例紹介とともに、産官学にまたがる出席者により、変化がもたらす将来の広がり、今後考えられる課題を議論する。(テーマは各回2件。例:シビックテック、エネルギー、災害)
・研究会の議論を通じた共通の観点として、SDGsとELSI(倫理・法・社会課題)を導入する。またテーマ・事例の関連情報(背景、統計、先行事例など)も併せて共有する。
・研究会での議論を整理し、スマートシティのIoT/ICTを構築する際に考慮しておくべき点や、まちづくりに対する提言など、持続可能なスマートシティがどうあるべきかの示唆を抽出する。特に「万博に対する提言」「都市OSに対する提言」をまとめる
研究体制
研究統括
宮原秀夫 APIR所長
リサーチリーダー
下條真司 APIR上席研究員、大阪大学サイバーメディアセンター教授・センター長
リサーチャー
岸本充生 大阪大学 データビリティフロンティア機構 教授
大島久典 APIR研究員・総括調査役
期待される成果と社会還元のイメージ
2025年万博、都市OSに向けた提言を含め、将来の都市の持続可能性の課題を解決するスマートシティに対する示唆をまとめた報告書を作成し、産官学・各社の枠を超えた、スマートシティの諸課題に関する情報共有と議論の場を提供する。
SDGs及びコロナウイルス後の社会の変化に適応した街づくりとシステム構築のために、参考文献として、自治体・企業などに参照いただくと共に、議論の場を通じた、スマートシティ構築に向けた関係各社間の交流・連携に活用されたい。
<研究会の活動>
研究会
研究プロジェクト
2020-07-30
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ABSTRACT
PDF- 企業調査編PDF
- 留学生本人調査編/本研究プロジェクトの総括PDF
リサーチリーダー
上席研究員 古沢昌之 近畿大学経営学部教授
研究目的
経営のグローバル化が進展する中、企業の人的資源管理においては、多様な人材の登用が求められている。その1つが日本の大学(含む大学院)で学ぶ外国人留学生の活躍である。一方で、日本での就職を希望する外国人留学生の就職決定率は日本人学生のそれよりもいまだ遥かに低く、就職後の定着率に関する問題についてはここ数年間指摘され続けるも、改善には至っていない。かような状況下、本研究プロジェクトでは、企業、大学、留学生それぞれの立場に根差す実態を明らかにし、上記ミスマッチの原因究明を図るとともに、その解決に向けた提言を行う。
研究内容
2019年度は大学側の状況調査を実施したが、2020年度は留学生、企業側の実態を把握すべく取り組む。制度や取り組みの最新状況一つ一つを留学生、大学、企業3つの角度から分析することで、留学生の認識、大学の支援、企業ニーズの間に生じているギャップをつまびらかとし、深堀した分析から3者のスタンスの違いを踏まえた実効的な提案に繋げていきたい。
定量的調査(アンケート)と定性的調査(ヒアリング)の両面から分析し、多角的にアプローチする。2019年度の大学側調査では167大学のサンプルを基に大学側から見た様々な課題について整理、分析を実施。2020年度は外国人留学生本人並びに企業への調査を実施し、各視点のギャップを見出すことで研究の深耕と課題解決策の提言を図る。学術と実務両面に対する貢献を果たしたい。
研究体制
研究統括
稲田義久 研究統括兼数量経済分析センターセンター長、 甲南大学経済学部教授(2021年4月以降、同大学名誉教授)
リサーチリーダー
古沢昌之 APIR上席研究員、近畿大学経営学部教授
リサーチャー
松川佳洋 広島経済大学経営学部教授
カオ・ティ・キャン・グェット 関西学院大学経済学部講師(2021年4月以降、京都先端科学大学経済経営学部准教授)
越村惣次郎 大阪産業経済リサーチ&デザインセンター 主任研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
大学における外国人留学生の就職支援に向けた取り組みの現状と課題、外国人留学生の就職活動を巡る現状と課題等について、報告書に取りまとめる。
また研究成果を、企業の外国人留学生活用に向けた人的資源管理施策、大学における外国人留学生の就職支援施策、日本の大学で学ぶ外国人留学生の就職活動に活用されたい。
<研究会の活動>
研究会
報告書「関西の大学・大学院で学ぶ留学生の就職に関する研究」はこちら
研究プロジェクト
2020-07-30
- 2020年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 家森 信善 神戸大学経済経営研究所教授
研究目的
金融庁の分析によれば、2018年度において本業赤字の銀行が45行ある。特に、2016年1月に、日本銀行がマイナス金利政策を採用して以来、状況は一層厳しくなっている。金融庁は、金融機関の経営の持続可能性について大きな関心を払うようになっている。
金融政策の効果波及の重要な経路が銀行であり、銀行の行動を理解しておくことはマイナス金利政策の評価を行う上でも重要である。現在、銀行の貸出金利と預金金利の利鞘が傾向的に低下しており、また、フィンテック企業の台頭などにより、伝統的な銀行の手数料分野(振込手数料など)も浸食されつつある。
こうした厳しい経営環境の下で、地域の代表的な金融機関どのような方針で対応しているのかを、金融機関の財務データ、IR資料、企業側の情報、支援機関の評価などから分析する。あわせて、その行動が金融政策の効果波及経路としてどのような影響を持つのかを検討する。
研究内容
地域金融機関の役割を様々な視点で検証し、地域金融機関がどのように生き残り、社会的な機能を果たしていくのかを、以下のような取り組みを通じて検討するため、銀行アナリスト、金融庁・日本銀行などの当局者、欧州金融事情に詳しい研究者・専門家を講師とし招いた研究会を実施する。
・地域金融機関の現状について把握する。このために、銀行・信用金庫の経営者から経営の現状と対応策についてヒアリングを実施する。
・政府、自治体による地域金融支援状況、地域別の取組状況を把握する。このために、金融庁や日本銀行等に対してヒアリングを実施する。
・現在の地域金融の取組について、銀行アナリスト、研究者からの分析のヒアリングを実施する。
・ヨーロッパのマイナス金利政策について、関連する研究論文等をメンバーで読み解く。
・ヒアリングより得られた結果と、研究会によって得られた我々の解釈を外部の研究者や実務家に対して提示し、そのフィードバックを活用して提言としていく。
研究体制
研究統括
本多佑三 APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授
リサーチリーダー
家森 信善 APIR上席研究員、神戸大学経済経営研究所教授
リサーチャー
高屋定美 関西大学・教授
水野伸昭 愛知学院大学・教授
播磨谷浩三 立命館大学・教授
小塚匡文 摂南大学教授
柴本昌彦 神戸大学経済経営研究所准教授
海野晋悟 香川大学・准教授
橋本理博 名古屋経済大学・准教授
尾島雅夫 神戸大学経済経営研究所・研究員
芝田健二 APIR研究員・総括調査役
期待される成果と社会還元のイメージ
年次報告書を取りまとめ、アンケート調査を軸にした書籍の刊行を企画している(2020年度内出版を計画するが、年度をまたぐ可能性有)。また、対外的に開かれたシンポジウムを計画(金融庁や近畿財務局の後援を得ることで、金融機関の参加者を増やしたいと考えている)。
それらの成果を、地域金融機関の金融業務以外の事業検討、金融当局による金融仲介機能向上に向けた施策の立案に活用されたい。
・地域経済を支える金融機関の経営課題に関し提言を目指す。
・銀行行動を理解することで、金融政策の効果波及経路についての理解を深め、金融政策のあり方に対しての提言を目指す。
・事業承継を課題として考えている関西の企業に対して、事業承継に成功した企業の事例を紹 介することで、自らの準備のヒントを提供する。
また、研究内容に厚みをつけるために、当該分野の実務家や研究者などを招いた研究会や意見交換会を開催する。
<研究会の活動>
研究会
・2020年 6月24日 第1回研究会開催
・2020年 8月 4日 第2回研究会開催(オンライン)
・2020年 9月25日 第3回研究会開催(オンライン)
・2020年10月28日 第4回研究会開催(オンライン)
・2021年 1月 8日 第5回研究会開催(オンライン)
研究プロジェクト
2020-07-30
- 2020年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
研究統括兼数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学経済学部教授
研究目的
・インバウンド産業の戦略転換の必要性
近年急成長してきたインバウンド産業では、訪日外客数の急増を志向する傾向が強いが、需要・供給両面の制約により持続可能な発展が望めない状況にある。こういった量的志向から、訪日外客1人当たりの付加価値を高める戦略への転換が必要であり、コロナ禍によって訪日外客が途絶えている現在はその再考の好機といえる。本研究会が昨年度開催したシンポジウムでは「ブランド力」「広域・周遊化」「イノベーション」の視点でインバウンドを分析する枠組みを提示した。今年度は特に「ブランド力」の向上のために、日本人が気づきにくい観光資源の魅力や課題を抽出する施策を検討したい。
・ポストコロナのインバウンド戦略策定を意識した、基礎分析の継続の必要性
本テーマではマーケティングの指標となるインバウンド関係基礎データの整理・推計や、戦略策定の参考となるマイクロデータ分析といった基礎的な分析を引き続き行っている。そこで得られた知見はトレンド・ウォッチ等の形で都度発表してきた。今年度はコロナ禍の影響も取り入れた基礎的な分析をサーベイ調査などの代替的な方法でも継続し、コロナ後のインバウンド戦略の策定に資する情報として成果を発信したい。
研究内容
2019年度に引き続き、以下4つの軸でバランスよく進めるが、特に②に重点をおく。
①関西基礎統計の整理
インバウンド関係基礎データ(観光庁公表データ、RESAS等)の整理に加え、2019年度に開発した府県別外客数の月次推計も継続して行う。
②マイクロデータによる実証分析
エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための基礎データの整理及び実証分析を行う。具体的には、訪日外国人客の多面的な移動パターンの分析、宿泊旅行統計調査の個票をもとに、府県別宿泊者数の動態の分析を、それぞれ行う。
③ブランド力指標の開発のためのアンケート調査及びヒアリング調査の実施
在留外国人へのアンケート調査及びヒアリング調査を行う。在留外国人が日本の魅力をどういった場所に感じているのか、またその理由について調査を行い、日本が従来持っている観光資源のブランド力について指標化し、分析を行う。また、アンケート設計時より外国人研究員及びインターンシップ生からこれまでのインバウンド戦略の課題等をヒアリングすることでこれまでのアンケート調査と差別化も図る。
④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題を共有する「場」作り
政策担当官庁、推進組織、民間団体等と、ポストコロナ禍の戦略について議論できる「場」を提供し、分析を通じて得られた解決策を発信する。
研究体制
研究統括・リサーチリーダー
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチャー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
KARAVASILEV Yani 京都文教大学総合社会学部講師
野村亮輔 アジア太平洋研究所 研究員
郭 秋薇 アジア太平洋研究所 研究員
研究協力者
村上進一郎 国土交通省・近畿運輸局観光部 計画調整官
岩﨑靖彦 国土交通省・近畿運輸局観光部 観光企画課 課長
濱田浩一 関西観光本部 事務局次長
都留敦徳 日本旅行業協会 事務局長
筒井千恵 関西エアポート株式会社 グループリーダー
※必要に応じてDMO、自治体や民間企業等関係者にも参画いただく。
期待される成果と社会還元のイメージ
研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(研究報告書)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、シンポジウム等での情報提供と議論)を予定している。
また、上記研究成果を「ポストコロナ禍における観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。
<研究会の活動>
研究会
・2020年10月 8日 第1回研究会開催(オンライン)
・2020年11月27日 第2回研究会開催(オンライン)
・2021年 1月25日 第3回研究会開催(オンライン)
・2021年 3月 4日 オンラインシンポジウム開催 (開催概要はこちら)
経済予測・分析軸
研究プロジェクト
2020-07-30
- 2020年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
2019年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習(ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模したモデルを構築し、コンピュータに機械学習させること)を、テキストマイニングに用いる。2020年度も、深層学習における推定モデルの一つである、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)を、基本の分析枠組みとする。そうした分析による出力結果が、本年度の研究の出発点となる「S-APIR指数」である。
①低コスト・低タイムラグ
景況感を代理する既存の指数は、CI一致指数や消費者態度指数のように、多大な労力を投入したアンケート調査から構築されて、月次で報じられている。ところで、経済情勢の要因は一カ月単位ではなく、日々刻々と変化している。ある月の景況感指数を見て、結果的に経済情勢が前月と異なることに気付いたとしても、景気の転換局面が“いつ”であったのか、“その時”に気づくことはできない。本研究は、こうした課題を克服するため、「S-APIR指数」という新しい指数を提案する。この指数は2つの特徴を有する。まず、既存の新聞記事から自動的に出力されるため、多くの人員を必要としない(低コスト)。さらに、日次で報じることができるため、日々起こりうる景気の転換局面を把握することが可能となる(低タイムラグ)。
②S-APIR指数の評価
一般に、“景況感そのもの”を表す指標は存在せず、既存のCI一致指数や消費者態度指数は、あくまでも、“景況感らしきもの”を示した代理指標に過ぎない。本研究が提案するS-APIR指数についても、その出力の過程は異なるものの、同様に景況感の代理指標である。このため、S-APIR指数が景況感らしきものを表す指標として、どういった観点から、どの程度信頼できるものなのか、定量的にその特徴を明らかにする。具体的に、S-APIR指数は、様々なデータに対して、常に安定した入出力を繰り返すモデルであるのか、既存の類似する指数と比べてどういった特徴を有しているのか、という点に着目する。
③S-APIR指数を用いたマクロ経済分析
S-APIR指数を利用して、予期せぬイベントの発生によるマクロ経済への影響を把握することを試みる。対象のイベントとして、世界金融危機(2008年9月15日)、東日本大震災(2011年3月11日)、上海株式市場暴落(2016年1月4日)を視野に入れている。これらのイベントへ注目することにより、負のショックに対して消費者や企業がどう反応するかという観点から、「経済の不確実性」の特徴を示す。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチリーダー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部准教授
生田祐介 大阪産業大学経営学部講師
期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
「S-APIR指数」を見ることで、消費者にとっての景況感を、より深く知ることができるようになる。まずは、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。
<研究会の活動>
研究会
研究プロジェクト
2020-07-30
- 2020年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 高林喜久生 関西学院大学経済学部教授
研究目的
APIRでは,前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでいる。昨年度の自主研究プロジェクト(関西地域間産業連関表の利活用と2015年表に向けての検討)では、「2011年版APIR関西地域間産業連関表(以下,2011年表)」を暫定版から確定版へと改定するとともに、利活用に重点を置くという趣旨からG20大阪サミットや夏の甲子園開催、大阪・関西万博などを対象に経済波及効果の分析を行った。これらの成果は夏のフォーラムやトレンドウォッチ、『アジア太平洋と関西』等で発表し、これらを通じて地域間産業連関表の有用性を伝えることができた。
その一方で、対象年である2011年から約10年が経過し、関西経済を取り巻く状況は大きく変化している。インバウンド需要の増大による交流人口の拡大や、交通網整備によるインフラ整備、グローバル・サプライチェーンの進展による貿易構造の変化は関西の経済構造に大きな影響を与えている。そのため、地域間かつ広域で経済活動を把握することができる地域間産業連関表は、今まで以上に関西経済の分析に重要な役割を果たすと考えられる。
産業連関表は通常、5年ごとに更新されるため、次のベンチマークイヤーは2015年である。2011年から15年にかけては,2013年以降のアベノミクスによる景気の好転、14年以降の外国人観光客急増とそれに伴うインバウンド需要の高まりなど、関西経済にとって重要な出来事が多く起こった期間でもある。ただし、関西各府県における2015年産業連関表の公表はまだ一部府県にとどまっているため、2015年を基準年とした作表に着手できるのは、来年度以降となる。そこで2020年度は、2011年APIR関西地域間産業連関表をベンチマークとした、2015年の関西地域間産業連関表延長表(以下、2015年延長表)作成を行うとともに、引き続き2011年表を利用した分析に取り組む。なお、本年度の調査研究で実施するWEBアンケート等の交易マトリックスに関する調査結果は、来年度以降に実施する2015年基準表の作成においても利用することを見込んでいる。
研究内容
WEBアンケート結果を利用し2015年延長表の作成作業を行うとともに、今後関西地域で開催が予定されている大規模イベント等の経済波及効果の推計について検討する。作業過程で蓄積された知見や分析の成果はトレンドウォッチなどの形で適宜報告を行うとともに、学会などでも対外発表を行いたい。
1)「2015年 APIR関西地域間産業連関表延長表」作成に向けた基礎調査の実施
2011年表作成時に実施した調査から得られた課題(サンプルサイズや設問の尋ね方)を踏まえ、WEBアンケート調査を実施する。
2)「2015年 APIR延長関西地域間産業連関表延長表」の作成
1)で得られたアンケート調査結果を利用し、府県間の取引関係を示した交易マトリックスを更新するとともに、2015年延長表の作成を行う。
3)対外的な成果報告
メンバーは各々の立場で2011年表を活用した分析結果を報告することを通じて、積極的な対外発信に努める。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学教授
リサーチリーダー
高林喜久生 上席研究員、関西学院大学経済学部教授
リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
下山 朗 奈良県立大学地域創造学部教授
入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授
藤原幸則 APIR主席研究員
木下祐輔 APIR調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
近畿経済産業局「近畿地域産業連関表」は2005年表を最後に作成中止となっており、当研究所の表が関西を対象とする唯一の本格的な産業連関表となる。対象地域は広域関西2府8県で、関西広域連合や関西観光本部の対象地域をカバーしている点も特徴である。また、年次を2015年に更新することで、2011年表よりも直近の経済状況を反映できることから、2015年延長表を活用した分析や対外発表等は非常に価値が高いと考えられる。
加えて、産業連関表は政策評価を行う上での基礎資料でもあるため、所内の他の自主研究(インバウンド等)とのクロスオーバー、関連する調査を受託することでの外部資金獲得等が期待できる。
成果物である2015年延長表は、2011年表と同様、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、分析成果は景気討論会や学会や外部の研究会で報告することを予定している。
地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行ううえでの重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。また、外部資金獲得についても、既に受託している大阪府の調査(新型コロナウイルス感染症に関する大阪経済への影響分析等調査)の中で、産業別の影響を推計した結果を報告するなどして活用している。
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