アジア太平洋地域軸
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
上席研究員 京都大学教授 岩本 武和
研究目的
2017年度は、アジアにおける開発金融の実態について、(1)中国からの資本の純流出と外貨準備高減少の問題、(2)マイクロ・ファイナンスやイスラム金融などの新たな金融手法に焦点を当て、ゲストスピーカーを招聘し、足下の実態について考察した。
中国に関しては、景気回復を企図とした人民元安が資本流出を招き、その対応策としての金融政策の引き締めが当初の景気回復策を打ち消してしまうという典型的な「国際金融のトリレンマ」に直面した状態が継続している。今年度においても、「生産能力の過剰」、「不動産在庫の過剰」及び「債務の過剰」という3つの過剰問題を中心とした中国の資本フローの研究を継続する一方で、2017年に続いてアジアの成長に資する開発金融のあり方に関して、カンボジアを中心とする途上国のドル化の問題や行政経験のある有識者を招聘して金融面からみたアジア経済の主要な課題についての検討を試みたい。
研究内容
アジアの開発金融(アジアの経済成長に資する投資のために動員される国内外の公的及び民間金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。
(1)リーマン・ショック後の中国経済の減速を背景にした「アジアの新興国、特に中国からの資本流出」についての昨年度の研究を継続する。
(2)東南アジアの金融メカニズムの実態(カンボジアにおける基軸通貨のドル化)調査を実施。
(3)東南アジアの国際機関の勤務経験を有する専門家を招聘し、金融面からみたアジア経済の主要な課題の検討を実施。
(4)アジアインフラ投資銀行(AIIB)とインフラ開発及びアジアにおける金融システム改革や 銀行部門の資金調達等に関して、中国・ASEAN数カ国に現地調査を行う予定である。
以下のようなテーマ、研究会、ワークショップ、フォーラムを行う予定である。
(1)「東南アジアの金融メカニズムの実態」に関する研究会
(2)「金融面からみたアジア経済の主要な課題を考える」ワークショップ
(3)「ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果と今後の課題」に関する研究会
(4)「人民元改革とアジアの金融統合」に関する研究会(3年間の研究成果のまとめ))
統括
本多佑三 APIR研究統括
リサーチャー
三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科教授
青木浩治 甲南大学 経済学部教授
中山健悟 APIR調査役・研究員
リサーチアシスタント
芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科
期待される成果と社会還元のイメージ
(1)中国における国際資本フローに関する報告(時系列などの金融市場データを含む)
(2)『アジアにおける開発金融と金融協力』に関する報告書
(3)本研究会の研究成果を踏まえた書籍の出版
そのほか、政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け、公共財や研究インフラとなる研究成果やデータに資する。
<研究会の活動>
研究会
・2018年8月8日 第1回研究会開催
「カンボジアのドル化:アジア開発金融への示唆」講師:一橋大学大学院 奥田英信 教授
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 木村福成 慶應義塾大学経済学部教授
研究目的
アジア諸国は、Brexitと米トランプ政権の登場に象徴される保護主義的風潮の高まりに危機感を抱きつつも、日EU EPAの大枠合意、TPP11の署名、RCEP交渉の継続などを受け、新たな段階にはいりつつある。アジアは自由貿易に対する向かい風に抗していけるのか、デジタル・エコノミーの波はこれまでの製造業ベースのグローバル・ヴァリュー・チェーンを中心に据えた開発戦略をどう変えていくのか、高いレベルの自由化と新たな国際ルール作りは進むのかなど、最新の情報を踏まえつつ検討すべき課題は多い。本プロジェクトでは、国際経済学のみならず、国際法学、企業研究などさまざまな知見を得ながら、アジアの経済統合について研究を進めていく。
2018年度は、過去3年間の研究プロジェクトの後継として、改めて研究のスコープを設定し、特に企業経営に影響を与えうる諸要因の抽出を行っていく。
研究内容
2017年度までの3年プロジェクトから仕切り直しとなる初年度は、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を固めていくことに力を傾けたい。また最新情勢の把握のため、適宜、外部講師を招聘し、認識の共有を促進したい。
研究会は、オープン形式のワークショップとし、会員企業の方々等との情報共有を進め、また同時に多方面の方々からのフィードバックも受ける。喫緊の課題についての研究実施となるため、事態の新展開を常に追っていく必要がある。それら最新の情勢に関して専門性をもって解釈し、将来を見据えた議論を展開していくところに、本プロジェクトの独自性が存在する。
リサーチャー
期待される成果と社会還元のイメージ
オープン形式のワークショップにおいて、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々に還元する。また、アジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 後藤健太 関西大学教授
研究の背景
昨今のアジアは急速な経済発展を実現し、その存在感を日増しに高めている。20世紀後半「世界の工場」と呼ばれ、世界の一大生産拠点となったことはよく知られた事実だが、21世紀に入り、アジアはそれ以上の役割を果たすようになった。例えば、日本を仮想トップとするようなこれまでの経済秩序から、アジア中所得国企業を統括者とするグローバル・バリュー・チェーンが展開されているというのもその一つである。
生産工程は細かく分割され、それぞれの工程は国境を越え、多様な国の多様な企業が担っている。そして、そのプロセスの連鎖を日本ではなく、アジア中所得国企業が統括(ガバナンス)し始めた。こうした分業生産工程に日本企業あるいは関西企業がどう参入するか、その「接続力」が求められるようになってきている。2018年度はこうした日本企業のアジアでの立ち位置の変化や今後のアジア展開へのインプリケーションについて、過去(2016年度、2017年度)の研究を踏まえながら、書籍の出版に向けた準備(企画立案および出版社への働きかけ)、さらには執筆の開始に注力した。
研究概要
本研究では、まずは書籍化に向けて出版社への企画の売り込みを行った。書籍の概要を出版社に送付し、これに続いて「まえがき」および「目次案」も提出した。その後、出版社の編集および役員会議での審議を経て、12月初旬に企画が了承された。これを受けて執筆を開始し、現在「前書き」および「第一章」の執筆が完了、先方出版社との内容にかかわる打ち合わせおよび今後の執筆スケジュールに関する協議を進めている。大枠では2019年度内の出版に向けて執筆を進めるという予定である。なお、本案件は商業出版に向けた取り組みであるため、内容にかかわる具体的な開示は現段階では差し控えたい。
なお、本研究ではこの書籍執筆に関連し、中国に端を発するイノベーションの現状をより的確に把握・理解するために、中国・深圳市での訪問調査を実施した。中国の深圳市は「アジアのシリコンバレー」と称され、ベンチャーを始めとする多くの企業が新たな技術や製品を日々開発するイノベーションの一大拠点となっている。その背景の一つとして、モノづくりのためのサプライチェーンの成熟とベンチャーが起こりやすいエコシステムがうまく機能していることが挙げられる。電子・電機をはじめとした産業を対象とした組み立て加工という機能からスタートした深圳の産業構造は、その発展とともに部品(裾野産業)の集積を進めてきたが、これが現在のハードウェアをベースとしたイノベーション・エコシステムの展開の基礎となっている。
深圳では資金と技術力を持つベンチャー・キャピタルや、欧米(シリコンバレーなど)の投資家等をエコシステムに取り込み、また省および中央政府と大学が協同してスタートアップ支援事業を展開する組織なども機能している。さらに、資金的なフォローだけでなく、市場に進出するための教育プログラムの展開やビジネスマッチングなど起業しやすい環境づくりにも力を入れている。ただし他方では、製品の製造受託の生産現場では、人件費の高騰や諸政策等の要因で、労働力不足が顕在化しつつあり、深?のモノづくり環境にとっても新たな課題が浮上しているというのも事実である。
このような、日本以外で広がるエコシステムとどのような関係構築を行うのかについては、今後のアジアにおける日本のポジションと長期的な発展を考える際に重要となる。
内容
①分析の手法または現地調査の詳細
本年度は書籍発刊に向けての2016年度、2017年度の研究成果を補填する情報収集に加え、出版社との細かな原稿調整を行った。その関係で、国内(東京)出張を2回、さらには中国・深圳への調査を1度実施した。
②本研究のセールスポイント、具体的な工夫等
中所得国企業の台頭によるアジアの新たな展開について、これらの状況を示す断片的な情報は多いが、体系的に分析したものは極めて少ない。更にそうした状況を日本の視点で捉えることはダイナミックなアジア経済における今後の戦略を考えていくうえでも、有効である。
研究体制
①統括:アジア太平洋研究所 研究統括 猪木 武徳
②リサーチリーダー:アジア太平洋研究所主席研究員・関西大学経済学部教授 後藤 健太
③事務局:アジア太平洋研究所調査役 馬場 孝志
日本・関西経済軸
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授
研究目的
日本経済が人口減少化の下で、将来に亘って持続的な経済成長を実現するためには、新たな成長戦略が必要となる。特に関西経済においては、インバウンド・ツーリズムの戦略的価値が高い。昨年度は、関西におけるインバウンド戦略を検討するための関西基礎統計の整理、マイクロデータによる分析に取り組んだ。
研究の3つの方向:2017年度に引き続き、関西におけるインバウンド戦略を検討するために、以下の4つの軸を中心にバランスよく研究を進める。
①関西基礎統計の整理
②マイクロデータによる分析
③観光戦略の在り方
④MICEに関する調査分析
特に研究の中心は、②である。具体的には、観光庁が訪日外国人客の消費実態等を把握し、観光行政の基礎資料とする目的で実施してきた訪日外国人消費動向調査個票・宿泊旅行統計調査個票(今年度データ取得予定)を用いたマイクロデータの分析である。
研究内容
<成長戦略立案のための実証分析>
産業としての「インバウンド・ツーリズム」を確立するために、近畿運輸局などの協力のもと、エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための実証分析を行う。
具体的には「訪日外国人消費動向調査」等の個票データを用いて、消費品目別の需要関数を推定し、「爆買い」以降のインバウド需要決定の構造的要因を定量的に考察していく。
<成長戦略立案のための課題の認識>
政策担当官庁、推進組織、民間団体が認識する「爆買い」以降のマーケティング戦略をめぐる課題を議論できる場を提供し、その解決策を発信する。
<関西のインバウンド需要の定量分析と他地域との比較分析>
今年度の個票データを活用した分析により、観光エリアとしての調査分析が可能となり、より詳細な成長戦略立案への具体的な資料提供が可能となる。
<観光施策についてより実現性のある研究>
本研究により観光DMOや観光庁、民間の事業方針とマーケティング分析や効果検証が実現できる。
リサーチャー
大井達雄 和歌山大学観光学部 教授
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学教授
研究協力者
柴谷淳一 国土交通省・近畿運輸局観光部計画調整官
森 健夫 関西観光本部 事務局長
濱田浩一 関西観光本部 事務局次長
角倉洋介 日本旅行業協会 事務局長
筒井千恵 関西エアポート㈱ グループリーダー
期待される成果と社会還元のイメージ
・関西インバウンド基礎統計の整備
・マイクロデータによる分析成果
・関西観光戦略の課題の共有化
・関西の観光産業の成長戦略の立案
・観光ハードとソフトのインフラ整備の選択・集中
・DMOのKPIとその検証
<研究会の活動>
研究会
・2018年9月 第1回研究会開催(予定)
・2018年11月 第2回研究会開催(予定)
・2019年1月 第3回研究会開催(予定)
・2019年2月 第4回研究会開催(予定)
・2019年3月 第5回研究会開催(予定)
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 下條真司 大阪大学サイバーメディアセンター教授
研究目的
モノのインターネット(以下、IoT : Internet of Things)技術によりセンサー類が繋がることで、様々なプロセスが最適化されている。本研究で焦点を当てている将来の都市(スマートシティ)においては、街・人・行政・環境などからデータを取得して、省エネルギー・安全安心・快適・健康へとサービスを繋いで「人々の幸せ」と「効率的な都市マネジメント」を実現していくことになる。
2017年度は、IoT活用の先進事例を専門家より報告して頂き、具体的なプロセスの最適化を議論した。特に、ヒトのプロセスに注目して、職場のストレス度・生産性について報告頂いた。また、スマートシティの中での「人々の幸せ」に関連して、内閣府幸福度研究会メンバーでもある大阪大学大竹教授(APIR上席研究員)に幸福度の考え方をご説明頂き、IoTを使ったサービスの幸せに繋がる考え方を考察した。
研究内容
上記の目的を達成するために、本研究では、大学・研究機関の研究者、企業関係者、行政機関等をメンバーとするオープンな研究チームを組織し、定期的に研究会を開催することで以下のテーマについて議論し、活用の方向性や課題、有り方などについてまとめる。
1)IoT活用先進事例と都市との関連
昨年度に引き続き、先進事例を実施している講師を招聘し議論する。
先進事例の展示会にて主にヒトのプロセスやスマートシティにIoTがどう活用されているか、昨年とどう変化しているかを調査する。
2)IoT活用最適化プロセスと幸福度指数との関係
昨年度に引き続き、幸福度など関連の研究者を招聘し、都市の中のIoTサービスがどう影響するかを考察する。また、IoTサービスによる効果が「幸福度指標試案体系図」の小項目との関係を整理する事で指標に結び付かないか検討する。
3)実証試験との連携
昨年度、NTT西日本と検討し応募した実証試験に関連して、実証用のIoTのデータ収集・解析のプラットフォームを活用してグランフロント大阪内で実証試験できないかをNTT西日本と検討する。
研究会のメンバーとは情報交換を行い、賛同される企業団体と研究会とは別の場で検討を行う。これにより、グランフロント大阪や引き続くうめきた2期でのデータ活用のモデルとして、関連企業や行政にアピールしていきたい。
IoTが想定する社会やシステムを抽象論ではなく、うめきた2期に向けた具体的なモデルを想定して議論することで、実証実験へとつながる具体的な提案を行う。また参加者をオープンにすることで、事業者の参画を促し、関西活性化への一助としたい。
リサーチャー
山本明典 APIR研究員・総括調査役
期待される成果と社会還元のイメージ
具体的なモデルを想定した、Smart Cityの具体的イメージと必要なインフラについての指針を提案し、報告書にまとめる。
スマートシティの街づくりを進める自治体や、街づくりに参画する企業、センサー等の開発企業などに対し参考となる情報を提供する。また、IOTに関連する規格等の標準化の指針づくりに参考にもなる。
<研究会の活動>
研究会
・2018年6月14日 第1回研究会開催
・2018年8月21日 第2回研究会開催(予定)
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
上席研究員 大竹文雄 大阪大学大学院経済学研究科教授
研究目的
人口減少が経済に与える影響をプラス面とマイナス面の双方から整理し、対応策を提言する。経済理論、実証分析を整理した上で、人口減少社会でイノベーションを引き起こすための組織のあり方、人口減少のスピードを遅くするための少子化対策、人口減少社会における労働力不足への対応策などについて検討する。関西圏は、人口移動や高齢化率など、同じ大都市でも首都圏と比較して、異なる点が多い。日本全体の特徴を捉えるだけでなく、関西圏に焦点を当てた分析を行うことも、効果的な政策を行うためには重要である。
本プロジェクトでは、専門的な研究結果の主な内容を、日本の、特に関西圏の、企業関係者、行政関係者向けに分かりやすくした解説を報告書にまとめる。
研究内容
経済学の枠組みで、理論分析と実証分析を用いて、人口減少の影響を明らかにする。2017年度は企業の年齢構成と生産性の関係から少子化が企業の生産性に得る影響、少子化対策としての保育所の有効性、人口減少が都市に与える影響などの研究をしてきた。2018年度は、少子化に伴うコーホート”サイズ”効果の影響、ワークライフバランス政策が労働者の健康状態や出生意欲に与える影響、戦争が人口動態に与えた影響、高齢労働者の増加が賃金・賞与に与える影響、社会的選好が出生に与える影響などについて、実証分析を進める。家計行動、企業行動に関する研究者のグループにより、日本の人口減少の経済的影響についての分析と人口減少のスピードを遅くするための政策についてのエビデンス・ベーストな政策提言を行う点がセールスポイントである。
リサーチャー
佐々木 勝 大阪大学教授
小原 美紀 大阪大学教授
滝澤 美帆 東洋大学教授
奥平 寛子 同志社大学准教授
川田 恵介 東京大学准教授
古村 聖 武蔵大学准教授
期待される成果と社会還元のイメージ
研究成果を、会員企業のみならず一般の方々にも解説する。研究成果は、企業の人事政策、人材育成などの重要な指針になるであろう。また、自治体への政策提言の一助となると期待される。
<研究会の活動>
研究会
・2018年6月22日 第1回研究会開催
・2018年10月26日 第2回研究会開催
・2019年1月25日 第3回研究会開催
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
藤原幸則 APIR主席研究員
研究目的
スポーツ産業は日本では伸び悩んでいるものの、本来関連産業とのシナジー効果も含めれば今後大きな成長が期待でき、地域活性化などにも資すると考えられる。現在、日本では行政をはじめ様々な主体が「ゴールデン・スポーツイヤーズ」(2019~21 年)と言われる3年間に日本で開催される国際メガスポーツイベントを見据え、機運醸成と受入環境整備等に取り組んでいる。このような中でスポーツ産業の振興や抱える課題等について議論し、スポーツ用品メーカーの集積やいわゆる「聖地」を抱える関西の視点も踏まえて分析を行う。
研究内容
研究会を開催を通じて、日本におけるスポーツのこれまでの経緯とスポーツ産業に関する最新の動向も踏まえつつ「競技・生涯スポーツの担い手の現状と課題」、「スポーツと周辺産業の連携」、「スタジアム・アリーナ改革」等といった多様な課題の中から「スポーツ(特に生涯スポーツ)の担い手の現状と課題」に絞り、ヒアリングや専門家識者の参画も得ながら報告書にまとめる。
ステークホルダーが多岐に亘るスポーツ産業に関する分析において、中立的なシンクタンクであるAPIRで研究会を実施することで、分野横断的な議論が可能となる。
アドバイザー
山口泰雄 神戸大学名誉教授
期待される成果と社会還元のイメージ
研究、議論の結果を期末に報告書にまとめる。報告書は行政、企業、クラブ等関係者にも配布したい。施策の参考、ステークホルダー間の連携拡大などにつなげる。
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
PDFリサーチリーダー
主席研究員 藤原幸則 APIR主席研究員
研究目的
関西のスタートアップの起業環境の予備調査において、東京圏との差は大きく、例えば日経新聞のNEXTユニコーン調査でも104社中7社のみが関西圏である。東京圏の比較において、関西に不足している要件を調査して、対策するのみでは東京との差別化が出来ない。既に始まっている東京圏での資金・情報などの集約は、今後も集積効果により集中することが容易に推定される。特徴ある施策が求められる背景である。
起業活性化や関西での起業環境の調査報告は幾つかある。今回の調査は、経済活性化の為の施策提案を行なうための調査であるので、アウトプットは事業提案もしくはポリシーブリーフとなる。とりわけ、経済団体である関経連、大商、同友会とは事業提案について情報交換していく。
研究内容
上記の目的を達成するために、本調査では、イノベーションに関する様々な関係者よりヒヤリングを行い、施策を検討する。また、イノベーションの経済的な効果は実効性には重要なので、関連する研究者よりご教示頂く。
1)調査と施策検討
主に、大企業とスタートアップを結び付けるオープンイノベーションに関するフォーラムなどに出席して、各企業の課題意識について調査する。また、先進的な取り組みをされている企業やスタートアップなどとは個別に情報交換を行なう。
2)産学連携
各大学の産学連携の取り組みの特徴や大学発ベンチャーの取り組みについてまとめる。とりわけ、企業との包括連携、大学でのオープンイノベーションプラットフォーム作りなどこれまでと異なる施策が、イノベーションに対して有効かの検証を行なう。
3)イノベーションの研究者
イノベーションに関する既存研究について、研究者に当たってヒヤリングなどを行なう。現在のところは、特許出願などを調査されている帝塚山大学経済経営学部経済経営学科蟹先生、スタートアップ企業について研究されている関西学院大学経済学部加藤先生、生産性向上について検討されている東洋大学経済学部滝澤先生などが候補である。
リサーチャー
山本明典 総括調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
外部イノベーションの取り込みが苦手な企業やスタートアップ企業が関西に集積する施策を提案する。
<研究会の活動>
研究会
経済予測・分析軸
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、速報性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を、速報性をもって析出することを試みる。
本研究では、高頻度(日次ベース)で公表される新聞紙上における経済記事に着目し、同記事のテキスト情報から景況感を析出するという手法(=テキストマイニング)を用いて、より速報性の高い景況感指標を作成することを試みていく。
研究内容
2017年度の研究成果を受け、多様な語彙を持つ経済用語を数量的に解析するために、深層学習、特にリカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)という分析枠組みを用いる。深層学習とは、人間の脳内における多層段階にわたる思考過程を模倣した数理モデルの総称であり、アルゴリズムとデータを用いてコンピュータで実装される。
深層学習を二段階で実施する。第一段階では、コンピュータにテキストデータ(新聞記事)を大量に読み取らせ、そのデータに対する回答(景況感指数)を人間が教える。第二段階では、新しいデータを読み込ませて、正答を出力できるか確かめる。第二段階で正答が出力されなければ、第一段階に立ち戻る。そこで、アルゴリズムの修正やデータの追加を行い、再度第二段階へ進む。所望の結果が得られるまで、第一段階と第二段階のサイクルを繰り返す。
リサーチャー
関 和弘 甲南大学知能情報学部准教授
岡野光洋 大阪学院大学経済学部講師
生田祐介 APIR研究員
木下祐輔 APIR調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
テキストデータを利用した、新しい景況感指標のプロトタイプを開発する。このプロトタイプを、APIRが毎月公表している「APIR Economic Insight Monthly」などへ掲載することも予定している。
新しい景況感指数を見ることによって、企業は家計(消費者)の景況感(経済マインド)を、より早くより正確に知ることができるようになる。こうした情報は、自社にとって最適な経営戦略の立案や、マーケティング戦略の実施に役立つはずである。また、政策当局においても、従来の数量的な経済変数だけではなく、テキストデータによる新たな指標に基づき、柔軟かつ精緻な情勢判断を行い、政策決定に生かすことが可能になるであろう。
<研究会の活動>
研究会
・2018年9月 第1回研究会開催(予定)
・2018年11月 第2回研究会開催(予定)
・2019年3月 第3回研究会開催(予定)
研究プロジェクト
2018-07-30
- 2018年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 高林 喜久生 関西学院大学経済学部教授
研究目的
企業活動のグローバル化に伴い、地域経済を取り巻く状況は大きく変化している。中でも関西では、インバウンド需要の増加による交流人口の拡大や、交通網整備を始めとするインフラの充実など、地域を越えた財・サービスの流動が近年増加しており、地域間かつ広域で経済活動を把握することが重要となっている。
APIRでは、前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでおり、その成果は「2005年 関西地域間産業連関表」として公表されている。しかし、それから10年以上が経過し、当時と比べて関西の経済構造は大きく変化している。そこで、本プロジェクトでは、関西経済の構造分析や観光消費による経済波及効果分析のために、APIRが持つ「関西地域間産業連関表」の更新・拡張を行うことを目的として実施する。
また関西全体を一地域として捉えた近畿経済産業局の「近畿地域産業連関表」が2005年表を最後に作成中止となったため、本表が関西地域を対象とする唯一の本格的な2011年産業連関表となり、その意義はさらに大きくなるものと考えられる。
研究内容
関西経済の構造分析や観光消費による経済波及効果分析のために、APIRが持つ「関西地域間産業連関表」を2011年版へと更新・拡張を行う。具体的には、関西の各府県の「2011年地域産業連関表」及び総務省「2011年全国産業連関表」の統合・調整を行う。その作業過程において必要な移出入等に関する情報について、APIRマクロ研等のネットワークを活用して各府県統計担当者へのヒアリングを行う。
対象となる府県は従来の関西2府4県(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)に加えて、福井県、三重県、徳島県、鳥取県の4県を合わせた2府8県をベースとする。これにより、関西広域連合(2府6県)、関西観光本部(2府8県)など、関西を広域で捉えた際の経済波及効果等の分析を行うことが可能となる。
産業連関表の作成においては、企業間の取引状況の把握と同時に、消費者がどこで消費行動を行っているか把握することが重要である。そのため、既存統計に加えて、関西域内外の消費者を対象としたWEBアンケート調査を実施することで、より実態に即した産業連関表を作成する。
リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
下山 朗 奈良県立大学地域創造学部教授
入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授
木下祐輔 APIR調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
成果物である「2011年 関西地域間産業連関表」は、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、各リサーチャーがそれぞれの持つネットワークを通じて、2011年表の紹介や分析成果を報告する。
産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行ううえでの重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状及び特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できよう。
<研究会の活動>
研究会
・2018年7-10月 第1回研究会開催(予定)
・2018年11-12月 第2回研究会開催(予定)
・2019年2-3月 第3回研究会開催(予定)