研究プロジェクト 2016年度

Research Projects 2016

アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア経済統合

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

ABSTRACT

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リサーチリーダー

上席研究員 木村福成 慶應義塾大学経済学部教授

 

研究目的

2015年10月の環太平洋連携協定(TPP)大筋合意は、東アジア諸国にも大きな影響を与えつつある。TPPが早期に批准・発効するかどうかについては、米議会の動向等、未だに不確定要素が存在する。しかし、協定文ドラフトが公表された今、TPP交渉参加国は対応策を練り、周辺国もTPPに参加するか否かについて真剣な検討を始めている。日EU経済連携協定の交渉は加速されつつあるが、一方で東アジア経済連携協定(RCEP)や日中韓FTAの交渉はモメンタムを失いつつあるように見える。

このような新しいメガFTAsの展開のもと、東アジア諸国の経済はどのように変わっていくのか、またそれは日本あるいは関西の企業にとってどのような変化をもたらすのかは、緊急に検討すべき課題である。本プロジェクトでは、官民学のステークホルダーに対し直近の情報を提供しつつ、自由化と国際ルール作りにつき、経済と国際法の両面から分析を加えていく。

 

研究内容

第2年度となる2016年度は、TPPがASEANおよび東アジアの経済社会に与えうる影響、それに伴うASEAN経済統合やRCEPの変容、それらを踏まえての日本・関西企業のビジネスチャンスに焦点を絞り、国際政治学、国際経済法、国際貿易論、アジア経済論の気鋭の研究者を集め、議論を深めていく。

 

リサーチャー

阿部 顕三 大阪大学大学院経済学研究科教授
春日 尚雄 福井県立大学地域経済研究所教授
川島富士雄 神戸大学大学院法学研究科教授
清水 一史 九州大学経済学研究院教授
陳  永峰 東海大学副教授・日本地域研究センター長
湯川  拓 大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授

 

<研究会の活動>

研究会

2016年  7月  4日  第1回研究会開催
2016年  8月31日  第2回オープン研究会開催
2016年12月13日  第3回オープン研究会開催

Research Leader

木村 福成

木村 福成

慶應義塾大学 シニア教授 / 日本貿易振興機構アジア経済研究所所長 / 東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)シニアリサーチフェロー

アジアの成長に資する開発金融

研究プロジェクト

2016-06-30

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リサーチリーダー

上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

研究目的

2015年における新興国(主要30カ国)への資本流入は、対前年比で半減し、新興国から海外への資本流出も減少するが、ネットでは5,400億ドルの流出超過となる見通しである(IIF)。流出超は1988年以来27年ぶりである。中国経済の減速を背景に、国別では中国が4,775億㌦と過去最大の流出超過、アジアでは韓国743億㌦、マレーシア334億㌦、タイ216億㌦と続いている。新興国の外貨準備高は、過去15年間で11倍に増え、1997年の通貨危機のようなリスクは低いものの、海外からの資金を引き付け、それを原資として工業品の輸出で稼ぐ成長モデルは転換点を迎えている。こうした現状を背景に、本研究では、アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方を提示する。

研究内容

アジアの開発金融(アジアの成長・開発目的に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。(1)アジア通貨危機、世界金融危機、中国経済の減速を画期として、「アジアの開発金融」がどのような影響を受けたか、(2)その課題をどのように克服しながら現在に至っているか、(3)「海外からの資金流入・海外への工業品輸出」に代わる将来のアジアの成長・開発モデルはどのようなものか。また、アジアインフラ投資銀行とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびタイに現地調査を行う予定である。

具体的には以下のようなテーマを取り上げ、各テーマについて1-2名のリサーチャーが担当。研究者のみならず、官民の現場で開発金融に携わっている実務家を招聘し、研究会やセミナーを開催する予定である。(1)アジア太平洋の資金フローの変化(主として研究者)、(2)東南アジアの銀行部門(アジアの民間銀行の在日支店、JBIC審査部)、(3)アジアのインフラ開発とアジアインフラ投資銀行(AIIB)の役割(JICA、中国関係の実務家)、(4)アジアにおける国際協力とABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)の現状(財務省、JBIC)、(5)マイクロ・ファイナンス(主として研究者)、(6)人民元改革とアジアの金融統合。

統括

林 敏彦 研究統括

リサーチャー
三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授
青木浩治 甲南大学 経済学部教授
北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長

研究協力者
高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授
榊 茂樹 野村アセットマネジメント 運用調査本部チーフ・ストラテジスト

リサーチアシスタント
芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

期待される成果と社会還元のイメージ

アジアにおける資本フローのパネルデータ(時系列とクロスセクションを統合したデータ)。アジアの民間企業・銀行部門の資金調達に関するパネルデータ。アジアのインフラ開発に関する州・県レベルのパネルデータ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方に関する報告書。
政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け。公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ。

<研究会の活動>

研究会
・2016年6月20日   第1回研究会開催  プレゼン資料はこちら
・2016年8月1日  第2回研究会開催?  プレゼン資料はこちら
・2016年10月17日  第3回研究会開催
・2016年11月21日  第4回研究会開催
・2017年2月13日  第5回研究会開催

Research Leader

岩本 武和

岩本 武和

西南学院大学教授

中所得国の新展開

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

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リサーチリーダー

主席研究員 後藤健太 関西大学教授

 

研究目的

戦後の目覚ましい経済成長を通じ、アジアは世界経済の中で着実に存在感を高め、20世紀の終わりには「世界の工場」としてその地位を確立した。しかし21世紀に入ってからのアジアの隆盛を顧みたとき、今日のアジアが世界の工業製品のサプライヤーとしての立場から、消費と投資の側面を中心に、より重要なアクターへと変貌する萌芽的局面に差し掛かっているかのように見える。すでに所得水準で日本を越えてしまったシンガポールについて、そのポジションがアジアはもとより世界の中でも重要となった点はこれまでも言及されてきたことではあるが、中国をはじめマレーシア、タイ、インドネシアやベトナムなどといった「中所得国」がアジアで次々と台頭したことで、アジア域内の経済・ビジネス関係のあり方も一気に多極化・多様化した。こうした変化は、日本経済と企業にとって重要な意味を持つと思われる。つまり、これまで日本が一定のリーダーシップを発揮しながらアジアの国々と関わることで域内の発展を形作ることができた時代から、こうした「中所得国」の出現により、アジア域内でのこれまでのキャッチアップ型の序列、あるいは階層に準じた発展パターンに従わない、多様な発展ダイナミズムが起こりつつあることを示しているのではないだろうか。

こうしたアジア観を前に、ますます深化する日本経済とアジアとの関係の多極化・多様化に注目し、まずはその現状を関西企業の立場から整理して理解することを試みる。その際、アジアの中でもダイナミックな展開を見せる、上述の「中所得国」に焦点を当てる。また、本研究案件ではさらに関西・アジア中所得国の双方にとってwin-winとなるような発展の可能性を、企業の戦略的な視点およびそれらを取り巻く制度的・環境的な視点から考察する。

 

研究内容

まずはアウトバウンド・インバウンドの双方で、現在どのような関係が日本経済・関西企業とアジア中所得国との間で展開しているのかを広くレビュー・分析し、可能であれば何らかの基準・方法で類型化する。

具体的な研究方法としてはマクロレベルのデータの活用や先行研究の整理も必要に応じて実施するが、特に現在関西でアジアとの関わりを持っている企業や、これから持とうとする企業などへの個別インタビュー調査やフォーカス・グループ・ディスカッションなどを通じて、現場レベルの情報を汲み上げることで課題や可能性を考察する予定である。

調査対象としては、関西在住の企業を中心とするが、場合によっては東南アジアへの出張調査もありうる(第1回目の研究会で検討予定)。

東南アジアをはじめ、世界の中所得国についてはこれまで「中所得の罠」といったようなネガティブな観点からとらえたものが多かったが、本研究ではこれらの国々の展開可能性を日本(関西)経済との関係の中でポジティブにとらえなおしてみたい

 

統括

林 敏彦 APIR研究統括

リサーチャー

小井川広志 関西大学 商学部教授)

夏田 郁 立命館アジア太平洋大学 国際経営学部准教授)

 

期待される成果と社会還元のイメージ

関西経済と中所得国東南アジアとの間で、アウトバウンド・インバウンドの双方でどのような関係が展開しているのかを広くレビュー・分析し、可能であれば何らかの基準・方法で類型化した概説的なレポートの作成を目指す。

今後の東南アジアとのビジネス関係の構築の際の参考資料となるようにする。

Research Leader

後藤 健太

後藤 健太

関西大学 経済学部 教授

アジアの知日産業人材との戦略的ネットワーク構築

研究プロジェクト

2016-06-30

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リサーチリーダー

上席研究員 大野 泉 政策研究大学院大学教授

 

研究目的

日本が今までアジア諸国への産業開発協力(政府開発援助(ODA)、官民連携など)を通じて形成してきた知日産業人材のネットワークを強化し、効果的に活用する戦略を検討し、提言をとりまとめることを目的とする。加えて、今後も知日産業人材を継続的に創出していく方策を検討する。これにより、新時代を迎えた日本企業の海外展開ニーズに応え、アジアとの共創パートナーシップの推進に貢献する。

研究内容

研究会、国内の経済協力機関(国、自治体、NPOなど)や企業からのヒアリング、アジアの知日産業人材からのヒアリング(招聘予定)、データ収集分析・文献調査を組み合わせて、以下について調査を行う。

・ 日本企業による海外直接投資の時代的変遷、およびこれに対応した日本のアジア諸国に対する産業開発協力や官民連携の取組(特に、1980年代のプラザ合意以降)

・ 今までの産業開発協力を通じて形成されたアジア諸国の知日産業人材・組織の基盤に関する検討・整理(JICA・HIDA・PREX・自治体・関経連等の取組についての事例分析、データ整理、関西の経験など)

・ 日本企業の最近の海外展開ニーズやアジア諸国の課題をふまえ、求められる知日産業人材のタイプに関する考察(類型化)、および企業や経済協力機関が直面している課題の検討・分析

・ アジア諸国の知日産業人材とのネットワーク強化、効果的活用に向けた戦略と具体策の提言

?研究会は、関経連、およびODAや経済協力を通じてアジア等の新興国・途上国の産業人材育成に取り組んでいる国・自治体・NPOなどの諸機関の協力を得て行う。さらに、アジア諸国(1~2ヵ国)から知日人材を招聘して研究会と公開フォーラムを開催し、アジアの視点から日本との産業人材ネットワーク強化への期待、今後取り組むべき課題等について意見交換する機会をつくる。

統括

林 敏彦 APIR研究統括

リサーチャー

大野健一 政策研究大学院大学 教授

大西靖典 国際協力機構(JICA) 関西所長

小川和久 海外産業人材育成協会(HIDA) 関西研修センター館長

瀬戸口恵美子 太平洋人材交流センター(PREX) 国際交流部長

小野知哉 神戸国際協力交流センター(KIC) 総務部長兼事業部長

濱田浩一 関西経済連合会? 国際部副参与

研究協力者

領家 誠 大阪府商工労働部

森 純一 英国カーディフ大学博士課程、前JICA専門家

近畿通商産業局 通商部国際事業課

 

期待される成果と社会還元のイメージ

アジアの知日産業人材・組織に関する情報を収集・整理する。最近の日本企業の海外展開の動向をふまえ、求められる知日産業人材のタイプを類型化する。アジア諸国の知日産業人材とのネットワーク強化、その効果的活用に向けて、産官学連携で取り組んでいくための戦略を提示する。

2016年2月の「関西財界セミナー」第3分科会の議論(の一部)のフォローアップとして、関経連や関西経済同友会、関心ある企業による次年度以降の取組の参考に資する。また、日本企業のアジア・ビジネス拡大において鍵となる、現地・国内の知日産業人材・組織に関する情報を提供する。JICA・HIDA・PREX・自治体・関経連等による産業人材育成(研修等)事業のさらなる改善の可能性、および組織横断的な連携の方向性を検討する材料を提供する。

関連リンク

GRIPS共同研究ページはこちら

Research Leader

大野 泉

大野 泉

政策研究大学院大学 名誉教授、客員教授 / 国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所 シニアリサーチアドバイザー

災害復興の総合政策的研究

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

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リサーチリーダー

研究員  林 万平

 

研究目的

地震、台風、洪水を始めとする自然災害が近年多発するアジア地域において、総合政策としての復興政策の重要性は高まってきていることを背景に、日本、フィリピン、タイ、インドネシアにおける災害後の復興政策について、経済的、行政的、市民的視点も含めて、求められる政策対応について考察する。

研究内容

過去に東日本大震災、フィリピン台風「ハイアン」、タイ洪水の分析を行ってきている(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)。今年度はインドネシアの現地調査を行う。

海外学会参加を通じて、調査研究によって得た分析結果を、海外学会で発表し、ディスカッションを通じて知見を深める。

過年度の研究報告書(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)にて行った2011年のタイ洪水、東日本大震災、2013年フィリピン台風「ハイアン」による被害とその後の復興についての分析を、最新の情報も加えた上で、再度整理する。

以上の分析を比較し、各大災害の特性を踏まえつつ復興における問題点や課題について整理し、政策提言を行う。また、各分析結果をもとに本の出版に向けた準備を行う。

統括

林 敏彦 APIR研究統括

リサーチャー

Jose Tiusonco APIRインターン

Mizan Bustanul Fuady Bisri APIRインターン

 

期待される成果と社会還元のイメージ

東日本大震災、タイ洪水、ヨランダ台風、インドネシア地震・津波災害による被害やその復興における問題や課題等についての分析を元に、報告書を執筆し公表する。政府・自治体は今後の災害復興や将来の災害対策に向けた参考にすることができる。市民・企業は、地域における防災体制の構築の上で参考にすることができる。

Research Leader

林 万平
国際経済統合とベトナムの銀行部門:健全なシステムへの道

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

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リサーチリーダー

研究員 CAO Thi Khanh NGUYET

 

研究目的

経済改革と国際経済への統合はベトナムの銀行部門に市場の多様化、国内銀行の効率性向上、経営ノウハウの習得、法制度の整備等、様々なメリットをもたらしている。例えば、外資保有の国内銀行では、重要なポストを海外の専門家が担当することがあり、国内銀行に外資銀行のノウハウが数多く移転されている。また、近代的な技術のベトナムへの普及という点でも、ベトナム経済に外資銀行が果たした役割は大きいだろう。しかし一方で、資本と経験の豊富な外資系銀行は、国内銀行に激しい競争を強いるという点も重要である。その結果、2006年~2013年において、外資系銀行が31行から53行まで増加したのに対し、ベトナム商業銀行は37行から33行に減少してきた。

以上の背景を踏まえ、国際経済統合により、ベトナム銀行へもたらされるインパクトは議論、研究されるべきと考える。また、新時代に入り、健全な銀行システムに向かい、国内銀行は外資系銀行の資本、技術、経験を活用し、国内銀行の再編成、財政力の向上、銀行サービスの提供体制の強化が求められており、これに資する政策の提案も重要な課題である。

 

研究内容

文献研究及び実証分析(データ資源:ベトナム政府が公表したデータセット、金融機関の公開年間レポート等)。

ベトナムの銀行システムの発展を評価するために、様々な資料に基づいて、設立された時から現在までの成長段階を分け、文献研究の他、各銀行のデータに基づく実証分析も行う。その他、ベトナムと同様、移行期経済を経験した中国と比較することで、共通点や相違点を明らかにする。

統括

林 敏彦 APIR研究統括

研究アドバイザー

藤原賢哉 神戸大学教授

家森信善 神戸大学教授

地主敏樹 神戸大学教授

森 純一 京都大学名誉教授・ダナン大学経済大学客員教授

 

期待される成果と社会還元のイメージ

研究成果として、論文を執筆する。ホームページでの公表、学会報告、ジャーナル投稿、ベトナム語翻をベトナム国内ジャーナルに投稿することを通じて、関心のある研究者等にベトナム金融市場について理解した上で、ベトナム金融市場が健全性を向上する取り組むべき政策を議論してもらう。

Research Leader

CAO THI KHANH NGUYET
関西における健康投資の経済評価

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

ABSTRACT

リサーチリーダー

研究員 木下祐輔

 

研究目的

近年、高齢化の進展や医療ニーズの多様化を受け、健康・医療産業は大きく成長している。疾病は当事者だけでなく、彼らを支える家族や友人、勤める職場や地域社会にまで幅広い影響を与え、大きな経済・社会的損失をもたらす。そのため、疾病の治療や予防に対する関心が年々高まっている。

2015年度の調査では、関西地域を対象に医療サービスの利用者である患者数や医療費の将来推計を行うことで医療需要の見通しを示すとともに、予防活動を通じた健康寿命の増進が医療費の抑制と、新たな雇用創出にもつながることを指摘した。

しかし、医療費は疾病がもたらす損失の一部でしかない。なぜなら疾病は、疾患の治療にかかる直接的な費用(入院・外来患者に要する治療費、薬剤費用等)だけでなく、死亡によって喪失した将来所得、治療のための通院や労働損失や家族の支え(インフォーマルケア)といった間接的な損失も生じさせるためである。

そのため、2016年度調査では、関西を対象に疾病がもたらす間接費用に着目し、「疾病コスト分析(Cost of Illness)」の考え方に基づき、損失額の推計を行う。その際、推計するだけでなく、関西における特徴についても分析を行いたいと考えている。

 

研究内容

2016年度調査は「疾病コスト分析(Cost of Illness)」の考え方に基づき、損失額の推計を行う。

疾病コストは大きく、「直接費用(Direct cost):疾患の治療にかかる費用(入院・外来患者に要する治療費、薬剤費用、自立支援法関連サービス等)」と間接費用(Indirect Cost)の2つに分けられる。

特に、間接費用については、疾患で早期に死亡したことによって喪失した将来所得(死亡費用(Mortality Cost))と疾病の治療をするための通院、あるいは病気の状態によって発生する労働損失(罹病費用(Morbidity Cost))に分けられる。また、罹患費用は、企業に勤める人の心身の不調による欠勤(Absenteeism)と出勤しているにも関わらず心身の不調により頭や体が働かず、生産性が低下してしまう状況(Presenteeism)に分けられる。米国の研究では、病気による経済損失の71%が生産性の低下が占め、欠勤の29%よりも大きな損失をもたらすため、問題であることが指摘されている。

具体的な調査手法としては、以下の4つを想定している。

(1)疾病コスト分析における文献調査

分析の基本となる疾病コスト分析について、間接費用を中心に推計を行っている先行研究に着目する。具体的な推計方法の確認が目的。

(2)アンケート調査の実施

疾病がもたらす労働損失について、アンケート調査を実施することで、病欠や病気によって正常に頭が働かなかった時間などを調査する。アンケート調査項目は、在日米国商工会議所(ACCJ)が2011年に実施した「疾病の予防、早期発見及び経済的負担に関する意識調査」に基づき、検討する。

(3)疾病コストの推計

(1)(2)の調査結果に基づき、関西における疾病がもたらす間接費用の推計を行う。対象となる間接費用は、死亡費用と罹患費用(Absenteeism, Presenteeism)を想定している。また、2015年度に実施した医療費の推計結果を用いることで、関西における疾病コストの全体額を推計する。また、間接費用が直接費用の何倍になるかといった点についても検討したい。

(4)健康経営を実施している企業へのインタビュー(仮)

現在、国は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業に着目し、「健康経営を行う企業」として注目している。関西地域で健康経営に取り組む企業を対象に、健康経営を導入した経緯や効果などについてインタビューすることで、最終的な提言へと結び付けたいと考えている。

上記に加え、昨年に引き続き既存の提言や報告書のサーベイを行うとともに、医療関係学会・各種セミナーへの参加、学識者へのヒアリングも必要に応じて実施する。

 

統括

稲田義久 APIR数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授

オブザーバー

加藤久和 明治大学教授

島 章弘 APIRシニアプロデューサー

 

期待される成果と社会還元のイメージ

今後は、医療ニーズの受け皿を病院から在宅へと移す施策も行われるなど、地域が社会保障の担い手となることが期待されている。地域単位での間接費用を推計した研究はこれまでになく、保健行政に取り組む自治体職員の参考になると考えられる。健康・医療関連企業にとっても疾病がもたらす費用に関する定量的な数値を公表することで、事業計画や市場規模見通し等にも利用可能できよう。また、健康経営については、現在東京証券取引所と共同で、健康経営に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定し公表しており、市場からの関心も高い。

Research Leader

木下 祐輔

木下 祐輔

APIR研究員

人口減少下における関西の成長戦略

ツーリズム先進地域・関西をめざして

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

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研究の目的

ツーリズム先進諸国との比較・分析を踏まえ、観光資源豊富な関西地域にとってツーリズムが重要な成長分野であることを ”産業”、”雇用機会”、”文化発信”等の各視点から客観的に捉えると共に、今後基幹産業として育成していく上での様々な課題をハード・ソフト両面から総合的に検討・把握した上で、関西がツーリズム先進地域として今後さらに飛躍していくための長期的な観光投資戦略のあり方に関する提言をめざす。

Research Leader

稲田 義久

稲田 義久

数量経済分析センター センター長・甲南大学名誉教授

Researcher

  • 林 敏彦

    アドバイザー

都市インフラとしての食糧供給システム

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

ABSTRACT

リサーチリーダー

研究員 James Brady

 

研究目的

世界の人口増に伴い、日本やアジア等では食糧の安全保障が課題となりつつあること、食糧生産物の輸送時に発生する環境汚染に伴うコスト問題により“地産地消”がより求められていること、農業技術開発の進展が生産高の拡大や新たな生産手法開発につながり都市部における農業を促進する側面もあること等を背景に、『都市インフラとしての食糧供給システム』について考察し、それを改善する方法を探る。

Research Leader

James Brady
関西における女性就業率の拡大に向けた提言

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

ABSTRACT

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リサーチリーダー

主席研究員 前田正子 甲南大学教授

 

研究目的

関西では、滋賀県と京都府以外の府県で女性の就業率が全国平均より低く、奈良県・大阪府・兵庫県でワースト3を占めている。関西の女性の就業率が全国平均まで高まれば、就業者数約25万人増加し、関西のGRPは約1.5兆円(約1.8%)増加すると、2014年の関西経済白書で分析した。さらに、アベノミクスの成長戦略では、「女性活躍推進」が目標として掲げられている。

しかし2015年度の本研究会での分析によると、関西は保守的な意識が強く、女性の就業率が全国的に見ても低い一方で、未婚率が高く出生率も低い状況にある。関西から企業の流出とともに正規雇用の場が失われており、大卒女性は関西から流出し、主に首都圏に移動している。さらに、新卒時に正規の職に就けなかった女性は、著しく就業意欲が低く、支援策が講じにくい状況にある。他方で、一度でも正規就労したものの結婚・出産でやむなく離職した女性たちは就業意欲も能力も高い傾向にあり、支援のターゲットとして効果的である。女性の置かれている状況を丁寧に把握し、それぞれに対応する支援策や対策を講じることが必要だと指摘しており、こうした昨年度の分析と提案を深掘りし、地域ごとの状況・意識の違いを分析し、地域別・状況別にみた効果的な対応策を検討する。

 

研究内容

意識調査:インタビュー調査を、関西内の複数県の女性を対象に行い、地域ごとの違いを比較するとともに、必要な支援策について深掘りする。

データ分析:国勢調査の詳細集計や就業構造基本調査を用い、配偶状態・就業状態などについて分析する。

大阪府(都市部、若年無業女性が多い)、奈良県(周辺部、既婚無業女性が多い)、滋賀県(女性就業率は高いが管理職比率が低い)を取り出して分析することで、日本全体で応用することができる。状況別に課題と対応策を整理し、読者が自分の地域・会社に当てはまるところから取組みを考えることができる。

 

リサーチャー

長町理恵子 日本経済研究センター 大阪支所主任研究員

 

オブザーバー

藤原由美 大阪府 商工労働部女性の就業推進チーム課長補佐

佐野由美 21世紀職業財団 関西事務所長

梅村その子 関西経済連合会 労働政策部ダイバーシティ担当部長

九後順子 阪急電鉄株式会社 経営企画部課長

高木和彦 滋賀県 商工観光労働部女性活躍推進課課長補佐

夏原二朗 奈良県 健康福祉部こども・女性局女性活躍推進課課長補佐

幡 恵子 奈良県 健康福祉部こども・女性局女性活躍推進係係長

期待される成果と社会還元のイメージ

提案を含む報告書をまとめ、HPで公開し、成果報告会を行い、広く発信する。対応策は、昨年度の関西の女性の分類に基づき、地域ごとの課題や意識とクロスさせて提案する。各読者はそれぞれ、表の分類により自社や各自の地域で当てはまるところを見て、それぞれの取組に活かす。

各自治体の政策立案、各企業・団体での女性活躍推進のための計画・目標策定や女性活躍推進の必要性の理解(男性も含めて)、教育機関でのキャリア教育やインターンシップ、就活指導などの際の参考となる。特に、関西での女性の長期就業に関する意識形成や、人手不足の企業と意欲ある女性のマッチング促進に資する。

Research Leader

前田 正子

前田 正子

甲南大学 マネジメント創造学部 教授

関西の大学のあり方

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

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座長

上席研究員 小林傳司 大阪大学理事・副学長

 

研究目的

国・文部科学省による大学改革では、効率性が重視され、日本の競争力強化にとって重要な「教育」という基盤が揺らぎかねない状態である。また、大学の置かれている厳しい状況や特殊な事情・制約は、一般には広く認識されていない。近視眼的な成果を求める教育でなく、将来を見据えた大学のあり方について、企業人の意見も踏まえ、大学同士が直接意見を交わして解決策を探る。

少子化や厳しい財政状況も踏まえたうえで、大学が抱える課題に対し、企業人の意見も取り入れた上で自主的に議論し、解決策を探る。大学同士で直接意見を交わして連携を進めるきっかけとする。関西の大学のブランド力や競争力を高め、優秀な人材を輩出するための提案を報告書にまとめる。報告書はHPにて公開する。研究成果は、フォーラムやシンポジウムを通じてマスコミや経済界に広く発信する。

 

研究内容

研究会を開催し、各大学の特徴や問題意識、強化または取り組むべき領域・テーマ、連携にむけた課題などを共有し、提案にまとめる。委員の意見を集約することを基本とする。

大学同士が直接意見を交わすことで、具体的な議論を進める。かつ、企業人も加わり、中立的シンクタンクであるAPIRから発信することで、経済界や自治体などが大学のおかれている現状を理解し、産学(官)連携が深まる、また企業の視点も入れた提案をまとめることにより、関西全体として、魅力的な地域づくりができる。

委員

北野正雄 京都大学 理事・副学長

内田一徳 神戸大学 理事・副学長

木谷晋市 関西大学 副学長

長峯純一 関西学院大学 副学長

松原豊彦 立命館大学 理事・副学長

法橋 誠 鳥取大学 理事・副学長

畑 正夫 兵庫県立大学 地域創造機構教授

寺岡 英男 福井大学 国際地域学部学部長

森口 佳樹 和歌山大学 副学長

 

期待される成果と社会還元のイメージ

議論の結果を報告書にまとめるとともに、オープンの報告会を年度内に1回開催し、発信する。

企業や自治体と大学との連携・共同研究などにつなげる。

Research Leader

小林 傳司

小林 傳司

大阪大学理事・副学長

都市におけるIoTの活用

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

ABSTRACT

リサーチリーダー

上席研究員 下條真司 大阪大学サイバーメディアセンター教授

 

研究目的

IoTという言葉が、流行のように語られているが、実際のところ何ができて、何がかわるのかが具体的でないことが多い。また、IoTはシステムのみならず社会変革を伴うものであり、広範囲な議論が必要である。

研究内容

大学・研究機関の研究者、企業関係者、行政機関等をメンバーとするオープンな研究チームを組織し、定期的に研究会を開催することで以下のテーマについて議論し、活用の方向性や課題、有り方などについてまとめる。

1)未来の社会、生活とIoTとの関連

2)健康と街づくりとIoT

3)エネルギーとIoT

4)交通とIoT

5)安全・安心な街づくりとIoT

6)生産工場、ものづくりとIoT

7)コミュニティとIoT

IoTが想定する社会やシステムを抽象論ではなく、具体的なモデルを想定して議論することで、実証実験へとつながる具体的な提案を行う。また参加者をオープンにすることで、事業者の参画を促し、関西活性化への一助としたい。

 

リサーチャー

松岡茂登 大阪大学情報科学研究科教授

長嶋雲兵 公益財団法人計算科学振興財団 チーフコーディネーター兼研究部門長

西川武志 公益財団法人計算科学振興財団 共用専門員兼主任研究員

辻ゆかり 西日本電信電話株式会社 研究開発センタ所長

 

期待される成果と社会還元のイメージ

具体的なモデルを想定した、Smart Cityの具体的イメージと必要なインフラについての指針を提案し、報告書にまとめる。

スマートシティの街づくりを進める自治体や、街づくりに参画する企業、センサー等の開発企業などに対し参考となる情報を提供する。また、IOTに関連する規格等の標準化の指針づくりに参考にもなる。

Research Leader

下條 真司

下條 真司

青森大学 ソフトウェア情報学部 教授

大阪にTPP本部創設の必要性・可能性についての学際的共同研究

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

ABSTRACT

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リサーチリーダー

上席研究員 ロバート・D・エルドリッヂ エルドリッヂ研究所代表

 

研究目的

APIRは、Policy Brief №1(2015年10月14日)で『大阪にTPP本部創設を』という意欲的な政策提言を発表した。APIRは環太平洋経済連携協定(TPP)の本部創設の必要性に加え、創設を前提とした、大阪への誘致活動を積極的に行っている。

 

研究内容

Policy Brief『大阪にTPP本部創設を』の提言を踏まえ、TPP本部の必要性や大阪での本部創設の可能性について学際的、国際的に調査を行い、国際シンポジウム、ワークショップ、研究会等の意見交換の場を通じ、議論を深める。一年間の研究を通じて、2017年3月末を目処にとりまとめ、その後に向けた提言を行う。

 

リサーチャー

斎藤 治 元読売新聞大阪本社論説・調査研究室主任研究員師

土居亜希子 公益財団法人 地球環境センター国際協力課 統括主任

 

期待される成果と社会還元のイメージ

国際シンポジウムやワークショップを開催予定。また、研究会もオブザーバー参加できる形にし、参加する企業や経済団体にとって、最新情報や研究成果を直接聞け、ゲスト講師との交流の機会を確保したい。

発表された報告論文や提言が、日本や関西地域で活躍している企業、経済団体にとって、今後の企業戦略や社会貢献に資することを期待している。

Research Leader

ELDRIDGE, Robert D.

ELDRIDGE, Robert D.

President, The Eldridge Thinktank

経済予測・分析、シミュレーション

経済フォーキャスト

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

ABSTRACT

リサーチリーダー

数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

 

研究目的

企業や政策主体(中央政府及び地方政府)にとって、正確で迅速な景気診断が、各主体の意思決定や政策判断にとって決定的に重要となる。本プロジェクトは、日本経済及び関西経済の高頻度の定点観測とともに、超短期予測モデル(CQM)や四半期マクロ計量モデルを用いてタイムリーで正確な短期経済見通しの提供に加え、刻一刻変化する経済に対する適切なコメントならびに政策評価を行うことを意図している。

 

研究内容

1. 月次レポートの作成

経済の月次見通しに加え、関西経済の月次レポート(Kansai Economic Insight Monthly)を所内研究員の協力を経て毎月中旬以降に作成している。また翌月の初旬には関経連向けに『関西経済レポート』を提出している。この作業を通して所内エコノミストの分析力の向上を図っている。

2. 日本経済予測・関西経済予測の四半期レポートの作成

超短期予測の足下の正確な予測成果を反映し、QE(四半期GDP一次速報値)発表の1週間後に日本経済の四半期予測とともに関西経済の年次予測の四半期改訂が発表される。予測結果や予測改訂は、『景気分析と予測』と『Kansai Economic Insight Quarterly』として発表され、プレスリリリースされる。

3. 府県別GRP早期推計と超短期予測

各府県の県民経済計算確報値が発表され次第、5月予測では関西2府4県経済の成長率予測がアップデートされる。11月には、当該年度の月次指標を基にして超短期予測を行なう。

4. 関西DSGEモデルの開発と関西GRP四半期QEデータベースの作成

DSGEモデルの特性を活かし、地域固有の構造的課題の抽出や各種政策シミュレーションを行う。その際、DSGEモデルの実用にあたって考えられる課題に十分配慮する。またこのとき、関西の四半期データが必要になると思われるが、足りないところは線形補間や推定によって補い、必要に応じて新しい関西データの指標を作成する。

また8月予測では関西2府4県経済の成長率予測がトッピクスとして発表される。これらの成果は関西各府県の早期推計として注目されている。また11月予測を受けて景気討論会を企画している。

 

リサーチャー

入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授(早期推計、関西モデル、DSGEとデータベース)

小川 亮 大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部准教授(早期推計、関西モデル)

下田 充 日本アプライドリサーチ主任研究員(日本モデル、早期推計、関西モデル)

松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科 教授(DSGEとデータベース)

岡野光洋 大阪学院大学講師(DSGEとデータベース)

井田大輔 桃山学院大学経済学部 准教授(DSGEとデータベース)

 

期待される成果と社会還元のイメージ

研究成果はHP上で高頻度に提供。プレスリリースを行うことでマスコミに周知。一部成果はマクロモデル研究会やその他学会でも報告予定である。

モデルを用いた関西経済の経済予測・構造分析の結果を客観的かつ定量的に示すことで、足元の経済情勢判断の材料として用いることが可能であるとともに、企業の経営戦略や自治体の政策形成を構築するうえでの重要な指針となり、関西経済の現状および構造的特徴を内外において説明する際の貴重な資料となりうる。

Research Leader

稲田 義久

稲田 義久

数量経済分析センター センター長・甲南大学名誉教授

関西独自の景気指標の開発と応用

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

ABSTRACT

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リサーチリーダー

主席研究員 豊原法彦 関西学院大学経済学部教授

 

研究目的

関西地域では、大阪府、兵庫県、和歌山県などが公表している景気動向指数(先行指数、一致指数、遅行指数)に基づき、景気の山と谷を決定している。その目的は景気の動向を判断することで現状を把握し、さらに将来を予測することで経済的ショックの緩和することにある。 同様の目的にために用いられる指標の1つにOECDが開発しているCLI(Composite Leading Indicators)があり、その特徴は景気に先行して変動するという点にあり、OECD各国や地域で用いられている。

利用するデータは基本的には月次データであり、各府県や機関が公表しているものを用いるので、担当部局のヒアリングを行うことで、各府県で利用可能なCLIの試算値を企業はじめ各公共機関などに提供したい。

 

研究内容

実際の景気変動よりも数か月先に変化する指標を作成することで、景気の予測が可能となる。とくに公表されたデータを用いることから、再現性も高く景気動向指数を公表していない地域においても同じ枠組みで対応することが可能となる。

いったん、ソフトウエアが開発でき、採用系列が確定できれば、あとは毎月データの更新のみで指数が計算できるようにシステムを運用することができる。

2015年度分析では関西地区を対象に段ボール生産などを用いて景気に先行して変化する指標を作成し、経済状況を予想できることが明らかとなった。それを踏まえて各府県で公表される月次データのうち、鉱工業生産指数(大阪府は工業生産指数)や雇用関係の指標、段ボールの近畿地区生産高などの項目を組み合わせることでCLIを試算する。

そして、何カ月数先行したCLI試算値とCI一致指数間における相関係数やその試算値から景気の転換点を求め、大阪府、兵庫県などが設定している景気基準日付と比較して、両者間で景気の拡大または後退局面の一致度合い(concordance指数)を計算することで採用系列を決める。

 

統括

稲田義久 APIR数量経済分析センター センター長

リサーチャー

根岸 紳 関西学院大学経済学部教授

高林喜久生 関西学院大学経済学部教授

入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授

オブザーバー

芦谷恒憲 兵庫県企画県民部統計課参事

 

期待される成果と社会還元のイメージ

ある程度データがたまった段階で、試作CLIを公開する

試作であることを明記したうえで、関学内またはAPIRのサーバで公開することにより、情報提供するとともに、そこからのフィードバックを受けて改善したい。

Research Leader

豊原 法彦

豊原 法彦

関西学院大学 経済学部 教授

交通インフラ整備の経済インパクト分析

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

ABSTRACT

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リサーチリーダー

主任研究員 後藤孝夫 近畿大学教授

 

研究目的

交通ネットワーク整備に関する研究・分析は、国内外を問わず、これまで数多く実施されてきた。そのなかには、いわゆる従来型の研究課題として、「新規交通ネットワークの整備効果あるいは既存の交通ネットワークを拡充する際の整備効果の測定」がある。たとえば、関西では訪日観光客が近年激増し、広域観光振興を達成するための交通ネットワークの整備・改善が求められており、現在複数の事業化が検討されている。このような事業化の際の評価として交通ネットワーク整備による経済効果を定量的に測定することは、経済活動を支える交通ネットワークの重要性を鑑みれば引き続き重要であり、かつ課題も抱えていると考えられる。

 

研究内容

主に関西に本社を置く企業あるいは交通ネットワーク整備にかかわる行政担当者に対して、アンケート調査およびインタビュー調査を実施し、交通ネットワークのストック効果に関する推計枠組みを補強する。あわせて、交通インフラ整備の経済効果を定量的に把握するための基礎的なデータ収集を実施し、交通インフラの整備が関西全体に与えるインパクトを定量的に推計する。

・ 交通インフラ整備のストック効果を定量的に把握するための手法を整理すること

・ 交通インフラ整備の経済効果を定量的に把握するためのデータ収集を行うこと

・ 交通インフラ整備と企業行動(本社移転等)との関係を定性的あるいは定量的に把握すること

統括

稲田義久 APIR数量経済分析センター センター長

 

リサーチャー

入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授

下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員

 

期待される成果と社会還元のイメージ

研究成果については、関西発信の政策提言を補強する基礎的資料として利用可能であると考えられる。

・交通インフラ整備の経済効果を定量的に把握するための基礎的なデータ収集を実施し、そのデータから読み取れることを政策論として提示すること

・交通インフラの整備が関西に与えるインパクトを定量的に推計すること

・交通インフラ整備と企業行動に関する個別事例(例:交通インフラ整備の遅れが在阪企業の行動に与える影響分析)について1つ取り上げて、基礎的な分析枠組みを提示すること

Research Leader

後藤 孝夫

後藤 孝夫

中央大学 経済学部 教授

世界経済超長期予測 2016年版

研究プロジェクト

2016-06-30

  • 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

ABSTRACT

リサーチリーダー

研究統括 林 敏彦

 

研究目的

2015年度は、国連の人口推計2015年版への改定、および世界銀行各国GDPデータの改定を取り入れ、また、基本モデルを改定して、世界155カ国の実質GDPを2100年まで予測するためのAPIR超長期データベースの大改定を行った(以下、「APIR超長期データベース2015年版」と呼ぶ)。2016年度は、このデータベースをウェブで活用できる形に仕上げると同時に、そのデータを用い、同時に行うアジア進出日系企業に関するネット調査を通じて、マクロとミクロの視点から、日本企業の投資先の選択に指針を示す。

研究内容

APIR超長期データベースに関しては、今年度インターン数名を指導してデータのアップデートと計量経済学的分析を行い、各種レポートを執筆するなど、研究所内での作業が中心となる。

平行して行うウェブ調査では、アジア諸国に進出した日本企業の「好感度」調査を行い、消費者ではなく、B to B の視点から、ビジネスパートナーとしての日本企業に対する評価と批判点を明らかにしたい。

リサーチャー

島 章弘  APIRシニアプロデューサー

辻 俊晴  APIR総括調査役

門野尚誉  APIR総括調査役

松川純治  APIR総括調査役

 

期待される成果と社会還元のイメージ

APIR超長期データベース2015年版を国際的に認知してもらうことを目的として、英文学会誌に成果論文を発表する。

同データベースを用いた分析と各国経済の超長期見通しを、「アジア太平洋と関西」やコメンタリー、ポリシーブリーフなどのAPIRが発行する媒体を通じて、会員企業および政策担当者向けに提供する。

データベースを通じて得られた分析と、別に行うネット調査の結果を、新聞、雑誌、「共同ウィークリー」などのメディアを通じて、幅広い読者に向けて発信する。

研究の全体を取りまとめた報告書を作成する。

Research Leader

林 敏彦

林 敏彦

大阪大学名誉教授

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