ABSTRACT
平成20年度、道路特定財源暫定税率に関する議論が活発に行われた。この問題は、自動車利用にともなう負担や道路 整備のあり方に関わるだけでなく、国民経済、環境、地域開発、財政、交通政策等、さまざまな側面に直接、間接に影響を及ぼすものである。したがって、党利 党略や地域間の争いではなく、国民経済や国民生活の向上といった視点から、より良い政策選択につながるものでなくてはならない。
そこで、「国と地方の制度設計研究会」の1テーマとして道路特定財源にかかわる揮発油(ガソリン)税などの暫定税率を取り上げ、廃止された場合の消費者物価への影響度並びに家計負担の軽減額について、産業連関表並びに家計調査のデータを用いて、試算を行いました。
その結果、暫定税率の廃止によって、消費者物価全体を0.6%押し下げ、特に自動車等関係費については4.09%押し下げることが判りました。
また、暫定税率を廃止した場合に起きる収入階層別の税負担の変化(直接効果)について計測しました。年間の収入が低いほど負担の軽減率(収入比)は大き く(0.61%:第Ⅰ所得階層)、収入が高いほど軽減率が低くなります(0.31%:第Ⅴ所得階層)。つまり、自動車が生活必需品的な色彩が強く、揮発油 税などは逆進的な要素を持っていることを意味します
そして、暫定税率の廃止によって、ガソリン以外の様々な物価も上記のように下がります。その物価の下落で家計の支出額が減ることの効果(間接効果)につ いても計測を行いました。年間で8千円?2万円程度の支出を抑えることができ、所得に対する比率で見ると収入が低いほど支出の削減率が高いということがわ かりました。
また都市階級別で暫定税率廃止による影響を見ると、地方部ほどその軽減額は大きく、例えば町村部の場合、世帯当たり年間53,366円軽減され、大都市部では年間30,415円軽減されることがわかりました。
◆ 平成20年3月より当研究所のホームペ?ジに討論ページを開設いたしました。
そこで国会で論議のテーマとして繰り広げられた「道路特定財源の暫定税率」について当研究所の上記研究成果をもとに、会員の皆様方の忌憚ない個人としての 自由な意見交換、討論の場として活用していただき、そのご意見を今後の研究所の指針としても活用させていただきました。
<研究成果>