(Domestic Savings in the Pacific Region: Trends and Prospects)
長期経済成長を主として支えるのは国内貯蓄であり、海外貯蓄(外国資本フロー)の役割はあくまでも国内貯蓄を補完するものでしかない。実際、各国のこれまでの経験をみても、国内貯蓄と経済成長の間には強いプラスの相関関係が観察されている。高成長で知られる太平洋地域の途上国/地域についてもこの経験則が成立することはよく知られている。 けれども、現在までのところ、以下のような基本的な疑問について確たる解答がないのもまた事実である。すなわち、国内貯蓄はどの程度成長に貢献するのか?国内貯蓄水準を決める要因は何なのか?貯蓄率はなぜ国によって違うのか? 過去20年の経験をみると、先進国の貯蓄率は公的貯蓄の低下に伴って低下傾向にあるが、東アジアの高貯蓄経済の一部は債権国化し、海外に貯蓄を供給している。その結果、購買力平価ベースでみて(1993年)、東アジア(アジアNIEsと中国)の世界の生産に占めるシェアは12%にすぎないが、世界の貯蓄に占めるそのシェアは21%にも達している(米国、日本は各14%・13%)。このように、太平洋地域の貯蓄は世界の貯蓄動向(ひいては経済成長)を左右する規模に達しており、そもそも同地域の国内貯蓄を決定する要因は何なのか、そこでは国内貯蓄と経済成長はどのような関係をもっているのか、そしてまた、同貯蓄の今後の趨勢がどうなるのか、などの問題はグローバルに重要な検討課題となっている。